尊大不遜な転生悪役による凌辱ゲーの壊し方   作:全自動髭剃り

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アメリア⑥ きっかけ

 †2日後、7月28日昼前。視点:アメリア

 

 少しだけ開かれた扉から中の様子を覗き込みます。

 ……いつもと変わらない景色。

 変わらない少年が、同じことを繰り返しています。

 

 飽きもせず。

 ……と言っては失礼なのでしょうか。失礼ですね。

 

 数日前。

 ベリアルを鍛錬室で見つけてしまって以来。

 彼がどんな人なのか、それを見極めるために何度もここに足を運んだのですが。

 

「……ヒロイン、…………好感度……。攻略……」

 

 真面目そうな仏頂面で、何だかよくわからないことをつぶやくこと以外、……何も怪しいところは見られません。

 ……怪しいといえば、怪しくはありますが。

 悪い意味での怪しさではないので、見逃してあげることにします。

 

「……まで、……半年。…………ハーレム……、ふふっ…………」

 

 ……、見逃してあげようと思ったのですが。

 だめです。

 ちょっとでも油断するとこれだから。

 

 少しばかり落胆。

 目の前の男は獣です。いくら爪を隠そうとも、私はそれを見極めてみせます。

 

 ……ただ、それはそうと。

 今日ここに来たにはもう一つ、理由があります。

 

 士官学院には入学試験があり、その半分は記述試験。そして、残り半分は実技試験です。

 記述試験についてはともかく。

 実技試験の方には全く手が出せていない現状です。

 

 士官学院を目指すと思いながらも、……鍛錬のことは先延ばしにしてきました。

 でも、それも流石に今が限界でしょう。

 確かに生来、あまり活発な方ではなかったのですが、それを言い訳にしたくはないです。

 

「……」

 

 とりあえず、運よく会えたアズーリさんに、屋敷で使える鍛錬用の魔導銃を借りてきました。

 ……いざという時のために、1日かけてベリアルをコテンパンに負かせられるだけの改造を施して。

 改造が楽しかったからではありません。ええ、そうですとも。

 

 でも。

 ……。ここに来るまでの心踊る気分とは違って。

 なぜか銃を握ったまま、なかなか一歩を踏み出すのが……。

 ……難しい。

 

 懐に入れておいた花園の鍵。

 逃げようと思えばいつでも逃げられます。

 だから、なにも怖がる必要はない。

 

「っ。私は……」

 

 そう、そもそも。

 私は、……ただ自分の鍛錬のために来たに過ぎません。

 たまたま最適な場所がここで。

 そこにベリアルがいるだけ。

 

 だから、決してベリアルがいるからここに来たわけじゃないし。

 ……彼と一緒にしようというわけでもない。

 

 だから――。

 

「やあ、ここにいたのか」

「!?」

 

 いきなり声がかかり、驚いてしまい。

 手を滑らせて、持っていた魔導銃をガランガランと落としてしまいました。

 

「おっと、すまないね。驚かせてしまったかな?」

「あ、……い、いえ」

 

 思ったより大きすぎる物音を立ててしまったことに少し焦りながら、返答します。

 これではベリアルに……。

 そう思って再び扉の方へと目をやりましたが、

 

「暇しているようでよかったよ」

 

 私の目線の先へと割り込むようにして入るダリウス様。

 ……ベリアルと違って、柔らかく優しそうな笑顔です。

 

「君ともう少しお話ができないかと思ってね」

「え、えーと……」

 

 ……数日前、花園に訪れたときの話でしょう。

 確か、ダリウス様が講義のため、足早に去った記憶ですが……。

 

「せっかく君のような可愛いお嬢さんが家族の一員になるかもしれないんだ。お互いを知っておいた方が何かといいことも多いだろう?」

「……か、家族、ですか」

 

 少しばかり沈んだ声で返答してしまいました。

 ダリウス様にとって、私は弟の婚約者。そういう意味では家族かもしれませんが……。

 

「もちろん、君が望んでいないことだというのはわかっているよ。だからこそ、僕たちで何か方法を見つけられるかもしれない」

「……、方法、ですか」

「うん。君があの出来損ないの弟と二度と関らないで済むように、ね」

 

 大きく腕を広げ、金色の髪をたなびかせるダリウス様。

 鼻腔をくすぐる香水の甘い匂いが漂います。

 

「で、でも……」

「君は素直すぎるのさ。たまにはカゴから抜けて、空に羽ばたくことも覚えなきゃ」

 

 素直すぎる、ですか……。

 そう言われれば、……。

 

「ベリアルのことなんか忘れてしまえばいい」

 

 なぜ私は、……ベリアルなんか……、のことに……。

 固執していた、のでしょう……か?

 

「僕は決して君を悲しませたりしない」

「悲し……ませ…………」

「そうさ。僕こそが君の王子様さ」

 

 笑顔の、……王子様が、…………。微笑んで。

 

「さあ、一緒に花を愛でようじゃないか」

 

 あっ……。

 ダリウス、様の……

 手がわたしの、……てを。

 

「この手に魔導銃なんて物騒なものは似合わない。さあ、僕ともう一度あの花園に行こう」

 

 いわれ、るがまま。

 わたしはだりうすさまに

 ついて

 いく

 ことに

 ……なりまし――

 

 

「――どこに行くつもりだ?」

 

 

 怒りを孕んだ声が、聞こえ。

 霞んでいた思考が戻り――。

 

 

 †少し前。視点:ベリアル

 

 ここ数日、人の視線を感じてる日々が続いている。

 ……なんて言い始めると、俺も”ベリアル”の中二病が感染したかと思われるかもしれないけど。

 

 まあ、原因はわかっているんだけどね。

 なぜか知らないけど、鍛錬室で剣を振るっていると、アメリアがちょくちょく覗きに来るのだ。

 最初でこそ閉めたはずの扉が開いてるなーってくらいだったけど。

 

「?」

「っ!? ……!」

 

 今も扉の間からひょっこり長い髪が垂れてるし……。

 俺に見られて焦ったのか、ビクッとしてるのもわかるし。

 

 というか、昨日とか飲み物取りに行った際にドア前でぶつかったくらいだし。

 あれで隠れれてるつもりなのかなぁ……。

 

 じーっと扉の方を見続けていたら、観念したのか気配が感じられなくなった。

 それはそれで若干の寂しさを覚えつつ、再び剣を構える。

 

 ストーカーされてるというか、監視されてるような気分なのだが、”俺”の言動を考えれば仕方ないところもあるし。

 甘んじて受け入れるというのも、悪役から新生主人公たる俺の懐の広さというか?

 ふふん、どこからでもかかって来なさいという、横綱相撲の気分でいるべきなのですよ。

 

「この口調でヒロインの好感度を上げて、攻略する方法ってあんのかね」

 

 と悩みながら剣を振るう。

 世の中には寡黙系主人公なるものも存在するし、そういう路線を目指してみるのも悪くないのだけど……。

 俺の意思じゃこの口を黙らせられない時があるのが問題だ。

 

「学院入学まであと半年あるんだが、何とかして”ベリアル”くんをハーレム系主人公みたいに成長させないと……」

 

 って、最早攻略対象がヒロインじゃなくて、”ベリアル”くんになっちまってるじゃねーか。

 

「ふふっ」

 

 前途多難すぎる異世界生活に思わず笑ってしまったけど、我慢我慢。

 この喜びはハーレムルートに入ってからいくらでも享受できよう!

 今は明日の我が身の方が大事だ。

 

 そのためにも、もっと強くならないと!

 自然と直剣を握る手に力が入る。

 

 鍛錬に戻ろうとした時だったが、

 

 ――ドコン!!

 

 という音が部屋の外からした。

 

「?」

 

 猫が花瓶を倒したにしては、やたらと重たそうな音だ。

 風で甲冑が倒れたのかなぁ?

 どちらにしても、とりあえず様子を伺いに行こう。

 

 扉を開く。

 すると、最近何かとよくみる顔と、滅多に見ない顔のコンビがいた。

 我が兄ダリウスくんとアメリアちゃんだ。

 

 よく見れば手を繋いでる。

 ……えーと、これは……。もしかして……。

 アメリアに至っては恍惚とした表情をしてるし。

 

 お二人で、ランデブーってことですかね。

 ……なんだかすごく凹む光景だ。

 自分の妹と手を繋いでいる彼氏の会長を見た時、副会長もこんな気持ちだったのだろうか……。……いや、俺とアメリアは付き合っているわけじゃないからちょっと違うか。

 

 でも……。

 よく考えたら俺なんかの婚約者をやるよりかはマシなのだろうか。

 向こうは側から見てもまごうことなきイケメン。家柄も能力も兼ね備える、将来が約束された超絶エリートだ。

 少なくとも、毎日罵倒しかしてこない相手よりは心安らかだろう。

 

 何だか一気に肩から力が抜ける思いで。

 若干嘆息気味に呟いた。

 

「どこに行くつもりだ?(お幸せに)」

「ちッ……! 欠陥品が……」

 

 と、途端に甘いマスクを歪ませるダリウス。

 元が柔らかそうな顔だけに、中辛のカレーみたいな中途半端な怒り顔だ。

 

「僕がどこに行こうが、お前には関係ないだろ。わかったなら、どこかに行け」

「なぜ俺が貴様程度の虫ケラの命令に従わねばならん?(……)」

 

 ……黙っていたけど、口が勝手に喋り始めた。

 あんま自分から死亡フラグ立てに行かないで欲しいんだがなぁ。

 言われたダリウスは、

 

「何だと……?」

 

 叫びながら詰め寄ってきた。

 ……何のシャンプー使っているのか知らないが、甘い匂いがする。

 少なくとも俺が使わせてもらっている浴場のものではなさそうだ。

 

「出来損ないの分際で」

「自己紹介のつもりか? これ以上の惨めさを晒すな、目が腐る!(……)」

「惨め……だと!?」

 

 ついには熟した棗のように真っ赤になった顔色で、

 

「ぐっ……!」

 

 俺の胸ぐらを掴み上げるダリウス。

 少し息苦しいが、ダリウスを見おろしながら。

 

「そのような威嚇に屈するとでも思ったのなら、貴様は相当な能天気だな(ぼ、暴力反対)」

「穀潰しが……っ!」

「顔が醜いぞ、虫ケラ。その獣畜如き本性を少しは隠してみたらどうだ?(あの、離してもらえませんかね……?)」

「ッ!!」

 

 掴み上げた腕を振り、俺を突き飛ばすダリウス。

 たまらずバランスを崩してしまい、倒れてしまったが。冷静に立ち上がる。

 

 痛ッてえな。

 流石に手が出るのが早すぎないか?

 

 睨む俺だったが。

 ダリウスは腰に携えた剣に手を当て。

 

「剣を持て! お前は痛めつけないとわからないようだな!」

 

 煌々と金色に輝く剣を抜き取った。

 趣味の悪さで言えば、”俺”の剣に比べても酷いものだ。

 

「お、お待ちください、ダリウス様!」

 

 慌てて声を上げるアメリア。

 この場を収めようとしているのだろうか。

 だけど、俺と目が合った瞬間、

 

「ひっ……!?」

 

 目を逸らした。

 そして一歩退き、そのまま黙ってしまった。

 

 ……、ちょっと理不尽すぎやしませんかね。

 脳裏の痺れが広がるような感覚。

 なんだか自分でも制御しきれないほどの苛立ちが募ってきた。

 

「正気か、貴様?(俺がなにかしたのか?)」

「今更怖気付いたのか!?」

 

 なおも威嚇を続けるダリウス。

 ならば。

 いい機会だ。

 

「かかってこい三下! どちらが上か、骨の髄まで叩き込んでやる!(相手してやるよ)」

 

 どこか沸き続ける苛立ちのまま。

 俺は直剣を握り直した。




 いつも感想、誤字訂正、本当にありがとうございます! もしもこの作品を楽しんでいただけたら、評価・感想を残していただけると、次話を書くモチベーションになります! よろしくお願いします!

ベリアルくんに難易度を設定してあげてください! 現状はノーマルです!

  • イージー(無双タイムだ!)
  • ノーマル(現状維持!)
  • ハード(血湧き肉躍る苦闘を!)
  • ナイトメア(世界の深淵を覗こう!)
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