背中を晒す3流ドリフターはアンドロイドと一獲千金の夢を見るか?   作:ばばばばば

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ギャグと捏造設定に寄り過ぎたので供養


幕間:夢落ちる

 偽装協会員の不意打ちの衝撃で、頭を打ったのがマズかった。

 

 それでも何とかベイルアウトの操作は行えたが、意識を混濁させた俺の首は赤子のように座っていない。

 

 そんな状態で行われたベイルアウト

 

 その吹き飛ぶ座席ごと、俺の意識は刈り取られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……気が付くと俺は拠点に戻っており、しかも数日たっていた。

 

 

 それだけの時間がありながらも、バードウォッチャーを失った俺はいまだ失意の底に沈んでいた。

 

 

「すまねぇバードウォッチャー……、俺が未熟なせいで、お前……、お前を……! 俺はッ!!」

 

「君も毎度それをしてるな……、いい加減慣れろユナイター」

 

 

 慟哭しながら拠点の鉄板に拳を叩きつける俺に対し彼女は慣れたもので、先日の撃破から帰還エレベーターまでの道すがらで拾った可食植物を煮込んでいた。

 

 

「ううむ……、今日は根菜も入ってなかなかに豪華だ。……もういっその事、地上のネストから種を仕入れて家庭菜園でも始めて見るか? 」

 

「く、くそ……、なぜだ。撃破された日はアンタもあれだけ一緒に悲しんでくれたのに………!!」

 

「それは君も頭を怪我して、命からがら逃げ伸びた後だったからな、……いいのかユナイター? 君はバードウォッチャーのことばかり考えているがジャックボックスの気持ちも考えろ」

 

「うっ………、わ、わりぃJB、俺は決してそんなつもりは! お前だってアイツがいなくなって寂しいのは一緒だろ……!」

 

 

 初めは抑えていた俺のクレイドルへの憧れは、一機、また一機と破壊されていったことにより、化けの皮がはがれ初め、今はもはや取り繕うことすら辞めた……、というよりバレたといった方が正確だろう。

 

 

「いい加減食卓に着け、料理が出来たぞ」

 

「うっ……、わかった。………ん?」

 

 

 俺は促されるまま、コンテナに錆を落とした鉄板を置いただけのテーブルに着くと、いつもの青臭さで鼻先を殴りつけてくる匂いではなく、かぐわしい匂いが俺の鼻をくすぐる。

 

 テーブルを眺めれば、いつもの草を煮込んだ大鍋ではなく、なぜか小分けに出される料理たち。

 

 

「まず一皿目はレーダーサイト南西を迂回した時採集した葉物類の温サラダ。レーダーサラダと名付けよう、味付けは自家製の塩と食用油、採集した柑橘類で簡易的に作ったドレッシング。特に葉物のあく抜きには気を使った。比較的雑味は少ないはずだ」

 

「そういえば逃げ帰る時色々拾ってたな……」

 

 

 というか塩? 海岸地点の調査とかした時、なんか一緒に塩水汲んでたけど、え? 俺のメイガス塩を自作してんのか?

 

 

「途中の木立にいた時に仕留めたリスのカリカリ焼き……、は昨日食べてしまったので今日は少し質が落ちるが、その骨を使って出来る限りの旨味をスープに移し、塩で味を調え、これでも味が薄いのでレーダーサイト脇を通った時に採集したキノコのダシを合わせ、具材にはカブに似た根菜を使ってみた。二品目、リスのブイヨンと茸ダシのカブもどきスープ」

 

「……え?」

 

 

 なんか昨日リス食ったけど、逃げ帰る途中でリスさん見つけて、俺が指さした瞬間投石で殺されて、拠点に帰ったその日の食卓にのぼったけど! 可哀そうだけど奪った命だから食べて美味かったけど!!

 

 

「せめて3皿……、メインはなるべくたんぱく質の多いものを……、そう考えていたがここで私は行き詰った。……許してくれ」

 

「いやすごいなアンタ、十分すぎるだろ……」

 

 

 やべぇぞウチのメイガス、俺がキッチンを改築しなさすぎたせいでとんでもねぇ領域に踏み入り始めてるぞ。

 

 

「だから普段君が食している合成エネルギーバー、……悔しいがこれを仕方がなく使った。たんぱく質や糖質も加えられているこれを砕いて加水して薄く延ばし、たまたま見かけた帰還エレベーター前のタンポポの葉を工業用ヒートガンで乾燥、ハンドメイドの石窯で焼き上げ、細かく砕いてお茶に似た風味と香ばしさを加えた3皿目、タンポポのティークッキーだ」

 

「出てんじゃん三皿目……、今のはじゃあ何の謝罪だったんだよ、もう俺が謝りてぇよ」

 

 

 なんか最近、探索中にお花とか見てるなとか思ってたけどそういう? あの都市遺跡の倒木の先端に力強くも凛々しく咲き誇るお花を一緒に見てた時もそういうことなのか?

 

 

「君が草鍋を食しているときのあの牛の様な無心の表情を見た時から、いつか地上で取ったものだけで君の舌を唸らせたかったんだ……」

 

「ん゛う゛ぉ゛ぉ゛~……」

 

 

 唸る唸る。唸り過ぎてもう俺いま牛みてぇな声しか出せねぇよ。

 

 

「ウチのメイガスすごすぎない……?」

 

「……いやこれは手前味噌だ。このレシピはネットワーク上に公開されている。有志のメイガス達がアイデアを出しあって作られたレシピだ」

 

 

 え? そんなんあるの?

 

 

「あまりにもキッチンを作らないドリフター達、そして懸命に仕上げた草鍋に対して放たれる不満や暴言。この不条理を看過できないと業を煮やしたメイガス達が日夜地上と拠点付近で採集できる素材で試行錯誤を繰り返し、調理スキルのデータをアップデートし続けて出来た料理だ」

 

「わ、わりぃ……」

 

 

 ……やっぱいるよな!? キッチン改築しないドリフター!!

 

 

「とくにこの初期に提案されたティークッキーは素材の簡易さとアレンジのしやすさから現在メイガスレシピランキング35位に位置してる」

 

 

 メイガスレシピランキング!?

 

 

「他のメイガス達を見習わねばいかんな……、私もいつかランキングに乗るようなレシピを提案したいものだ……、やはり、調味料の種類が致命的か……。上位ランカーと戦うには、作れば今の環境を打ち崩すのではと噂される新たな発酵調味料の開発を……」

 

「じ、上位ランカーもいるのか……、凄まじいなメイガス……」

 

「おっと、悪いなユナイター、料理が冷めては元も子もない、食べてみてくれ」

 

 

 俺は激しく動揺しながらもその料理たちを口に運んだ。

 

 ……味の評論は長くなることこの上ないので、止めておこう。

 

 

「満足してくれてなによりだユナイター、これでキッチンを作る気にはなったかな?」

 

 

 ただ一つ分かったのは――

 

 

 

 多分これ、キッチンはもう作らなくてもいいなと思える程美味かったことだ。

 

 

 

 

 余りの美食に俺の意識は天上に上るような気持となっていく。

 

 

「ユナイター、ユナイター……!」

 

「う、うまい……」

 

「起きろユナイター!!」

 

 

 俺が意識が覚醒した時、そこは岩場に囲まれた暗い場所だった。

 

 

「……俺のレーダーサラダは……?」

 

「目覚めたか! しっかりしろユナイター!」

 

「アンタの作ったスープとクッキーは……、いや、なんでもねぇ……」

 

 

 混濁した意識が定まってくると俺は彼女に状況を確認する。

 

 俺が不意打ちを受けてベイルアウトをした後、意識を失ったままの俺を彼女が担いで人狼協会員から身を潜めていたとのことらしい。

 

 

「……あの人狼協会員は私達を東のレーダーサイト側に逃げたと思い、向かっていった。今現在私達は裏をかいて西の変性樹木が生い茂る青い水の沼地に潜んでる。……しばらくはここで体を休めていろ」

 

 

 俺は彼女の言葉を聞きながら、渋面を浮かべる。

 

 

 甘かった。……といえばそれだけ。

 

 

 俺達協会員は同業者であって、仲間ではない。

 

 何度も彼女から言われていたその言葉を無視した自分が悪かっただけだ。

 

 

「……ユナイター、先ほどは運が悪かった……、それだけで済む話ではないが、それでも我々は生きている」

 

「バードウォッチャーはお陀仏になったがな、……あんな情けない死に方じゃアイツも浮かばれねぇ」

 

 

 本当なら、夢の中のように泣き出したい気分である。

 

 それでもこの緊急事態、彼女の前でそんな情けない様を見せるわけにはいかない。

 

 

「ユナイター……、君は怒るだろうが言わせてくれ、君が生き残れたこと以上に彼らクレイドルにとって望むべきことはなかったと思うよ」

 

「……いや、怒らないさ」

 

 

 彼女の考えは俺にとってあまりに都合のいい考えだ。

 

 俺を慰め、自分を赦せる考え。

 

 

 だが俺はそうは思わない。

 

 

 あれだけ強靭で、素早く、高機能な体を持つ彼ら(クレイドル)の性能を俺が十全に引き出したことなどないのだから。

 

 それでは相棒ではない、あまりに不平等、彼らに比べて俺という乗り手が余りに見劣りする。

 

 そんな負の感情を見せることすら彼女達に申し訳ない俺は、彼女の言葉に曖昧に頷いた。

 

 

「情けない顔をするな、一歩一歩……、そうだろユナイター? 撃破はされたが輸送任務は達成した。全くの収穫ゼロという訳じゃないさ」

 

 

 本当だったらアンタみたいな、いい奴に似合うドリフターはもっとカッコいい奴なんだろう。

 

 きっとソイツは一流と呼ばれるぐらいの凄腕で、戦いの最中にジョークすらいえるぐらいにアンタをリードして、拠点での苦労もさせない程しっかり稼いで……。 

 

 

「一獲千金、一流ドリフターってか?」

 

「あぁ、そうだ」

 

 

 彼女に相応しい、そんな誰かの姿を想像して口についた言葉、それを彼女はどう解釈したのか、俺を見ながら頷いた。

 

 

 分かってはいたが俺は別に一流も一獲千金もどうでもよかった。

 

 それでも同じ言葉をまじないみたいに繰り返すのはただ、俺がアンタたちの横に居たいから。

 

 きっと聞けば二つ返事で隣にいてくれるアンタ

 

 だが……、俺はどうしても本当の意味でその横に立ちたい。

 

 

 俺の夢のオチはそんな話。

 

 

 俺は今まで……、いや今も、大言壮語を語って夢を追いかける振りをしてアンタの隣にいる。

 

 死ぬ覚悟なんていつも嘯いていたが、結局のところ、俺は死ぬ最期の時までアンタに見限られなきゃそれでよかった。

 

 そんな甘い考えで、地上をお散歩、頭の中お花畑で生きてきた。

 

 

 ふざけるなよ、ドタマかち割るぞこのド三流め。

 

 

 そんな考えじゃ俺はいつか死ぬ、それはどうでもいい、問題は彼女を俺のクソみてぇな夢と心中させてしまうことだ。

 

 

 

 腕が足りねぇくせに強くなりてぇなら、何かをえり好みできるなんて出来ない。

 

 

 甘さなんて、いの一番に捨てなきゃならねぇ余分だ。

 

 

「ユナイター?」

 

「……とりあえず待つしかないなら、なんか腹に入れて備えるか」

 

 

 目下、俺と彼女がまず生きて帰らなければいけない。

 

 

「ここに来る前に、リスを仕留めた。動物性たんぱく質は貴重だぞ」

 

「……リスのカリカリ焼きか」

 

「そうだな、串にでも刺して過熱してみよう、プリインストールされているサバイバル情報によると上手く解体すれば美味らしい、皮をはいで……、膀胱を傷つけないように捌いて内臓を掻く……、こうか……?」

 

 

 さっきまで生きていたリスがバラバラにされ、略奪者の都合のいい形に揃えられていく様子を見る。

 

 小動物なんて見かけない地下ではなかなかにお目にしない光景と言えるだろう。

 

 だが、この光景、この行為は俺が今まで生きた中で本当に見たことは無かったのであろうか?

 

 

「……全部食って生きてやる」

 

「そうか、脳みそも可食部位らしいがどうする?」

 

「……食べる」

 

「よしきた。任せろ」

 

 

 生きるために他者を喰らう、この世のいたるところで行われている自然の摂理。

 

 火に炙られるリスを見ながら、俺は避け続けていた選択について再度考える。

 

 

 この地上でドリフターとして生きるために俺はどうすればいいのか。

 

 避けられない悪意に俺がどう立ち向かうべきなのか。

 

 

 この地上で、良心や矜持なんてものは何の役にも立たないどころか、邪魔である。

 

 降りかかるなら抵抗するなんて腑抜けた考えすら俺には贅沢だ。

 

 

 奪われる側でいるな、奪う側になれ。

 

 歪んでいようが、それがここのルールで、強さだ。

 

 

 答えに対する覚悟を固めた俺は油がはじけるアツアツの脳みそを啜った。

 

 

 




新機体も続々追加予定!
シーズン2も4月到来!!
この流れに君も乗り遅れるな!! 『SYNDUALITY Echo of Ada』発売中!!
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