深紅の帝王、ヒーローになる   作:やっぱし侍

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キングクリムゾンってまあまあクソゲーみたいな性能してるよねって話。






第7話  新天地へ

 

 

 キングクリムゾンの真骨頂でもある『時間を飛ばす』能力にはいくつかの法則(ルール)が存在する。

 

 

ルール① 飛ばした時間を認識出来るのは、能力者である紅城とキングクリムゾンのみである。

ルール② 飛ばした時の中では、紅城とキングクリムゾンはありとあらゆる物理的干渉を受けない。

ルール③ 時を飛ばしている最中、紅城とキングクリムゾンは直接他の生物に干渉することは出来ない。

ルール④ 飛ばした時の中で、()()()物質に干渉することは出来る。

ルール⑤ 連続で時を飛ばすことは出来ない。

 

 

 大まかに分類すれば、この5つになるだろう。これらについて、より詳しく話していこう。

 

 まずはルール①。キングクリムゾンが能力を発動した瞬間、世界は暗い闇に呑み込まれたようにガラリと変貌する。まるで時間がゆっくりと進んでいくような状態で――――()()()()()()()()()()()()()()()()ようになる。

 この世界に入り込めるのは能力者である紅城本人だけであり、生物・無生物に関わらず、他の全ての存在はこの時間を認識する事はおろか()()()()事さえできない。つまり、紅城だけがこの消し飛んだ時間の中を自由に行動することができ、他の者にとっては能力解除後にその結果だけが残るという仕組みだ。

 

 そしてルール②。基本的に、時を飛ばしている最中は本体とスタンドはあらゆる干渉を無効化する。

 例えば、発砲された弾丸は肉体をすり抜けるようにして貫通するし、『時を飛ばしている間であれば』猛毒が充満したガス室や燃え盛る炎の中にあっても紅城がダメージを受けることはないだろう。実際、ディアボロはナランチャによるエアロスミスの攻撃をそのように対処していた。

 つまり、能力発動中は『あらゆる能力と攻撃がすり抜ける』状態になる。

 

 そしてルール③。これはデメリットにあたるが、『能力発動中は本体とスタンドが他の生物に対して、直接触れることが出来なくなる』のだ。

 とはいえ、全く干渉出来ないという訳でもないのだが…………ともかく生きている者に『直接攻撃する』ためには一度能力を解除しなければならない。

 

 そしてルール④。これは一見すると、②と③の法則に反しているように思えるだろう。ただ簡単に言ってしまえば、能力発動中であっても()()()()()()「物を壊したり」「物を拾ったり・投げたり」する程度なら可能だ、ということだ。これを応用すれば「時飛ばし中に、周囲の物を利用しながら逃げ隠れする」といった真似も出来る。

 だか何より、()()()()()()()()『間接的であれば生物に干渉出来るようになる』ことにある。

 

 具体例を挙げるなら、『誰かの腕を掴んで引っ張ることは不可能だが、服を引っ張って動かすことは可能』だし、『スタンドで直接攻撃することは出来ないが、物を投げて攻撃したり、手に付着した血を飛ばして視界を塞ぐことは可能』なのである。実際、ディアボロはこの法則を利用して「ミスタのピストルの破壊」「トリッシュの腕の切断と連れ去り」「ナランチャの暗殺」「血の目潰し」という芸当を行っていた。

 

 そしてルール⑤。これは『常に能力を使い続けることは出来ない』というものだ。

 具体的に言えば、時間を消し飛ばせる最大値は十数秒(本家)であり、また一度能力を使用したあと「次に能力を使えるようになる」には、飛ばした時間のおよそ2〜3倍のクールタイムが必要になる。このクールタイムは、如何なる方法を用いても短縮することが出来ない。

 しかし逆に言えば、一度に飛ばす時間が短ければ(0.5~1秒くらい)クールタイムによるデメリットを感じさせずに、コンスタントに能力を使い続けることも可能である。

 

 

 

 

 さて、ここまで長々とキングクリムゾンの持つ『時間を消し飛ばす』能力について詳しく解説をしてきたが……言ってしまえばシンプルだ。

 

 

『能力発動中の十数秒間(本家)が無敵時間になり、誰にも気付かれず・干渉されずに自由に移動したり、物質に触れたりする事も出来る能力』

 

 

 まさに帝王の名に相応しい――――理不尽を体現する、凶悪な能力である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほとんどの照明が落とされた暗い室内を、巨大なモニターの青白い光が照らしている。

 雄英高校の職員室近くに存在する、とある一室。そこにはヒーロー科を中心とした、多くの雄英高校の教員たち(中には校長までも)が揃い踏みしていた。

 

 彼らの目標はただ一つ。雄英高校の花形(はながた)でもあり、この国の未来を支えうる人材を見極めるため――ヒーロー科の実技試験の映像を確認しながら、受験生たちの個々の()()を吟味していた。

 

 

「実技総合成績出ました」

 

「まさか救助ポイント0で()()()()とはなぁ!!」

 

「1Pや2Pは標的を捕捉し、近寄ってくる。他の受験生が後半になり鈍っていくなか、派手な個性を出し続けて目立って迎撃し続けた。タフネスの賜物だ!」

 

「対照的に敵ポイント0で8位」

 

()()に立ち向かったのは、過去にもいたけど……ブッ飛ばしたのは久しく見てないね」

 

「思わずYEAH!て言っちゃったよ」

 

 

 例年以上に有望株が発掘された今年の実技試験に対し、雄英の教師陣たちは声高らかに話し合う。

 そして、今年の合格者たちに対するおおよその称賛と評価を終えたあと――――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()『ある学生』の話題へと移る。

 

 

紅城王司(あかぎおうじ)。個性『キングクリムゾン』か…………キングクリムゾンってなんだ?」

 

「どうやら『十数秒先の未来を予知する』ってのと『赤い人型(スタンド)を自由に操れる』って個性らしいな。届出には発動型って書いてあるぜ?」

 

「なるほど……彼の的確な状況判断は、その予知能力の賜物ね!人型(スタンド)(?)も中々パワフルで素晴らしかったわ!!」

 

「それもそうだが…………彼自身、個性に依存することなく見事に鍛え上げられている。途中、彼が使っていたのは『ガンヘッド』考案のG・M・A(ガンヘッド・マーシャル・アーツ)ではなかったか?」

 

「ヴィランPが52、レスキューPが25か……試験終盤に0Pヴィランに固執さえしていなければ、さらにポイントを稼げていただろうが……」

 

 

「おいおい待てよ。そもそも俺はこの少年(リスナー)が、()()()7()7()P()()()取れてないってのに満足いってねぇんだぜ?」

 

 

 白熱する講評に対し、ボイスヒーロー『プレゼントマイク』が口を挟む。

 彼がこれから口にするであろう内容に対して、ここに集まった教師たちはみな心当たりがあったからか――――興奮冷めやらぬ様子だった室内が、水を打ったかのように静かになる。

 

 

「実技試験のラスト。あの0Pヴィラン(デカブツ)をひっくり返したのは()()()()()()()()。それは状況証拠から見ても間違いねぇハズだぜ」

 

「確かに。あの時、0Pヴィランの付近に居たのは…………救助された者を除けば、紅城と拳藤という受験者しか居なかった。現場の打撲痕から見ても、紅城がやった可能性は高い……」

 

「なら……!!」

 

「しかし……ねぇ??運悪く全ての監視カメラ・監視ドローンに()()()()()()()()()が起きたんだ。彼の会場はおろか、他の会場においても、その瞬間にあたる『3秒程度』の映像が記録されていない…………そしてこれは雄英(こちら)側の不手際だが、現地で雇っていた試験監督役のプロヒーローたちも『()()()0()P()()()()()()()()()()()()()()()()』という。まぁ、不運としか言いようがないな」

 

「ところで、そのシステムエラーの原因について、何か分かったことはあるのかしら?」

 

「何も……ただ、まぁ外部から侵入された形式もないみたいだし。電波障害の一種じゃないか、って話だ」

 

 

 個人的な感情から、いつまでも試験結果に納得がいかない様子のプレゼントマイク(とその他にも数名の教師たち)に埒が開かないことを感じ取り――先ほどからずっと口を噤んでいた――抹消ヒーロー『イレイザーヘッド』こと相澤消太が、ついに重い口を開く。

 

 

「何はともあれ、肝心の記録が無かったんだ。特定の学生を()()()()()()ことはあっても、()()()()()()なんてことは、天下の雄英入試じゃあり得ない。こちらの不手際は認めるが……結果は結果。それに奴の場合、最後の救助Pを加算せずとも『今年の主席合格者』という立場に変わりはない。なら、これ以上この議題を引っ張るのは非合理的だ」

 

 

 相澤の一言をきっかけに、場に賛同するような気配が満ちる。

 やがて異論が出ないことを感じ取った根津校長は、この議題に対して1つの結論をまとめる。

 

 

「うん。考えはまとまったみたいだね!もちろん、私も相澤くんの意見に賛成さ!……とりあえず、システムエラーの件に関しては調査を進めておくとして……今年の一年生に対しては特例措置を取ることにしたよ」

 

「特例措置……ですか?」

 

「うん!なにせ主席合格が2人も出たからね!……その分、今年の合格者数を1人増やすことにしたのさ!」

 

「とすると……A組が21人、B組が20人って感じですか?」

 

「ま、そうなるだろうね!何はともあれ、今は将来有望なヒーローの卵たちの入学を祝福しようじゃないか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 雄英入試が終わり、数週間が経ったころ。

 紅城がいつものように自宅で寛いでいると――小さな小包を抱えた父親がこちらにやって来る。

 

「おい、王司。お前宛てだぞ……送り主は『雄英高校』だってな」

 

「雄英……もうそんな時期か。ありがとう、父さん」

 

 一言お礼を言ってから小包を受け取ると――いつもならすぐ仕事場(アトリエ)へと戻ってしまう父親が、どこかソワソワした様子でこちらを窺っているのが視界の端に見える。

 

「気になるの?」

 

「は、はぁ!?な、何を言ってるんだ。お前は!父さんは少し休憩しようと思ってだな……」

 

 とっくに40を過ぎている実父のツンデレ姿に若干辟易してしまうが――ここまで気に掛けてくれている優しい父を、ここで追い返してしまうのも忍びなかったため、2人でソファに腰を降ろして小包を開ける。

 

(母さんには後で報告すれば良いか……にしても父親(こんなの)でも未だに母さんとラブラブだからな……まぁ、仲が良いに越したことはないんだけど。父さんも母さんも変なところで感性が若いから、学生カップルのイチャイチャを見てるみたいでしんどいよ……)

 

 

 心の中でボヤきつつ、小包の中に入っていた物を取り出す。

 中身は手のひらサイズの小さな機械で――それを机に置いた瞬間、機械が起動し空中に映像が投影される。曰く、自分が今年の()()主席合格者であること。曰く、試験には救助Pというヒーローの素質を測る基準があったこと。曰く、今年からオールマイトが教師として勤めること。

 

 どの情報も紅城を驚かせるに値するものだったが――隣で自分以上に大きなリアクションを取っている父の姿を見て、自然と冷静さを取り戻した。

 映像が終わるなり、父は大喜びで無邪気に自分の合格を祝福してくれた。やがて「母さんにも伝えてくる」とだけ言って部屋を飛び出し――紅城は1人ポツンと取り残された。

 

 紅城の心に、いくつもの感情が湧き起こる。父と母への感謝。自分の“目指す夢”へ一歩近付いた喜び。試験を通じて仲良くなった拳藤と峰田に関すること。

 無数の情動に支配されつつも、紅城の脳内には()()()()()()()が残っていた。

 

 

「僕と同じ『主席合格者』……か。どんな人なんだろうね」

 

 

 





Q.爆豪を雄英入試の結果で1番イラつかせるにはどうしたらいい?
A.相手が過小評価された上での同率1位。


キンクリの能力は難解なので、ここで一回全部説明しとこうと思いました。

追記)紅城が人助けをする際は、誰かの不幸な未来が確定する前に「不幸っぽい」ヴィジョンが見えたら助けに行ってます。「落ちそう」「ぶつかりそう」「転びそう」など
ただ、不幸な未来が確定してしまった場合は、時飛ばしを使って助けてます。(この試験では使ってませんが)
説明が分かりづらくて、すみません……





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