●優李の部屋(数日後・25時)
優李「……」
まふゆ「瑞希のこと好きな人なんて、いたんだ」
優李「は、はい……、すみません……」
まふゆ「別に、謝らなくていい」
優李「え、え~っと……」
優李M「東雲さん、女子ばっかりで気まずいんですけど……!」
絵名M「我慢しなさいよ、そのくらい……!」
奏「ごめんね、ナイトコード使うのも初めてだろうし、急にお話し聞かせてもらって」
優李「い、いえ……。それより、暁山さんのことなんですけど……」
奏「うん。瑞希は今、セカイっていう場所にいるんだ」
優李「セカイ?」
まふゆ「セカイっていうのは、人間の想いが具現化した空間。瑞希は、私の想いが具現化したセカイに閉じこもってる」
優李「……はへ?」
絵名「う~ん、口で説明しても難しいかもしれないわね」
奏「誰か、出て来てくれればいいんだけど……」
まふゆ「ミクたち、まだ無事かな」
絵名「ちょっと、『まだ』とか言わないでよ」
〔SE:スマホにカイトが現れる〕
奏「あ、カイト……!」
絵名「よかった、ちょうどいい時に来てくれて!」
カイト「あぁ、ちょっとな」
優李「ボ、ボボボ、ボーカロイド!?」
まふゆ「それは知ってるんだ」
優李「ど、どうして俺のスマホに……!?なんか、アプリ入れたっけ……!?ってか、喋って―」
奏「私たちも、ミクを初めて見た時はこんな感じだったよね」
絵名「さすがに、もうちょっと落ち着いてたと思うけど……」
カイト「おい、静かにしろ。耳障りだ」
優李「あ、ごめんなさい……」
奏「カイト、ミクたちは無事?」
カイト「あぁ、問題ない。今のところはな」
まふゆ「今のところって……」
絵名「いや、あんたが言えないから」
奏「それで、急にどうしたの?」
カイト「奏たちのとは違う、身に覚えのない微かな想いを感じてな。それを辿って出てきたんだ」
奏「そうだったんだ」
カイト「お前か、この微かな想いの主は」
優李「えっと……、た、多分……」
カイト「暁山瑞希を、救いたいか……?」
優李「……はい!」
カイト「そうか……。だが、今のお前には無理だ」
優李「え?」
絵名「ど、どうして?」
カイト「言っただろ、微かな想いだと。今のお前では、瑞希のいる誰もいないセカイにリンクできない」
絵名「そんな……」
優李「俺は、どうすれば……?」
カイト「お前は、暁山瑞希を恋慕っているようだな」
優李「は、はい……」
カイト「何故だ?」
優李「それは、初めて俺を見てくれて、受け入れてくれた人だから……」
カイト「それは、本当にそうなのか?」
優李「え……?」
カイト「ただの、お前の勘違いじゃないのか?お前が勝手に、受け入れてもらえたと付け上がっているだけじゃないのか?」
優李「それは……」
絵名「カイト、そんな言い方……!」
カイト「どうなんだ。お前の暁山瑞希に対する想いは、本物なのか……?」
優李M「俺の、暁山さんへの、想い……」
◆高校・校門(一年前・朝)《回想》
〔SE:足音、タッタッタと近づいてくる〕
男子1「おい、オタク!」
男子2「あのキャラのポーズやってみろよ!」
優李「や、やめてよ……」
男子1「はっ、つまんねぇ」
男子2「行こうぜ」
〔SE:駆け足、遠ざかっていく〕
◆高校・教室(一年前・数日後・昼)《回想》
〔SE:生徒たち、ガヤガヤ〕
女子1「ふぅ~、やっとプリント終わった~」
女子2「休み時間返上でやるとか偉すぎ」
女子1「提出係り誰だっけ?」
女子2「え~っと……、あ、景谷くんじゃない……?」
女子1「うわっ、マジか。だったら自分で出しに行こ」
女子2「オタクがうつったら嫌だしね。プリントの裏に、アニメキャラの落書きされるかも」
女子1「最悪、私もオタクと思われるじゃん」
優李「……」
× × × × ×
〔SE:下校のチャイム〕
優李「……帰ろ」
〔SE:複数の足音、迫る〕
男子3「景谷く~ん。ちょっとさ、今日の掃除当番代わってくんない?」
優李「え……」
男子4「俺たち、急ぎの用事できちゃってさ~」
男子5「景谷くん、帰ってもアニメ見るくらいしかしないでしょ?だからお願い」
優李「……うん」
男子3「ありがと~。今度アキバ行ったら、お土産買ってくるわ」
〔SE:複数の足音、遠ざかる〕
男子4「お前、アキバとか行くの?」
男子3「行くわけねぇじゃん、あんなとこ」
優李「……」
優李M「毎日、毎日、毎日、毎日……」
優李「……もう、疲れた」
◆優李の部屋(一年前・翌日・朝)《回想》
〔SE:スマホのアラーム、鳴り響く〕
優李「……」
〔SE:ガチャ、扉が開く〕
母「ちょっと優李、早く起きないと遅刻するわよ?」
優李「……行きたくない」
母「……どうしたの、何かあったの……?」
優李M「あそこは、俺の居場所じゃない……」
◆神山高校・教室(一年前・数ヶ月後・夜)《回想》
教師「じゃあ、自己紹介を」
優李「え、えと……、景谷優李です。よ、よろしくお願いします……」
〔SE:パチパチと疎らな拍手〕
教師「じゃあ席は~―」
× × × × ×
優李M「前よりちょっと人数少ないとはいえ、さすがに緊張……」
??「なぁ、景谷、だっけ?」
優李「え?あ、あぁ、うん……」
中村「俺、中村。よろしくな!」
佐藤「佐藤です、よろしく」
優李「よ、よろしくお願いします……」
中村「どこの高校から来たんだ?」
優李「え、えっと……、全日制の……」
中村「ん……?あぁ、まぁ、色々あったんだな」
絵名「ちょっと、どいてくれる?通れないんだけど」
中村「おぉ、東雲。悪い」
絵名「ううん、ありがと」
〔SE:足音、遠ざかっていく〕
中村「……東雲、いいやつなんだけどちょっと怖いよな」
佐藤「ふとした時に圧を感じるよね」
中村「景谷も気を付けろよ?」
優李「う、うん……」
中村「そいや今日、門とか廊下に色々飾りつけてあったけど……」
佐藤「あれだよ、神高祭。全日の人たちが作ったんだ」
優李「神高祭……?」
佐藤「神山高校文化祭、略して神高祭」
優李M「そっか、神山はこの時期なんだ。前の高校では、結局行かなかったんだよな」
佐藤「うちのクラスって何やるの?」
中村「知らね。そもそも、俺行かねぇし」
佐藤「というか、このクラスの人たち大半が行かないだろうね」
中村「それな。どうせ、全日のやつらが騒いでんだけだろうし」
優李「……」
中村「どうした、景谷?」
優李「……俺、行こうかな」
中村「マジで?」
佐藤「まぁ、神高の雰囲気を知るためにも、行って損はないと思うよ」
優李「出店って、申請すれば今からでも出来る?」
佐藤「そっち?」
中村「おいおい、一年で個人出店するやつなんてそういねぇぞ?すげぇ度胸だな……」
優李「……ちょっと、やってみたいんだ。良かったら、二人も見に来てよ!」
中村「お、おぉ……」
佐藤「行けたら行くよ……」
優李M「前の高校ではできなかったけど……。この神山で、俺は変わるんだ……!アニメが好きで何が悪い……!オタクで、何が悪い……!」
◆神山高校・空き教室(一年前・神高祭当日・午前)《回想》
〔SE:生徒たち、ガヤガヤ〕
優李「俺の好きなもの全部並べてみたけど……、誰も来ないなぁ……」
〔SE:二つの足音、近づいてくる〕
中村「結構賑わってて、案外悪くないな」
佐藤「ね。来年は、出店できたらいいけど」
優李M「あ、中村くんと佐藤くんだ……!」
佐藤「そう言えば、景谷くんの出店行くの?」
優李「……!」
中村「いや、いかねぇだろ」
優李「……え?」
中村「編入してきて早々、個人で出店とかよくやるよなぁ。最初は大人しくしときゃいいのに、目立ちたがりか?」
佐藤「変わってるっていうか……、話し通じない時あるし、そりゃ全日制追い出されるよなって感じ」
中村「もう絡みはなしだな」
〔SE:二つの足音、通り過ぎる〕
優李M「……アニメ好きは悪くない。オタクは、悪くない」
優李「悪いのは、俺だったんだ……」
優李M「俺の性格が、考え方が……、俺の何もかもが、俺を孤立させてたんだ……。あいつらは、俺がオタクだから虐めてたんじゃない……。俺が俺だから、虐めてたんだ……」
優李「……ふっ、何が変わるだ。一人で付け上がって……」
優李M「結局俺は、この高校でも―」
優李「はぁ……。もう、消えたい―」
〔SE:ガラガラと扉が開く〕
??「あれ、ここ空き教室だ。って、えぇ!?アニメグッズがこんなに、すごーっ!」
優李「……き、君は?」
瑞希「あ、出店の人?ボクは暁山瑞希!ねぇ、ここにあるのって、全部君の!?」