尊大不遜な転生悪役による凌辱ゲーの壊し方   作:全自動髭剃り

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アメリア② 逃れられない勘違い

 

 †同時刻、ベリアル室の外。視点:アメリア。

 

 

 私、アメリア・クレイトンは商家の娘です。

 

 東部島嶼部出身の母さんが一代で築き上げた大商会、クレイトン商会。

 

 恵まれたことに、私は生まれてこの方、何の不自由もなく。

 綺麗な服を着て、美味しいものもお腹いっぱい食べることができました。

 

 そんな日々。

 

 それがある日、崩れました。

 滅多に家になど帰ってこない父が、何の間違いかリビングにいた、その日でした。

 

「アメリア、お前の婚約結んだからな」

 

 酒精で真っ赤になっている顔に、千鳥足の父。

 

「こんやく……ですか?」

 

 聞き返した私に対して、父は机を激しく叩きながら怒鳴ります。

 

「いちいち聞き返すなァ!! お前の結婚相手は、ナイトフォールのところのガキだ!!」

 

 喧しく叫び声だけが耳に残りました。

 

 そして、今朝。

 私はナイトフォール家が出した迎えの馬車に。

 たどり着いたナイトフォール家で用意された服に着替えて、応接室に案内されました。

 

 そこで初めて会う自身の婚約者は、まるで羽虫を見るような目で私を見たのでした。

 罵倒の限りを尽くし、私に身を清めるよう命令するベリアルに、私が逆らえるはずもありません。この婚約が破談になれば、たった一代でできたクレイトン商会にとっての損失は想像もつきません。

 

 ここまで育ててきてくれた母さんに迷惑だけはかけたくありません。

 もしかして噂と違って私の婚約者が優しい方だったら……、と何度も祈っていた願いが叶えられませんでした。

 

 身を清め終え覚悟を決めた私は、ベリアルの部屋の前まで歩いてきました。

 ……これから我が身に起きる悲劇を何度想像し、何度崩れてしまったのか。

 数え切れませんが、それでも……。

 

「……ない、…………状況……」

 

 ……?

 木製の扉の向こうから男の独り言がかすかに聞こえてきました。

 ……吸われていくように、そっと耳を扉に近づけます。

 

 あの男が、何をしようとしているのか。

 碌でもないことに違いないとわかっていながらも。

 ノックの前に部屋の中からわずかに溢れる声に耳を傾けてしまいました。

 

「凌辱…………うけいれられるか…………」

「……ッ!?」

 

 穏やかじゃない言葉に、心がギュッと握られたような感覚になってしまいます。

 私はこれから、会って間もない悪逆非道の婚約者に凌辱されるのですね……。

 彼は自身の怒張を、小柄な私が受け入れられるか疑問を持っているようでした。

 

「違う……穴……淫語を吐きながら獣姦……嫌悪感……」

 

 ――ひっ!?

 

 違う、穴……!?

 淫語を吐きながら…………じゅ、獣姦!?!?

 

 か、彼は私に……一体何を…………!

 

「……理不尽な、……凌辱…………」

 

 とてつもない恐怖感が脳髄から全身に伝染し。

 身震えが止まりません。

 

 私が何をしたというのですか……!!

 

 自然と涙が溢れ出してしまいました。

 私は今から想像もつかないような酷いことをされるのですね……。

 

「みんなで……数時間かけて……」

 

 思わず自分の体を隠すように抱きしめました。

 大人数で私を長時間……。

 想像するだけでも身の毛がよだち、膝が笑って立つことも難しい。

 

「どうやって………………」

 

 その上ベリアルはこれ以上の何かを考えている様子です……。

 …………もはや羞恥心と恐怖と悲しみでぐちゃぐちゃな気分。

 

 とめどなく流れる涙と、途切れない嗚咽の中。

 それでも。

 それでも!

 

 拳を握って、体に力を入れます。

 

 私は、絶対に――!

 絶対に、あなたになど屈しません!

 

 私は今にも逃げ出したい欲望をなんとか押し留めて、鬼畜が声を上げて嗤う部屋の扉をノックしました。

 

「入れ!」

 

 怒気の孕んだ声。

 そんなものに屈しちゃいけない。

 私はクレイトン商会の娘。こんなところで挫けてはいけないんです……!

 

 だから。

 だから、なんとか声を絞り出して――。

 

「アメリア……、クレイトン……ひっ、う……っ、です。ひっく。……申しつけられた、通り……うぅ、身を清めて……、まいりました…………」

 

 抑えていた感情が全部こぼれ出してしまって……。

 こんなはずじゃなかったのに……。

 恐怖に慄いて涙を流すなど、目の前の男の思う壺なのに!!

 

「は? 何をいっているんだ貴様」

「あ、……あなたが、身を……清めろと」

「……。いいか、貴様のような愚鈍な下等生物が俺の部屋に踏み入れることは許さん。理解したなら二度と近づくな」

「……ひっく、……。…………え?」

 

 それこそ、あらゆる想定と覚悟をしてきたのですが……。

 私を部屋から追い出そうとする男。

 

「近づく、な……?」

「そうだ! 聞こえたなら疾く去れ!」

 

 一瞬私の覚悟がからぶってしまったような。

 表紙抜けた気分になったのですが……。

 

 ……ああ、そういうことなのですね。

 一瞬でも期待してしまったことを後悔しました。

 

「ええ。……わかっていますよ。この部屋ではなくもっと酷い場所で致すのですね……」

「??」

 

 そのまま部屋から立ち去ります。

 そして、万が一のために、護身具になるようなものを探しに。

 

 それがなんの役に立てるかは、わかりませんが。

 

「……何だったんだ??」

 

 彼の声はもう聞こえなくなっていました。

 

 

 †同時刻、ベリアル室の中。視点:ベリアル

 

 

 目が覚めても、ベリアルのままだった。

 ……これが夢じゃないことは察していたが、改めて事実を突きつけられると凹むものだ。

 

「とんでもない状況になっちまったなぁ……」

 

 ここは“LH”の世界。

 大好きだった全年齢RPGの姉妹作――よりによって、悪評で会社を沈めたあの問題作。

 俺は嫌だった。物語は王道なのに、唐突で理不尽なルートが全てを壊す。

 それでも生きるしかない。まずは、原作開始前の死亡イベントを潰す。

 

「凌辱ゲーはないない。そんなの受け入れられるかってんだ」

 

 独言る。

 なぜか“俺”――ベリアルの部屋で一人になると自由に喋れるようになったので、ベラベラと独り言を楽しんでいる。

 言論の自由万歳!

 

 え? 変人だって?

 そんなのは言論の自由がある人の驕りだぞ!

 

「……アズーリがいるってことは、この世界はLH確定なんだけどなぁ」

 

 LHも大陸シリーズと世界観を共有している。

 やり込んだわけではないが、軽く通してのプレイはしているが。

 コンプリートできるほど、”大陸シリーズ”ファンな俺の心は続かなかった。

 

「せめて違う世界にしてよ。あのキャラたちがいる世界のどこかで淫語を吐きながらの獣姦が行われるとか、嫌悪感半端ねえ……」

 

 アダルトゲーム、しかも陵辱系ときた。そりゃああんなことやこんなことをされちゃうヒロインのシーンは避けようがない。

 え? スキップすればいいって?

 ……、俺も男だからな。察してくれ。

 

「つっても、なぜ理不尽な凌辱にしたんだ……」

 

 ヒロインの単独行動のたびに、予告も伏線も無しに唐突に現れる竿役によるNTR。

 主人公がいきなり血迷った選択を行わない限り辿り着くはずもない陵辱エンド。

 ……それさえなければ、ストーリー自体はいつも通りの王道青春ものだ。

 

 それにコストカットのためなのか。

 アダルトゲームなのに過去作と全く同じ、プレイヤースキルを大きく試すようなゲームシステムだ。

 ……売れるわけないじゃん。

 

「みんな自家発電するために買ってるのに、何時間もかけて練習とかスキル合わせとかするかってんだ」

 

 前作にかけた数百時間を回顧する。捧げた時間のほとんどは中毒性の高い対人戦だったが、それでも充実なゲーム体験だった。

 

 ……っと、思いを馳せてばかりいても仕方ない。

 今大事なのは、目が覚めてもベリアルくんのままなことと、これから先どうやっていくかってこと。

 

「……どうやっていくか、だよなぁ」

 

 幸いなことに、この世界自体についてはある程度知識がある。

 軽く通してプレイした朧げな記憶と。

 興味本位で読んだベリアルの大百科ページだ。

 

 ルートのよって本編前、本編中、本編後にわたる多種多様な死に様が書かれており、こう結論づけられている。

 ――どう転がってもDEAD END。

 

「ふざけんなって話じゃい」

 

 人生が地雷すぎるぞ!

 まさかの死ぬ前提のキャラクターに転生とか、不運にも程がある。

 その上まともに喋れないとか、ハードモードすぎないっすかね!

 

「と言っても、始まらないよなぁ」

 

 文句を言ったところで、どうにかなるわけでもない。

 ”大陸シリーズ”なら、こんな呪い(強制口調)が存在してもおかしくない世界観だ。

 

 それに……。

 

 ――謝罪しろ。

 

 手元にある紙片を見る。

 先ほど、筆談にワンチャンスをかけて書いてみたはいいのだけど、どうすれば『すみません』が相手に謝罪を要求する言葉に変換されるのか……。

 抜け道すら塞がれてしまっていたのだ。

 一朝一夕で解決しない問題だというのも確定した。

 

 どうせ一度寝て起きたところで日本に戻れるわけもなし。

 とりあえずの目標は生き延びること。

 そのためにも、まずは……。

 原作開始前にある死亡イベントの回避。

 

 思案を始めていると。

 

 コンコン。

 

 とドアが叩かれ、それに対して返答する。

 

「入れ(どうぞー)」

 

 残念ながら俺の言論の自由は奪われ、“俺”の言葉が出てきてしまった。

 うーん、このコミュニケーション問題、どうやら他人がいる時のみ発動するみたいだな。

 

 そう考察していると、ゆっくりとドアが開き、

 

「アメリア……、クレイトン……ひっ、う……っ、です。ひっく。……申しつけられた、通り……うぅ、身を清めて……、まいりました…………」

 

 そこには、山吹色の瞳から大粒の涙をボロボロと流しながら泣きじゃくるお風呂上がりのポカポカ系美少女、アメリアさんが立っていた。

 まいりました。

 俺が言いたかった。

 

 

 

  ☆ステータス☆

 

 【名前】ベリアル・ナイトフォール

 【基礎レベル】1

 【技量レベル】1

 【魔法属性】不明

 【魔法詳細】未習得

 

 【名前】アメリア・クレイトン

 【基礎レベル】1

 【技量レベル】1

 【魔法属性】不明

 【魔法詳細】不明




 いつも感想、誤字訂正、本当にありがとうございます! もしもこの作品を楽しんでいただけたら、評価・感想を残していただけると、次話を書くモチベーションになります! よろしくお願いします!

ベリアルくんに難易度を設定してあげてください! 現状はノーマルです!

  • イージー(無双タイムだ!)
  • ノーマル(現状維持!)
  • ハード(血湧き肉躍る苦闘を!)
  • ナイトメア(世界の深淵を覗こう!)
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