深紅の帝王、ヒーローになる 作:やっぱし侍
7部がいっちゃん好きなんや。アプリも楽しみ。
ちな、本作では主人公の成長も描きたいんで過度な俺TUEEE要素は若干薄めです。個人的には、そういう作品も超大好きなんですが、今はそういう気分じゃなかったので。
時は流れ、春の暖かさをほど近く感じられる頃合い。
新しい命の芽生えを感じさせる大地を踏みしめながら、僕はいつもの場所でスタンドの訓練を行っていた。
「…………時は再び刻み始める……っと、2.69秒か。はぁ……あれから0.01秒しか伸びてないとか、ちょっと萎えちゃうね」
放課後。少し厚手のトレンチコートを羽織った紅城は、自らのスタンドに軽く視線を送り――――切り株の上に置いたスポーツドリンクを手に取ってから、適当な場所へと腰掛ける。
「雄英入試までもう一年も残ってないとか……これじゃあ、受験当日までに3秒の壁を越えるのは厳しそうだね。ま、余程イジワルな内容でもない限り、
スポーツドリンクで喉を潤し、額に薄く滲んだ汗をハンカチで拭った紅城は――キングクリムゾンを引っ込めると、ゆったりとした動作で上着を脱ぎ捨てる。
「ま、スタンドの訓練はこれくらいにして。
カバンの中から『虎ちゃん直伝!鬼の肉体改造プログラム!!』『教えてガンヘッド先生!今日から始めるG・M・A!入門編』と書かれた書籍を取り出し、軽く柔軟体操を始める。
「ただでさえスタンドが未熟なうえ、基礎となるフィジカルまで脆弱じゃあヒーローは務まらないからね。入試までそう時間も無いんだし、出来ることはなんでもしないと」
気合いを入れ直した紅城は、可愛らしい装丁からは想像もつかないほどにハードな内容のトレーニングを開始した。
「いてて……こりゃ明日も筋肉痛だな」
夕焼けで赤く染まった商店街を歩きながら、筋肉痛で痛む箇所をマッサージで解していく。
母親から夕食のパスタで使う為のリコッタ・サラータ(リコッタチーズを塩漬けして熟成させた硬めのチーズ)をお使いに頼まれていた紅城は、トレーニングを程良い時間で切り上げたのち、電車を乗り継いで都市部にある商店街まで珍しく足を伸ばしていた。
「ただのおつかいで、わざわざ隣町まで行かなくちゃあならないのは面倒だけど…………母さんのパスタ・アッラ・ノルマは最高だからね。うん、早く買って今日は休もうか」
行きつけのチーズ専門店へと向かう足を早めた瞬間、背後から大きな爆発音と悲鳴が鳴り響く。
平和そのものだった雰囲気が一転した。正面からは『事件から』少しでも遠ざかろうと、必死に逃げ惑う住人たちが殺到する。
街全体が突如としてパニックに陥る中――
「
十数秒先の未来を見通すことの出来る紅城にとって、この程度の雑踏を躱しながら歩くことは造作もない。
もっともその能力を知らない者からすれば――それがたとえプロヒーローであったとしても――肩すら触れることなく、針に糸を通すように歩いている紅城の姿に驚愕を隠し切れないだろうが。
すぐさま騒動の中心地まで辿り着いた紅城は、目の前の光景に対して思わず目を見開く。
ヘドロ型のヴィランによって拘束(?)された同い年ほどに見える少年が、自らの個性を抑えきれずに街を爆破し破壊していた。
(いや、
ふと周りを見てみると、既に現場に到着したヒーローたちが成す術もなく立ち尽くしていた。否、かろうじて周囲の安全確保や延焼を防ごうと場当たり的な救難活動は行なっているものの、肝心の少年とヴィランに対しては手出しできずにいる。
(あの少年は人質代わりか……それにしても、あの“爆破”の個性。迂闊に近付けば木っ端なヒーローじゃあ返り討ちに合っちゃいそうだ)
状況を把握した紅城は逡巡する。
紅城であれば、爆炎を潜り抜けながらあの少年の元まで行くこと自体は超簡単だ。ただ問題になってくるのは、人質に取られた少年を“傷付けずに助けられるか”どうかであり――その点については、紅城をして五分五分と言わざるを得ない。
(もっとあのヴィランに近付いて、より詳細に未来を予知する?……いや、ヒーロー側に何かしらの算段があればかえって邪魔になる。そもそも、緊急時とはいえただの学生が個性を使って人助けすること自体グレーゾーンだし……)
八方塞がりとも言えるこの状況に、思わず眉間に皺が寄ってしまう。
とりあえず接近してから詳しく考えることにした紅城は、ヴィランの視線から外れ、現場のヒーローたちにも気付かれないようにゆっくりと歩き始めた。
そんな紅城の背後を――1つの黒い影が抜き去り、ヘドロ型ヴィランの前へ堂々と躍り出る。
「かっちゃん!!!!」
同年代の少年――深緑色の癖っ毛にどことなく冴えない印象を与える――が大勢のヒーローたちすら差し置いて、ヘドロ型のヴィランを引き剥がそうとしている。
誰がどう見ても無謀な行動――無意味で無駄な犠牲を増やすだけの蛮勇に見えただろう。
だが、
彼の自己を顧みない正義の心が!危険を承知で死地へ飛び込んで行ける彼の勇気が!8年前に見た夢の旅路に重なって見えたのだッ!!
「君が!!助けを求める顔してた!!!」
ドクンと紅城の胸が高鳴るような錯覚に襲われる。
8年前、自分が能力に目覚めたあの日のように。ヒーローになることを志したあの時のように。
退屈な日常が裏返り、非日常に誘われるような。たった今、自分の人生が大きく変わっていくような感覚がする。
(おいおいおいおいおいおいおいッ……!なんだよ彼ッ!
身体中を駆け巡る熱に身を委ね、少年の元へ駆け出そうとした紅城は――――
ヴィランに背を向けた紅城の背後で、空を裂くような爆音が鳴り響く。次の瞬間、静寂がその場を支配し――やがて平和の象徴を讃美する声と割れんばかりの歓声が延々とこだました。
「あ、せっかくだし名前くらい聞いておけば良かったかな?……いや」
頬を緩めながら先ほどの光景を思い浮かべる。
「彼もきっとヒーローになるんだろう……
モジャモジャ頭の少年との再会を楽しみにしつつ、先ほどと比べて人通りの絶えた商店街をひっそりと歩く。
少しばかり寄り道してしまったが、これならおつかいも問題なくこなせるだろう。
商店街で起きたあの日の出来事は――8年前の夢ほどではないが――少なからず紅城少年に影響を与えていた。
自分と同じくらいの年齢の少年が、あれほど素晴らしい勇気を見せつけたのだ。来たる雄英試験に向けて、スタンドとフィジカルのトレーニングにも自然と熱が入る。
とはいえ、相変わらずスタンド能力の成長は遅々としていたが――――代わりに彼の肉体は以前より逞しく、より洗練されたものへと変わっていった。
『我ーズブートキャンプ!声出して、限界越えていけぇぇぇ!!』
『G・M・Aの基本を理解することで、より実践的な身体の動かし方や武術に対する理解も深まるよ』
「アカギィ〜。お前、ウチのエースなんだからよォ〜。もちろん受けるよな、雄英ヒーロー科。お前さんが受かればよぉ〜、この平凡な私立中学の創設史上初の偉業なんだぜぇ〜。期待してるよォ〜ん」
『筋繊維を引きちぎれ!!伸ばすんだよ、身体能力!!!』
『単純な腕力に頼る必要はないよ。G・M・Aは非力な女性でも身を守る護身術として扱えるんだ。力の使い方を覚えようね』
あっという間に月日は過ぎる。商店街での出来事からおよそ10ヶ月後。
辺り一面がすっかりと雪景色に染まり、口から溢れた小さな吐息が小さな雲になって宙へと消える。誰もが家に引き篭もってしまいそうな寒波の中――紅城の周囲には人々の熱気が充満していた。
目の前に高く厳かに聳える校門。それは幾多の受験生たちを振るいにかける裁きの審判であると同時に、中へ踏み入れることを許された英傑たちに祝福と更なる試練を与える為の権威の象徴。
雄英高校ヒーロー科
それはプロに必須の資格取得を目的とした特別クラス。
日本全国に数多く存在するヒーロー科においても最難関とされ――――その倍率は優に300を超える。
「それじゃあ、ここらで軽く合格しちゃおっかな?」
雄英高校のヒーロー科試験が始まろうとしていた。
見た目と人格はどちらかと言えばドッピオに近い感じ。
あとは、みなさんご存知だとは思いますが一応……
個性『エピタフ』
キングクリムゾンが持つ能力の一端。100%の精度で十数秒先の未来を、映像として見ることができるぞ!未来の映像は映画のスクリーンのように、紅城を中心とした第三者視点で映し出される!映像になった未来は絶対だが、音声を聞くことは出来ないので解釈違いには注意だぜ!