今回のお話はプロローグ的な立ち位置で、これだけ読んでも?になってしまうかもしれませんので、続けて投稿します第1話も是非合わせてご覧ください!
皆大好きダイパプラチナから始まる物語です!オリ主が色々頑張ります!
よろしくお願いします!!
テレビで映画をやってる。
男の子が4人、線路の上を歩いている。
いつの間にか眠っていたらしい。テレビの音で目が覚めた。ベッドから身を起こし、テーブル上のリモコン片手にテレビに近づく。放送していたのは何十年も前に作られた古い映画。子供の頃にも観たはずだが、あまり覚えていない。
画面の中の少年の一人と目が合う。彼は、物語の最後にどうなったのだったか。火事か、交通事故で死んだのではなかっただろうか。
『お前は?』
責められているような気がした。
リモコンではなくテレビ本体の主電源を強く押すと、画面は真っ暗になり、完全に沈黙した。
もう夜だ。開けっ放しだったカーテンを閉めようとして、窓の前に立つ。外を見れば、溶けて濁った蝋燭を引き延ばしたような、うだつのあがらない空模様だった。
視線を下ろせば、町を四つに分かつ十字路の中央に立てられた、素朴な木看板が目に入る。
『ここは フタバタウン 若葉が 息吹く 場所』
視線を外し、窓から離れる。もう一度ベッドに横たわった。
目を瞑り、また意識を闇に委ねようとすると、代わりに鋭敏になった聴覚が外の音を拾う。
さやかな風が吹く音。木の枝葉が揺れる音。室内の痛くなる沈黙の音。
この町の夜はとても静かだ。反対に昼間は活気ある子供と、それに続く大人たちの声で騒がしい。
映画やファッションとエンターテインメント文化が盛んなイッシュ地方やカロス地方、
地方を上げての興行で年中賑わうガラル地方やパルデア地方に比べると、
ここシンオウ地方は娯楽が少ない。時代が時代なだけに、町の人々もパソコン一つ、ポケッチ一つくらいは持っていても、日常の楽しみは自然や土地に根差したものになることが多く、アクティブな人間ばかりだ。
これでも自然の中に人が暮らすホウエン地方、アローラ地方、地方全体が牧歌的……というより田舎のカント―地方、ジョウト地方に比べればまだマシかもしれないが。
・・・・・・
カンナギタウンで暮らしていた、幼く、何も知らない3つ4つの頃。
少年は夜になると木々から聴こえてくる、鳥ポケモンの鳴き声が怖くて眠れなかった。
でも、そんな時は決まって、彼女が部屋に入ってきた。昼間は怖いもの知らずのガキ大将みたいなのに、彼女も夜のポケモンの鳴き声は怖いらしい。一人用の布団に無理やり押し入ってきて、『怖いんでしょ?一緒に寝てあげる!』なんて、随分な物言いで一緒に眠ろうとしてきた。
口では悪態をつきつつも、少しだけ嬉しく、少しだけソワソワした。あの時の感情に名前は付けないようにしている。
1.2回季節が巡り、少年がポケモンの声一つにいちいち怯えない歳になった後も、彼女は月に1度のペースで布団に潜り込んできた。
流石に狭くて、少し煩わしかった。だからつい、
『まだ夜だからってポケモンの鳴き声にビビってんの?』なんて馬鹿にしながら訊ねた。
彼女は布団の中で震えて泣きながら、叫んだ。
『ホーホーもヨルノズクももう怖くないわよ!怖いのは月に一度の悪夢の日!だって―』
・・・・・・
だって―。
あの時彼女は何と言っていたのだったか。
閉じた目を再び開く。どうにも眠れない。いっそ朝まで起きていようと、ベッドから立ち上がる。何か軽い物でも胃に入れようかと、キッチンまで足を運ぶ。
ガスコンロの上に置いたままになっているポットに水を貯めて、湯を沸かす。その間にコーヒーを淹れる準備をする。旅をしていた頃は飲み物なんて口を湿らせることさえできれば充分と、適当な川で汲んだ水が基本で、たまにインスタントでコーヒーを飲むのが楽しみの一つだった。
それがアローラ地方に滞在していた時に地元で採れた豆を挽いて作ったというコーヒーを飲んで以来、すっかり意識が変わってしまった。今ではそのコーヒー豆のリピーターだ。
豆をミルで粉にする。ドリッパーにフィルターをセットして粉を投入。ドリッパー下にカップをセットして湯を流す。一つ一つの手技にも色々コツがあるらしいのだがそこまでは気にしていられない。
少しして、カップに溜まったコーヒーと、棚から取り出した茶菓子を持ってテーブルに向かう。テーブルに並べた後、折角だからと椅子とテーブルを引き摺って窓辺にまで持ってきた。
外の景色を眺めながらコーヒーを一口啜る。苦みは控えめで、酸味と柑橘類の風味が漂う。この渋さ一辺倒にならない複雑な味わいが好みだ。他には無い独特の味とアローラの風土には何か関連性があるのだろうか。
続いて菓子を口にする。クッキーなのだが、商品名は仰々しく、かつ長ったらしいもので覚えられない。軽い口当たりの後に、小麦とミルクの素朴ながら強い甘味が広がる。この商品を販売するブランドは、ミルクに特に拘りがあるらしく、特製のモーモーミルクを使用するためにわざわざ特別なミルタンク牧場一つと専属契約しているらしい。
これらはそれぞれカロスとアローラの、旧い友人達が定期的に贈ってくれるものだ。
贈られてくる品はいずれも丁寧な装丁が施された化粧箱に収納されており、商品の高級感を伺わせる。値段は怖くて調べていない。
そんなものを頼んでもいないのに贈りつけてくる旧友―もとい悪友達は、いずれも自分には過ぎた立派な人間、というか社会的地位が世界の最上層に位置する人物ばかりなので、自分と未だに関係があることに、正直恐縮してしまう。昔は皆何者でもなかったために気軽に付き合えたのだが。
正直居たたまれなさから縁を切りたいとすら思うが、そうはさせまいと言わんばかりに定期的にこういった品が届く。連絡先を消しても向こうからかかってきてポケッチの履歴に追加されるのでどうしようもない。近頃は諦めていい思いだけさせてもらっている。
カップの淵を徐に指でなぞりながら、窓の外をしばし眺める。雲一つない、晴れた夜だ。なのに、どこか心を奮わせるにはいまひとつ。
底に残ったコーヒーを飲み干して、席を立つ。
テーブルや椅子を元の位置に移動させ、キッチンへ向かう。菓子を棚に戻してから、カップとドリッパーをキッチンで洗い始めた。
・・・・・・
洗い物が終わる。布で拭いて、元の場所にしまい、リビングに移動した。
ベッドに戻って腰掛ける。やっぱり視線を注ぐのは、澄んでいるのに、濁る空。
「……あ」
思い出した。
彼女が怯えていた理由を。
理解した。
自分は目が離せないのに、傍には好く思えない空の意味が。
今夜は。
月が出ていない―。
最後までお読みいただきありがとうございました。
いかがでしたでしょうか。これだけではよく分からないかな、と思いますので、続けて「ああそういうことね」って何となくわかっていただける第1話も読んでいただけるととても嬉しいです!
評価、感想お待ちしております!皆さんのポケモンの思い出を語っていただくのでも結構です!
今後ともよろしくお願いいたします!