Side:ネージュ
二人目の魔法少女、マギアビリーフが誕生してから数日が経った頃。私は新しいサメンダーを送り込んで……いなかった。
別に活動をサボっているわけではなく、魔法少女になってもらっている彼女達が今現在、中間テスト期間なのだ。
巻き込んでいる側が何を言っているのかと思われるかもしれないが、別に私は彼女達の生活を壊したいわけではないので、テスト期間は活動を自粛しているのだ。
「……かと言って、やることも特に無いから暇になるのだけれど」
ふらふらと当てもなくカンランシティを歩いていると、
「ん?」
何やら少し離れた所に人混みが出来ているのが見えた。それが何故だか無性に気になり、近寄って人垣の隙間から背伸びして覗き見ると、何やらお嬢様のような風貌の少女がカフェのテラスで優雅なティータイムをしていた。
何処かで見たことあるような気がして、周りの声に耳を傾けると、その正体を思い出した。
彼女の名前は日向葵。現在、大手とも言われるVTuber企業の一つ『ヒューガ・バーチャル・エンターテインメント』の代表取締役社長を若くして務めている才媛である。
ごく稀にだが、自身も動画投稿サイトの公式チャンネルで出演している為、そこで見かけた事があったのだ。
さて、そんな彼女だが、秀でた才能もそうだが、容姿も優れており、オレンジがかった茶色……所謂テラコッタカラーのウェービーヘアにイエローレッドのタレ目からゆるふわなイメージを抱かせる美少女なのである。ついでに、驚異的な胸囲もお持ちだ。
その為か、有名人ではあるが芸能人では無いにも関わらず、多くのファン(特に男性)が居る。それが彼女、日向 葵なのである。
……そう言えば、彼女が住んでいる別邸はカンランシティにあったんだっけな。通りで、この町に居る訳だ。
人垣(よくよく見れば男ばかりだった)から離れると、先ほど見た日向 葵の姿を思い返す。
何とも因果なものか、彼女は驚くべき事に魔法少女になる才能まで有していたのだ。それもあの花ちゃんと並ぶ程に。
これは利用すべきではないか。いや、すべきだ。と、一人勝手に反語まで使った小芝居をしていると、先程の追っかけ達がザワザワとざわめき出す。どうやら日向 葵……もう面倒くさいな、葵で良いか。葵が退店するようだった。
すぐさまその場を離れると、宇宙船に格納していたグフットを少し離れた建物の上に召喚する。
「グッフッフッ!さぁ、今日こそ……」
「あら、そこの豚さん」
「この……って、あらぁ?」
遠隔操作で前口上を言わせようとした瞬間、葵に声をかけられてしまい、中断してしまう。
「何だ、小娘」
「まぁっ!小娘なんて、失礼な言い方!そのうえ、勝手に屋根の上に立つなんて、行儀の悪い……。豚さん、早く降りてきなさいな!」
「いきなり豚さん呼ばわりする小娘も失礼だろーが!?」
言い返させると、葵は「あら、それは確かに……」と何故だか素直に頷いた。なに、この娘……。
「豚さん呼びしたのは謝りますから、とにかく降りてらっしゃい。豚さん」
「結局読んでるじゃないか!?もういい!トンだ時間の無駄だったブヒッ!そこのお前、お前の心、凍りなー!」
「うわあーッ!」
葵との会話を無理やり終了させて、逃げ遅れていたカフェのダンディーな店主からコーヒーカップとコーヒーポットを片手ずつに持ったコーヒーサイフォンのような姿のサメンダーを生み出させる。……コーヒーサメンダーって、冷めたコーヒーか?あまり美味しくなさそ。
……ってか、そう言えばテスト期間中なのに、呼んじゃったよ。やっちまった!
……ごめんよ、花ちゃん、彩芽ちゃん……。
キュンキュンレーザー、パなくね?と蜂蜜は思いました。
TIPS
各々のソウジュール放出量目安
一般人:1
ビリーフ:1.8
アフェクション:2.1
ポジティブ:5.4
……花ちゃん、凄まじいね。