区切りすぎて変かもしれない
激重ターン短いかもしれない
「ふぁ、寝みぃ。何かやって。」
「無茶ぶりが雑すぎん?」
「ダハハ!じゃあ俺から指定してやろう、最近スキャンダルを起こして会見を開いた時の芸能人の顔!」
「それ真顔以外の選択肢ねぇだろ。」
ここはネオンがそこかしこで煌めく雑然とした歓楽街。上も下も車とか家庭用飛空挺が飛び回って目まぐるしい。いつも薄暗くて眩しい矛盾だらけの街だ。
俺はその街の一角にある掃除屋…隠さず言えば殺し屋で働いていた。
「オウオウオウ!オメェラ仕事だ仕事ォ!セイライシティ2丁目5番のフウジンビルでマヌケなターゲット共にヨる取引が行わレる情報が入っタ!一石二鳥のオイシイ掃除ダ!」
PCとにらめっこしていたオートマタのボスが蒸気を吹かしながら喧しく掃除の仕事を持ってくる。セイライシティ?なんでまた超が付くほどのセレブ街で取引なんかやるんかねぇ。だせぇ作業服着て行く身にもなれってんだ。
「オマエとオマエ!伝票見たラ準備しテ行け!」
「うぃす、…んー、モップと雑巾にあとアレだ…ほら、アレだよ。アレアレ。」
「いや分かんねぇよ。重曹水か?」
「そう!ついでにマスク持ってくぞ。」
「あいよ。」
指名されたのでペアと要る物を選ぶ。デスピナとレーヴァロアか、そこそこデカいトコだな。二つの組織を気に入らない奴がウチに依頼を出したって訳か。依頼主からすれば絶好のチャンスだ。
「セイライ行くんなら後で払うし報酬金でレレガの腕時計買ってきてくれんけ?」
「ダッセェ作業服で?嫌だよ、自分で行ってこい。」
「えー!?昨日最新作出たばっかなんに!?」
「知らんて。」
ここはメンバーの仲が良く過ごしやすい。前いた職場なんて社員の9割に嫌われていたお喋り大好き総務ババァの残した爆弾の火消しで死ぬかと思ったんだから。なんだよ法務書の発注数5万冊って。ビルごと事務所潰れるかと思ったわ。
それはさておき、灰色の作業服に着替えてバンにモップと雑巾とかアレコレ積んでいく。あ、モップはレーザー銃で雑巾はナイフの事ね。重曹水は煙玉でマスクはカメレオンコート。
カメレオンコートっつーのはその名の通り背景に溶け込んで隠れられる優れ物。研修で一通り教えるけどずっと使うからちゃんと覚えておけ。俺は誰に話してるんだ。
「そいじゃあ行ってきます。」
「跡は残さズ綺麗二頼んダぞ!」
少し離れた駐車場にバンを停め、双眼鏡で観察を行う。
「見えるか?16階の右から3番目の窓。」
「あぁ。立食パーティーでもしてんのかグラス持って楽しそうだ。真昼間から飲めていいなぁ!」
「よし、俺らは作業着だから修理の体でビルに潜る。入館とか聞かれても申請出し忘れた営業のせいにして無理やり入る。OK?」
「OK。」
ビルの正面から入っていく。こういうのは堂々と作業員です!と雰囲気を醸し出すのが大事。そしたら向こうが勝手に勘違いしてくれる。
「あ、すいません。私掃除屋ダイクリーンと申しますが、フウジンビルの16階オフィスで本日下見にお伺いしたんですけれどもー」
「確認します。…えーと、申請は出ていないようですが?」
「あれ?営業が出してくれてるハズなんすけどねぇ…まぁ、下見なんで早ければ5分位で終わりますよ。」
「それくらいでしたら大丈夫ですね。こちらの用紙に会社名とお名前、ご要件をお書き下さい。」
当然偽名を使う。名乗った会社も存在しないデタラメの名前だ。
「はい、ありがとうございます。」
「うす。行くぞ、オーミ。」
「はいよ、アルツァ。」
偽名を確かめて覚えるように口に出す。俺はアルツァ、あいつはオーミ。
「エレベーターどこ?階段は無理よ?」
「こっちじゃね?」
まぁ初見のビルはこういう事もある。エントランス広すぎんだよ!結局防災の人に場所を教えてもらった。作業員ロールとして溶け込めたからいいか。
「着いたな。俺は左からやってく。」
「掃除箇所数の勝負しようぜ。負けは晩メシ奢りな!俺SUSHIBARに行きてぇ!」
「今鮮魚バカ高けェんだからなぁ、負けらんねぇな。
軽く動きを確かめいざ突撃、と言っても作業員なのであくまで下出に出るように入室。
「あっ、すいませぇ〜ん、掃除のご依頼で本日下見に来させて頂きましたぁ〜」
「なんだオメェら?」
「我々は掃除屋の者でして…あぁこちらのフロアの管理人様より申し付けがありましたので…」
ぞろぞろと集まってくるマフィア共。よしよし、俺たちが作業員だと信じて疑っていないな。
「ここはウチらが貸し切ってるんだが?」
「ですから、
「あ?だから何…ウワッ!」
「ガ…ッ……カ…」
「チクショウ敵かよ!撃…ギッ!」
「何処だ!?クソ!」
どいつも十把一絡げの雑魚ばかりだな。無駄な筋肉の持ち腐れ、糊のきいた見栄えだけのスーツ。外ヅラだけ良くしたって殺し殺されの世界じゃ生きていけないぞ?お、この腕時計アレじゃね?いただきー!
煙が晴れる頃にはターゲットのボス2人を残し全滅。なんか物足りないがこんなもんかね。上等上等。
「貴様ら…何処の雇われだ?」
「言うワケ無いっしょ。はいバーン。」
まず一人。
「容赦ないねぇ。おらよっと。」
「ギ…アアァァッ!」
お前だって足折って動けなくするとか鬼じゃん。
「一息に殺るのは優しさだよ。あーあー捻れちゃって気持ち悪い。」
「質問だよ質問。この取引の内容は?」
「ヒ…殺さないで…」
あらら怯えちゃってるよ。マフィアの頭が情けない。
「言わないと殺す。それか爪を剥いで肉に針を刺す。」
「あ…ヤ…言います言います!薬物の取引です!そのトランクに!」
「薬ねぇ…ありがとう。偉いぞキミは。第2問目だ。お前ら以外に関係者は居る?」
「いない…イッ!…いません!」
恐怖と痛みで失禁しだした。掃除のおばちゃんが可哀想だろ…あぁ俺らも血で汚してたわ。ごめんねおばちゃん。
「こ、これで生かして…」
「悪いが仕事なんでな。」
「ぇ…」
オーミが眉間を銃でズドン。掃除完了。
「クリーニング完了っと。帰るぞ。」
「ちょっと待った。…14、15…だァクソ一体差で負けた!」
「まだやってたのかそれ。じゃあいつものバーでよろしく。あーワクワクしてきた。」
よっしゃ!報酬はいい額するしアイツの奢りだし!今日は高いの飲んだるぞー!
「チクショウ!……あ?待て、生き残りだ。」
「おっ、だとすると引き分けか?」
「へへ、決着は次回に…チッ、なんだガキかよ。」
マフィアが集うような場所に女?全身血濡れだしどっかに隠れてやがったか?
「おいお嬢ちゃん、なんでここに居る?まさかとは思うがここにパパは居たか?」
ゆっくりと首肯した。マジか…
「済まねぇ。お前の親父さんは俺らが
「…いい。お父さんは悪い人だから…何時かこうなるって分かってた。」
「どうするよ?アルツァ?」
「流石に少女を殺す趣味はねぇ。…ほら、少ないけど取っときな、そんで困ったら紙の番号に掛けるといい。じゃあな。」
「…え、あの…」
金と紙を渡すと何故かもの凄く俺の目をガッツリと凝視されて若干怖かったので早々と退散する。あーあ、ヒットマンの癖に柄にも無い事しちまったよ。
「ヨう!ゴクローさンだったナ!相変ワラずの手際ダ!」
「どーも。んじゃ報告上げたら今日は帰りますわ。」
サッと仕上げて…あっ、あの子の事はどうしようか…むむむ。書かなくていいか。ちゃんと殺しとけと不始末で怒られそうだしな。
「ふぅ、おーわりっと。よぉ、バー行くぞ。」
「んぁ?…あぁ俺の負けだったか。」
「何だ何ダ?オレも行キたイ!」
「ボスは油しか飲めんでしょう。しかもこの前食用油は肌に悪いって前言ってませんでした?」
「ぎゃははは!」
うーんこの上下関係がフラットな感じ。過ごしやすくて楽しい。職場がこれで良かった。マフィアとか厳しそうだもんなぁ。極東にいるYAKUZAとか上に逆らっただけで小指無くなるらしいからな。怖っ。
「そうだ、コレ拾ったからやるよ。」
「おまっ、これレレガのやん!」
「殺したマフィアが巻いてたから取ってきた。」
「くぅっ中古…だがええ!お前神!」
「はは、崇め奉ってもいいんだぜ?」
「あ俺唯一神おるからパスで。」
は?じゃあ神なんて軽率に口に出すなよな。
「今日もお疲れさん。乾杯。」
「乾杯。」
行きつけのバーで飲み明かす。タダ酒がこの世で1番美味ぇ。
「ふぅ、美味い。」
「おねーさんフライドポテト1つ!」
「威勢いいな。」
「俺の金だしもう吹っ切れた!」
ならもっと飲んじゃお。オーロラのショットお願いします!
それからだらだらと小一時間も過ぎ、俺は完全に出来上がっていた。
「マフィア共はぁ銃なんてアンティーク使っちゃってさぁ、時代はレーザーだよルゥェーザァー。光だから即着高威力。アタッチメントとか出力弄ればコイツ一艇でショットガンにもグレネードにもできるんだぜぇ?弾も要らねぇしな。」
「はいはい、グレーな奴らは皆購入に規制かかってっから買えないの知ってんかオメー?」
「勿論だとも。左手の甲に埋め込まれたチップで誰だって監視されている。義務教育でやったわい。」
「ま、俺らはソレとっくに弄ってるし煙玉とか使ってる時点で俺らも人の事言えねぇがな。」
「そうそう、俺たちは超アンティークのニンジャだよ。それもネオニンジャ!」
「まるで忍者博士だ…」
片手で印を組み、おもちゃを扱うようにBOOMBOOM!と口でオノマトペを発し遊ぶ。酒が回っていい気分だぜ。
「そういえばあの嬢ちゃん生かしといて良かったのか?数年後に復讐されるなんて俺ぁゴメンだぜ?」
「ん…多分、多分大丈夫…なハズ。」
得体の知れない視線を向けられて久方ぶりに竦んじまったが、ありゃあ諦観の目だった。なんも起きねぇだろうよ。
「こちらいちごミルクになります。」
「おぉ?お子ちゃまかぁ!?」
「お前の奢りだし全メニュー飲んでやるのさ。」
「あー酔いが覚める事言うなよォ!」
昔、父がくれたコミックにはヒーローがいた。
どんな悪いヤツもパンチとキックでお星様にする正義のヒーロー。私はそれに憧れた。
数年もすれば父親が良くない方法で金を稼いでいる事に気付いた。マフィアのドン、私はそのヴィランの娘というレッテルを生涯死ぬまで背負っていくのが堪らなく嫌だった。
だから必死に勉強して飛び級を狙った。でも私のような親が黒い身分では審査は通らず学校にすら通えなかった。
諦めて裏社会で生きようかと思っていた時だった。人生が180°ひっくり返るような、それこそ転機が訪れたのは。
父と手を組んでいるそこそこ大きなマフィアが取引でビルの一室を貸し切ってパーティを開いたのだ。私も連れてこられ、酒臭い男女どもに混じって隅の方で食事をしていた。
『ですから、掃除のご依頼ですよお。』
灰色のツナギを着た怪しい二人組が入ってきて急に煙幕を焚き出した。私が驚いている間に周りのチンピラが次々と殺されていった。襲撃なんて初めてだったもので、とても怖くて死体とテーブルの間に隠れていたから殺されることは無かった。
煙幕が晴れると残りは父ともう1人のボスだけだった。幾らなんでも早すぎる。手練だ。
それで、怯える父に二言も無くぶっ飛ばした時は彼がどうしようもなく幼い頃に時憧れたヒーローに見えた。パンチでは無く銃だったけど。手段はどうでもよくって、とにかくカッコいい…そう思った。
その後、もう一人の…確かオーミってやつに察知され、あわや死を覚悟したが、情けをかけられ見逃して貰い、なんと路銀と電話番号までくれた。
優しい優しい殺し屋さん。アルツァさん。我ながらなんてチョロいんだと思うが好きになってしまった。
だから、権威をフルに活用して彼を手に入れる事にした。この為にクソ親父と姿すら見た事のない母から生まれてきたのだと天啓を得た気分だった。
そこら辺の死体から比較的汚れの少ない服を拝借してこっそり帰り、身を綺麗にしてから貰った電話番号を元にキャリアの契約情報へ不正アクセスして住所を割り出す。へぇ、ミストタウンねぇ…だいぶ治安は悪いけど彼の腕っ節なら無問題か。
ポーチに必要な物を入れ、出発。もし拒否されたら窓割ってでも入ってやるから。
フラフラ、ふわふわ、温く心地よい体温。ちょっと飲みすぎたが支障は無い。んー全てぇ、問題なしぃ。フヘヘッ。
「…ん?誰かいるな…あっお前!どうしてここが!?」
なんてこった酔いが一気にフッ飛んだ。昼間のあいつ!
「遅かったですね、お帰りなさい。シャワー借ります。服も借ります。」
「待て待て待てまだOK出してねぇ!」
「あなたは家に入りたい。でも入るには私をどうにかしてカギを開けなければいけない。」
「お前をポリスに突き出す。」
「私が泣いて叫べば悪者はどっちでしょうか?」
「…カギ開けっからソコどけ。」
家の前で待っていたのはあの時のお嬢ちゃんだった。脅迫まがいな事をされたので渋々に家に入れてやる。なんなんだコイツ。
「お邪魔します。」
「なぁ、何で俺ん家が分かった?」
「頑張って電話番号から調べた。」
「なにそれ怖…」
特定する機械とかあるのか?あってもおかしくは無いか。つーか通販にあったわ。何にせよ助け舟を出したのは俺だから腹を括らねばなぁ。
「ねぇアルツァさん、どの服着て欲しい?」
「ン…え?まさか素寒貧?」
「このスウェットとかサイズ合わなさ過ぎてえっちだと思わない?鎖骨と太もも丸見えだよ?」
「もう着てんじゃねぇか!」
偽名で覚えられたか。しかもタンス漁りまくってる!…それは別に良くないがいいとして、今後どうしよう。よ、養子縁組?親が殺し屋はダメだろう。真っ当な道に戻してやるべきだ。あームリ眠過ぎて思考が纏まらん。
「俺は寝る。自由に使え。」
「うわ、ぶっきらぼうだなぁ。でもそういう所も好き」
明日は…休むか。ごめんよボス…
ピピピピ…ピピピピ…
もう朝か……くかぁ〜っ頭痛て…
「アルツァさんおっはよー!」
「うごっ!」
…いっっったぁい…
「あのよぉ…」
「朝ごはん!できてるよ!」
みぞおち痛すぎてそれどころじゃないんだが?
「冷めちゃうから早く!」
テーブルには2人分のポーチドエッグとサラダボウル。…美味そうだな。
「いただきます。」
「はいどーぞ!」
ん、ウマっ。
「なぁ、お前帰る場所は?マフィアったって家くらいあるだろ。」
「ヤダよ帰りたくない。」
「ダメだね、これはあくまで手助けだ。住んでいいと言った覚えは無いぞ。」
「だって家クソなんだもん…誰が頭になるかで争ってて今破裂寸前だし。」
事情は分かるが、生温い事は言ってられない。マフィアの巣だろうが施設だろうがキッチリ送り帰してやる。
「ごちそうさん。見送るくらいはしてやるよ。」
「うぅーアルツァさん…!」
そんなことしたってムダだぞ。泣き落とししたって絆されないからな。
「てかお前調べたなら俺の本名くらいもう知ってるだろうに。」
「そうだけど私の中ではアルツァさんなの。これは覆さない決定事項。」
「あっそ、早く食って支度しな。」
「うーん自分から聞いといてこの淡白さ。」
食うの遅っせぇ。一口一口の小ささがリスみたいだ。ん?あれ、なんか視界がぼやけて…
「あ…?ンだこりゃ……」
「お、やっと効いた。…思ったより時間かかっちゃったな。インド象も2秒で昏倒するなんてガセじゃないのこれ?」
「…はっ!俺は…」
目が覚めると俺は服を剥かれて上裸のまま椅子に縛り付けられていた。
ここは…随分とボロいな…だとすると隠れ家か?
しかも何人か居るな、俺の後ろにもう一人いるか?
「あ、起きた。」
「お前は…そうか、盛ったな?」
「へぇ、やっぱ裏の業界人となると気付くのが早いね。」
「ハァ…1杯食わされるとはな。あのリスみてぇな食事スピードも全部計算済みだったって事か…」
「それは元から。ちょっと気にしてるんだから言わせないでよね。」
…ピンと張っていた雰囲気が緩くなった。なんか…ごめん?
「ンンッ、とにかく、今日をもってアルツァさんは頭目である私の家族であり部下。ようこそデスピナへ。」
お前ボスだったのかよ!だとしたら前のボスはこいつの父親!
「はっ、俺で瓦解しかけた雑魚マフィアなんかヤダね。殺せや。」
「それは私も嫌だよ。だって好きなんだもん。」
「あ…?」
好き?俺を?だとしても手段が常軌を逸してる。
「そもそも、俺は親の仇だろ?惚れる理由なんて無いだろうに。」
「あのねぇ、恋なんて理屈じゃ語れないし理由なんていらない。」
「…こんな真似してっと連中が黙っていないぜ?」
「連中って?仕事仲間?それともポリス?誰にしたって私の相手じゃあない。」
あちらが優位かつ肝が据わっているのか脅しは効かんか。伊達にマフィアのアタマ張ってねぇな。
「それに、裏で殺しを働いているアルツァさんならもう分かるでしょ?なんで誰も助けに来ないのかを。」
それは…
「…闇技師にチップのコアをハックして潰してもらう。」
「そう。ついでに金を積めばなーんだってやりたい放題だし、住処の場所もあなたの情報もそのお陰ってこと。」
「気狂いが…」
現に俺のチップだって悪事と俺の場所を読み取れないように改造を施してある。…ただ寝てる間に弄られたからこりゃあもう見てくれだけの使い物にならねぇな。
「万策尽きた?諦めて家族になろうよ。」
「お前の傀儡になるくらいなら舌を噛んで死ぬ。」
「素直にYESって言えばいいのに。やっぱこうなるか…暴れると痛いからね?」
手を叩いて両隣に侍らせていた従者に指示をすると、俺は椅子ごと地面に押さえつけられた。もう1人は手に何か小型のモノを持ってるな?何を…!?
「ッ止めろ!離せ!ッグ…アガァァァァ!」
首が熱い!これは…何か埋め込まれた!爆弾か!?肉が灼けるようだ!
「ウ、ギ…ハァ…テメェ…や゙りやがっだな…」
「それは首輪の代わり。首版チップってとこかしらね。どこに居たって筒抜けだし無理に外そうとすれば…ボン!首がトんじゃうわよ。」
「チッ…」
「で、これはそれを隠すためのチョーカー。どう?革製だしオシャレで良く似合うと思うよ。」
チョーカーをアイツ手ずから掛けられる。あぁ、これでは奴に全てを支配されているようじゃないか。
そして俺の縄を解くと部下を全員ハケさせ、部屋の中はあいつと俺だけになった。
「さ、これで自由よ。…殺そうと思えば私なんてもう3回くらい殺せたくせに、なんでしないのかな?お人好しのアルツァさん?」
「……」
「フ…フフッ、あぁそうだったね。私が死ねばもれなくそのチップが爆発してあなたも死ぬからだぁ!アハハハッ!」
わざとらしく自演して煽ってくる。苛つくが事実のようだ。奴は俺の絞首台のボタンでもあり檻でもある。
「私とアルツァさん以外に人は居ないし、ちょっとお楽しみの時間としましょう。」
そう言い懐からナイフを取り出すとゆっくりと胸を斬りつけられ、指で傷口をじっくりと丹念になぞられる。
「…ック…ィギッ!」
「傷付くアルツァさん…なんて愛おしい…れぇ…〜っっ!」
「フゥッ…ハッ、それだけで満足かよ、変態血舐め野郎。」
「…アハハァ?」
煽ててあわよくば殺して貰おうとするが、言葉も料理を盛り上げるスパイスにしかならない。狂熱を帯び、しかし光の無い泥のような視線で見下ろされている。
ぱん。
「ガ…〜ッッ!」
「痛い?苦しい?首の汗舐めてもいい?」
〜っ痛てぇ!マジか撃たれた!腹が熱い…死ねる前に意識が飛びそうだ…!
「ハ、ァッ…俺が…何をした…」
「それは誰かさんが私の親を殺したから。」
「やっぱり…根に持っていたのか…」
「なーんてね。愛故に…かな?」
イカれてやがる。クソ…血が…意識が…これじゃ…ロクに死ね……な…
「あ、貧血…レバニラって好きかしら?」
「げ…きったねぇ…」
「んゆぇ…おはよぉ…」
あの日から俺は組織内で傷物を扱うかのように丁寧に飼われ、四六時中雛鳥のようにビッタリくっついてきた。フロも寝る時もだ。現にこうして2人で寝ている。アイツのヨダレで濡れた服から着替える。
仕事柄鍛えられた自慢の肉体に容赦無く刻まれた無数の傷痕。アイツの物だと証をつけられたようで、今じゃこの身体を見る度に忌々しく思う。
「あ…えっっっっっっっ…!」
「あぁ?大半がテメェが付けた傷だろうが。ンな事も忘れたかよ、めでたいポカ野郎が。」
「まってそれ以上雄を見せつけないで…!死んじゃう!」
「なら死ねよクズ。」
「うぅ〜〜〜っ!」
無敵かこいつは!くねくねしやがって、キモすぎ。
「あっあっもっとその冷たい視線浴びせて!」
「」
絶句。
「キモ。昂りが収まったら仕事の内容を言え。」
「っ…ふ今日は…レアベアーズの幹部全員を…っん…排除よ…っあ…」
「話聞いてた?」
「冷たくしないで感じちゃう…装備は用意したから何時でも行けるよ。」
喋ってると無限にエサを与えてしまうようだし無言で部屋を出る。
「気をつけてね!」
…ハァ、なんだかムズ痒いなぁ。どうやら俺はこの空気が好きになっちまったみたいだ。悔しい事に外したくて堪らなかったこの首輪にも慣れてしまったし。俺って流されやすいのかな。
「Tシャツゲットォ!!!!!!」
帰ったらいっぺんシメとこ。
満足のいく形でアルツァさんを手中に収めることが出来た。金も場所も地位もなんだって手に入れられる今、怖いものは無いくらいだ。
そしてたっぷりと消えない証を私は手ずから施した。これぞ家族の証!家族、なんと甘くて蕩けそうな響きだろうか。そばに居るだけであったかくて、幸せな空気に包まれる。私は本当の家族を手に入れた!
楽しいなぁ、嬉しいなぁ、血は繋がってないけどずっと家族!パパって呼んだら怒るかなぁ、アルツァさん。ビジュも性格も理想の父親像すぎてもう最高。
でもヒットマンのくせして優しい人だから誰かに取られちゃうかもしれない。だから傷と首輪で最大限に私のものだとアピールしとかなきゃね。そうだ、帰ってきたら汗舐めて綺麗にしてあげよっと。
アルツァ(偽名)
クソ強ヒットマン
暫くしたら自主的に護衛とか始め出すチョロ男
お嬢
弩級の変態
SとM両方の性質を併せ持つ無敵の子