深紅の帝王、ヒーローになる 作:やっぱし侍
祝!今日は拳藤一佳ちゃんの誕生日!
好きなヒロアカのキャラは一般女性です。
好きなジョジョのキャラはサマーシーズン到来おじさんです。
……すいません。片方だけ嘘つきました。
「えぇ!?逃げ遅れて瓦礫の下敷きになってるヤツが居る?!?!」
隣を並走しながら拳藤に事情を説明する。元から頭の回転が早く、優秀な状況判断能力を持っていた拳藤はすぐさま事態を理解し――逼迫した状況に思わず声を張り上げる。
「それってかなりマズいね……雄英サイドは気付いてるのかな?」
「さすがに無理だと思うよ……僕だって声が聞こえるまで一切気付けなかった。身動きが取れないなら雄英に合図も出せないだろうし、今から言ったところで救助が間に合うとも思えない……!」
「じゃあ、私らがやるしか無いって事か……!」
しばらくして最初に声が聞こえた辺りに近づくと、瓦礫の下から小さくくぐもった声で『嫌だぁ〜〜オイラ死にたくねぇよ〜!』という悲鳴が聞こえてくる。
拳藤にもその声が聞こえたらしく、精悍な表情を引き締め――胸の前で勢いよくパン、と掌を打ち合わせる。
「よっし!じゃあ2人で!この瓦礫を片っ端から掘り進めていくよ!!!」
「いや、その必要はないかな」
気合い十分といった彼女の意思を削ぐ発言に、紅城はじろりと白い目を隣から向けられた。
別に彼女のやる気を削ごうとして言った訳ではない――――最初から拳藤には
「……この場合。最悪なのは、救助に失敗して3人で仲良く0Pヴィランに踏み潰されること……探知系でもない2人が闇雲に危険地帯で救助活動をするのは下策だよ」
「……それは分かるけど。じゃあ私は何をすればいい?……紅城は1人で見つけられるの?」
「一佳には安全な場所で待機して欲しい。僕が救助者を発見し次第、すぐに連れて避難出来るように。それに僕には……探知能力は無いけど、裏ワザがある」
「……そっか。じゃあ最後に一個。……1人で怪我する気じゃないよね?」
真剣な彼女の眼差しが突き刺さる。もしここで適当な嘘で誤魔化したり、返答をはぐらかすような真似をすれば、彼女は有無も言わせず一緒に着いてくるだろう。
だからこそ、僕は一切の偽りもなく――確固たる自信の元で言い切る。
「大丈夫。
ほんの数秒、拳藤との視線が交差する。一呼吸にも満たない一瞬のやり取りだったが、彼女の瞳に様々な感情が浮かんでは消えていくのが理解できた。
やがて彼女なりに納得がいったのか――それでも若干不満げな表情をしていたが――紅城の額に軽くデコピンをする。
「いてっ」
「今回!今回だけはアンタのこと信じて、その作戦に乗ってあげるけど……次からは無茶させないからね!」
「はははっ……あぁ!じゃあ後ろは任せた!一佳!」
目の前に聳え立つ瓦礫の山を、スタンドの腕を使ってパルクールのように駆け登る。先ほどよりも0Pヴィランによる地響きは激しさを増し、見える姿も大きくなってきている。目算だが――救助にかけられる時間は30秒が限界だろう。
『うわぁぁん!オイラ童貞のまま死ぬなんて嫌だぁぁ!!死ぬ前にたくさんおっぱい揉んで、いやらしいお姉さんの腰にしがみつきてぇよぉぉぉ!!!』
「王司、コイツのこと見捨ててもうちょっとポイント稼ぎに行かない?」
瓦礫の下から聞こえる断末魔に対して、驚くほど冷たい声音で拳藤が何かを言っていたが――紅城はそれを聞かなかったことにする。
慎重かつ迅速に積み上がった瓦礫をキングクリムゾンで撤去しながら、紅城は能力を発動させる。
「
自分を中心とした第三者視点での未来のヴィジョンが浮かび上がる。一見すると、この状況において“使う意味のない能力”に思えるだろう。
しかし、エピタフに映る映像は“自分を中心とした第三者視点”であり、普段死角になっている場所も含めて、より広い視野で周囲を見通すことが出来るのだ。実際、この能力の応用で「自分からは位置の分からない、近くにいる敵」を索敵したりもする。
『あれ、オイラの上から音がする……?誰か助けに来てくれた……?』
(声が近くなった……!それだけじゃない、キングクリムゾンが瓦礫を退ける音も聞こえている……!)
「あぁ……!!たった今、上で瓦礫を退かしてる最中だ!詳しい場所が知りたいから、声を出し続けてくれ!」
紅城の声が届いた救助者の少年は、歓喜の雄叫びを上げながら「こっちだ」と言わんばかりに自らの場所をアピール(少しうるさいと思ったが)し始める。そしてようやく……………
「見つけた……!!」
エピタフの映像で少年の姿を発見する。
だが、その直後。ドシン、と腰が浮くほどの衝撃を感じる。すぐさま背後に視線を送ると――自分のすぐ真後ろまで巨大ロボットが迫ってきていた。少し前の交差点で、青褪めた表情の拳藤が泣きそうになりながらこっちを見ている。
「王司、危ない……!逃げて!!」
絶対絶命の危機的状況。
しかしそんな状況に追い詰められて――紅城は笑みを深めていた。
「危ない……って?一佳、それは間違いさ。僕たちは
巨大ロボットが紅城たちを踏み潰そうと足を上げるのと同時――キングクリムゾンが瓦礫の山にラッシュを叩き込む。
細かなコンクリート片が宙に舞うなか、埋もれていた救助者がようやくその姿を現す。
「一佳!“
しかし、そんな救助者には目もくれずに一言だけ告げてから――キングクリムゾンが救助者の背中を掴み、彼女の元へ全力投球した。
「いや〜、あんたのおかげで助かったぜぇ。なぁ、もし良かったらららららら……!」
拳藤は――若干取り乱していたが――とっさの判断で両手を巨大化させ、サッカーボールのようにきりもみ回転しながら飛んでいく少年をキャッチした。
「ベネッ!救助完了……だ」
そう言い終えた直後、紅城の姿は0Pヴィランの巨大な足が作り出した――真っ黒な影によって全身を覆われる。
あまりに怒涛の展開が続いたせいで私――拳藤一佳はロクに声も出せず、ただ呆然と立ち尽くしていた。
「えっと……ギリギリで救助者を見つけたと思ったら、凄い勢いでこっちに投げてきて…………え?あ!そ、そうだ!?お、王司?!早く王司を助けないと!!」
0Pヴィランの進行によって舞い上がった、砂塵の中を掻き分けながら紅城を探そうとし――――ふと、ある疑問を抱く。
(あれ?そういえば私、王司が踏み潰された瞬間を見たっけ……?いや、それどころか0Pヴィランが進むときの“音”も“衝撃”も感じなかったような……?)
混乱する拳藤に対して、まるで答え合わせをするかのように聞き覚えのある声が砂塵の中から聞こえてくる。
「この巨体相手に“今のキングクリムゾン”じゃあ、さすがに歯が立たないね……本気でぶっ壊そうと思って拳を叩き込んだんだけど…………ともあれ“動きを止める”だけなら問題なかったな」
一陣の風が吹き、閉ざされていた視界が一気に開ける。
「え?」
つい先ほどまで紅城を踏み潰さんとしていた巨大ロボットが仰向けにひっくり返っている。対照的に、窮地にあったはずの紅城は全くの無傷で――服が砂埃によって多少汚れている程度だった。
またよく見てみると、0Pヴィランの片足(紅城を踏み潰そうとしていた方)の側面には複数回にわたって強い衝撃が与えられたような痕跡が残っており――――恐らくはこれが原因でバランスを崩し転倒したのだと予測出来る。
(一体、いつの間に……?これは王司がやったことなの……?!)
「やれやれって感じだよ……まぁ、ともあれ。“救助者を助ける”っつー任務は成功したな」
苦笑する紅城がこちらへ向かって歩き出すのと同時に、プレゼントマイクによって試験終了が告げられた。
「なぁ、助けてもらったオイラが言うのもなんだけどよ。お前、殺していいか?」
拳藤からの質問責め(というより心配責め)を躱しながら3人並んで歩いていると、先ほど助けたはずの少年から射殺さんばかりの視線を向けられる。
「……なんで?試験うまくいかなくて不完全燃焼……みたいな?」
「おい、お前オイラがさっきまで地面に埋まってたことイジってんのか?あ?」
やたらと好戦的な態度を向けてくる少年――どうやら名前は峰田実というらしい――に若干辟易しながらも、とりあえず会話を続ける意思だけは表明する。
「誤解だよ」
「……まぁいい。100歩譲ってオイラをボールみてぇに投げたことは許してやる…………結構アブない状況だったみてぇだしな」
「……うん」
「だがよぉ!!天下の雄英受験に自分の彼女連れてくるったぁ、どういう了見だ?!さっきから見てりゃ毎秒毎秒イチャつきやがってよォ……てめぇらオイラに殺されてぇのか?!」
あんまりな峰田の難癖にどう答えようか迷っていると、今度は反対側から――顔を赤く染めた拳藤が大きく驚きの声を上げる。
「……は、はぁ?!ちょ、ちょっと待ってよ。王司……紅城とは今日偶然会っただけで……別に私、彼女とかじゃないんだけど?!」
「テメェ……受験当日に女ナンパして、引っ掛けるとかよぉ……それでもヒーロー科志望か!?」
「ナ、ナンパ!?ヒ、ヒッカケル?!」
酷すぎる峰田の言い分に段々と日本語がおかしくなっていく拳藤の様子を尻目に――紅城は思わず眉を顰める。
(コイツ……今からでも、もう一度瓦礫の山に埋めてやろうかな……)
不穏な考えが頭の中を過ぎるも、それをなんとか深呼吸ひとつで押し込める。
拳藤と峰田の小競り合いを聞き流しながら歩みを進めていると、ようやく他の受験生たちが集まっている場所に到着した。人垣の中心には“治癒ヒーロー”のリカバリーガールが立っており、傷付いた受験生たちの対処にあたっていた。
「なぁ、峰田。お前も診てもらったらどうだ?頭とか強く打ったんじゃないか?」
「お前、やっぱオイラのこと煽ってんだろ?お?」
「ちょっと!2人とも止めなよ!……あと私、ナンパされてホイホイ着いてくような女じゃないんだけどね?」
3人でガヤガヤと喧しくしていると、いつの間にか自分たちの周りに謎のスペースが出来ている。ふと気になって辺りを見渡すと、他の受験生たちが物理的にも距離を置くように、遠目から冷たい視線をこちらに投げかけていた。
紅城は内心で、こんな扱い受けることになった原因を全て2人の責任だと結論付ける。しばらくして、いよいよ自分たちの周りから誰も居なくなりそうになったタイミングで――――どこか見覚えのあるような(見覚えのないような)1人の少女がこちらに駆け寄ってくる。
「あ、あの……すみません!ちょっと良いですか……?」
「……どうしたんだい?もしかして、オイラに何か用でもあるのかな?」
「いや、マジで違うんで。ホント勘弁してください…………そちらの男性の方に用があって……」
「……僕?」
人間を辞めてしまいそうなほど凄惨な表情を向けてくる峰田を無視しつつ、自分に用があるという少女の正面に立つ。
少女は顔を赤らめながら――まるでこれから告白するかのような面持ちで――じっとこちらを見つめてくる。さすがに居た堪れなくなったため、自分から話を切り出そうとして――――ようやく少女が口を開いた。
「えっと……私、この試験で貴方に助けてもらって……まぁ結局、途中でリタイアしちゃったんですけど…………そ、その!どうしても、もう一度会って直接お礼をしたかったっていうか……!」
「ん?……あぁ、もしかしてあの時の?別に試験中のことだし、気にしなくていいよ」
「いえ!それじゃ私の気が済まないっていうか……これ受け取ってください!!」
そう言うと少女は、丁寧に折り畳まれた一枚の小さな紙切れを渡してくる。中を確認してみると、丸みを帯びた小さな文字で何かしらのアドレスが書かれていた。
「……えっと……これは?」
「私のアドレスです……また改めて、直接お礼がしたいので。時間が出来たとき……そこに掛けてきて下さい。そ、それでは……!」
それだけ言い終えたあと、まるでこの場から逃げ出すように背を向けて走り去っていく。
もちろん。彼女は試験で助けてもらったことに対して、ただ純粋にお礼がしたかっただけだろう。紅城としても、自分の行いが評価をされて他人から感謝を告げられることに悪い気はしない。――――そう、話を厄介にしそうな
「て、てめぇぇ……やっぱ思いっきりナンパしてるじゃねぇか……!しかも1人じゃ飽き足らず2人だと……?!何しにここに来てんだ?あ?」
「王司……いや、
血涙を流しながら怒り狂う峰田に、背中から般若を幻視させる拳藤。
一体、何をどう勘違いしたのか。やたらとこちらを敵視してくる峰田と和解し、なぜか不貞腐れてしまった拳藤の誤解を解き終わる頃には(試験終了から軽く数時間は経過していた)精神的疲労のピークに達した紅城は、割と本気で発狂しそうになっていた。
かくして、紅城のヒーローを目指す道のりの第一歩目であり――生涯忘れることのない思い出にもなった――雄英高校ヒーロー科入試は無事(?)に終わりを告げる。
モブ子ちゃんェ……まさかの再登場(多分、もう出てきません)
承太郎が3部でイギーを投げたので、
本作主人公には峯田を投げさせました。