「おっはよー!」
春休みが終わり、花は初めて二年生の教室へと足を踏み入れると、元気に挨拶をする。
「花ちゃん、おはよー」
「相変わらず元気だなぁ、車田」
「なんか久し振りに感じるなー」
各々雑談していた生徒達も、花の方を向き挨拶をする。
と、そこへ青味がかった黒のロングヘアーをハーフアップにした少女が近づいてきた。
「おはよう、花ちゃん」
「あ、彩芽ちゃん!おはよー!」
「うふふ。二年生早々に遅刻しなくてよかったね」
「ゔっ……」
時計を指さしてからかう様に笑う彩芽に、花は大げさに反応する。
そんな花を見てクラス全体が笑い、明るい雰囲気になる中、花の持つカバンがもぞりと微かに動いた。が、それに気付いた者は誰も居なかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
学校が終わり、帰宅途中。鼻歌を歌いながら歩く花のかばんのチャックが勝手に開くが、花は気付かない。
「ふんふふ〜ん」
「陽気だな、花」
「そりゃあ、勿論!彩芽ちゃんと同じクラスになった……しぃぃっ!?」
カバンからするりと這い出たジャックに、話している途中で気付き、驚きで仰け反る。
「ちょっ、ジャック!?なんで居るの!?」
「今日一日、花のかばんに入っていたからな」
「うえっ!?学校で見た時は入ってなかったよ!?」
ガバっとカバンを大きく開けて確認する花に、ジャックは胸を張って答える。
「そりゃあ、バレないように隠れていたからな」
「そもそもなんで入っていたの!」
「それは、コーリナーがいつ来るか分からないからな。下手に離れていたら大変だろ」
「うっ、確かに……」
ジャックの言葉にガックリと肩を落とす花。それを見ながら、ジャックは声を掛ける。
「そう言えば、花」
「ん、なにー……」
「今更だが……この町の名前ってなんだ?」
ジャックの質問に、「あ~……」と数秒間何かを考える花。そして、
「よし、今度の日曜日案内するよ!」
「何を!?」
「この町……カンランシティを!」
突然元気を取り戻した花はそう宣言するなりジャックの首元を掴んで腕の中に抱きかかえると家へと勢いよく駆け出した。
「ちょっ、いきなり過ぎ……!?」
花の腕の中でジャックが何かを言っていたが、残念ながら花の耳には届かなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
時は流れ日曜日。花は自室の姿見の前でポーズを決めていた。
アンダーに白のボトムを着て、ピンク色をしたレイヤード風の肩出しシャツと同色のベルト付スカートが動きに合わせてひらひらと動く。
「ふふーん♪」
「何やってるんだ、花」
その様子を後ろで呆れたように見ているジャックに花はくるりと振り向いた。
「乙女はおしゃれにも気を使うんですー。……それより!」
ビシッと指をジャックに突き付けると、花はジトーっとした目でジャックを睨む。
「何乙女の着替えを堂々と見てるの」
「寝る時も花の部屋にいる事に文句を言わないのに、なんでそこだけなんだ?」
「いや、バレちゃいけないから部屋に匿うのは仕方ないにしても、着替えは別でしょ!?目を隠すとか、色々方法あるじゃん!」
花の文句に対して、ジャックはフッと鼻で一笑する。
「なあ、花」
「ん、何」
「お前はオスの犬に発情するか?」
「するわけ無いじゃん!?」
唐突な下品な言葉に、顔を真っ赤に染めて怒鳴る花。それに対してビシリと指さすジャック。
「それと一緒だ。俺は花の裸なんぞ見ても何も感じんし欲情しない。異種族だからな」
「なるほどねぇ。……って、私の事さらっと犬扱いした?」
「してない」
ジト目で見てくる花から、ジャックは必死になって顔を逸らしたのだった。
キュアウインク。蜂蜜のドストライクゾーンにド直球でした。
……お母ちゃん。新しい推しが増えたよ。