アンマルチア族の里
『くそっ!また負けた!なんで俺は勝てないんだ・・・・』
アンマルチア族の里のとある広場で青年、ファクトが何故か悔しがっていた。
ファクト『一体いつになったら俺は・・・』
「あれ?ファクトじゃん。何してるの?」
悔しがっているファクトの元へ幼馴染の女性、パスカルが声をかけてきた。
ファクト『なんだパスカルか』
パスカル「なんだとはなによ。ぶ~」
パスカルは頬を膨らませるが、ファクトはパスカルを無視した。
パスカル「ねぇ~無視しないでよ~どうしたの?」
ファクト『・・・・別に』
そっけない返事をするファクト
パスカル「あ!わかった!またおじさんに負けたんでしょ?」
ファクト『うっ!?』
図星である。ファクトは毎日のように剣の達人である父親に家宝である「白刀・白夜」を賭けて勝負を挑み、いつも負けている。
ちなみにファクトは白夜の対となる家宝「黒刀・極夜」を所持している。
パスカル「いいじゃん、黒い刀だけでも持ってれば」
ファクト『よくない!俺は二刀流なんだ。それに、親父に勝てば狩りに連れていってくれるって約束したからな』
パスカル「ふ~ん。ってことはファクトがおじさんに果敢に挑むのは、おじさんの手伝いをしたいからだったんだ」
ファクト『はっ!?ついつい理由を全部言ってしまった・・・・』
パスカル「孝行者だねぇファクトは」
ファクト『っ・・・・別にそのぐらい。母さんは俺が小さい頃に死んで
それからは男手ひとつで俺を育ててくれたんだ。手伝いぐらいしたっていいだろ』
パスカル「うんうん」
ニヤニヤしながらパスカルは話を聞いていた。
ファクト『この事は誰にも言うなよ』
パスカル「どうしよっかな~そうだ!バナナおごってくれたら黙っといてあげる」
ファクト『やれやれ、わかった』
パスカル「トロピカルヤッホー!」
ファクト(どんだけバナナが好きなんだ?)
ファクトがバナナを買いに行こうとしたその時だった。
ドォォォォォォォォォン
大きな爆発音が里中に響いた。
パスカル「な、なに?今の音?」
ファクト『俺の家の方から聞こえた・・・・親父!』
パスカル「ま、待ってよファクト」
すぐさまファクトは家の方角へ走り出した。パスカルもファクトを追いかける。
爆発音のした方へ着いたファクトとパスカルは信じられない光景を目にする。
ファクトの家が大きく炎上していた。
ファクト『親父、親父はどこだ?』
ファクトは周りを見るが、自分の父親の姿は無かった。
ファクト『まさか、まだ家の中に・・・』
ファクトは炎上する家の中へ向かおうと走り出した。
パスカル「駄目だよファクト!死んじゃうよ!」
パスカルはファクトの腕を掴み引き止める。
ファクト『離せパスカル!親父が、親父がいるかもしれないんだ!』
パスカル「駄目ったら駄目!」
パスカルは必死にファクトを引き止める。
炎上するファクトの家の中から人が歩いて出てきた。ファクトの父親である。
ファクトの父親は身体中に火傷を負いながらも、ファクトとパスカルの近くまで行き、倒れた。
ファクト『親父!』
ファクトは父親へ駆け寄り、上体をあげた。
ファクト『親父!一体何があったんだ!?』
「ミドラーシュだ・・・ミドラーシュが現れた・・・・」
ファクトの父親が苦しそうに口を開いた。
ファクト『ミドラーシュだと!?』
パスカル「ミドラーシュって・・・・あの盗賊の?」
「白夜が奪われた・・・いつかはお前に託そうとしたのに・・・すまない・・・」
ファクト『わかった!もういい、喋るな!』
「・・・・」
ファクトの父親はファクトの腕の中で息を引き取った。
パスカル「う、噓でしょ、おじさん・・・」
ファクト『親父・・・親父ぃぃぃぃぃぃぃ!』
ファクトの叫び声が里中に響いた。
パスカルの家
「ファクトの様子はどう?」
パスカルの姉、フーリエがパスカルに聞く
あの後、パスカルはとりあえず自宅にファクトを連れていき、自分の部屋に入れた。
パスカル「少しは落ち着いたみたい」
フーリエ「そう、でもまさかミドラーシュがこの里にくるなんて・・・」
パスカル「神出鬼没の盗賊なのは本当なんだね・・・」
ミドラーシュとは世界中で危険人物とされ指名手配されている盗賊である。
パスカル「ねえ、お姉ちゃん。しばらくの間ファクトを家に泊めていい?」
フーリエ「それがいいと思うわ。パスカル、あなたがファクトを支えるのよ」
パスカル「うん」
パスカルの部屋
パスカル「ファクト、しばらくあたしの家に・・・ってあれ?」
パスカルは喋りながら自分の部屋に入るが、ファクトの姿が見当たらなかった。
パスカルは床に1枚の手紙を見つけた。
パスカル「これファクトの字だ。なになに・・・」
パスカルへ
この手紙を読んでる頃には、もう俺はこの里にはいないだろう。
ミドラーシュを討つために俺は復讐の旅に出る。
奴から白夜を取り戻し、親父の仇をとる。俺は奴を絶対に許さない。
もう里に戻るつもりはない。いままでありがとう。さよならだ。
ファクト
パスカル「そんな・・・噓・・・バカ!ファクトのバカぁぁぁぁぁぁ!」
パスカルはその場で泣き叫んだ。
To be continued