Persona4 the NeoGetter   作:komorin

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episode1.心の力、ゲッターの力
シャドウワーカーの訪問


──―2010年11月 仮設ネーサー基地 - 管制室

 

恐竜帝国の襲撃から約一か月。

爆破されたネーサー基地は、今や完全に元通りに──―なんてことはなく。優先的に修繕された管制室と格納庫を除くほどんどの区域はまだ仮設の状態で稼働していた。

 

ニューヨークと東京を襲撃し人類を破滅に追い込もうとした帝王ゴールは倒され、世界は平和となったのだと慢心することなく……基地が修繕中でもネーサー基地は未知の脅威に対応できるよう管制室で各地の観測を行っている。

 

そして今日もいつもと変わらず各地の観測をしていた。

 

「……? なんだこれは」

「ん、どうした」

「いえ……ここの区域から妙な波長を感知しまして」

 

管制室オペレーターの一人が細かな異常を報告する。

これ自体はよくあることだ。機器の誤作動、自然現象、観測機の接触……様々なよくある要因で異常を検知することはある。得られたデータから、考えうる可能性を検証し……そのほとんどがただの誤作動だった、で終わるのが彼らの日常であり、彼らが求める平和である。

 

しかし今日報告された異常は少し違うものだった。

 

「機器の誤作動……にしてはしっかりしてるな……いやこの波長見覚えがあるような」

「過去の異常データを参照しますか」

「……! 大変です!」

「今度はどうした!」

「同じ地区から、規定値を超えるゲッターエネルギー反応が検知されました!」

「なんだって……!? 今すぐ神大佐に報告を! 俺は過去の異常データからこの波長を特定する!」

「了解!」

 

ゲッター線、ゲッターエネルギー自体は常に宇宙から降り注ぐものである。しかしそれが規定値を超えるとなると話は変わる。

何者かがゲッターエネルギーを集めているのか、あるいはゲッターが人類を呼んでいるのか。

いずれにせよ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

世界の平和は、また脅かされようとしていた。

 

 

 

 

管制室のドアが開く。ドアから現れたスーツを着たサングラスの男……ネーサー基地司令官神隼人は、迷いなく異常を報告したオペレーターの席に向かっていく。

 

「現状は」

「はっ! 異常を検知した○○県稲羽市での反応はいまだ変わらず。規定値以上のゲッターエネルギーと謎の波長を検知し続けています。ゲッターエネルギーの方は検知後、現在に至るまでエネルギー量の変動は見られません」

 

画面を共に確認しながら思考を巡らせていく。

ただゲッターエネルギーを感知しただけならば職員を調査に向かわせるだけでいいのだが……神隼人はどこか嫌な予感がしていた。

そしてその嫌な予感は的中する。

 

「波長特定完了しました! この波長は過去観測したメカザウルスから発せられていた波長と一致! また複数のメカザウルス固有波長が出現・消失が繰り返している模様!」

「メカザウルスだと……!」

 

最悪である。確かに破壊した、倒したはずのメカザウルスの波長の検知だ。

 

恐竜帝国のトップは倒れ、多くのメカザウルスを倒したからこそ恐竜帝国はもう脅威ではないと世間に認知されている中……破壊したメカザウルスの復活など知れたらどうなるか。世間に不安が広がるだけじゃない、ゲッターロボへの不信が広まる可能性がある。

ただでさえ一度、ゲッター線は世界的に脅威とみなされたのだ。二度目はない、あってはならない。

 

神隼人は考える。この異常を、いかに安全に解決するか。

 

「……極秘調査として動くしかないな。データをくれ、政府と警視庁には話を通さねばならん」

「了解!」

 


 

──―同日 特殊部隊シャドウワーカー仮設部署

 

先月破壊された警視庁。警視庁もまた、ネーサー基地と同様に鋭意復旧作業中の施設であった。

幸い地下部分は残っていたため、一部の部署は修繕作業中の警視庁地下に仮設の部署を作り、そこで仕事をすることとなった。

当然ながら、仮設部署を与えられるのは昔から存在し常に必要とされる部署のみであり……つい先日設立したばかりの特殊部隊には与えられることはなく。

 

特殊部隊シャドウワーカーは、桐条家別邸を仮設部署とすることとなった。

 

部屋の隅まで美しく清掃された部屋、室内を彩る調度品。

特殊部隊の仮設部署とは思えないあまりにも高貴な室内には、黄色い髪を持った人型の機械と青く揺らめく女性型の異形の中で祈る女性がいる。

 

そんな奇妙な空間に勢いよく……しかし上品に扉を開け、黒い全身スーツにファーコートを着た美しい女性が入っていく。

 

「美鶴さん」

「すまない、遅くなった。話は聞いているぞアイギス。……設立早々、シャドウの反応を検知するとはな」

「はい……現在風花さんがサーチをしています」

「そうか……山岸、何が見える」

 

美鶴と呼ばれた女性は異形(ペルソナ)の中で祈る女性──―山岸風花に声をかける。

 

『シャドウの反応は感じるんですけど……どうにも霧がかっていて……』

「ふむ……山岸がサーチに苦労するとは相当だな」

『それと、シャドウだけじゃなくて何か違う反応もあるんですけど……それもあまりはっきりと見えない、というか……これ、私は()()()()()()()()……のかな……? 私じゃこれ以上見れない何かがあるみたいです』

「認められていない……?」

 

風花の発言に少しばかり引っ掛かりを覚えながらも美鶴は話を進めていく。

 

「なんにせよ実地調査が必要だな。確か稲羽市、だったか。……直近で何か異常がなかったか調べてから行った方がよさそうだ。私は警視庁に行ってくる。二人は引き続き待機していてくれ。山岸は適宜休むように」

『は、はい! ……でもまだ大丈夫そうなので、もう少しサーチしてみます……!』

「了解であります! ……あっ待ってください美鶴さん」

 

部屋を出ようとする美鶴をアイギスが止める。

引き留めたアイギスのヘッドギアが何かを受信するかのように点滅し……通常通りに戻る。

 

「警視庁のデータベースの更新を確認しました。データ更新者は日本国際航空宇宙技術公団、通称NISAR。稲羽市にて規定値以上のゲッターエネルギーを感知、国民の不安をあおらないようにするため極秘での実地調査の申請をされたようです」

「稲羽市で規定値以上のゲッターエネルギー、だと」

 

ゲッターエネルギー、未だすべてを解明されることがなくその膨大な力を兵器として運用されている謎のエネルギー。

エネルギーでありながら、その挙動に"使用者を選ぶようすがある"と書かれた文献もあったと美鶴はふと思い出した。

山岸を認めていない謎の反応、突如規定値を超えたゲッターエネルギー、観測されたシャドウの反応……何か、繋がりがあるかもしれない。

 

「……まずネーサー基地を訪問した方がよさそうだな。司令官にアポイントメントを取る」

 

即座にファーコートから携帯を取り出し、ネーサー基地の番号を入力して通話のボタンを押す……その前に、美鶴はアイギスに問いかける。

 

「ところでいつそんな機能を付けたんだ、アイギス」

「警視庁の破壊時に桐条研究チームに申請、昨日実装されたであります。

警視庁の往復が増えることを想定し、実装を提案しました。私なりの気遣いです、美鶴さん」

 


 

──―仮設ネーサー基地 - 格納庫

 

ここ数日、ネーサーはいつも以上に騒がしくなっていた。あちらこちらとオペレーターが往復し、特定区域の観測結果を詳細に報告していく。

そんな中、つい先月地球を救ったパイロットたちはいつも通り訓練に励んでいた。

飛行訓練を終え、格納庫に収容された機体から三人は降りる。

 

「なんか今日もドタバタしてんな」

「仕方ないさ、ゲッターエネルギーの異常な感知だろ? せっかく帝王ゴールを倒して平和って言ってんのに、ひと月立たずにまた脅威! なんてなったら大変なことになっちまうんだから」

 

走り回るオペレーターたちをつまらなさそうに眺める號に、苦笑しながら剴が話す。

 

「気になるだろうが今は大人しく訓練に励むしかない。大変になった時のために私たちはいるのだから。……不貞腐れてないでさっさと行くぞ號」

「ああ!? 別に不貞腐れてねぇよ!」

 

翔の苦言に思わず反射で返してしまう號。それをなだめる剴。気に留めていない素振りで歩く翔。

三者三様、バラバラに見えるが……実のところ全員気持ちは同じだった。

 

明らかに平和が脅かされている、それなのに自分たちは何もできない。

歯がゆさを感じても……それでもいつも通りに過ごすしかない。

せめてなにかと思っても、自分たちに求められているのは脅威が発生したときの対処であり……結局のところ日々の訓練を怠らないことだけが自分たちにできることだった。

 

少し不機嫌な號と共に三人は予定通りに次の訓練場に向かう。

ヘルメットを片手に抱きながら、號のぼやきに剴がいつものように答えていたその時。

翔の携帯が鳴った。

 

「む……少し待ってくれ二人とも」

「へーい」

「はい、こちら翔…………はい、……はい……了解しました」

「どうしたんだ、翔?」

「大佐から連絡だ。今日の訓練は中止、ネオゲッターチームは今すぐ応接室まで来るように……とのことだ」

「応接室ぅ……?」

 

翔から聞かされた大佐の指令に號が首を傾げる。

それもそうである。なんせ基本はただのパイロット。一応兵士としての階級を持っているとはいえ何度か大佐と会議に同席する程度の階級と権限を持つ翔とは違い、號と剴がそのような場に同席することは殆どない。

何なら號に至っては一度だってなかったのだ。

 

「ひとまずパイロットスーツのままでいいそうだ。しかし……応接室となるとそれなりの身分の方が来られているはず。失礼のないように。特に號」

「んだとぉ!?」

「そういうとこだぞ號」

「ああ!?」

「……不安しかないが命令だ、行くぞ」

 

 

 

 

仮設とはいえそれなりに整えられた応接室。

少し大きなドアの前で、翔はドアをノックした。

 

「失礼します。翔・號・剴、ただいま到着しました」

「入れ」

「はっ」

 

【挿絵表示】

 

 

大佐の声を聞き翔は扉を開ける。

応接室には大佐と、黒い全身スーツに身を包み真っ白なファーコートを着た美しい女性がいた。

随分と美人だな……なんて思いながら號は翔に目を向ける。

 

視界に映る翔は、明らかに緊張していた。

勿論、何度も政府の偉い人たちとの会談に付き添っていた翔だ。緊張を表に出さないよう努めている。努めてはいるが……仲間として共に過ごしてきた號と剴には、翔の緊張がいやというほど伝わってしまう。

そのまま……號と剴もそこで固まってしまった。

 

「何を突っ立っている」

「……失礼しました。二人とも、入るぞ」

「お、おう……」

 

ギクシャクしながらも応接室に入り、席に着く三人。

三人が座るのを確認し、隼人は咳払いをして話し始める。

 

「……全員揃いましたね。では、話に入りましょう。

號、翔、剴。こちらは警視庁シャドウ事案特別制圧部隊……通称シャドウワーカーのリーダー兼責任者の桐条美鶴さんだ」

「桐条美鶴だ。よろしく頼む」

「はい、よろしくお願いします」

 

チームの代表として翔が答えるその横で、號は頭を唸らせていた。

きりじょう……桐条……どっかで聞いたことがあるような……? 

思い出せない號は隣で顔を引きつらせている剴に小声で話しかける。

 

「……きりじょうって、なんか聞いたことある気がすんだけどよ、なんか知ってっか……?」

「嘘だろお前……桐条美鶴って言えば、あの桐条グループのトップだぞトップ……!」

「桐条グループぅ……?」

「ありとあらゆる分野に会社を持ってるめっちゃデカい企業だよ……今のネーサーの復旧工事でも桐条グループの建築会社が関わってるし、ネオゲッターの装甲の一部素材とかにも桐条グループの研究会社が関わってたり……何をするにしても桐条の名前が出るぐらいにはすごい企業なんだぜ」

「……その一番偉いやつが、ここに?」

「そうだよ……! やらかすなよ號……」

「わ、わーってるって……」

 

ひそひそと話すのを止めて、改めて客人と向き合う二人。

タイミングのいいことに、丁度翔によるネオゲッターチームの紹介が終わったところのようだった。

 

「では改めて本題に入る。お前たちは今ネーサーで観測されている事態については把握しているな?」

「はい。○○県稲羽市にて規定値を超えたゲッターエネルギーを検知。今に至るまで数値に変動はなく……依然警戒を続けている状況です」

「……続けてくれ、既に秘匿している情報も伝えている」

「わかりました。こちらで観測している異常事態はもうひとつ、過去破壊したメカザウルスの波長の検知です。こちらは出現と消失を繰り返しており、その出現規則はまだつかめていません。……以上二つの事態を我々は把握しております」

 

つらつらと淀みなく答える翔に、端正な顔を崩す美鶴。

 

「情報共有はきちんとしているようだな。素晴らしい」

「お褒めにあずかり光栄です」

「……ではここからは私が話をしよう」

 

そういうと一瞬見せた笑顔を戻し、切れ長な目を號達に向ける。

 

「我々シャドウワーカーは同日、同じく稲羽市にてシャドウの反応を検知した。……シャドウについては少し説明が長くなってしまうため、別途資料にまとめている。そちらを後程見てほしい。今のところは……我々が対処している敵のようなものだと思ってくれて構わない」

 

美鶴が指さした机に資料にちらりと目を向ける三人。

クリアファイルに入れられた資料には「シャドウ・ペルソナ関連事項」と印字された書類と添付資料と思われる写真が数枚入っていた。写真に残されている黒く不定形な仮面の物体に、三人は少し顔をしかめる。

 

「当初、我々は実地調査に向かう予定だったのだが……ネーサー基地の観測結果を偶然耳にし急遽計画を変更した。

我々はシャドウに対しての対策はあるが……残念なことにメカザウルスへの対策は持っていない。メカザウルスに対してはネオゲッターロボ及び真ゲッターロボでしか対処が不可であると判断した。

だが同時に、シャドウに対抗するための対策もまた我々しかもっていない。そのため──―この事態の対処のため、ネーサー基地との共同作戦を提案させてもらった」

「共同作戦、ですか」

「そうだ、翔。そしてその作戦の実行メンバーとして……お前たち三人を選出した」

 

共同作戦実行メンバー、その言葉に號の目が輝く。

身を乗り出しかけた號を剴がそっと止め……それを確認した翔が改めて口を開く。

 

「具体的な作戦内容をお聞きしてもよろしいでしょうか」

「作戦内容については……すまないがまだ話すことができない。いくつか作戦の計画があってな……どの計画が可能なのかを確認するために、君たちを今から桐条の研究所まで連れて行かせてもらう。……いいですね、神司令官」

「構いません。……ということだ。お前たちには今から彼女とともに桐条の研究所まで行ってもらう。必要なものはすべて向こうが用意してくださるそうだ。帰還予定時刻は……」

 

先ほどまで期待で目を輝かせていた號の目に不満が混ざる。そのまま剴の手を押しのけ、號は身体を乗り出した。

 

「ちょ、ちょっと待てよ!」

「だあっ號! バカ!!」

「止めることはない。一文字號……だったか。聞きたいことがあるなら、答えられる範囲で答えよう」

 

桐条グループのトップに対する態度とは思えない號に、美鶴は顔を崩さぬまま応える。

 

「……作戦はまーいいけどよ、研究所なんてとこに連れてくんだったらせめて何すんのかぐらい教えろよ。身体の改造とかはごめんだぜ」

「んなことすんのは敷島博士ぐらいだって……」

「うるせえ! この前右手ガトリングガンにされかけたんだぞ!」

「だからあそこ通んなっていったじゃんか……」

 

騒ぎ出す號の頭に翔の手が伸びる。そのまま躊躇いなく頭を掴み、號の頭を下げるように無理矢理前へ押し出した。

 

「だぁっ!?」

「……騒がしくてすみません、桐条さん。ですが私も研究所での確認作業について、號と同様気になってはいました。差し支えなければ内容について伺ってもよろしいでしょうか」

 

真剣な顔で翔が美鶴に問う。軽く翔を睨みつつ彼女の手から逃れた號も、美鶴に向き合い答えを待つ。

 

「研究所の方でシャドウの話とともにする予定ではあったが……いいだろう。

まず一文字の心配する身体改造などの予定はない。そこは安心してほしい。そして肝心の確認事項だが……

 

君たちには研究所でシャドウに対抗する力、ペルソナ能力の有無の確認をさせてもらう」

 




2/11 更新
・文章の整形機能を知ったので整形をしました。内容に変化はありません。
・挿絵を追加しました
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