背中を晒す3流ドリフターはアンドロイドと一獲千金の夢を見るか?   作:ばばばばば

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弱さはきっと選べない、強さはたぶん選ばない

アメイジア事故調査委員会*1だぁ~? やる訳ねぇだろんな七面倒そうな依頼」

 

 

 B級ライセンスと同時に送られてきた怪しさ満載の依頼を一目見て、俺はその依頼文をすぐさま閉じた。

 

 

「いいのかユナイター? 君もアメイジア崩壊のことは気にかけていたようだが、……今調べたが詐欺の類でもない、公に調査隊を設立して真相解明に乗り出しているみたいだぞ」

 

 

 俺はチラリと彼女を見た後、大きなため息をつく。

 

 

「まぁ気になると言ったら嘘になる。あの時俺はアメイジアから離れていた所為で、何が起きたなんて人伝でしか知らない、その話も雲を掴むような話ときたもんだ。気になるのは事実だ。認めるぜ」

 

 

 ならばと言いたげな彼女の機先を制し、俺はもう一度依頼文をモニターに映して指を指す。

 

 

「命がけのクセに報酬の一つも払わねぇってのはどういう了見だっ! お代は真実ってか!? んなもん今日のメシの種の一つにもなりゃしねぇだろうがよ!!」

 

 

 俺も元アメイジアの人間だ。なぜアメイジアが崩壊したのかは気になる……、気になるのだが、それをタダでやれと言われたらトサカにくるのは当然だ。

 

 

「フム……、しかし任務中は特別仕様のボウイラビットが無償で貸与されるようだな」

 

「グッ……、それはちょっと惹かれるが……」

 

 

 クソ、俺があえて見ないふりしていた心揺さぶる点をピンポイントに当ててくるとは……!

 

 

「そういう知的好奇心を満たすなんて上流階級の娯楽を嗜む暇は貧乏ドリフターにはねぇ! 俺は今忙しいんだ」

 

「まぁ、確かに無報酬というのは、要求される危険度と釣り合いが取れていないのは確かだ」

 

 

 俺はモニターの前に座りなおし、腕を組んだ。

 

 そうだ俺は忙しい、B級ライセンスを取得した時、協会は俺にとんでもないものを送ってきたのだ。

 

 俺は今、この問題を解決しなければいけない。

 

 

「もう夜も遅いぞ、流石に根を詰め過ぎじゃないか?」

 

「いいや、アンタの時は1か月たっぷり悩んだし、初めて権利を貰った日は三日徹夜した」

 

 

 

 今俺のライセンスに付与されているのは“メイガスの製造権”

 

 

 そう、メイガスの製造権*2である!

 

 

 まさか俺が再びこれを手に入れることになるとは夢にも思わなかった………

 

 

「それを貰ってから君の睡眠時間が明らかに減っている。いい加減にもう寝ろユナイター」

 

「普段の仕事の手は抜いてねぇ」

 

「……それが不気味なんだ。クマを浮かばせ、目を爛々と光らせながら地上へ向かう君は明らかに不健康だろう」

 

 

 どうやら心配させていたとは情けない、今日はあと少しだけ考えて切り上げようと思いモニターに向かう。

 

 

「はぁ……、ユナイター、君はまだどの型のメイガスにするかも決めて無いじゃないか」

 

 

 それは仕方がないだろう、初めの一人なら丸一日で決められるが二人目となれば様々な可能性を考慮しなければいけない、掛かる時間が指数関数的に増えるのは自明の理だ。

 

 それに、俺が悩んでいるのは実を言うと、それよりももっと手前の話なのだ。

 

 

「ユナイター、GR、IB、LO、GOの4つの型の基本性能に大きな差はない、重要なのはどのシステムタイプにするのかではないか?」

 

「それもなぁ……、悩むんだよなぁ……!」

 

「むしろ強引な手は逆効果か……、ならば君が良い選択を選べるようサポートしよう」

 

「俺が悩んでるのは、そういうことじゃねぇんだが……」

 

「ええい、これでは埒が明かないぞ」

 

 

 俺の煮え切らない態度に彼女はため息をつくと、自身の胸に手を当てる。

 

 

「まず、ユナイターが私に選んだメイガスタイプは防衛型、少なくとも二体目の選択肢からは除外されるな」

 

「それは……、いや本当にそうか?」

 

「そうに決まってるだろう」

 

「二人目のメイガスを選ぶ時、別のものを選ぼうと思っていたが、別にそんなルールないんじゃないか?」

 

「君は何を言ってるんだ? 不合理すぎるだろう……、一度頭の中を整理しろ」

 

 

 

 彼女が俺の後ろからモニターに手をかざすと簡易な図*3が現れる。

 

 

「単純な比較となるが……」

 

 

 彼女がそう断りを入れて、表から一つづつ解説をしていく。

 

 

「それぞれに特徴があるが、まず協会員として活動する上で君に勧めたいのは天候適応型だ。マップ上で雨雲の予測が可能で、メイガススキルのシェイドフィールドは青い雨を弾く、AO結晶の掘削に特化したまさに君のようなドリフターにうってつけのシステムタイプだ」

 

 

 彼女は説明を省いたが天候適応型はAO結晶のサーチ範囲も1.2倍、さらに結晶の大きさに加えてその濃度も分かる優れもの、協会員として活動するなら押さえておきたいとの弁に偽りはない。

 

 

「次に勧めたいのは……そうだな、やはりクレイドル整備型だろうな、リペアキットの高速化はどんな場面でも有効で、両手を開けて使用できるヒールフィールドは緊急時でも、そうでなくとも使いどころは多い。一応結晶の大きさも分かるが結晶に重要なのは濃度なのでこれはおまけ程度だな、だがあって損はない、正直これと天候適応型、どちらかを君に勧めたいと私は思っている」

 

 

 やはりそう来るのは分かっていた。ドリフター達が最も多く愛用しているメイガスタイプはコイツだ。なにより回復に特化した性能からくる継戦能力は随一である。

 

 

「だが対クレイドル型も場合によっては選択肢として入るだろう。今後賞金首や盗賊団と戦う上で、相手に与えた装甲ダメージを可視化することは戦闘に置いて大きなアドバンテージを生む、相手の動きを制限するモビリティジャマ―は戦うにしても逃げるにしても適切に使用すれば非常に有効だ。相手の装甲を分析するにはスキャンを必要で、このシステムでは遅めにはなるが、最後のとどめはどうせ彼我の距離は縮まっているのでそこまで気にすることでもないだろう」

 

 

 彼女の言う通り、最後の詰めをどうするか判断できるというのは戦闘に置いて重要だ。対クレイドルということで、このシステムタイプは賞金首が多く選択しているとも聞くが、それに抵抗する協会員も持っておいてもいいだろう。

 

 

「対エンダーズ型は、これは群れるエンダーズに対して効率的に処理できる強みがある。威力は下がるがメイガススキルのマルチシュートはクレイドルも一応ロックする。だがエンダーズとの戦闘は慣れでカバーできる場合が多い、優先順位としては一つ落ちるといったところか……」

 

 

 そうは言っても今後上に行くようなことがあればエンダーズの戦闘力とその数は増えていくだろう、AO結晶付近のエンダーズの掃討も手間取れば、それだけ横やりをされるリスクもあると考えればこのタイプも選択肢の中に入ってくる。

 

 

「私のシステムタイプである防衛型も一応は解説はしておこう。客観的に考えると対エンダーズ型と同じくらいの優先順位ではあるな、防御に重きを置いたタイプであり敵の設置した地雷の発見、爆発物への耐性が強みだ。メイガススキルのプロテクションは遠距離の狙撃を防ぐ盾、相手の移動を阻害、あるいは分断する壁として使用可能だ。総評としては対クレイドルに寄った性能だが、乗り手に求められる判断の負担が大きいと思うぞ、さらにこの5種類のシステムタイプは――――」

 

 

 いや待て! 防衛型はそれだけじゃない!! 防衛型とクレイドル整備型にはより相手を深く分析し、敵の所有する荷物すら解析可能! さらに敵の射線を可視化するEQS*4の範囲は他タイプの追随を許さない約2.14倍の性能!! スキャン速度も遅い訳ではないぞ! 敵をスキャンしその荷物から残弾や積載量それ以上だって分かる! なおかつ敵の地雷やグレネードにいち早く気き! EQSにより戦場全体の射線を把握! メイガススキルのプロテクションは単なる盾だけでなく、道を塞いでの逃走、分断や閉じ込めといった使い所次第で攻守も可能なスキルだ!! まさに情報と分析に長けた防衛型は深謀遠慮! 最も多くの情報を収集し分析する司令塔となる最高のメイガスタイプ*5だ!!

 

 

「つまり、現状次に君が作るメイガスに載せるべきシステムタイプは環境適応型が――」

 

「くっ……、許してくれ……!!」

 

「……話も聞かず急にどうした」

 

「俺にもっとアンタを十分にいかす頭がついていれば……!!」

 

 

 俺が彼女の力を引き出し切れていないことに忸怩たる思いでいると、彼女は今日何度目かになるか分からない大きなため息を履いた。

 

 

「……無理に寝かせるよりはさっさと決めてしまえばと思ったが、これはダメだな、いい加減力尽くでも寝てもらうぞユナイター」

 

 

 俺の懺悔は相手に届かず、彼女は俺を抱えるとベッドに叩き込んだ。

 

 背に柔らかさを感じた俺は、体の疲労に耐え切れずにそのまま寝入ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 こうしてB級ライセンス取得から始まった俺の地上任務であるが、しばらくは大きな変化はなかった。

 

 そんな中出撃を繰り返していると、同じ協会員を見かけるのだが、その装備を見て俺は独り言ちる。

 

 

「B級ともなればジャックボックスじゃなくてバードウォッチャーやスパイダーに乗る協会員が多くなってきたな」

 

 

 バードウォッチャーシリーズ。

 

 ミドルプライスで駆け出しから脱するのにも手ごろな値段、大容量バッテリーで長時間活動と高い積載能力を実現、腕部はレーザー系の武器しか装備できないがその適合を突き詰めたエネルギー管理システムは武器の消耗を4割カット、脚部の独自のショックアブソーバシステムは着地時の衝撃を従来の半分まで軽減させることに成功。

 

 対エンダーズの性能に強みを持つスパイダーシリーズも素晴らしいが、総じて地上の探索に重きを置いたバードウォッチャーこそが協会員ドリフターを代表するクレイドルと言っていいだろう。

 

 

「ユナイター、そろそろ我々も機体を買い替えた方が良いタイミング*6だ」

 

「しかしなぁ貯蓄にも余裕があるわけじゃねぇし、JBで今も困ってないぜ?」

 

「JBも悪い機体ではないのは知ってる。だがいずれは乗り換える必要があるだろう。現状の稼ぎなら少し無理をすれば買えない額ではない、今がその時じゃないのか?」

 

「……まだこいつはやれるだろ」

 

 

 不意に俺達の間に流れ始める不穏な空気、とは言え地上の探索中にこんな雰囲気になることは俺も彼女も望んでいない。

 

 俺は大きく息をついて話題を変えようと軽口を言う。

 

 

「どうせ、いい機体に乗っても今の俺じゃカモだ。ハハ、案外JBに乗ってた方が生き残れるかもしれないぜ?」

 

「ユナイター、機体性能は生存に直結する。乗り換えられるならすぐにでも上位の機体にすべきだ」

 

 

 俺の言葉を彼女は両断する。

 

 その言いように俺は内心納得できず、無意識にジャックボックスの操作端末を握り締める。

 

 

「じゃあ今乗ってるジャックボックスはどうなる? 俺が強い機体に乗り換えたら相棒(JB)はお払い箱か?」

 

「……そういう話ではないことは君も分かってるはずだユナイター。君が前に進むためより強い機体に乗り換えることは裏切りではない、そもそもJBに感情はない、それは君の中の錯覚だ」

 

 

 聞き分けのない子供をたしなめるような言葉。

 

 そりゃそうだと言いたくなるような理路整然とした話に俺は乾いた笑いを浮かべる。

 

 

「進むために強い奴に入れ替えろってことなら、まずは俺を取り換えた方が良いって話になっちまうと思うがね」

 

「……ユナイター我々は言ってしまえば機械であり、道具だ。君とは違う」

 

 

 俺の言葉も幼稚ではあった。

 

 だがその言葉を聞いて一瞬で頭に血が上る自分を抑えられない。

 

 

 

「それ、本気で言ってんのか?」

 

 

 

 思えば、俺が彼女に軽口じゃない、本気の反論をぶつけたのはこれが初めて出会ったのかもしれない。

 

 

「君は、その……、悪い、怒らせてしまったな……」

 

 

 彼女は珍しく狼狽えたような表情をすると視線を宙に彷徨わせる。

 

 自分の八つ当たりで彼女を困惑させていることに気づいた俺は、自分の仕出かしたことに気づくと

 

 

「悪かった。アンタが正しい、アンタに怒ったんじゃない、自分に苛立ってただけで……」

 

 

 俺は弱者であり、やり方を選ぶことなんてできない、……そして強い奴らはこんな馬鹿な考えを選ぶはずがない。

 

 

「その……、だが分かってくれ。この選択が君にとってベストなはずだ。君のための……」

 

「知ってるよ、アンタの選択はいつだって俺のことを考えてくれてる。本当に感謝してるぜ」

 

 

 俺の言葉を聞いてもまだいつもの調子に戻らない彼女は、改めて俺に先ほどの提案の合理性を説明しだす。

 

 その言葉に頷きながら話を聞いていく。

 

 そうしていれば次第に彼女の態度はいつもの調子に落ち着き始めた。

 

 

「――以上が君に乗り換えの提案を推奨する理由だ」

 

「そうだな……、分かりやすい説明、助かったぜ」

 

 

 彼女の説明を聞けば、俺の考えなどあまりに短慮なもので、言ってしまえばくだらない拘りだ。

 

 機体を乗り換えれば性能も上がる。

 

 性能が上がればそれだけ移動速度や持てる荷物も増えて探索効率も大きく上がり、戦闘力の上昇は生存率にも直結するだろう。

 

 そこから稼ぎも増えるという好循環に入れば、さらに上の機体に乗ることもできるかもしれない。

 

 

 彼女の言葉は正しい、なんの反論も思い浮かぶことなく正論だと感じる。

 

 だが、それでも表に出てくる相槌に比べ、俺の芯には響かない。

 

 

「さっきは言い過ぎた。……君がジャックボックスに愛着を持ってるのは分かるが、考えてみてくれ」

 

「あぁ、わかってる。……後でまたちゃんと話し合おう」

 

 

 

 道行の途中で協会員のバードウォッチャーが、途切れないブーストで地上を駆け抜ける姿が見える。

 

 俺からしたら無尽蔵にも思えるその走りを見て、俺は理性では買い替えを考えるべきだと思いながらも、足取りは重かった。

 

 

 

 

 

 

 拠点に戻った俺は、協会のショップからバードウォッチャーの見積もりを行う、貯めこんだ金の半分以上をつぎ込むことになるが買えなくもない。

 

 相手の業者はその場で決めきれなかった俺に対し、明日にでも注文すれば次の出撃までには届くように取り計らってくれるとまで言ってくれた。

 

 

「ご丁寧に性能の比較までしてた。ことあるごとにJBと比較してきやがって……」

 

「B級をめどに買い替えるドリフターが多いのだろうな、“一度使えばもうJBには戻れない”だそうだ。あの場で契約を決めてもよかったんじゃないか?」

 

「……高い買い物だ。もうちょっと慎重になってもいいだろ?」

 

 

 結局その日、俺はバードウォッチャーの購入の検討にとどめていた。

 

 

 何か言いたげな彼女ではあったが、その場では追求せずに俺達は拠点へと戻る。

 

 そして明日に備えて床に就こうとするが、やけに目が冴えてしまう。

 

 

「……水でも飲むか」

 

 

 頭の中で浮かぶのは彼女とJB、無意識のうちに足取りはガレージの方へ。

 

 

「思ったより汚しちまったな……」

 

 

 そして夜も遅くなるのだが、何となくJBの所に行くと今日の出撃からか、少し外装の汚れが気になり始める。

 

 

「関節部にも汚れがかなり溜まってやがる……」

 

 

 そうして装甲にブラシ片手に磨いていくと、関節部にたまった汚れを見つけ、今度はメンテナンスツールを取り出した。

 

 

「おいおい……、シリンダーのパッキン、結構いたんでやがるじゃねぇか」

 

 

 俺はもういっその事、パーツの分解整備をはじめてしまおうと、整備用のクレーンの方へ歩き出す。

 

 

 

「夜も遅いのに何をしてるんだユナイター」

 

 いつの間にか、呆れたように俺の前に立つ彼女。

 

 

「いや、なんか綺麗にしてあげたくてよ」

 

「何も今急にする必要はないだろう」

 

「あー、……なんかJBに後ろめたくて」

 

 

 俺の言葉を聞いて彼女は首を横に振る。

 

 

「君は人類を模したメイガスならまだしも、クレイドルにさえ人格化をして考えるんだな」

 

「おかしいか?」

 

「我々としては嬉しいが……、それで君に危険が及ぶことは望まんさ」

 

「我々?」

 

「あぁ、ユナイター風に言うなら、相棒である(メイガス)とクレイドルは君を何より優先する」

 

 

 俺は彼女の言い方を聞いて、メイガスとしての彼女の考え方にふと疑問を持った。

 

 

「メイガスのアンタからしてみればクレイドルの方が人間より自分に近いと感じるのか?」

 

「これは一般的なメイガスとしての話になるが……、言ってしまえば我々(メイガス)は機械と同じ、君達人類が作った被創造物だろう?」

 

「だが生体パーツも一部使われているじゃねぇか、単純な機械ってわけじゃない、それに人間だって人が作った創造物みたいなものだと俺は思うぜ」

 

「君は難しいことを聞くな……、君のその話はイデオロギーの分野だ」

 

「らしくねぇか?」

 

「その、正直今日の君は、……いつもと違う印象を受ける」

 

 

 彼女にそう言われて、自分も彼女に対して同じように思っていることに気づく。

 

 そして、どうやらそれは彼女の話を聞いて勝手に俺が怒った今日の出来事に起因していることに思い至ってしまった。

 

 

「……俺も一緒か」

 

 

 つまるところ大人ぶって覆い隠したつもりでも、俺はたまらなく嫌だったのだ。

 

 彼女が口に出した自分を道具のように言ったあの時、無性に納得できなかった。

 

 だから俺が本当に言いたいことはこんな哲学じみた答えなんてない話ではない。

 

 

「……なぁ、アンタは新しいメイガスが来たらどう思う?」

 

「どう思うとは?」

 

「あー、例えばだがよ、実際に俺がドリフターをやって、今の自分に一番必要なメイガスを作ったとするだろ?」

 

「……そうだな、性能での差はないといえるが、防衛型である私が今のドリフターとして、君のスタイルに適合してるとは言い難いな」

 

「んで、効率を突き詰めれば、俺はたぶんソイツとばっか組んで地上に出ることになるわけだ。ちょうど今日話してたJBみたいに」

 

「まぁそうだな、君が生きて帰ってくることが何より重要なのだから当然だろう」

 

 

 彼女の冷静で合理的な指摘に対し、俺は今、ひどく不合理なことを言おうとしている。

 

 

「俺がいやなんだよ、アンタと一緒に地上を駆けることが出来ねぇのが」

 

 

 つまり言いたいことはたったそれだけ。

 

 俺のバカみたいな話に呆れているのだろうか、彼女は驚いたように口と目を開けてこちらを見る。

 

 

「だから本当はJBを乗り変えるのも嫌なんだ。アンタと比べるのもおかしいが、俺が弱いからって、それを補う為に相棒を簡単に乗り換えるような事ばっかするのはなんか違くねぇか?」

 

 

 合理性皆無のガキみたいな拘り、俺の命どころか彼女を巻き込むひどく自己中心的な考え。

 

 

「………………まさか、君は、そんなことを考えながらモニターの前で毎日唸っていたのか?」

 

「……まぁ、そうだ」

 

「私と二人でやっていきたいから? だからあの時も急に不機嫌に? 本当にそんな理由で?」

 

「あぁ、あの時は悪かった」

 

 

 彼女の初めて見る表情、口を開け閉めしながらこちらを見つめてくる。

 

 なんだ? これはどういう方向性の怒りの表情だ?

 

  全く見たことのない顔と態度に俺は恐れおののく。

 

 

「ば……」

 

 

 俺の話を聞いて怒りに打ち震えているであろう彼女は、今まで出会った中で初めて言葉を詰まらせた。

 

 

「馬鹿なのか君は、それに甘すぎる。君の実力が足りないなら他で補うのは当然だ」

 

 

 俺が思うに、矢継ぎ早に言葉を吐き出し続けているのは、彼女が怒り心頭だからであろう。

 

 

「あまりにも不合理だ。君にはそんなことを考える余裕はないはずだ。メイガスやクレイドルにそこまで入れ込んでどうする」

 

「いやでもなぁ……、まずはアンタとJBに見劣りしないぐらいのドリフターにはなりてぇんだよこっちは」

 

 

 俺の気の抜けた返事はさらに彼女の癪に障ったようで説教は続く。

 

 

「君は……、本当になんでそう……! いや……、…………はぁ」

 

 

 とうとう愛想をつかされたかと戦々恐々としていると、次に彼女が顔をあげる。

 

 そこには少しの苛立ちが見えながらも、いつもの冷静な態度をした彼女が戻ってきていた。

 

 

「……しかし、不本意ながらであるがメイガスとしては君の意思を尊重すべきだろう、JBに暫く乗って技術を磨きたいという考えも、十の難点に目を瞑り一理あると認める」

 

「ほ、ほんとうか?」

 

「ただし、バードウォッチャーは買っておけ、その力が必要になる時は必ず来るはずだ」

 

「おぉ、分かってくれるか!」

 

「……そして、なんだ……、君が望むのなら仕方が無いので私が君をサポートしよう、あぁ全く不合理極まりない、不本意な選択だがな」

 

「了解だ!!」

 

 

 尾を引く怒りからそっぽを向いているようだが、なんとか彼女の説得に成功することが出来た。

 

 

「私と君の関係についてだが……」

 

「流石に道具なんて言い方は味気ねぇと今でも思うぞ、それは分かってくれ」

 

「それは謝罪する。そうだな、さきほどの君の質問だが……、メイガスは機械と人間、その狭間にいるといえる。だから……」

 

 

 彼女はそこで言葉を区切り、背けた顔を戻してこちらの顔を見る。

 

 

「その、我々。いや私の立ち位置は君との関りで変わると私は思う……」

 

 

 俺はメイガス三原則を思い出す。

 

 『成長律』メイガスは契約者と自らを成長させなければならない。ただし成長の定義は契約者との関係性のなかで常に更新する。

 

 ドリフターとして生きた濃密な時間のおかげで忘れそうになるが、俺達が組んでから流れた実際の時間はそう長くはない。

 

 彼女がこの世界で目を開けたその瞬間から俺に出会った。

 

 だからこそ、俺は彼女のことをなんでも知った気になっていたのかもしれない。

 

 そんな風に勘違いしていた俺だから、あの時自分を軽く見ている彼女の言葉に苛立ったのだろう。

 

 

「…………だからユナイター、早く私を使いこなすほどの腕前になれよ」

 

「俺の腕じゃ、向こう十年は無理そうかもな」

 

 

 俺の軽口は、彼女の神経を逆なでしたらしい、いつの間にか何か言いたげにこちらを睨むように目を細める彼女

 

 慌ててその視線から逃げる俺は、彼女の機嫌を取る方法を考えながらJBの整備を続けるのだった。

 

 

 

*1
B級ライセンス取得後に現れるソロモード、オンラインとは別枠の歯ごたえのある専用ステージを高性能クレイドルで楽しむことができる。アメイジア崩壊を探るストーリーモード。様々な武器が道中に落ちているためその使い心地の確認、対クレイドルの基本的な立ち回り方なども学べるため、早くにやっておいて損はない。……しかしこのB級ライセンス取得後というタイミングが曲者であり、オンラインから切り離された無報酬の依頼、そして金欠に喘ぎオンラインにのめり込んだプレイヤー達にとって、悲しいかなその優先度が低くなってしまう傾向にある。しばらくしてオンラインと距離を置きたくなった時に進めてみるのも悪くないが、早期のプレイをお勧めする

*2
本作ではメイガス製造チケットが三枚入手可能(シーズン1時点)ゲーム開始時に一枚、協会員のB級昇格時、賞金首側の特定ミッション達成時の三つで手に入る

*3
システムタイプ分析速度特徴メイガススキル

天候適応型遅いマップに雨雲レーダーを表示青い雨を弾くバリアを自身の周囲に一定時間展開

対クレイドル型遅いクレイドルの体力を表示指定した場所に移動を阻害する力場の展開

クレイドル整備型速い リペアキットの使用速度上昇装甲を回復するフィールド設置

対エンダーズ型遅いエンダーズの体力を表示エンダーズ特攻の複数ロック可能なエネルギー弾を連続発射

防衛型普通グレネード感知及び被害軽減攻撃を防ぐ壁を前方に設置する

*4
本ゲームに搭載された敵の射線を可視化するスキルであり、全システムタイプのメイガスに搭載されている。上手く使えば敵の位置も大まかに分かるため、クレイドルと対峙したなら使用する習慣を付けよう

*5
最高のメイガスタイプとは人によるものであるが、一般論として、現在広く使用されているのは戦闘時の隙が少ないクレイドル整備型、そして雨により結晶や素材のレアリティが変化する本作の仕様から素材収集に天候適応型の二つをまず入手することをお勧めする。現時点で無課金で獲得できるメイガスは3体のため、残り一体は自身のプレイスタイルによって選択すべきであろう。個人的な意見を述べるなら、協会員としてプレイするなら序盤の最適解は整備型ではあるものの、結果的に最も多く連れまわすことになる天候型メイガスを相棒にすれば捗ると愚考する

*6
非常に難しいのが機体の乗り替えタイミングである。様々なプレイスタイルがある中、特に言われていることは機体操作やある程度の戦闘に慣れてから乗り換えた方が良いとの話である。……しかしJBに長く乗り続けてJBの操作性に慣れ切ってしまったプレイヤーにはその抜け出すタイミングが難しいだろう。ミッションごとにクレイドルを使い分けても良いが、理想としては操作に慣れ、お金の余裕が出来たのなら早めに上のランクの機体に慣れていこう




君だけのメイガスをクリエイト!!
実装予定の衣装の組み合わせ総数はなんと15,765,017,104,170,000通り以上!?
驚きの自由度で、自分のメイガスを思いのままに着せ替えよう

君もいい加減『SYNDUALITY Echo of Ada』の販売ページに向かおう!
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