背中を晒す3流ドリフターはアンドロイドと一獲千金の夢を見るか?   作:ばばばばば

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もう俺のその手は汚れてるというのか

 ドリフターとして初めての出撃。

 

 

 そこから得た報酬

 

 他のドリフターからみたらセコい稼ぎと言われるかもしれないが、小市民が一日に稼げる額とは言い難い。

 

 廃タイヤに腰掛けながら、そんな小金を前にして俺は唸っていた。

 

 

「初めての稼ぎ……、ここは少し祝杯ぐらい……、ってそんな余裕ねぇんだよなぁ、とにかく拠点の整備が優先か……」

 

「そうだなユナイター、今日はスシで派手に祝おうと言い出したら、流石に小言の一つでも言うところだった」

 

「んな、高級娯楽食なんて頼むか、適当な粉末ドリンクで乾杯と思ってたぐらいだ」

 

「……良いんじゃないか? 娯楽食の中では安上がりな部類だ。そのくらいで目くじらは立てんさ、持ってきた軍払い下げレーションのアクセサリにもそれくらいついてただろう?」

 

「それは真っ当なレーションの話だ。この超格安品、俺達末端愛用のブツにそんな上等なもんはついてない、ついてくるのはこのお馴染みの感情抑制サプリだぜ! ガハハ」

 

 

 ドリフターになる前のなけなしの貯金は日々目減りするばかり、ようやくこれからドリフターとして稼ぎ始めたんだ。

 

 軌道に乗るまではそもそも何か贅沢をしようという考え自体するべきではない。

 

 

「やること考えてたらそんな贅沢も言ってられねぇよ、アンタには悪いがな」

 

「私に? 君の話だろう」

 

「そりゃ乾杯っていったら、一人でやるもんじゃねぇだろ、JBにもいいオイル差してやりてぇが悪いがまだ踏ん張ってもらうぜ」

 

 

 俺の言葉の何がおかしいのか、少し驚いた表情を見せる彼女は直ぐに振り返ってその顔を隠してしまう。

 

 

「……そうか、じゃあ祝いはひと段落してからだな」

 

 

 まぁそして話は巻き戻るのだが

 

 

「つっても拠点のどこから手を付けりゃいいのかって話だぜ」

 

 

 俺は立ち上がると、汚れたケツを叩きながら辺りを見回す。

 

 彼女の叩けば粉が舞い散る睡眠設備も何とかしたいが、JBの修理を行えるプロダクトスペースやピットもどうにかしないといけないだろう……。

 

 

 

「初めは天井と床の片付け、スペースを空けなければ設備も置けない。片付けたらまずクラフトラインを一つ作ってからだな」

 

 

 そんな風に悩んでいると、彼女は理路整然と俺の疑問に対する回答を教えてくれる。

 

 

 なるほど、たしかに施設整備に必要な建材を作るにはクラフトラインは必須だ。

 

 たしか初めての協会の依頼を完了させると、協会から紹介されたアメイジア旧政府の奴らが

 

“ネストのドリフターなら今後我々の必要とする物資の納入を依頼することになるだろうからクラフトラインを作れ”

 

 そんな内容のメールが高慢ちきな言葉で修飾されて送られてきたのを覚えている。

 

 

「資金集めるなら地上で稼いだ物を保管する倉庫の場所を決めるべきだ。他にもネストからの支援物資を受け取れる搬送用エレベーター、それにクレイドル整備のためのピット設備。これらは作るべき優先度が高い設備だろう」

 

 

 たしかにどれも稼ぎに直結するモノだ。

 

 

 倉庫は資材をため込む俺達の財布だ。

 

 ドリフターの中には拾った素材を加工してから売って、大金を稼いでる奴もいるらしいなんて話も聞いている。

 なんでも安い素材でも数を集めて、増設したクラフトラインをフル稼働で回せば莫大な利益になるとかなんとか、何が作り易くて高く売れるか、後で調べた方が良いだろう。

 

 

 支援物資のエレベーターも貴重な収入源だ。

 

 ドリフター達のAO結晶を当てにしてネストからの支援物資が届くらしいが、その肝心のエレベーターが無けりゃなにも貰えない、作って色んなものを載せられるように改築するのが遅れちまえばそれだけ損をし続けることになる。届く品はマチマチらしいが、いらなきゃうっぱらえばそれだけで儲けだ。

 

 

 ピット設備はクレイドルの整備には欠かせない。

 

 クレイドルに様々な改造、……する程の腕は俺にゃないが、……いや、JBの余剰スペースにセーフポケットを追加で取り付けるぐらいはできるか? 絶対に失いたくない大事な荷物はそこに入れていざとなったら抱えてでも……、まぁそんな状況で俺が生きてるか分からねぇがやれることはやっておくか。

 

 

「そもそも設備を作るのにも金が要るが作らなきゃ稼げねぇ……」

 

「君の生活の足しになる様に私の方も素材の端財、戦闘ログ、出来る遣り繰りは全部やって還元しよう、……平たく言えばへそくり貯金だな」

 

「それだと俺がそのヘソクリをかすめ取る甲斐性なしみたいじゃねぇか……」

 

「だったら貯金箱でも作ってもらおうか、立派なのを頼むぞ」

 

 

 まぁ甲斐性なしでおおよそ間違えはない、彼女にぶら下がってる俺はヒモ野郎みたいなもんだしなぁ……。

 

 

 俺は貯金箱もなるべく早く作らねばいけないと肝に銘じた。

 

 

 

「後は今の懐具合を鑑みて自由にやればいいさ、設備の中にはメイガスの性能を向上させるものもあるが、君の生活スペースも大切だ。ここにはまともなキッチン、衣類の清潔を保つクリーニングルーム、リラックス効果を促す音響設備もない」

 

 

 別に俺の飯だの寝床などは後回しでいい、彼女の性能が向上するなら俺の生存率に直接つながるのでそちらの方が重要なのは明らかだろう。

 

 

「だいたいの優先順位は整理がついてきた。じゃあまずは床、それに壁と天井だな」

 

「あぁ、壁や床の改築の初めには軍手を使うからな、外で見かけたら優先的に拾っておくべきだ」

 

あれ(軍手)を毎回使うのか……」

 

 

 いや、メイガスの服装にグローブ付きのやつもあるし、なんならメイガスの手は軍手がケツ拭く紙に思える程丈夫なはずじゃねぇのかよ。

 

 

 

「ユナイター?」

 

「分ってる! そういうものなんだろ、分ってる!!」

 

「よろしい」

 

 

 こうして俺達は次の出撃の機会を待つ間、広さだけはある拠点、その中のプロダクトスペース内の廃材を片付け、根を張った草木を引っぺがして処分した。

 

 1日がかりの大仕事であり、自分の重量ぐらいであれば軽々と持ち上げる彼女がいなければ1週間はかかっていた重労働だっただろう。

 

 

 終わったころの俺は疲れてもう動く気力すら湧かなかった。

 

 

「ユナイター、作業の中で可食植物を採集して、調理してみた」

 

「メイガスってのは本当にそつなくなんでもこなすなぁ……」

 

「調理技術がプレインストールされているだけだ」

 

 

 私生活の面ですら彼女に頼りっぱなしは情けないが、すでにクタクタに疲れた俺は腹がとても減っている。

 

 机に見立てたコンテナに彼女が大鍋を置いたのを見て、俺はすぐさまそれをのぞき込む。

 

 

 

 そして目の前には草が入った鍋があった。

 

 

 

「どうだ?」

 

「草だ」

 

 

 味気ない携帯食とはまた違う受け入れられなさがあるが……、食えるだけありがたいと思い口を付ける。

 

 

 

「どうだ?」

 

「これを食んだ牛はきっと美味しい肉になるんだろうぜ」

 

「正確な味の評価を聞きたいんだが」

 

 

 

 メイガスも一応食事をとることは可能だ。

 

 

 俺は何も言わずもう一つあったクッカーに鍋の中身をよそうと、それを彼女へ突き出した。

 

 彼女はそれを無言で受け取り、一口食べたのを見て逆に俺は問いかける。

 

 

「どうだ?」

 

「草だ」

 

 

 彼女の渋い顔を見て、俺はつい吹き出す。

 

 

「ブフっ……、クク、だからそういってるじゃねぇか!」

 

「調理機能もインストールされてはいるが、……サバイバル機能との併用はまだまだアップデートの必要性を感じた」

 

 

 ドリフターなんて言ってもこんな冗談みたいな極貧生活が現実だ。

 

 太く短く華々しくなんて人々が思ってる想像と真逆の生活で笑っちまう。

 

 

 まぁ、だが悪くない。

 

 

 まともな乾杯の一つも出来ねぇが、こうしてアンタと横並びで前へ進むこの感じは悪くない。

 

 

「草鍋が嫌なら稼げよユナイター、私に甲斐性ってやつをみせてくれ」

 

「いつかもっと美味いもんで祝杯を挙げられるくらいにはなりてぇな」

 

「そうだな、草を食べて丸々太ったウシを使ったスキヤキを食べさせて欲しいものだな」

 

「おいおいそんな高級品……」

 

「だめか?」

 

 

 可飲水が入ったマグカップを差し出しながら、そんな風に問いかけられてこられたら、俺にもう逃げ場はない。

 

 俺はその水を半分だけクッカーの蓋に注いで、マグカップを彼女に突き返す。

 

 

「……だぁッ!! 分かったよ!! いつかスシでもスキヤキでも、なんでも食わせるぐらい稼いでやるよ!! 夢は一攫千金! 一流ドリフターだ!!」

 

「フフフ、期待しておこう、では乾杯、……これが水杯だろうと君となら祝杯だ。きっと上手くいく」

 

 

 その期待と信頼を含んだ目で見られちゃ、まるで自分が本当に一流のドリフターになれる何て思い上がっちまう。

 

 クソ……、期待なんて面倒なことこの上ないのに、アンタのそれはどうしても裏切りたくねぇ……、応えたくなる自分がいる。

 

 

 ドリフターで一獲千金……。

 

 

 遠い道のりだが、まずは一歩、とりあえずは明日の出撃に備えて、俺は草鍋をかき込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の二回目の出撃

 

 

 気合は十分、緊張は……、まだ二回目だ。……多少はある。

 

 

「正直まだ慣れねぇ、ハンカチは持ってるよな?」

 

「もちろん、ちゃんと洗いたての奴があるぞ」

 

 

 だがそれを口に出す余裕くらいはできた。

 

 

 幸運なことに地上へ向かうエレベーターは前回からかなり近い、知ってる場所と言うのはそれだけで俺に多少の余裕を与えてくれる。

 

 

「前と比べていい動きだ。ユナイター」

 

「知ってたか? アンタに比べりゃ耳クソ程度だが、なんと俺にだって学習機能ってヤツがついてるんだぜ」

 

「よく知ってるさ」

 

「……マップを見せてくれ」

 

「了解、今回の帰還エレベータ―は前回より少し遠い……、都市遺跡付近だな」

 

 

 日によって稼働しているエレベーターはマチマチだ。

 

 好きに行き来をさせてくれというのが本音だが、地上と地下を繋ぐエレベーターはドリフター以外も使用する最重要施設。

 

 日々の点検だってあるし、ドリフター以外の奴らだって使う、しかも一回の使用にも馬鹿見てぇな電力を消費する。

 

 その電気を生み出すためのAO結晶を持ってくるドリフターに優先的に使わせてくれるとはいえ、全部が自由にゃならないというわけだ。

 

 

「ユナイター、チェイサーだ」

 

 

 それに万が一にでも、こいつらを地下に入れたら事だ。

 

 

 帰還時にエンダーズに襲われエレベーターに乗り込まれてしまったドリフターの話を聞いたことがある。

 

 

 もちろん地下で扉を開ける前にエレベーター内でエンダーズを除去する準備はされているが、余計な手間をかけさせればドリフターの評価に傷がつく

 

 

 だからもしもエンダーズにエレベーターへ乗り込まれたら下の奴らにどやされる前にドリフターは死に物狂いで仕留めなければいけない。

 

 まぁ乗られた時点で叱責は避けられないのだが……。

 

 俺達を地上に上げてくれる裏方にそっぽ向かれると何かと不味い、俺も他人ごとではないので気を付けなければいけないだろう。

 

 

「コイツは左腕で仕留める」

 

「……了解、……いけるな?」

 

「あぁ」

 

 

 そして閉所で銃弾をまき散らして下の奴らに渋い面をさせないためには近接でエンダーズを仕留めなければいけない訳だが、そういった格闘戦で使われるのがクレイドルの左腕に収納された機械鋸(チェーンソー)

 

 腕部の負担を軽減させながらも効率的に敵を両断する強力な武器だ。

 

 地上じゃドリフターは弾の節約、音を出さないため、あるいはその方が早いと果敢に敵へ肉薄する。

 

 買い取った戦闘ログじゃ、慣れたドリフターが道すがらの草を刈り取る様にチェイサーをなぎ倒していた。

 

 

「敵はこちらに気づいていない、背後からの攻撃を推奨」

 

「了解」

 

 

 いずれ俺もログにあったドリフターのようにならなければいけないことを思えば、この挑戦は必要な戦いだ。

 

 徐々に近づいていく彼我の距離、もうすぐ敵の後ろとなった時、俺はブースターを吹かせながらエンダーズへ背後から切りかかる。

 

 

 速度が乗った状態での強烈な二連撃、一撃目で、その腹に響く衝撃を受けながら、素早く切り返す。

 

 俺がどんなにがむしゃらに動かしても、その雑な指令を受けて彼女とJBのサポートによりチェーンソーは効率的な動きで敵を捌く。

 

 

「ユナイター、もう一度だ!」

 

 

 彼女の言葉に俺はもう一度目の前にいる敵へ鋸刃を振りかぶる。

 

 振り下ろした左腕。

 

 エンダーズの強靭な骨格が拉げるのを鋼鉄越しに俺は感じた。

 

 

「……やれたな、ハハッ……、案外と何とかなるじゃねぇか」

 

 

 目の下には拉げて潰れ、身じろぎすらしていないチェイサー。

 

 あれ程に恐れていたチェイサーを俺は一方的に切り伏せていた。

 

 

「……とはいっても3度目の近接攻撃を振る必要はなかったな」

 

「……念のためだ。雨の日のエンダーズは当たり所が悪いと簡単に死なねぇらしいぞ」

 

「天気は快晴、全く清々しいなユナイター」

 

 

 俺が見たログの中でドリフターはチェイサーの正面でもビビるどころか、都合がいいと言った雰囲気で頭を叩き潰していたもんだが、俺にはまだその度胸はない。

 

 

「今度は敵の弱点を狙えるようにだな」

 

「手厳しいぜ全く」

 

 

 まずは一つ一つ、彼女が見てる前で情けねぇ姿は見せられねぇ

 

 

「だが、よくやったユナイター」

 

「……あぁ」

 

 

 ……まぁそれは今更遅いが、それでも俺はコイツに見合うような一獲千金のドリフターってヤツを目指さなきゃいけない。

 

 

 俺は帰還エレベーターを目指し、JBを走らせた。

 

 

 

 

 

 

「小雨だ。敵の脅威も上がる。気を抜くなよ、同じようにやれば問題ない」

 

「了解」

 

 

 道を進み、新たなエンダーズを見つけると、俺はより効率的な戦いを模索する。

 

 

「次は急所を抉ってやる!」

 

 

 小高い丘に立つ俺は、今日何体目かのチェイサーに狙いを付け走りだしていた。

 

 

 その時である。

 

 

「ユナイター、クレイドルがいるぞ」

 

「なに?」

 

 

 自分が丘を下ってチェイサーへ近づくのとほぼ同時、横合いから別のクレイドルが同じ相手を標的にしていた。

 

 

「落ち着け相手も協会員、ここに出ているということは、おそらく君と同じルーキーだ」

 

 

 同じ距離、同じ速度で標的へ向かうクレイドルは、俺の目にはゆっくりと動いてるように錯覚する。

 

 

「わりぃがドリフターパスの評価だって馬鹿にはならねぇ、早いもん勝ちだぜ」

 

 

 エンダーズの討伐はドリフターに課せられたもう一つの仕事である。

 

 倒せばそれだけ評価され、ネストからも補助が出る。

 

 それを思えば俺ははやる気持ちのまま前に出て左腕を振りかぶり敵を切った。

 

 

「食らいやがれ!」

 

 

 俺の雑な操作だろうと、JBと彼女が全くズレなく俺の意思を反映してくれる

 

 

 肉を切り裂く感触、しかし、どうやら向こうも同じように一撃を加えているようで、俺は先にエンダーズを仕留めるため二度目の刃を振りかぶった。

 

 

「待て! ユナイター!!」

 

 

 

 

 こうなってしまったのは些細な違いだった。

 

 相手は俺より思い切りが良く、一度目から間を置かず素早く二度目の斬撃を繰り出した。

 

 

 そうだな、一度目が同時なのだから素早く二撃目を振った相手のクレイドルは俺より優秀なドリフターだったんだと思う。

 

 

 相手のドリフターは俺より先にチェイサーを仕留めながら前進し、腰部を捻ってクレイドルの背面、その弱点を俺に向けた。

 

 

「あ?」

 

 

 俺の焦りのまま動かした操作は、チェイサーではなくクレイドルの背面へ刃を振り下ろし、その攻撃がコフィンへと直撃する。

 

 

 何かを潰し、切り裂く感触、機械越しでも伝わるチェーンソーの回転は俺の全身へその叫びを伝えた。

 

 

「退避しろ!!」

 

 

 なにか彼女が叫んでいる。

 

 

 その言葉を理解する前に目の前のクレイドルは爆散し、その衝撃でコクピット越しに俺を殴る。

 

 

 だがその衝撃以前に俺の頭は真っ白だった。

 

 

 呆然と今起きた出来事を理解しきれずに動けずにいた。

 

 

「――――! ――――!! ユナイター!!」 

 

 

 俺がようやく耳から音の意味を拾えるようになった時、目の前には焼けた鉄の塊しかなかった。

 

 

「わりぃ、聞こえてる」

 

「ユナイター、これは不幸な――」

 

「……相手は? あのクレイドルはどうなった?」

 

 

 

 どうなった? 目の前に答えがあるというのに、俺はそんな間抜けなことを聞いた。

 

 

「……ベイルアウトは普段行わない手順が必要だ、習熟するには事前訓練が――」

 

「いい、機体ごと爆発したのは見てた。ありゃダメだ」

 

 

 

 死ぬ覚悟はしていた。

 

 

 

 地下にいた時も、自分の命なんて何の価値もなくて、吹けば消えるほどの軽い存在だって分かってた。

 

 

 殺す覚悟もしていた。

 

 

 俺は軍属だった。直接の攻撃に参加することはなくても外の反政府組織への攻撃作戦にだって派兵されていた。

 

 いつか理不尽に直面した時、銃を抜いて抗う覚悟だってあった。

 

 

 だけど俺はやっぱり間抜けだ。

 

 

 自分の無能で仲間を殺すことになるなんて夢にも思わなかったんだ。

 

 

「……ユナイター、これは事故だ」

 

 

 アンタはそう言ってくれるだろうな。

 

 だが、事実だけで表すなら俺の振るった鋸刃が協会員ごとクレイドルを破壊した。

 

 

「それを決めるのは俺じゃない、……帰還エレベーターに向かう、とにかく協会へこの件を報告する」

 

「君が気に病む必要は――」

 

「ナビゲートしてくれ、……頼むよ」

 

「……了解」

 

 

 それから俺と彼女の間には必要最低限の会話しかせず、帰還エレベーターへの道行は何の障壁もなく、俺達は地下へと帰還した。

 

 

 

 

 

 俺は機械的に報告を行い、自分の行いを事実そのままに協会職員に伝えた。

 

 

 

《協会員を撃破した? はぁ、これだから視野の狭い新人共は……》

 

《いいか? これは事故だ。お前みたいな奴に倒されるようなドリフターだろう? 新人がある程度ふるいにかけられるのは織り込み済みだ》

 

《……罰則? 面倒なヤツだな、ドリフター同士の小競り合いなんていちいち仲裁する程、我々は暇じゃない、お前達下っ端協会員はAO結晶を集めていればいい、それ以外に期待もしていない》

 

《あぁ、そうそう、しばらくは要注意協会員となるが、とにかくAO結晶を集めれば協会はそれでかまわない、すぐ普通の協会員に戻してやる。もう付き合ってられんから切るぞ、全くこちらは忙しいというのに下らない……》

 

 

 

 3時間待たされた後につながった通信。

 

 俺はたった数分も満たない会話の後、そのまま通信を切られる。

 

 

「ユナイター、今日は、その……」

 

「大丈夫だ。協会員として働けばお咎め無しだとよ」

 

「そうではない、そうではなくて君の方の心配だ……」

 

「まぁ、色々あった。確かに疲れてる。そうだな、今日は休ませてくれ、アンタも最適化の為にコフィンで休息をとった方が良い」

 

 

 俺は彼女といることが出来なかった。

 

 目も合わせないまま、ただっぴろいガレージの隅に置かれた自分の寝床へと向かう。

 

 

 

 

 寝床の中、疲れ切っているというのに、眠気は一向に来なかった。

 

 

 体が震えて仕方がない。

 

 

 殺した協会員への罪悪感? それもある。だが違う。

 

 彼女の期待に応えられないこと? あぁ、確かにこれはキツイ、こんな無能にさえ彼女は責めない、だけどこれもどこかズレてる。

 

 自分への失望? そんなのは今更で、何度目かぶりに今日それをまた更新しただけだ。

 

 

 ダメだ。これ以上考えたらダメだ。

 

 

 このない交ぜになった感情に名前を付けて理解したら俺はもう立ちあがれない。

 

 

 眠れ、眠れ、いいから眠れ。

 

 そしてまた次も稼げ、結晶を掘って、まずは協会員へ戻らなければいけない。

 

 ドリフターとしてやるべきことは山のようにある。

 

 

 俺は、懐からピルケースを取り出し、手に振りかけるとそれを飲み込んだ。

 

 

 もう二度とこんなもの飲まないと思っていた感情抑制サプリ。

 

 使用期限なんて10年以上経ってとうに切れているだろうそれを飲み込む。

 

 

 

 意識の混濁の中、俺は瞼を閉じた。

 

 

 

 




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