Side:彩芽
グラウンドワンで花達と別れた彩芽は、鍵を開けて自宅へと入る。
リビングの電気を付けると、机の上に置かれた手紙に気付き手に取った。
『彩芽へ
帰りが遅くなるので、
これでデリバリーを頼んでください
母より』
「……またか」
彩芽は感情が籠もっていない、無機質な声で呟くと、手紙が置いてあった近くに有った千円札2枚を手に取ると、カバンからスマートフォンを取り出して出前を取った。
四十分経つと、リビングには空になったトレイや割り箸が隅に追いやられ、机の上にはノートや教科書が広げられていた。
「……あ、もうこんな時間か」
ふと顔を上げて時計を見た彩芽はそう呟くと、すぐさま机の上に広げていた勉強道具を片付け、ゴミをゴミ袋へと捨てて風呂へと向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
彩芽の家は所謂母子家庭と呼ばれるもので、安い事だけが取り柄のような、古いアパートで母子二人で暮らしている。
物心ついた時から母と共に食事をした記憶が殆ど無く、幼少期の彩芽は母の古くからの友人でもある花の一家に度々お世話になっていた。花とはその時からの付き合いで、まるで姉妹のように育っていた。
小学三年生になってからは夜は一人で留守番をするようになり、晩御飯は母が予め買っていた惣菜や冷凍食品、今では食事代が置かれている為、彩芽は此処何年も出来立てのご飯というものを食べていない。
無論。母は母で彩芽が苦労せずに過ごせる様にと昼夜働いている事は理解しているし、花を始めとした友人もいる為彩芽は寂しいと思ったことは殆ど無い。けれど、何故だか稀に空虚感を感じるのだ。そんな時こそ勉強に逃げる為、彩芽は成績は学校でもトップで居続ける事が出来ていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
チャポン……
(花ちゃん、何だか前よりも目が輝いていたなぁ)
湯船につかりながら、ぼんやりと昨日と今日の事を思い返す彩芽。
彩芽の中で花は元々元気で活発な印象であったが、進級してからは更に明るく元気になった様に思っていた。
それが、花が魔法少女になっていたからである事が分かり、彩芽は納得してしまったのだ。
しかし、それと同時に、何も夢も目標もない自分がひどくちっぽけで空っぽに思え、トキメキングダムを復活させようと頑張る花に嫉妬心を覚えてしまったのも事実だった。
その嫉妬は的外れで馬鹿馬鹿しいものだと彩芽自身も理解している。
彩芽はそんな自分が嫌いだった。そして、そんな自分とは対局的な花に憧れを抱き、そんな花の親友である自分が誇らしく、そしてそう思ってしまう自分もまた、嫌悪しているのだった。
てなことで、彩芽ちゃんの掘り下げ回でした!彩芽ちゃんは花ちゃんにクソ重クソデカ感情を持っていますけど、別に百合っ子ではないからね。うん。ただ、クソ重クソデカ感情を持っているってだけだから。