尊大不遜な転生悪役による凌辱ゲーの壊し方   作:全自動髭剃り

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アメリア④ 戦いの後

 目を開けたら。

 

「知らない、天井だ」

 

 なんか煌びやかな赤と金の布。

 ……まじで知らない天井だけど。

 

 上半身を起き上がらせると、

 

「いッ!」

 

 左肩から尋常じゃない痛みが!

 見てみると、見慣れない結び目の包帯が結んであった。

 部屋には酒精と薬草のような香ばしい匂いがする。

 

「動いちゃダメですよ!!」

 

 咎める言葉が隣からする。

 この世界に来て一番聞く馴染みのある声。

 

「大怪我ですから、安静にしてください!」

 

 彼女曰く大怪我の元凶。

 アズーリその人である。

 

 ……今まで介抱してくれていた様子で、戦っていた時のような闘いの雰囲気ではない。

 よかったぁ……。

 

「貴様の負傷は?(アズーリさんこそ、蹴っちゃったところ大丈夫ですか?)」

「私のですか? ……あ、あの最後の蹴り! あ、えーと……、かなり、それはもうかーなり痛みますけど、ベリアル様の方が大事なので!」

 

 うーん。

 この様子じゃダメージどころか、忘れられる程度で、かすり傷にすらなってないな……。

 わかりやすく気を遣われたなぁ。多分“俺”の今までの行動は彼女にそうさせているだろうか。

 

 レベル差があってもそれなりに戦えるこのゲームだが、それでもステータスには大きな差は開く。

 俺の蹴りが通用しなかった理由……。おそらくそれは、膨大な彼女のHPがわずかにしか減らなかったからだろう。

 うーん、軽く見積もってレベル差は100かな?

 

 ……。

 負けイベントが顔真っ青になる闘いじゃねえかちくしょう!

 勝てるわけねえよ!

 

 というか、アズーリレベル高すぎ! 作品にもよるけど、ラスダンのサブメンバーにできるレベルだぞ!

 

「……(はぁ……)」

 

 ため息が出そうになる

 

 憑依して半日も経たずに死にかけるとか……。

 けど……。悪いことばかりではない。

 

 まず。

 前世で戦うなんてのは、同級生同士の喧嘩レベルでしかやったことがない俺だったが。

 それでも、ゲームの経験が生きたのか、それとも”俺”自身がそういった能力や肉体記憶があったのか知らないが、最低限戦えると知れたこと。

 

 これは大幅な時間短縮になる。

 少なくとも、俺が戦えるかどうかを考える必要がなくなる。”戦うという行為”を取るハードルが下がるのだ。

 

 次に。

 このゲームにはちょっとした救済システムがある。

 戦った相手のレベルまでは、経験値ブーストがかかるのだ。

 鍛えさえすれば、彼女のレベルまで比較的すぐにたどり着ける。

 命をかけた戦いに、意味はあったはずだ。

 

 そう思っていると。

 

「ベリアル様。差し支えがなければ、で構わないのですが……、一つ質問をしてもよろしいでしょうか?」

 

 いつもの地中海のようなカラッとした笑顔と比べれば、どことなく神妙な笑顔のアズーリ。

 なんだかいつもと違った違和感を覚えながらも、返答する。

 

「つまらぬ問いかけならば、即刻その首を刎ねてくれよう(どうぞ)」

 

 実力差からして無理だよ。

 痛い目を見ているというのに、”俺”の口は今日も絶好調なり。

 

「ベリアル様はなぜ私と……戦おうとされたのでしょうか?」

 

 少しばかり困惑が含まれているような、そんな声音だった。

 シワ一つなく綺麗なメイド服を見ながら、俺は答えようとして、

 

「それは……(それは……)」

 

 思わず口ごもってしまった。

 アズーリと戦った理由。

 それは非常にわかりやすくシンプルなものではある。

 

「貴様を踏み台に、さらなる高みへと登るためだ(強くなるためですよ)」

 

 けど……。

 

「……。では、ベリアル様はその高みに登り、何を為すのですか?」

 

 強くなることは、手段に過ぎない。

 武人にとってみれば、強くなることこそが目的になるだろう。けど、俺はそうじゃない。

 

 俺は、……死にたくない。

 ベリアルの死ぬ運命に巻き込まれるなど真っ平ごめんだ。

 だから、俺は力が欲しかった。

 

「立ち塞がる虫ケラどもを蹴散らすためだ(自分を守れるだけの力が必要だったのです)」

「……ベリアル様に仇なす者を、斃すためですか?」

「当然だ(……そういうことになるかな)」

 

 だけど。

 

「たとえ神だろうと、邪魔などさせん(運命を受け入れるなんて、クソ喰らえだからな)」

「……」

 

 ここはゲームの世界。

 力さえあれば、何であれ好き放題にできる。

 レベルをカンストさせれば、世界を滅ぼす存在を相手に殴り合いを繰り広げられる。

 つまりは、強くなれば、それこそ世紀末帝王にでもなれるのだ。

 

「世紀末帝王、いい響きではないか」

 

 などと、俺の考えてたことを勝手に喋り出す”俺”。

 あちゃー、”俺”の中二病が発症しちゃったかー。

 

「そうですかー。ではぜひ私をその帝国の末席に置いてくださいね!」

 

 冗談っぽく笑うアズーリ。

 まるで大きくなったらお母さんと結婚すると言っているような子供を相手にしているような顔だが……。

 

 ……相手にしてないって感じだな。

 うん。俺としても大真面目に相手された方が困るしいいけど。

 

 いずれにせよ、そんな夢物語は置いておくとして。

 ゲームの世界で鍛えないことがどうなるか、特にこの凌辱ゲーではどんな結末を迎えるかは火を見るより明らかなので、弱いままの状態を甘受するつもりはない。

 

「小娘一人どうにかできずして、我が命運など語れるものか(ははは)」

 

 アズーリの冗談に笑い返そうとしたら、ベラベラとまたこの口は喋り出した。

 

 

 †

 

 

「ベリアル様、やはりあなたは……」

 

 静かな声が。

 倉庫の片隅に。

 

 アズーリは目を瞑りながら、その場に佇む。

 

 アズーリの隣には、ちょっとした木製の机があり。

 その上に赤色のハンカチに乗せられた、紡錘状のガラス容器がおいてあった。

 栓をされた中、藤色に怪しく光る液体が満たされている。

 

「……」

「やあ、アズーリ」

 

 倉庫の扉は音もなく開かれ。

 金髪の男が入ってくる。

 

 閉じられた目を開き。

 いつもの如く、笑顔の仮面をつけて。

 

「こんにちは、ダリウス様」

 

 男に挨拶をした。

 ベリアルの兄。ベリアルとは対照的な、いかにも好青年な態度の男だ。

 

「いつ見ても端正な顔立ちだね、君は」

「お褒めに預かり、光栄です」

「やはり君は、ベリアルなどの専属メイドにいるべきじゃない。僕が父上に打診をした方が……」

 

 ナイトフォール家の長男。

 ベリアルに比べて家での評判もよく、それに限らず通う士官学院でも優等生だ。

 ゆえに、父に意見を具申できる立場。

 

 だが。

 アズーリは、笑顔の仮面のまま返答をしない。

 

「……」

「……いや、悪かったよ。君の仕事にケチをつけるつもりではなかったさ」

「ご配慮感謝いたします」

 

 呆れたように、諦めた仕草のダリウス。

 何度も繰り返された会話。

 これまでのアズーリの返答も、これからのアズーリの返答も変わらないだろう。

 それをわかっていながらも、ダリウスにやめるつもりはないらしい。

 

「約束の物です」

 

 言いながら、机にあった小瓶を持ち上げるアズーリ。

 

「ああ、そうだったね」

「前回に比べ濃度は高いのですが、その分扱いには注意が必要とのことです」

「……ああ、気をつけるよ」

 

 受け取りながら。

 隠すようにして、ダリウスは小瓶を懐に入れる。

 このひとときだけは、ベリアルと重なるような面影が見えたが。

 

「……流石に、違いますね」

「え? 何か言ったかい?」

「いえ。それよりも、依頼者からの伝達です」

 

 誤魔化しながら、水髪のメイドは続けた。

 

「『これはあくまで試作、本来の効用が抑えられてはいるが、乱用しすぎないように』とのことです」

「……ああ、わかっているさ。これはあくまで、舞台を整えるため」

 

 怪しげに目を光らせながら。

 男は続けた。

 

「最後は僕の力量がものをいうさ」

 

 

 †数週後、7月23日。視点:アメリア

 

 

 今日まで。

 ベリアルに呼ばれたことはついにありませんでした。

 

 ……指定された場所に向かいながら。

 この数日にあったことを思い出します。

 

「結局、……彼から何かしてくることはありませんでしたね」

 

 初日に聞いた言葉。

 それを忘れることは一生ないと思いますが。

 けど……。

 

「彼が望めば、……私の抵抗など無視できるはず」

 

 彼が何を。

 どう企んでいるのか。

 それは分かりませんが……。

 

 そう思って屋敷の中を歩き回っていると……。

 

「あれ?」

 

 見たことのない場所に来てしまいました。

 思案しながら歩いていたせいか、道から外れてしまったのでしょうか。

 

 辺りを見回してみますが……。

 誰もいない。

 ……仕方ありません。来た道を戻って、それから……。

 

 なんて思っていた時でした。

 

「はァアアアア!!!」

 

 という遠くから聞こえる叫び声。

 聞き覚えのある、ベリアルのものです。

 耳を澄ませば、叫び声とともに何か物がぶつかっているような音も。

 

 ……。

 近づけば暴れているだろうベリアルに何をされるかわかりません。

 会った日に私の体をめちゃくちゃにしようと企んでいたり、すれ違いに挨拶しただけで罵倒したり。最近では無視したりといったことも多くなりましたが……。

 そんな人の近くになど、近付くだけ損なのですが。

 

「……挨拶のため。これは仕方ないこと……」

 

 でも、なぜか私はその声と音がする方へと向かってしまいました。

 本心を誤魔化しながら。

 

 好奇心でしょうか。

 ……正直に言ってしまえば、ベリアルのことがよくわからなかったのです。

 口ではあんなにひどいことを平然と言う割には、自分の権力と立場でいかようにでもできる小娘である私に……、なぜか彼は指一本触れることがありませんでした。

 彼に触れたのは……、ルーカス様の前で私から彼に触れた一度のみ。

 口だけの小物だった……? と思ったこともあったのですが。

 

 ……曲がりなりにも決まってしまった私の婚約者。

 彼は一体何を考えているのか。

 気にならないわけにはいかなかった私は。

 

 鍛錬室と書かれていた部屋の、半分開いているドアから。

 近づけば近付くほど大きくなる、咆哮と轟音の主を覗き見してしまい。

 

「……、え?」

 

 そこには。

 剣を握り、一心不乱に舞うベリアルの姿が。

 砂が跳ね、金属が軋む。

 流れるような剣筋は、美しく獰猛で。

 苛烈ながらも優雅。

 

「なんで……」

 

 この屋敷にいながら幾度も聞いた噂、『努力などするはずもない』ベリアルに、全く見えませんでした。

 傍若無人にして、遊惰放逸(ゆうだほういつ)

 そんな男が……、なぜ?

 

 確かに、その暴威に磨きをかけるためといえば分かりやすくはあるのですが。

 

「うおおおおお!!!」

 

 邪心によって、果たしてあのような剣筋を描けるのでしょうか。

 まるで、握る直剣の持てる最終形態を追い求めるような……。

 探求をする舞を。

 

「……」

 

 ……、しばらく見入ってしまいました。

 こんなことをしている暇はないはずでした。

 

「行かないと……」

 

 約束の時間はもうすぐ。

 待たせるわけにはいきません。

 便箋を手に握り、後ろ髪を引かれる思いを断ち切ります。

 

 

 †

 

 

 陽光がやわらぐ頃、中庭の水蓮が見頃だそうです。

 明日昼過ぎ、ご一緒に見届けてませんか。

 

 ダリウス・ナイトフォール。

 

 

 ☆ステータス☆

 

 【名前】アズーリ・ナイトヴェール

 【基礎レベル】30前後

 【技量レベル】70前後

 【魔法属性】不明

 【魔法詳細】不明




 いつも感想、誤字訂正、本当にありがとうございます! もしもこの作品を楽しんでいただけたら、評価・感想を残していただけると、次話を書くモチベーションになります! よろしくお願いします!

ベリアルくんに難易度を設定してあげてください! 現状はノーマルです!

  • イージー(無双タイムだ!)
  • ノーマル(現状維持!)
  • ハード(血湧き肉躍る苦闘を!)
  • ナイトメア(世界の深淵を覗こう!)
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