術式ではないが、スキルを手に入れた。
必死の努力で曲を弾けるようになった。
5年かけて、弾けるようになったと自信をもって言えるのは一つだけ。
慈愛の聖譚曲。これが未来の嫁の病気なりなんなりを癒してくれるはずである。
辛抱強く手伝ってくれた楽師達には感謝に絶えない。
病気によく効くポーションも貰った。
甚爾は、少しドキドキしながら運命の出会いをまった。
そして。運命にあった。
別に殺さずとも、金はいくらでも稼げる。
このスキルがあれば!
恵まれた俺。恵まれた妻。恵まれた息子。
幸せってこう言うのを言うんだと思う。
そう思っていた。
他の4人との交流もどうでもいいと思っていた。
召喚を断った。
直哉が来た時も、けんもほろろに追い返した。
バカだった。
妻子を人質に取られ、俺は天内理子を襲撃する事になっていた。
背後にいるのは羂索。知っていたはずだった。知ったつもりになっていただけだった。
俺が平和ボケして動かなかったばかりに……。
依頼は成功させるしかない。
傑の戦い方は承知してる。俺は覚悟を決めた。
「なあ。お前が呪専の為に歌うなら、奥さんと息子さん助けてやってもいいぜ!」
「! 飲もう。だけど、天内理子はどうかさせないとてめーらの首を絞めるぜ、天元様は進化すると呪霊操術で操れるようになるからな。夏油傑を狙う勢力もある」
「は? ……マジで?」
「私かい?」
「マジだ。それ狙いでお前らを仲違いさせる計画もある」
「オーケー。全部話せ。天内とはきちんと話すわ」
結果、天内理子は納得の上、同化された。
そして俺は、妻子と共に呪専に入り、研究にも協力する事になった。
禪院家と揉めたりもしたが、五条派閥に入る事で嫁の安全を確保する。
五条派閥への攻撃が激しいとはいえ、信頼できる派閥はそれしかないし、家で預かって貰えば安全は保証できるはずだ。
お礼はもちろん歌。
禪院家を宥める為に、将来的に恵に禪院家に行ってもらう事にした。
オメーの母親のためだ、頑張れ恵。
それから2人目の子供、女の子の歌も生まれ、俺は平和を謳歌した。
だが、そうだな。
黒幕を倒せたわけじゃねぇ。
直哉がまた来たら、その時には考えるか。
俺は思いもしなかった。
ちょうど召喚から10年経ち、黒幕との決戦に引っ張り凧になってしまうなんて。
宿儺3連戦とかほんと勘弁しろ。
10年後に俺も手伝ってほしいから、手伝うがな!
あと、里香は手伝ってやらなかったのいい加減許せ。
未来の恵が見れるのも、それをネタに恵を揶揄うのも悪くはない。
プレッシャーを溜め息一つ吐くことで切り替え、自分に気合を入れて召喚に応じるのだった。