セカイ少女; 荊棘∞瑞希   作:であであ

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第7話 まだ遠いセカイ

●優李の部屋(数日後・25時)

 

優李「……」

 

まふゆ「瑞希のこと好きな人なんて、いたんだ」

 

優李「は、はい……、すみません……」

 

まふゆ「別に、謝らなくていい」

 

優李「え、え~っと……」

 

優李M「東雲さん、女子ばっかりで気まずいんですけど……!」

 

絵名M「我慢しなさいよ、そのくらい……!」

 

奏「ごめんね、ナイトコード使うのも初めてだろうし、急にお話し聞かせてもらって」

 

優李「い、いえ……。それより、暁山さんのことなんですけど……」

 

奏「うん。瑞希は今、セカイっていう場所にいるんだ」

 

優李「セカイ?」

 

まふゆ「セカイっていうのは、人間の想いが具現化した空間。瑞希は、私の想いが具現化したセカイに閉じこもってる」

 

優李「……はへ?」

 

絵名「う~ん、口で説明しても難しいかもしれないわね」

 

奏「誰か、出て来てくれればいいんだけど……」

 

まふゆ「ミクたち、まだ無事かな」

 

絵名「ちょっと、『まだ』とか言わないでよ」

 

〔SE:スマホにカイトが現れる〕

 

奏「あ、カイト……!」

 

絵名「よかった、ちょうどいい時に来てくれて!」

 

カイト「あぁ、ちょっとな」

 

優李「ボ、ボボボ、ボーカロイド!?」

 

まふゆ「それは知ってるんだ」

 

優李「ど、どうして俺のスマホに……!?なんか、アプリ入れたっけ……!?ってか、喋って―」

 

奏「私たちも、ミクを初めて見た時はこんな感じだったよね」

 

絵名「さすがに、もうちょっと落ち着いてたと思うけど……」

 

カイト「おい、静かにしろ。耳障りだ」

 

優李「あ、ごめんなさい……」

 

奏「カイト、ミクたちは無事?」

 

カイト「あぁ、問題ない。今のところはな」

 

まふゆ「今のところって……」

 

絵名「いや、あんたが言えないから」

 

奏「それで、急にどうしたの?」

 

カイト「奏たちのとは違う、身に覚えのない微かな想いを感じてな。それを辿って出てきたんだ」

 

奏「そうだったんだ」

 

カイト「お前か、この微かな想いの主は」

 

優李「えっと……、た、多分……」

 

カイト「暁山瑞希を、救いたいか……?」

 

優李「……はい!」

 

カイト「そうか……。だが、今のお前には無理だ」

 

優李「え?」

 

絵名「ど、どうして?」

 

カイト「言っただろ、微かな想いだと。今のお前では、瑞希のいる誰もいないセカイにリンクできない」

 

絵名「そんな……」

 

優李「俺は、どうすれば……?」

 

カイト「お前は、暁山瑞希を恋慕っているようだな」

 

優李「は、はい……」

 

カイト「何故だ?」

 

優李「それは、初めて俺を見てくれて、受け入れてくれた人だから……」

 

カイト「それは、本当にそうなのか?」

 

優李「え……?」

 

カイト「ただの、お前の勘違いじゃないのか?お前が勝手に、受け入れてもらえたと付け上がっているだけじゃないのか?」

 

優李「それは……」

 

絵名「カイト、そんな言い方……!」

 

カイト「どうなんだ。お前の暁山瑞希に対する想いは、本物なのか……?」

 

優李M「俺の、暁山さんへの、想い……」

 

◆高校・校門(一年前・朝)《回想》

 

〔SE:足音、タッタッタと近づいてくる〕

 

男子1「おい、オタク!」

 

男子2「あのキャラのポーズやってみろよ!」

 

優李「や、やめてよ……」

 

男子1「はっ、つまんねぇ」

 

男子2「行こうぜ」

 

〔SE:駆け足、遠ざかっていく〕

 

◆高校・教室(一年前・数日後・昼)《回想》

 

〔SE:生徒たち、ガヤガヤ〕

 

女子1「ふぅ~、やっとプリント終わった~」

 

女子2「休み時間返上でやるとか偉すぎ」

 

女子1「提出係り誰だっけ?」

 

女子2「え~っと……、あ、景谷くんじゃない……?」

 

女子1「うわっ、マジか。だったら自分で出しに行こ」

 

女子2「オタクがうつったら嫌だしね。プリントの裏に、アニメキャラの落書きされるかも」

 

女子1「最悪、私もオタクと思われるじゃん」

 

優李「……」

 

× × × × ×

 

〔SE:下校のチャイム〕

 

優李「……帰ろ」

 

〔SE:複数の足音、迫る〕

 

男子3「景谷く~ん。ちょっとさ、今日の掃除当番代わってくんない?」

 

優李「え……」

 

男子4「俺たち、急ぎの用事できちゃってさ~」

 

男子5「景谷くん、帰ってもアニメ見るくらいしかしないでしょ?だからお願い」

 

優李「……うん」

 

男子3「ありがと~。今度アキバ行ったら、お土産買ってくるわ」

 

〔SE:複数の足音、遠ざかる〕

 

男子4「お前、アキバとか行くの?」

 

男子3「行くわけねぇじゃん、あんなとこ」

 

優李「……」

 

優李M「毎日、毎日、毎日、毎日……」

 

優李「……もう、疲れた」

 

◆優李の部屋(一年前・翌日・朝)《回想》

 

〔SE:スマホのアラーム、鳴り響く〕

 

優李「……」

 

〔SE:ガチャ、扉が開く〕

 

母「ちょっと優李、早く起きないと遅刻するわよ?」

 

優李「……行きたくない」

 

母「……どうしたの、何かあったの……?」

 

優李M「あそこは、俺の居場所じゃない……」

 

◆神山高校・教室(一年前・数ヶ月後・夜)《回想》

 

教師「じゃあ、自己紹介を」

 

優李「え、えと……、景谷優李です。よ、よろしくお願いします……」

 

〔SE:パチパチと疎らな拍手〕

 

教師「じゃあ席は~―」

 

× × × × ×

 

優李M「前よりちょっと人数少ないとはいえ、さすがに緊張……」

 

??「なぁ、景谷、だっけ?」

 

優李「え?あ、あぁ、うん……」

 

中村「俺、中村。よろしくな!」

 

佐藤「佐藤です、よろしく」

 

優李「よ、よろしくお願いします……」

 

中村「どこの高校から来たんだ?」

 

優李「え、えっと……、全日制の……」

 

中村「ん……?あぁ、まぁ、色々あったんだな」

 

絵名「ちょっと、どいてくれる?通れないんだけど」

 

中村「おぉ、東雲。悪い」

 

絵名「ううん、ありがと」

 

〔SE:足音、遠ざかっていく〕

 

中村「……東雲、いいやつなんだけどちょっと怖いよな」

 

佐藤「ふとした時に圧を感じるよね」

 

中村「景谷も気を付けろよ?」

 

優李「う、うん……」

 

中村「そいや今日、門とか廊下に色々飾りつけてあったけど……」

 

佐藤「あれだよ、神高祭。全日の人たちが作ったんだ」

 

優李「神高祭……?」

 

佐藤「神山高校文化祭、略して神高祭」

 

優李M「そっか、神山はこの時期なんだ。前の高校では、結局行かなかったんだよな」

 

佐藤「うちのクラスって何やるの?」

 

中村「知らね。そもそも、俺行かねぇし」

 

佐藤「というか、このクラスの人たち大半が行かないだろうね」

 

中村「それな。どうせ、全日のやつらが騒いでんだけだろうし」

 

優李「……」

 

中村「どうした、景谷?」

 

優李「……俺、行こうかな」

 

中村「マジで?」

 

佐藤「まぁ、神高の雰囲気を知るためにも、行って損はないと思うよ」

 

優李「出店って、申請すれば今からでも出来る?」

 

佐藤「そっち?」

 

中村「おいおい、一年で個人出店するやつなんてそういねぇぞ?すげぇ度胸だな……」

 

優李「……ちょっと、やってみたいんだ。良かったら、二人も見に来てよ!」

 

中村「お、おぉ……」

 

佐藤「行けたら行くよ……」

 

優李M「前の高校ではできなかったけど……。この神山で、俺は変わるんだ……!アニメが好きで何が悪い……!オタクで、何が悪い……!」

 

◆神山高校・空き教室(一年前・神高祭当日・午前)《回想》

 

〔SE:生徒たち、ガヤガヤ〕

 

優李「俺の好きなもの全部並べてみたけど……、誰も来ないなぁ……」

 

〔SE:二つの足音、近づいてくる〕

 

中村「結構賑わってて、案外悪くないな」

 

佐藤「ね。来年は、出店できたらいいけど」

 

優李M「あ、中村くんと佐藤くんだ……!」

 

佐藤「そう言えば、景谷くんの出店行くの?」

 

優李「……!」

 

中村「いや、いかねぇだろ」

 

優李「……え?」

 

中村「編入してきて早々、個人で出店とかよくやるよなぁ。最初は大人しくしときゃいいのに、目立ちたがりか?」

 

佐藤「変わってるっていうか……、話し通じない時あるし、そりゃ全日制追い出されるよなって感じ」

 

中村「もう絡みはなしだな」

 

〔SE:二つの足音、通り過ぎる〕

 

優李M「……アニメ好きは悪くない。オタクは、悪くない」

 

優李「悪いのは、俺だったんだ……」

 

優李M「俺の性格が、考え方が……、俺の何もかもが、俺を孤立させてたんだ……。あいつらは、俺がオタクだから虐めてたんじゃない……。俺が俺だから、虐めてたんだ……」

 

優李「……ふっ、何が変わるだ。一人で付け上がって……」

 

優李M「結局俺は、この高校でも―」

 

優李「はぁ……。もう、消えたい―」

 

〔SE:ガラガラと扉が開く〕

 

??「あれ、ここ空き教室だ。って、えぇ!?アニメグッズがこんなに、すごーっ!」

 

優李「……き、君は?」

 

瑞希「あ、出店の人?ボクは暁山瑞希!ねぇ、ここにあるのって、全部君の!?」

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