ヒスイ帰りのショウ   作:餅は餅や

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決戦(3)/

 ウォロは朗々と語る。未だ時空の歪みを吐き出し続ける二体のポケモンを前に、場違いな笑みを浮かべながら。

 

「いやー、助かりましたよ。本来であればテルさんにご協力いただいてどうせトチ狂っているであろうディアルガないしパルキアを捕獲する予定だったのですが、まさかここまで上手く進んでいるとは! 未来の力もなかなか侮れないものですね」

「ウォロさん? アンタ、何を……」

 

 表面上は変わらないどころかむしろ饒舌に語り出すウォロにセキは戸惑いの声をあげる。それを一瞥すらせず、ウォロは二度手を叩いた。

 

「さて! 神殿に有象無象がいるのは残念極まりないですが……いえ、だからこそと言うべきでしょうか? 前回と違う状況で試せると考えれば悪くはないのかもしれませんね。どちらにせよ、赤い鎖に捕えられた二体に、すべてのプレートを持ったショウさん。ここまでのお膳立てがあってこれ以上を望むのは贅沢というものでしょう。……ギラティナ!」

 

 ふと生ぬるい風が辺りを覆いつくすように染み出した。

 身じろぎひとつしないままのディアルガとパルキアの上空に現れた穴。それはだんだんと広がり、中から赤く光る二つの目がこちらを覗いている。

 そのディアルガとパルキアの足元に転がっていたアカギが、突如現れた赤い鎖を持つ青年に誰何の声を発する。

 

「なんだ、キサマ……」

「おや? ああ、アナタがここまで手筈を整えてくださったのですね。それにあの厄介な小娘も消耗させているとは。感謝いたしますよ」

 ウォロは赤い鎖を取り出すと、ショウたちに背を向けて三体のポケモンに向き直った。それを隙と見たショウはビーダルを繰り出し、ウォロへと走る。

「赤い鎖、だと?」

「ええ。アナタの用意した二本……うち一本は複製ですか? 大したものです。ですが時間と空間の二重螺旋を自在に扱えるだけでは、どこでもない世界にいるアルセウスへの道は拓けない。ワタクシも最近になって知ったことですがね」

 

 ビーダルに乗ったショウがウォロに迫る。その手には持てるだけの粘り玉。戦えるポケモンのほとんどいない今、ショウにできる最大の拘束手段だ。

「ですので」

 ウォロがぐるりと振り返った。その顔に狂気的な笑みが浮かぶ。

「実のところ、コレが必要なのです。どこまでも癪に触る話ではありますが……神に選ばれ、すべてのポケモンと出会ったこの少女が。プレートだの時空を操る力だのは前提に過ぎません」

 

 赤い鎖がショウを捕らえた。どさどさと粘り玉が落ち足元のビーダルが絡め取られる。ウォロはそれを一顧だにせず、雄弁に続けた。

 

「時空を越える者を捕らえるのであれば赤い鎖が必要ですからね。コギトさんは世界を正しく見るための道具だとかおっしゃっていましたが……こうして便利に使えているのでこれはこれでいいのでしょう」

「ウォロさん……」

 

 呻いたショウにウォロはにこりと笑って、天界の笛を、と呟く。するとショウの体はショウの意思を無視して動き出し、荷物の一番奥底から紫色の奇妙な笛を取り出した。

 

 それはパルシェンの殻にいくつも穴を開けたような笛だった。人の指では到底抑えられないような位置にいくつも穴が空いていて、まともな音が鳴るとは思えない見た目をしている。

 ショウがそれを口にあてがい息を吹くと、その見た目からは想像もできないような澄んだ音色が鳴った。そうして最も吹き慣れたカミナギの旋律を奏でると、極彩色の空が扉のように開いた。

 

 ウォロは両手を広げ早口に捲し立てる。その顔は喜びの形に歪んでいる。なのにそれはショウには怒りか、あるいは悲しみのように見えた。

 

「アルセウスよ! アナタを従えれば分かるのか? 悲しみも苦しみもあるこの世界を、よりよい世界に創り変える方法が!」

 

 ディアルガ、パルキア、ギラティナ。三体の力を結集させ、ウォロは檻を作り出した。アルセウスを捕らえる時空の檻。空に吐き出されたすべてを何倍にも圧縮したかのような歪みが幾重にも折り重なって、開いた扉の向こうを覆い尽くした。

 

 それに囚われたアルセウスは──それはもうニッコニコであった。

 

 ニッコニコついでに一歩歩くと時空の檻は水に溶けるオブラートのように消え失せ、空は雲ひとつなく──正確には足元に雲海を臨んで──晴れわたり、さんさんと輝く太陽を丸い虹が囲んでいた。

 

『おまつりです』

 

 大理石のような硬質な白に覆われた四つ足の体。

 

 ぽっこりと膨らんだお腹から後光のように広がる金の輪はアルセウスが座ったり横になったりするのを妨げるようにのびのびと伸びている。

 

 そしてそこに嵌められたヒスイ色の物体が控えめなきらめきを放つことでしとやかさを演出し、全体的に上品な仕上がりとなっている。

 

 しかもすらりと伸びた足のつま先は細く、胴の輪っかと同じ金でカバーされているとはいえその体重を支え切れるようには思えない。

 

 そう、アルセウスはいろんな不思議に満ちているのだ。

 

 つまるところ──いつも通りのアルセウスがそこにいた。

 

 誰も何も発せずにいると、誰かがふと自らの懐に光の珠のようなものが入っていることに気がついた。ざわめきはぽつぽつと大きくなり、誰もが眼前の神話的光景について舌をぐるぐると動かしたがった。

 そんなとき、その珠をアルセウスに投げつけた者がいた。もうお分かりだろうがショウである。赤い鎖に囚われていたはずのショウは、いつのまにかヒスイで培ったボールコントロールを遺憾なく発揮してアルセウスの顔面に光の珠をいくつも叩き込んでいた。

 

 この珠はシズメダマという。雷に打たれてトチ狂ったヌシたちを鎮めるために作られたもので、ヌシの好物を投げつけられる形に加工したものだ。誕生の経緯にはカイやラベン博士、シンジュ団キャプテンのキクイの協力があった。それ以前にはおそらく存在しなかったもの。

 

 それを模倣して寄越してくるのはつまり、この茶目っけたっぷりの創造神がギラティナの謀反から始まったショウの旅路をポップコーン片足に楽しんでいたことに他ならず、コーラによるゲップ混じりに話しかけてきたことの証左である。

 アルセウスはゲップなんてしない、とお怒りの方もおられるだろうがアルセウスは全ての技を覚えることができる。すなわちゲップだって覚えられるのである。ゲップなんてしないよ派の主張はアルセウスを否定することと同義だと言うことをお分かりいただけただろうか。

 なお上記の内容はできるできないの話でするしないを説明しようとしているため注意が必要である。

 

「……まあ、そうでしょうねえ……」

 ウォロは疲れたように大きくため息をついた。念願叶って、とは行かなかったことがありありと窺え、その端正な顔立ちに深く皺が刻まれた。

「好奇心ゆえに正規の方法を試しては見ましたが、当然ながら従えるには至りませんね。ま、今回はお会いすることが目的でしたから良しとしましょう。これでハッキリしたこともありますしね」

 

 かと思えばなんでもないような顔にぱっと切り替える。いつも被っている仮面なのか、本心からの表情なのか。それがわかる者は、少なくともこの場にはいないようだった。

 

「アナタはワタクシのことなんて見てはいないのでしょう」

 ウォロはアルセウスに向かって蟠ったものを吐き出すように、しかし敬愛の態度は崩さないままに言う。

「古代シンオウ人の血も、ギラティナを利用してアナタを引き摺り出そうと企てたのも。アナタにとっては等しく、無価値だ」

『いいえ。ひとしくかちがあるのです。あなたのこともみていますよ、ウォロ』

「アナタの『みている』は『あまねくすべてを』でしょう? そういうのは、見ていないと言うのです」

 

 会話の裏では人々がそれぞれに動いていた。

 アルセウスに珠を投げ続けるショウとそれをどうにか抑えようとするヒスイ組、何が何だか分かっていないながらもショウに倣って珠を投げつけようとするジュン。記録にペンを走らせるコウキ、アルセウスに目を奪われながらも警戒を切らさないシロナ。マーズとジュピターはちらちらとアカギを見つつ部下の統制を取り、そのアカギはアルセウスを見上げ、何かを考え込んでいるようだった。

 

 アルセウスはその星のような瞳をきらきらさせながら──今なお顔面にシズメダマがいくつも飛んでおり、そのせいでもあるが──ただ佇んでいた。

 ウォロはきらきらのカーテンを隔てた先の、見えない顔に向かって告げた。

 

「アルセウス。ご存知でしょうがワタクシはアナタと会うためにいろんなことをしてきました。時空の歪みを開き、神をトチ狂わせ、キングやクイーンを暴れさせ、ヒスイに害をなしました。ワタクシは今でもワタクシの好奇心を満たすため、そしてより良い世界を作るために犠牲が必要ならば、躊躇いなくそれを行うでしょう。その上で宣言します」

 ウォロは胸に手を当て、言った。

「ワタクシは。何年、何十年、いや、何百年かかろうと、アナタを従えて見せます。……アナタはそれを許してくださいますか?」

『ゆるします、ウォロ。たのしみにしていますよ』

 

 ウォロはそんな創造神にもう一度だけため息をつくと、わあわあと騒ぐ人の群れを眺める。

 

「行商の品にポケモンこけしというものがありましてね。ポケモンを模った玩具なのですが。お客の中には好事家もいるもので、行商の折にやってきては、やれあのポケモンだ、やれその職人だ、と一つ一つを好き好きに注文するものでした。ですから方々の職人を拝み倒して作っていただきましたよ。規格も質感もそれぞれ全く別で、揃ったそれを見ると正直言って不恰好ではありました」

 

 視線の先ではショウがシンオウのギンガ団員を整列させ、その手にシズメダマを握り込ませていた。困惑する団員、反駁する幹部。そんなものはお構いなしである。

 

「ですがそうして出来上がった玩具箱を見て、そのお客はたいそう喜びました。好きなものを詰め込んで作った箱。ワタクシには理解できませんでしたが、その人にとってはそれが光り輝く大切なものだったのでしょうね。ふと、そのことを思い出しました」

 

 おそるおそる投げつけられたシズメダマをアルセウスは避けようともせず、ただ笑みを浮かべて受け入れた。きらきらで満ちたアルセウスをウォロは眩しそうに見つめた。

 

「それでも、いえ、だからこそワタクシは思います。やはり、悲しみなど、怒りなど。そんなものはない方が良いではありませんか。……そこのアナタもそうは思いませんか?」

「……ああ」

 問われたアカギは言葉少なに答えた。

「同感だ」

「そのことなんだけど」

「……当たり前のように後ろを取らないでいただけますか、ショウさん?」

「つい」

「ついじゃありませんが」

 

 ウォロはただでさえ落ちていた肩をさらに落とし、首だけをあげてショウを見た。

 

「だいたい、ワタクシは先ほどアナタを捕らえたばかりでしょうに。警戒なさい、警戒」

「ウォロさんはこの方法だとアルセウスには届かないって知ってたはず。私がすでに試した方法だから。それにウォロさんは……」

「……なんです」

「つんでれ」

「ぶちのめしますよ?」

 

 くすくす笑って顔を背けたショウ。見ればいつのまにかヒスイもシンオウもなく、みんなこぞって珠をアルセウスに投げつけていた。

 それを見たアルセウスは楽しげに波動を放ち、珠を投げた人間のことごとくを吹き飛ばす。なんだってんだよー、と聞き馴染みのある叫びが聞こえた気がしながらも、ショウはローリング回避をひとつしてウォロとアカギに語りかけた。

 

「二人とも知ってると思うけど、私は強い」

「はあ?」

「……」

 

 腰に手を当て、胸を張ったショウ。その横ではふてぶてしくもエンペルトが同じポーズを取っており、その下にはビーダルが粘り玉のねばねばをどうにかしようとごろごろ転がっていた。

 ラスボス二人はいきなりの闖入者にこの場で一番の辛辣な目を向ける。それを気にした風もなく、ショウは無表情に口だけを動かした。

 

「私は強い。バトルもヒスイで一番強いし、どんな環境だって生きていける。ボールのコントロールだってぴかいち。あと時空も越えられる」

「あと、に続く内容のスケールが大きすぎると思いますが」

「そして、二人が世界を作り替えようとするなら。私は何度だって立ちはだかる」

 

 途端、ウォロとアカギは敵意に満ちた獣のような眼をショウに向けた。それを受けたショウは同種の笑みを浮かべる。獣が牙を剥くような笑みを。

 いつのまにかエンペルトもビーダルも重心を落とし、警戒するように二人を睨みつけている。……ビーダルについたねばねばが泥まみれで、あまり格好はつかなかったが。

 

「だから、私たちが()()()()()()()()()()私の勝ち。いつでもかかってきて良いよ。いくらでも負かしてあげる」

「相変わらずふざけた小娘ですね。説得してみせろ、とでも言うつもりですか?」

「……きれいごとに付き合うつもりはない。バトルを通じて分かり合えたなどと思われるのは不愉快だ」

「そんなつもりはないけど……とりあえず」

 

 ショウはにやりと笑って、二人に粘り玉を投げつけた。ショウの不意をつく技術が無駄に遺憾無く発揮された、見事な動きだった。

 

「これからイモモチを食べに行こう。ウォロさんはともかく、アカギの話はあんまり聞けてないし。分かり合うのも、分かり合えないのも、まずは知るところからってさっき気づいたから」

「アナタそんな思いつきで……! くっ、取れない!?」

「キサマ、ふざけたマネを……! なんだ、これは!?」

 

 二人が引きずられて行くのを見たアルセウスは楽しげに笑って、人の群れに隕石を落とした。よく晴れた空の下だった。

 

 

「なんだってんだよーッ!?」

 

 ショウの身に起きた事件──アルセウスによるヒスイ送りから今まで──のあらましを知ったジュンはお決まりのセリフを叫んだ。時空の穴がその叫びでぐにぐにと形を変え、びっくりしたギラティナが辺りを窺うようにそーっと顔を出した。

 

 ショウが二人のねばつくキャタピーを連れて皆のもとに戻ってから、いろいろなことがあった。

 ウォロのせいで活躍の機会を失ったテルがディアルガに挑まされたり、なんとか捕まえたかと思えばパルキアを手にしたショウと戦わされたり。

 ちなみにパルキアのタイプは水、ドラゴン。つまり──水である。

 

 他にもアルセウスの前で簀巻きにされたウォロの後ろ髪を引っ張るショウ、シロナにその横に立ってもらうショウ、同じ顔をしたテルと邂逅したコウキ、実は警備隊ゆえこの場に動員されておりパルキアに弟子入り志願するシュウゾウ、そういえばとディアルガパルキアついでにギラティナに合体をせがむショウ……と大半がショウのせいであるが、とにかくいろいろなことがあったのだ。

 

 そうしてショウはひとまずヒスイに帰ることにした。した、と言い切るのは少し違うかもしれない。なんせショウは両脇をセキとカイにガッチリ固められ、もはや身動きを取ることは不可能だったからだ。

 

「というわけで、いったん私はヒスイに帰るね。またシンオウに来るから、その時はバトルしよう」

「おう! てかさ、見ろよこれ! 図鑑!」

 

 ジュンがショウに見せたのは、つたない字で書かれた文字と、へたっぴな絵。雨か雪に降られたのかシワが寄っている場所もある。しかし事細かに記されたそれはポケモンの記録。ショウがジュンに渡したノートに書かれた図鑑であった。

 

「これ……」

「俺も書いてみたんだよ。そしたらさ、そのポケモンがどんなものが好きかとか、どんなことしてるかとか分かってさ、図鑑書くってすげーのな!」

 

 ジュンは得意満面に鼻を擦った。それを見て、ショウは──

 

「ここ、調べるならもう少し客観的に書いた方がいい」

 

 台無しである。うだうだと説明を始めるショウに、しかしジュンは素直にそれを聞き、へー、と感心したような声を漏らした。そしていてもたってもいられなくなったのか、うずうずと足を動かし始める。

 

「ダメだ、止まってらんねー! ショウ、オレ行くわ! またな!」

「うん。またね」

 

 返事すら待たずジュンは駆け出した。ショウは微笑を浮かべ、それでこそ、と内心で拍手を送った。

 そうしてジュンを見送ったショウは、コウキやシロナ、シンオウの面々に挨拶をして、言った。

 

「じゃあ、帰ろうか」

「お前を迎えにきたんだっての」

「帰ったらお説教だからね、ショウ? ムラのみんなに心配かけたんだから」

 両脇からの声に、ショウはげんなりとした。原因を恨みがましく見上げてみても、アルセウスはただ微笑むのみ。

「……ほんとうなら、ヒスイでは時間は経たない予定だったのに。アルセウスのせいで」

「カイなんてボッロボロになって雪掘ってたんだぞ。それ見ても同じことが言えるか?」

「セキ!? おまえ、それは言わなくてもいいだろう!」

「ショウ。調査隊の先輩として言うけど、どっか行くならまず報告だな。団長だって心配でやつれてたんだぞ。あんなに髭が伸びた団長、おれは初めて見た」

「あれ以上に……!?」

 

 ナマズンのように髭を伸ばしたデンボクを想像して愕然とするショウに、誰からともなく笑いが起こった。

 

 そうしてショウとウォロ、そしてアカギの三人の簀巻きを連れた集団はヒスイに帰っていった。ヒスイ組にシンオウギンガ団を加えた大所帯である。

 タイムパラドックスだなんだの小難しい問題を危惧したのは意外にもアカギだったが、ここはアルセウスのお膝元。ちょっとくらいの問題を()()()()とやっつけるくらい創造神にとってはわけもないのだ。

 

 やがて時空の穴が閉じると、そこに残ったのはいくつもの足跡だけだった。

 抜けるような青空の下。風はテンガン山を越えて高らかに吹いていた。

 

 

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 白黒の部屋にひとり立つシロナは階下から響くエレベーターの鳴動に目を瞑った。その口元には嬉しそうに弧を描き、挑戦者が訪れるのを今か今かと待っている。

 やがて現れた小さな人影にシロナは声をかけた。

 

「久しぶりね。元気にしてた?」

「うん。あのあとすごく絞られたけど……まあ、元気。向こうでひと段落ついたから帰ってきた」

「そうなの。こっちは楽しい?」

「楽しいよ。さっきジュンとアカギをボコボコにしてきた」

「……ジュンくんはともかく、いちおう、アカギは姿をくらませたままのはずなんだけど。ヒスイに連れていったんじゃなかったかしら?」

「もうシンオウに返したから、今はシンオウギンガ団のみんなはこっちにいる。ハクタイのビルの屋上に畑を作ってた。それにパルキアから身を隠すのは難しい。私でも三回に一回くらいは見つかるし……」

 

 他愛もない話をいくつもかけ合って、やがて二人はどちらからともなくボールを構える。

 二人は息を吸って、表情を変えた。

 

「さて、改めて──私はシロナ! シンオウのポケモンリーグチャンピオンとして、きみと戦います!」

「私はギンガ団調査隊所属、マンテンボシ団員のショウ。ヒスイ帰りの戦い方、見せてあげる」

 

 モノトーンを塗り替えるように緑の風が吹く。

 つるつるした赤いボールと羽の紋様が入った翡翠色のボール。二つのボールが、いま宙を舞った。




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