深紅の帝王、ヒーローになる   作:やっぱし侍

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 高評価・感想くれてる方、マジでありがとうございます。
 ありがたすぎるので、思わずありがとうございますって言っちゃいました。ちくわ大明神。






第5話  入試 その②

 

 

 目の前のロボット型ヴィランを巨大化させた拳で圧し潰す。

 掌に残る金属特有の冷たい感触によって、少し落ち着きを取り戻した拳藤一佳は――次なる標的を探しながら――スタートダッシュと同時に走り去っていった“彼“について想いを馳せる。

 

(……初めて話しかけた時から『何かありそうな』予感はしてた………)

 

 ピンク色の頭髪に外国人特有の怜悧で整った――されど優しさを感じさせる顔立ち。珍しい黄色の虹彩と少年らしさを感じさせる“そばかす”が印象的だった。

 スラリと伸びるスレンダーな肉体には、よく見ればしっかりと筋肉が付いており、彼がこれまでヒーローを目指して真摯に努力してきたであろう事が理解できる。

 

 

(スタートの号令があったとき、王司だけが走り出した。そのあと、アイツがロボと戦ってるトコも見れたけど…………自分より強そうなアイツの姿に……!私、()()()()()()()()()()()()()!!)

 

 拳藤は思わず下唇を噛む。明らかに今、自分が抱いている感情は彼に対するエゴだ。

 だが、それでも!今日初めて出会っただけの関係に過ぎないとしても……!

 

 

「でもさ……2人で一緒に雄英に行こうって、発破かけ合ったんだ。私だけ出遅れる訳にもいかないからさ……!」

 

 

 『2人で一緒に受かればいい』『受験の合否を気にすることはあっても、そこで優劣を気にする必要なんて無い』自分の感情に対する正論や反論は、いくらでも思い浮かぶ。

 ただそれでも、拳藤は今日出会ったばかりの彼に『出遅れたくない!』『負けたくない!』という強い気持ちが心の奥底から湧き上がっていた。

 

 

「そっちにその気は無いだろうけど、私は実技試験(ここ)でも負ける気ないからね……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 模擬市街地に大量の受験生とロボット型ヴィランが流入したことで、本来十分なスペースが取れる筈の大通りは乱戦状態になっていた。

 過度に密集したせいで、他の受験生に押し出されバランスを崩した1人の――名もなきただの受験生である――少女は、思わずその場で尻もちを付いてしまう。

 

「きゃっ……!!」

 

 普段であればすぐに立ち上がって安全を確保すれば良いだけのことだったが――試験による極度の疲労と緊張感、そして周囲に絶えず鳴り響く戦闘音に対する恐怖心から身体が固まってしまっていた。

 自分たちの試験ことで気が急ってしまっている他の受験生たちは、彼女の存在に気付くことが出来ない。あれよあれよと集団から引き離される彼女の前に、一つの大きな影が近付いてくる。

 

 

『標的補足!!標的補足!!ブッコロス!!』

 

「あっ……ヤバッ……」

 

 動けずにいる隙を狙った1Pヴィランが素早い動きで少女に攻撃を与えようとし――――突如飛来したロボットの残骸(瓦礫片)で頭部を貫かれ、活動が停止した。

 

 

「君、そこに座ってると危ないよ。もし動けないなら、無理しないでリタイアするといい……大怪我をするよりはマシなはずさ……」

 

 

 異国情緒の溢れる、クールな顔立ちの青年が少女の横を走り過ぎる。

 言葉と対応だけ見ればかなりドライにも思えるが――彼の声音には真摯に少女の身を案じる気持ちが込められていた。

 

「あっ……そのッ!」

 

 

 少女は思わず彼を呼び止めようとしたが――一度チラリとこちらに振り返るだけで、足を止める様子は無く――既にその後ろ背中は小さくなっていた。

 

 誰も居なくなった大通り。ポツンと一人取り残された少女は、ひとまず足を動かしてみようとしたものの……やはり普段通りにはいかない。

 ようやく諦めのついた少女は、溜め息を吐きながら運営に合図を送り、彼の助言通りに実技試験をリタイアする。

 

 

 自らの雄英受験を応援してくれた友人、担任の教師、そして両親に心の中で申し訳なさを感じつつも――少女は先ほどの青年との出来事を反芻していた。

 

 

「あの人もヒーロー科志望なんだ……………ちょっとカッコ良かったかも……」

 

 

 紅城王司、15歳。雄英入試で偶然助けた名も無き少女に淡い想いを抱かせるも――本人は知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 予知能力とキングクリムゾン――そして時々近接格闘を行いながら、紅城は着実にポイントを加算していった。

 

(さっきから困ってる人を墓碑銘(エピタフ)で見つけたら、試験に影響しない範囲で助けてるけど…………あとで「ポイントの横取りだー!」とか言われて揉めたりしないよね?)

 

 少し的外れなことを考えながら、紅城は接敵したロボットの攻撃を全て回避しつつ、キングクリムゾンの拳を叩き込んでいく。

 

 

 キングクリムゾンが保有する予知能力「墓碑銘(エピタフ)」には、ある一つの特徴が存在する。

 それは『墓碑銘(エピタフ)で見通すことの出来る未来は、あくまで自分を中心としたものであり、他人の未来を見ることは出来ない』というものだ。

 

 とはいえ『じゃあ他人の未来を知ることは一切出来ないのか?』と聞かれれば、それにもNOと首を振らざるを得ない。あくまで『自分の未来しか分からない』と言っても、()()()()()()()()()()()()()墓碑銘(エピタフ)によって見通す“ヴィジョン”に()()映り込む場合というのが往々にしてある。

 

 

 つまり、墓碑銘(エピタフ)というのは『望んで他人の未来を見ることは出来ない』が『近くの人間の未来を偶然知ることは出来る』のだ。

 そして厄介なことに、その未来は100%的中する。確定した未来(運命)を知ったうえで、それを変えることの出来る人間は――この世界で唯一――“キングクリムゾン”を持つ紅城ただ1人。

 

 なので紅城は、基本的に墓碑銘(エピタフ)で他人の不幸を見てしまった際、積極的に人助けをするようにしている。それは理想のヒーローを目指す紅城の精神性から来るものでもあったし、単に「他人に不幸が訪れることを知ったうえでそれを見過ごす」という行為に、納得いかない性分だからでもあった。

 

 

 そんな性格に起因してか、今回の試験においても紅城は予知で困っている人を見つけ次第、とりあえず助けて回っていたのだが――――今になってそれが『ポイントの横取り行為』として、学校側にアンチヒーロー的だと判断されないか戦々恐々としていた。

 

 

(能力の性質上、助けを求めた人を助けるっていうか……その前に勝手に助けちゃうパターンも多いからな。性格の悪い奴に難癖付けられちゃあどうしようもないんだよね……)

 

 キングクリムゾンが破壊したばかりのロボットの残骸からパーツを毟り取り、15mほど先で見知らぬ少年の背後から突進しようとしている3Pヴィランに向けて破片を投擲する。

 少年は背後から突然聞こえた破壊音に少し困惑している様子だったが、それに対して紅城が言うことは何もない。

 

(何体倒したっけ?まぁ合格ラインは越えてるだろうけど……試験時間も残り少ないし、ダメ押しにもうちょっと……)

 

 

 

 突然、会場全体を揺らすような轟音と地響きが鼓膜を揺さぶる。

 模擬市街地の奥の方――遠くてあまり少し見えずらいが――倒壊していくビル群とそれによって出来た砂埃の中に、巨大な黒い影が浮かび上がる。

 

 

「あれが0Pヴィラン……思ってた倍くらいデカいな。あんなの使っちゃって、怪我人とか大丈夫なのか……?」

 

 思わず素の疑問が口を吐いてしまう。とはいえ、アレはあくまでも()()()()

 幸いにして自分の現在地から大分距離が空いていたので、試験終了までアイツに煩わされることは無いだろう。踵を返し、他のヴィランを狩りに行こうとしたところで足を止める。

 

「まぁ、ポイントに余裕はあるし……うん。うん、ちょっとだけ様子でも見に行こうかな」

 

 

 誰が言ったか『余計なお世話はヒーローの本質である』という。

 未だ紅城にその自覚はなくとも――彼の内に眠るヒーローとしての素質が、巨大ヴィランの元へ自然と足を運ばせていた。

 

 

 

 

 

 大勢の受験生が逃げ惑うなか、0Pヴィランはその巨体を使って大地を震わせ、街並みを次々と瓦礫の山へと変えていく。

 だが幸いにして、あのロボットに立ち向おうとする受験生が居なかったおかげか、あくまで被害が出ているのは模擬市街地の街並みだけで、人的な被害は出ていないように思われた。

 

 

(ま、そりゃそうか。こんなのに気を取られてても試験じゃ何のプラスにもならないしね……まぁ、誰も相手にしてないんなら僕も試験に戻ろっかな)

 

 無駄足だったことを喜ぶべきか残念がるべきか……複雑な感情を抱きつつ移動しようとしたその瞬間――

 

 

『た、助けて〜!!オイラのこと誰か見つけてくれ〜!うわぁぁぁん!雄英のヒーロー科に入ったらモテモテになる予定だったのによぉー!!こんなとこで死にたくねぇよぉぉおー!!!』

 

 

 勢いよく背後を振り返り、大きく目を見開く。

 確かに今、誰かが助けを呼ぶ声が聞こえた。しかしながら、紅城の視界にそれらしき人物の姿は映っていない。

 

(“姿を消す個性”か……?!いや、それとも……背丈の小さな異形型で、ちょっとした瓦礫の下に隠れてしまっているのか……!?)

 

 目まぐるしく回転する思考のなか、紅城は2つの可能性に思い当たる。

 しかし今、重要なのは仮にそのどちらのパターンだったとしても『誰にも気付かれないまま、救助されていない受験生がこの近くに居る』という事実は変わらない、ということだ。

 

 

「これは……かなりまずいぞ。あの巨大ロボがここを通過するまで、あと1分も無い……!仮に救助出来たとして、一緒に逃げきるだけの時間は残されてるか……?」

 

 

 額から脂汗を流しながら唸る。だが、もはや迷っているだけの時間は残されていない。勢いよく、瓦礫の散乱する表通りに飛び出そうとして――凛とした声に呼び止められる。

 

 

「お、王司?!な、何してるの!?こんなところに居たら危ないよ?!」

 

 

 最高過ぎるタイミングでの拳藤との再会に、紅城は盤上の駒が揃った様子を幻視し――力強い笑みを口元に浮かべる。

 

 

「ディ・モールト……!ナイスタイミングだよ、一佳…!!」

 

 

 




 


モブ子ちゃんェ……

瓦礫に埋もれてるのは一体、ナニ田くんなんだ……
あとナニ田くんは異形型では無いです……


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