背中を晒す3流ドリフターはアンドロイドと一獲千金の夢を見るか?   作:ばばばばば

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ド リ フ タ ー 一 獲 千 金 時 代 到 来 !!

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はドックタグにぶら下げた小さなプラスチックの塊を弄りながら何とか心を落ち着かせていた。

 

 何かの人型ロボットを模した小さな飾り人形

 

 妙に厳ついのに愛嬌がある丸さと特徴的なターレット型のレンズが頭部につけられたそれ、昔のオモチャらしいと考察されている旧時代の遺物。

 

 

 それを弄りながら俺は物思いにふけった。

 

 

 

 

 人類が栄えていた時はこの手の物が溢れかえっていたらしい。

 

 

 東部超長距離遠征隊の下っ端兵士だった親父はそこでの資材回収の合間、バレないようこっそりとガラクタの中にあったらしいそれを俺へのお土産に持ってきた。

 

 

 ―――コイツは特に極東の生活区域でよくみられる奴でな、種類もあきれるほど多いし、好事家も多い、金に困ったら売ってもいいかもな―――

 

 

 親父は背中越しに鼻歌を歌いながら、俺へのお土産ではない自分への多量の戦利品を前に一つの古びたラベルが張られた瓶を持ち上げた。

 

 

 ――――あ? これか? お偉い共が配る感情抑制サプリとは違うマジもんの旧時代の命の水だぜ、まぁよく知らねぇけど最高級品ってやつ、飲みたいだ? これは高いからダメだ。今捌くアテを付けて………、売る前に一口だけ? 良い訳ねぇだろうが、……あー駄々こねるなうっとうしい―――

 

 

 せがむ俺に呆れた親父は瓶を持ち上げ、その煤けながらも瀟洒な作りのラベルが張られた瓶越しに俺を眺め透かす。

 

 

 ――――まぁ少しだけちょろまかすか、お前が一丁前になったら、味見くらいはさせても良いかもな、……その前に俺が飲んじまうか売っぱらわなかったらの話だがな!――――

 

 

 絶対に自分で飲むつもりだと飛び回る俺の頭に、押し付けるように親父の手が触れる。

 

 

 

 

 

 

 ……結局、あれはどんな味がしたんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 西暦2222年

 

 俺の住む人類最期の国家『アメイジア』は滅びた。

 

 

 『アメイジア』とは直径二キロ、深さ二キロの円筒状の縦穴とそれを覆いつくす巨大な天蓋の中にある都市国家、その穴の底には新時代のエネルギーA(アモルフォス) O(オレンジ) 結晶(クリスタル)の塊が眠っており、都市の運営に半永久的なエネルギー源として使用可能。

 

 

 人類最期の生存圏、理想国家アメイジア

 

 世界一最高の都市国家であるアメイジア

 

 

 たとえ人口管理に失敗して、俺がケツの穴よりクソ狭い寝床に詰めこめられ、ストレスや感情を薬物で無理やりコントロールされながら、命がけで上の奴らのケツの穴を舐めさせられようとアメイジアは世界最高の国家だ。

 

 なんせあの荒廃した世界に国家なんて言えるのはアメイジアただ一つだからだ。上から数えて世界で一番の都市であることは疑いようがないだろう。

 

 

 下から数えたら? ……これ以上は察してくれ。

 

 

 ……とにかく、俺の住む地下都市アメイジアは突然崩壊した。

 

 全ての害を弾くはずの上層の天蓋がなぜか割れて一気に地上の雨が流れ込み、何から何まで水浸し、お偉いさん方はまとめてお亡くなりになられた。

 

 ……いや今に思えばあれは本当に雨だったのか

 

 まぁ、後で語るなら“ざまぁないぜ!”と強がりを言えるところだったが、そんなことを言う前に実際崩壊しきったアメイジアを見て当時の俺は茫然と立ち尽くすことしかできなかった。

 

 

 クソッたれともいえどもアメイジアは我が家だった。

 

 あんな寝る場所しかない穴倉でも、それでもそこには確かに俺達を守る壁と屋根があった。

 

 分かるか? あるはずの天井と壁があったが今はない、これでは野ざらし、なにより『雨』に晒されてしまう。

 

 なにせこの『雨』と言うのが厄介だ。非常に……、とにかくヤバい。

 

 

 俺達人類は地下に穴掘ってそこに蓋して生きてきた。

 

 なぜか?

 

 そりゃあ、()()()()()()()()()()()からだ。この世界じゃ当然の常識だ。

 

 

 100年以上前、2099年の地球の地中海って所だったか?――なんでも外は海って言う馬鹿でけぇ塩水で覆われてるらしい――そこに激しい青い雨が降り注いた。

 

 まぁ一言でいえば人に当たると死ぬ雨だな

 

 なんでそうなるのか? それが分かってたら俺は貧乏人ではなかったはずだろう? ……いやあるいは生きてはいなかったのかもな……、まぁ何をするか決められて、それに対する業務上の知識だけを与えられる俺達下層民にまともな学習機会があるわけないので分からない。

 

 ただ分かるのは百年前に青い雨(ブルーシスト)と呼ばれるソレが降ってそれにあたると人間だけが死ぬ。

 

 とにかくそんな劇物が空からふざけた量で降ってきたもんで、世界は大混乱、そんな所に青い雨で出来た大洪水。

 

 そんなんで、世界人口の9割ちょいが死んだ。

 

 この一連の大災害を昔の人間は詩的なことに『新月の涙』と名付けたもんだから、俺とは育ちが違うな、俺なら『糞の小便』とでも歯茎を剥いて喚いていたことだろう。

 

 しかもこちらを殺してくる青い雨、なんと他の動植物を巨大化・凶暴化させる効果を持つし、コンピューターを寄生的に蝕むし、物質を侵食していくことがしだいに判明していく。

 

 これによって発生した巨大生物は『エンダーズ』と呼ばれた

 

 意味としては“世界を終わらせる者”だそうだ。

 

 まぁ、一説ってだけで実際どこから生まれて這い出てくるのかすら分からねぇ、だからあんな奴ら“蛆虫”か“クソ”でいいのに、なんなら世界が既に終わってるだろうに昔の人間はずいぶん気取った名付けに拘るもんだと思った。

 

 ついでにいうなら、俺はそんな100年後も元気にアメイジアの外敵をしているクソ蛆虫共(エンダーズ)を排除するため、あるいは過剰人口抑制のために野垂れ死ぬ捨て駒をやっていたが、そのお陰で災害時外に出ていたため助かったのだから皮肉もいいとこだろう。

 

 

 いや、本当によく生きてたな、エンダーズ相手に外界調査用車両で攪乱、威力偵察をしてこいだ?

 

 死ねと言いたいならそういえば俺も正々堂々クソ上官の頭に銃弾をぶち込んでやれたのに、あの野郎……、ブリーフィング前に珍しく娯楽食の甘美、しかも一番人気のチョコレートフウミをだしてきやがって、間違いなく抑制薬をしこたま盛りやがった! おかげで同僚全員がぼんやりしたYESマンだ。

 

 俺が楽しみを後に取っておくタイプで心底よかったぜ。

 

 クソ、なにが “感謝しろ、普段チョコレートフウミ風味しか食べれん貴様らは本物のチョコレートフウミの味を知らんだろう” だ。そもそも何が本物だ。

 

 チョコレートフウミが偽物だろうが、今の世で本物のチョコレートの味を知ってる奴なんて誰もいねぇよ。

 

 

 ……とにかく、昔の人間はそんな化け物に襲われ。死の雨が降る世界でそれでもしぶとく生き続けた。

 

 地下に潜み、幸運にも生き残った人類はやがてエンダーズへの対抗策と地上物資の探索回収のために、青い雨を耐える超々最高にイカす二足歩行兵器『クレイドル』を作った。

 

 そうしてこのクレイドルを使って、元居た縦穴からエンダーズを叩き潰してその穴に蓋をしてできた国家がアメイジア

 

 俺はそんな国の末端兵士の父を持つ使い捨て兵士だったってわけだな、全く由緒正しい貧乏人の家系で泣けてくる。

 

 

 クレイドルは俺の憧れだ。

 

 

 ……俺、というか下層民の這い上がる手段なんて限られてる。

 

 ロクな学もなけりゃ軍に入って、出世を目指す。

 

 少なくとも軍は能力主義だ。

 

 俺達にしてみりゃ能力を証明して軍のクレイドル乗りになるのは、俺たちに残された唯一真っ当な活路だ。

 

 上級市民のヒョロガキがへんな義務感に駆られて軍にきて、少ないパイロットの枠を圧迫しようと俺達にはそれしか活路はない。

 

 まぁ想定外なことに……、いや、嘘だ。

 

 想定内なことに俺にそこまでの能力は無かったのだが……。

 

 憧れのエリート出世街道であるクレイドルのパイロットになりたがって整備や操作を学び続けても、アメイジアの時じゃ俺にはクレイドルの随伴車兵が限界だった。

 

 

 ……だがこれはアメイジアが無事な時までは、そう今まではの話だ。

 

 

 アメイジアが上層部ごと崩壊して、生き残った奴らは俺を含め「ネスト」と呼ばれる小規模な地下都市、あるいは地上での生活を送るようになった。

 

 更にだ。

 

 アメイジアの崩壊によって流出した多数の物資や技術、それまで厳格に管理されていたクレイドルの入手も容易になった!!

 

 分かるか? 誰もがエンダーズと戦いながら不足してるだろうエネルギー基盤であるAO結晶や資材を回収する『ドリフター』となって、一攫千金を狙うことのできる時代が到来した。

 

 

 ドリフター 一獲千金時代ってやつだぜ!!

 

 

 ようやく俺の努力が報われた。

 

 

 アメイジアが滅びた後にAO結晶の管理を仕切り出し台頭してきた組織『ドリフター振興協会』

 

 そして、その審査において俺の過去の軍属の経験、機体の車庫運搬やパーツ清掃の雑用ぐらいにしか使われなかったクレイドル運転や整備の各種資格により、俺はその中の見込みがある上澄みとして協会員へと認められた!!

 

 そしてドリフターとなり、AO結晶を掘るためにはAO結晶の位置を探さなければいけない訳であるが、協会に一定の見込みを認められた俺は『クレイドル』の所有権と『メイガス』の製造権を与えられたのだ!

 

 

 ……聞くには選別試験で好成績を出した者も製造権を与えられたらしいが、俺のテストは散々だった……、落ちたモノと思っていたから本当に資格を取っていてよかった……。

 

 

 まぁとにかくだ。

 

 

 AO結晶はある種の特定困難なランダムな周波数を放ち、それを探し出すためにはそれらを解析、分析する高度な量子コンピューターを必要とした。

 

 それがメイガス、しかもただの高性能な量子コンピューターじゃない、アメイジアで発達した高性能AIが搭載されたヒューマノイド

 

 正式名称、人類双対思考型AI搭載ヒューマノイド、通称《メイガス》。 探索と生活の両方でサポートしてくれる、 ドリフターに必要不可欠な存在。

 

 その製造を許された俺は有頂天でスペックカタログに穴が空き、ページが摩耗するくらい読み込んだ。

 

 

 許可された製造型は4種「GR-α-01」「IB-α-09」「LO-β-03」「GO-β-12」

 

 この4つの型を選んだ上でそれぞれ「天候適応型」「クレイドル整備型」「対エンダーズ型」「対クレイドル型」「防衛型」の5つの中から一つ特化させた性能を持たせる。

 

 

 4つの型番には微妙な性能差はあるがほぼ変わらない、ドリフターとして重視すべきは機体の特性とメイガスの量子コンピューターを特化させ使用できるメイガススキルという特別な機能。

 

 これらを自分のできることに照らし合わせて選ぶことが最も重要になる…………とでもいうと思ったかぁ!!!!

 

 

 説明させてくれ!

 

 

 それぞれの量子コンピューターの性能の差は並んでいるが個性が光るのだ!!

 

 型番で言われても分からないだろうが失礼ながら昇順で説明させてもらおう!

 

 

 初めにGR-α-01! 明るい少女のような性格、話好きでジョークを好む部隊のムードメーカー! クソみたいな任務だろうが俺達に気をかける天真爛漫さに救われた者は多い!

 

 次にIB-α-09! 教官型メイガスと同じタイプのメイガスで落ち着いた大人の女性のような性格だが人間のクソ教官とは違って厳しさの中に愛を感じる新兵共の初恋泥棒だ!!

 

 そしてLO-β-03! 男性型のメイガスで後輩の少年のような性格、擦れた人間関係で懐にヒョイと入り込む彼を気に入らない奴はいねぇ! マジでかわいい後輩は心を癒すぞ!

 

 忘れてもらっちゃ困るぜ「GO-β-12」男性型のメイガスで頼れる兄貴のような性格! ナイスなタフガイで俺達を守るコイツになら掘られてもいいと別の意味での恋泥棒だ!

 

 

 正直に言おう、メイガススキルの選択、どの型番を選ぶか、そしてその見た目に関するカスタマイズで俺は1か月悩んだ……。

 

 悪い、嘘だ。正確にはメイガススキルは数分で決め終わり、どの型番を選ぶかは1日悩んだが、見た目のカスタムに残り時間の全てをかけて悩んだ。

 

 情けないと言ってくれるな、1回だ。一度きりなんだ。

 

 他の凄腕ドリフターは協会の依頼を軽くこなし2人目の製造権すら与えられているらしいが、俺みたいな奴が次も製造権を得られる保証はない、実質これが最期のチャンスと思ってもいいだろう。

 

 今までの人生でこれほど悩んだことはなく、完成予想モデルをモニタに保存して作成し、案が増え続けていく始末。

 

 

 43案出た内で最終選考で7案まで絞れたが、そこから難航し最終的に81案の中から選ぶ羽目になったが、最後はヤケクソ気味にその案の平均値を出力して製造の申請に向かった。

 

 

 流石になにか言われるとも思ったが、メイガスラボの受付の反応は淡白だった。

 

「まぁこれくらい悩む方も何人かいますから。えぇ申請されてから待たされてるので早くして欲しいことこの上ないですが」

 

 やはりこれくらい悩むのは普通と言うことだろう。

 

「何人かっていいましたよね? 両手の数に収まる程度です」

 

 座っているとそう言われたので、志を共にしただろう同志に思いをはせた。

 

「聞いちゃいないよ全く……、まぁ大事にしてあげてください、貴方の相棒(パートナー)になるんですから」

 

 

 完全オーダーメイドでの製造のためかかる時間は1週間ほど、完成予定日当日は受けつけ開始からラボに詰めた。

 

 

「まさか毎日意味もなくラボに来るとは思いませんでした……」

 

「いや、進捗を確認したかっただけだ」

 

「初日でその手の確認は業務上の負担なのでお断りさせてもらいましたよね」

 

「それは、まぁ悪かったぜ……」

 

「はぁ……、現在最終チェックの工程、残り1時間45分で完成予定です。終わったら知らせますので、呼ばれた部屋で設定を済ませてください」

 

 

 その言葉にばつが悪く思い、待合の席に落ち着きなく座る。

 

 

 

 

 

 そして俺はドックタグにぶら下げた小さなプラスチックの塊を弄りながら何とか心を落ち着かせていた。

 

 何かの人型ロボットを模した小さな飾り人形、親父のくれた思い出の品

 

 

 ……正直に言おう、俺はこういったロボットやヒューマノイドが大好きなのだ。

 

 

 このロボットの玩具を親父が渡したのも俺が親父にクレイドルやそれに乗るメイガスとパイロットのことを根掘り葉掘り聞いたせいなのだろう。

 

 

 クレイドルが好きだ。

 

 大きく、強く、親父を守ってくれる最高にイカしたヒーロー

 

 

 ヒューマノイドが好きだ。

 

 俺を支え、良き隣人であり続けてくれた彼らに尊敬の念を覚えなかった日はない。

 

 

 

 ――受付の番号が通知される。目の前から幾つか隣のドアのランプが点滅する。

 

 

 俺を男手一つで育てた親父がクソみたいに使い潰されるように殺されて、安易な道に逸れなかったのはロボへの憧れと、一人だった俺の隣にいてくれたヒューマノイド達への尊敬だ。

 

 

 ――目の前に想像していた通りのメイガスがいる。目を瞑りこちらの呼びかけを待っている。

 

 

 あぁ、一獲千金や楽な生活がしたいなんて本当は思ってない、……いやできるならそうしたいが……

 

 

 ――メイガスが収められたコフィンの前に俺が立つと軽快な電子音が鳴る。

 

 

「ユナイターとして承認されました。メイガスは貴方のそばに」

 

 

 ――俺はどれだけ向いてなかろうとパイロット……、ドリフターになりたいんだ。

 

 

「君の選択を感謝する。これからよろしく頼むユナイター」

 

 

 首の端子に触れると表情が切り替わる。

 

 こちらを深く見透かし、気丈さの表れた目で微笑む彼女。

 

 IB-α-09を前に俺は名乗り、彼女に名付けた。

 

 

 




オンライン限定だけど、カッコいいロボットや可愛いアンドロイドがいるよ!
PvPvEって言われてるけど対人が苦手な人でも遊べちまうんだ!
君も『SYNDUALITY Echo of Ada』を一緒にやってみようよ!
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