サラサラと流れる小川の音が耳朶を打つ。風に吹かれた桜の花びらが澄み切った青い空をふわりふわりと舞う。まさに春麗らかというべき天気である。
ここは、カンランシティ。自然あふれるニュータウンである。
「フンフンフ〜ン♪」
そんなカンランシティを流れる川沿いの遊歩道を、鼻歌を歌いながらのんびりと散歩する少女が居た。
肩までの長さに整えられた焦げ茶色のミディアムボブを、ピンクのカチューシャで纏め、ブラウンの瞳はキラキラと輝いている。
「も、う、す、ぐ、新学期っ♪わ、た、し、も、お姉さん〜♪」
実に浮かれた様子で即興ソングを彼女の名前は車田花。オリーブ学園中等部に通う中学生で、もうすぐ二年生になる。
花の浮かれっぷりを何も知らない通行人はぎょっとした顔で見るが、殆どの人は「相変わらず元気だな」とにこやかに見送る。いつものことのようだった。
と、その時。
「うわ~んっ」
どこからか泣き声が聞こえた途端に、花の顔は真剣なものに変わり、泣き声のする方へと走り出す。
駆けつけ先では転んだのか、小さな男の子が這いつくばった姿のままグスグスと泣いていた。
「君、どうしたの!?」
「うっ、ぐすっ」
男の子に駆け寄り屈むと、花は優しく男の子に話しかける。
「転んじゃったの?ほら、起き上がろう。だいじょーぶ。私がいるから、ね?」
「……うん」
花の手を借りて、のそりと起き上がる男の子。左の膝から赤い血が滲んでいた。
「ほらー!起き上がれたよ。ね、大丈夫だったでしょ?強い強い♪」
優しく男の子の頭を撫でる花。お姉さんに優しく微笑まれて頭を撫でられたからか、男の子は顔を真っ赤に染め上げていた。
と、そこへ
「コウター!」
「あ、お母さん!」
駆け寄ってきた妙齢の女性へ向かって男の子はタタタッと走る。
「あ、息子がお世話になりました」
「いえいえ、大丈夫ですよー」
にこやかにコウタ君とその母親に花は笑って答える。
「お姉ちゃん、ありがとー」
「じゃあねー!」
コウタ君に対して手を振って、花はコウタ君達親子と別れた。
「正義感にあふれる性格の少女、早速見つけた」
そんな花の様子を茂みの陰から覗き見ていた存在が居た。
犬とも猫とも言えない、真っ白な不思議な小動物。二つの青い目はニヤリと細められ、再びルンルンと弾む足取りの花の後ろ姿を眺めていた。
名前はジャック。ネージュによって生み出された妖精という設定の氷雪人形である。自身に与えられた魔法少女となり得る地球人を探しだすという任務をしていたジャックは地球に降り立つと、偶然にもすぐに強い魂を感知した。
それが花だった。花を観察すると、ネージュの考える魔法少女の要素を三つのうち二つも持つことを確認できたのだ。
ジャックはすぐにネージュへと報告すると、こっそりと花の後を追跡したのだった。まさに、ストーカーである。
三人称って、こんな感じでいいんだっけ?