●誰もいないセカイ(同日・深夜)
〔SE:鋭い斬撃〕
瑞希「はぁ……、はぁ……、はぁ……」
幻妖「これで、この辺りのアクイは、全て浄化できたかな」
瑞希「はぁ、疲れた……」
瑞希「にしても、本当に今のところ負けなしだね!やっぱり、瑞希と契約してよかったよ!」
瑞希「まぁね~、魔法少女モノはボクの専売特許だから!って、自分で言ってて皮肉なものだよね……」
幻妖「う~ん、確かに……」
瑞希「え?」
幻妖「瑞希は魔法じゃなくて、想いの力で戦ってるんだよ。だから、魔法少女じゃなくて、セカイ少女、かな」
瑞希「あ~……、うん。拘るね」
幻妖「そう言えば、さっきのが瑞希の言ってたお友達?」
瑞希「そうだよ。音楽サークルで一緒に活動してる子たちでね。因みに僕は、MV動画の制作担当!」
幻妖「へぇ~、すごいね!MVって何か分からないけど」
瑞希「今度見せてあげるよ」
瑞希M「みんな、変わってなかったな……。って、そりゃそっか。まだここに閉じこもってから、数週間しか経ってないんだから。絵名は、凄く心配してたけど……」
幻妖「早く、みんなの元に戻れるといいね」
瑞希「……ねぇ、ミク」
幻妖「な~に?」
瑞希「アクイを倒せば、本当にボクはみんなのところに帰れるんだよね……?」
◆誰もいないセカイ(数週間前・夜)《回想》
瑞希「……」
〔回想〕
・瑞希「ボクはその優しさがみんなの中に生まれちゃうことが――どうしようもなく……、嫌なんだ……っ!!」
・瑞希「ずっと話せなくて……、ごめん。向き合えなくて―――、ごめん」
瑞希M「もしあの時、先生を探しに行かなかったら……。絵名に、一緒に探してって頼んでたら……。絵名と一緒に屋上に行ってたら、何か変わったのかな……。いや、何も変わらないか。向き合えなくて、隠して、逃げて、逃げ続けたボクの自業自得だ……。もう、みんなと一緒に遊ぶことも、曲を作ることも出来ない……」
瑞希「……だったらいっそ、みんな消えていなくなればいいのに」
瑞希M「何言ってるんだ、ボク……。みんなはなにも悪くない。ボクが……、ボクが消えればいいんじゃないか……」
〔SE:ザッザッザと足音〕
瑞希M「湖……、飛び込めば消えられるかな……」
瑞希「なんて、そんな勇気もないくせに……」
〔SE:何かが水を流れる〕
瑞希「今、何か光った……。あぁ、でもここはまふゆしか……」
〔SE:水の中から掬い上げる〕
瑞希「取れた……。何だろう、これ。キラキラしてて、でもどこか淀んで―」
〔SE:禍々しい何かが噴出する〕
瑞希「うわぁっ!な、なに、これ……!」
〔SE:不気味な笑い声、重なる〕
瑞希「な、何……、誰……?」
〔SE:不気味な笑い声、迫る〕
瑞希「い、嫌だ……、嫌だぁ!」
〔SE:ダッと走り出す〕
× × × × ×
〔SE:ダッダッダと駆け足〕
瑞希「はぁ、はぁ、はぁ……!」
瑞希M「なに、何なのあれ……!」
瑞希「あっ……!」
〔SE:ドサッと地面に倒れる〕
瑞希「いててて……」
〔SE:不気味な笑い声、迫る〕
瑞希「あ……、あ……。嫌だ、来ないで……」
瑞希M「本当に、そう思ってるの?消えたいんなら、これはボクの望んだ通りじゃない?自分でする勇気がないなら、誰かにって……。ほら、このまま、目を瞑っちゃえば―」
??「ねぇ、私と契約して?」
瑞希「え?」
??「私と契約して、セカイ少女になって?」
瑞希「セカイ、少女……?」
??「そうすれば、君の本当の想いが叶うよ」
瑞希「ボクの、本当の想い……」
瑞希M「消えたい……。いや、違う。ボクは、もう一度みんなと―」
瑞希「……契約、する」
??「……ふふっ、ありがとう」
〔SE:鋭い斬撃、敵を切り裂く〕
瑞希「はぁ、はぁ、はぁ……。これ、は……。って、えぇ、何この格好!?ボク、こんなドレス持ってたっけ!?そ、それに顔にリボン、これじゃ前が見えな……、あれ、見える」
??「ふふっ、とっても似合ってるよ、瑞希」
〔SE:キラキラと羽ばたく〕
瑞希「だ、誰……?」
幻妖「私は、ミク」
瑞希「ミク……?ボクが知ってるミクと、全然違う……。妖精みたい……」
幻妖「私は、想いの欠片から生まれたミクだから。『幻妖のミク』って言えば、差別化できるかな」
瑞希「想いの、欠片?」
幻妖「うん、さっき湖で拾ったでしょ?あれが、想いの欠片だよ」
瑞希「じゃあ、さっきのはなんだったの?急に、その欠片から飛び出してきて……」
幻妖「あれは、アクイ。想い主の純粋な願いが込められた欠片が、悪意に染まって具現化したもの」
瑞希「悪意に染まって……」
幻妖「そう。だから瑞希には、そんなアクイを浄化して、元の純粋な想いに戻してほしいんだ!」
瑞希「つまり、戦うってこと?さっきみたいに……」
幻妖「うん、そういうこと!」
瑞希「いや……、いやいやいや。ボクにはそんなことできないよ。第一、どうしてボクがそんなこと……」
幻妖「……悪意はね、一度に存在できる総量が決まってるんだ。それが限界値を超えた時、欠片から飛び出して暴れ出す、さっきみたいにね」
瑞希「それって……」
幻妖「誰が、その限界値を超えさせたと思う?」
瑞希「もしかして、ボク……?」
幻妖「うん」
瑞希「……いやいや、ボクはそんな、悪意なんて―」
〔回想〕
・瑞希「……だったらいっそ、みんな消えていなくなればいいのに」
瑞希「……あ」
幻妖「瑞希の生み出した悪意の欠片が、最後の一つだったんだよ」
瑞希「そんな、ボクのせいで……。ボクのせいで、このセカイが……」
幻妖「でもね、悪い話しだけじゃないよ」
瑞希「え……?」
幻妖「私と契約した瑞希は、その力で悪意の欠片を想いの欠片に浄化することができる。その浄化された想いは、必ず成就するんだ」
瑞希「……じゃあ、ボクの悪意の欠片を浄化すれば―」
幻妖「そう、君の本当の想いが実現するよ」
瑞希「……じゃあ、やらなきゃ。戦わなきゃ」
幻妖「……ふふっ」
瑞希「悪意を浄化して、またみんなと―」
●誰もいないセカイ(同日・深夜)
幻妖「もちろん、戻れるよ。あの時の言葉に、嘘はないさ」
瑞希「……そっか」
瑞希M「戦って、戦ってさえいれば……。ボクはみんなに秘密を話せて、みんなの中の優しさも消えて―」
瑞希「……あは、あはは、あははははっ!」
幻妖「瑞希……?」
瑞希M「全部、全部全部、上手くいく!そのために―」
瑞希「ごほっ、ごほっ!」
幻妖「瑞希、大丈夫?」
瑞希「……うん、大丈夫。ちょっと、疲れちゃったみたい」
瑞希M「そのために、全ての悪意を浄化する……。これはボクの、自戒と願いの戦いだ」
× × × × ×
ミク「瑞希……、あのままじゃ……」