ポケットモンスター 朔   作:逸喪 非渡理

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 お疲れ様です。ポケットモンスタープラチナ二次創作第1話です!

ここから物語が始まります。視点はオリ主と周囲の人で時々変わっていきますのでよろしくお願いいたします!


1.金魚草は空に伸びる(前)

「私達の隣には、いつだってポケモンがいる……

その意味を考えていきましょう」

『以上、カント―地方からシンオウに戻ってこられたナナカマド博士のお話でした』

 

 ナナカマド博士のドキュメンタリー番組。

研究拠点のシンオウ地方とご近所のカントー地方のポケモンについて研究した番組だった。難しい話が多くて分からない部分も多かったけど、こっちにいはいない、カントーのポケモンが出てくるシーンは面白かった。

 

 リモコンを操作してテレビを消す。画面に青みがかかった黒髪黒目、特徴らしい特徴のない自分の顔が映る。暇だし下に行って母さんとお喋りでもしようかな、それともアイツを誘って遊ぼうかな……。なんて考えて立ち上がろうとしたら、一階からダンダンダンダン!!とものすごい音で階段を駆け上がる音が聞こえた。

 

 母さんがこんな風に階段を登ってくるわけがない。アイツが部屋に入って来るのを待つ。きっとさっきのテレビを観て興奮したんだ。長い付き合いだからこういうのはテレパシーじゃないけどピント来てしまう。

 

 ものの数秒でバン!と勢いよくドアが開けられた。ガサツな幼馴染はドアを開けるなり

「いたいた!おいコウキ!今のテレビ観たか?観たよな!

ナナカマド博士ってポケモンの研究をしているとってもすごい人だろ!

ということはポケモンだってたくさん持っているはずだ!

だからさ、頼めばオレ達にもポケモンをくれるぜきっと!」

 

 なんて言ってきた。

 

 「……はあ。」

 おれ―コウキはジト目で幼馴染―ジュンを見つめる。

 つっこみどころはもうそれは沢山だけど、諭したところで聞く耳を持たないのは分かっているから、おれもおれのペースで対応をする。

 

 「おはよう、ジュン。

心配しなくても、おれ達どっちもこの間10歳になったから、ポケモン研究所で最初のパートナーをもらえるよ。春になるし、もう今週か来週辺りに連絡が来るんじゃないかな?」

 

 おれは朝の挨拶とセットでジュンの壮絶な思い込みをやんわりと訂正しながら返事をする。この話先週もしたはずだけどな、というのは胸に閉まって。

 

 おれの返事に対してジュンは、

「おっ!これって新しいパソコン!?」

 

……まっっったく聞いていなかった。

コイツは、と思いつつもこれにも慣れているからこっちも気にしない。なにせ、生まれた時からの付き合いなんだ。

 昨日遊びに来た時も置いてあったはずの、一年前から家にあるパソコンを何故か新品だと思って興奮している親友を眺める。

 

 右側に大きく跳ねた明るめの金髪と、髪と同じ色の金の瞳が特徴的。口元はいつも楽しそうに曲がっていて、だれが見てもやんちゃ坊主って感じだ。オレンジと白のチェックシャツに緑のマフラーも昔からずっと変わらない。

 

 しばらくジュンの好きにさせていると、ハッと突然フリーズした。ポケモンがこおり状態になった時みたいに。これもよくあることだから放っておいたら2.3秒してから再起動した。

「えーっと何だっけ?………。

……そーそー!ナナカマド博士にポケモンもらいにいくんだよ!オレ町の外で待ってるから!

いいかコウキ!遅れたら罰金100万円な!」

 

 おれが返事をするより先にジュンはそのまま部屋を飛び出して、階段を駆け下りていった。

2階にも響く声でおじゃましましたー!って言ったのが聞こえた。

 

 おれは今度こそ呆れてため息を吐く。

ムックルより記憶力がなくて、人の話を聞かないところも、なにかあれば罰金罰金言うところも小さいときからずっと変わらない。

 

 ため息が出るのはジュンに思うところがあるから、じゃなくて少し不安だから。この先の、あんまり想像できない旅の日々が。

 

 おれ達は10歳になった。遂に今年ポケモンがもらえる。ポケモントレーナーとして一人で旅に出ることが許されるようになるんだ。

でも、旅なんて本当に一人でできるのかな、ってつい考えてしまう。町の外に出たことなんてロクにないのに。

 

 子供たちだけで行っていいのはポケモンのいる草むらがない道を通って行けるにシンジ湖と、町に繋がっている201番道路だけ。

隣のマサゴタウンだって母さんがいる時に一緒に何回か行ったことがある程度だ。その先にあるコトブキシティには行ったことすらない。

 

 もちろん楽しみなことだってある。というか当然そっちの方が多い。

初めてのポケモンに沢山出会って、、ポケモンと旅をして、見たことのない景色をいっぱいみて、沢山のトレーナーとバトルして、ジムに挑戦してバッジを集めて……。

 

 いずれはポケモンリーグ、四天王、チャンピオンと戦うのが将来の夢だ。

でも、夜一人で布団に入り込むとその期待が時々破裂して、中から不安が顔を見せる。

 

 毎日のご飯はどうしたらいいんだろう。夜はどこで寝ればいいんだろう。旅の途中で怪我したら?洞窟や森の中で人に助けを呼べないような状況になったらどうしたらいいんだろう。

……首を横に振って、弱気なイメージを払う。あんまり考えないようにしよう。それより、ジュンを追いかけないと。一人で突っ走っていくくせに、付いて行かないと罰金罰金ってうるさくなる。

少しだけ急ぎ足で階段を下って行った。

 

 

 ・・・・・・

 

 

 1階では、リビングで母さんが座布団に座ってテレビを観ていた。母さんはポケモンコンテストの番組を見ていた。

優勝者はカントー地方の女性だった。その弟は、カントー地方の元チャンピオンで、現ジムリーダーらしい。姉弟揃って凄い。

 

 コンテストもいいけど、ポケモンバトルが一番面白い。かっこいいポケモンを使うチャンピオンのシロナや、派手な技を沢山使う水タイプジムリーダーのマキシ、基本テレビには出ないけど、滅茶苦茶強いジュンのお父さんのクロツグさんのバトルが好きだ。

 

 母さんは俺に気付くと話しかけてきた。

 

 「コウキ!さっきジュン君帰っていったわよ。

何だか分からないけど大急ぎなんだって!」

 

 「大丈夫だよ、いつものジュンの早とちり。おれも外に遊びに行ってくる」

 

 とだけ言って、玄関で靴を履く。シンオウ地方は常に少し寒いから帽子をかぶってマフラーをして、家から出ようとドアを開けたところで母さんが話しかけてきた。

 

 「そうだ!コウキ!草むらに入っちゃダメよ!野生のポケモンが飛び出すからね。

自分のポケモンを持っていれば大丈夫なんだけど……」

 

 小さいときから何度も口酸っぱく言われていることだ。分かってるよ、と遮って、

「大丈夫。草むらに入ろうとするのはジュンだけだよ。じゃ、行ってきます」

と伝えれば、

「そう?じゃ、行ってらっしゃいね!!」と返って来た。外に遊びに行くときのお約束のやりとりみたいなものだ。

 

 母さんの声を背中に受けながら玄関のドアを開けると、暖かい日差しが隙間から差し込んできた。眩しさに思わず目を細める。

この町―フタバタウンは年中天気が良くて、空気が澄んでいる。空が眩しいのもいつものことだ。立ち止まったのは一瞬で、すぐに小走りで斜め左にあるジュンの家に向かった。

 

 

・・・・・・

 

 

 ジュンは町の外で待ってるって言っていたけど、間違いなく一旦家に戻っているはず。何故ならアイツは外に出かける時必ず忘れ物をするから。

 

 走ってほんの数十秒でジュンの家が見える。小さな町だからご近所っていうとほんとにご近所だ。

家の扉の前についた。都会と違ってこの町の家にはインターホンなんかない。家のドアをノックして外から呼ぶのが基本だ。ドアを叩こうとして近づいた瞬間―

 

 どんッ!!

 

 扉が開いて人が飛び出してきた。相手の頭がおでこにぶつかって、ずつきを食らった。痛むおでこをさすっていたら、

開口一番に、「なんだってんだよー!」と来た。それはこっちのセリフだ。

 

 「ってコウキか!

おい!ナナカマド博士に会いにいくぞ!早く来いよな!」

そう言ってやっぱり返事も聞かないで町の外に駆け出して行った。

 

 ……と思ったらものの数秒で急停止してジュンが戻ってきた。コイツまさか。

家の前まで戻ってきたジュンは「忘れ物!」と告げてまた脇目も振らずに家に駆け込んでいった。……ドアを開けっぱなしで。

 

 2回連続忘れ物は予想外だった。アイツ……。

ひょっとしたら鳥頭って言われるコダックよりアホかもしれない、と悲しくなって玄関を覗いてみれば、あきれ顔で立っていたジュンの母さんと目が合った。こんちは、と挨拶する。

そのまま二人でおしゃべりしているとジュンが部屋からでてきた。

 

「……バッグと冒険ノートも持っていくか。

…おっ!コウキ!道路で待ってるから遅れたら罰金1000万円、な!」

と、変わらず言いたいことだけ言い終えるとバビュン!とおれの横をすり抜けて家を出ていく。一緒に行けばいいだろ……。と思いながらジュンの母さんに挨拶をして家を出た。

急いで追いかけなきゃ。

 

 ……アイツ罰金10倍にしたな!

 

 

 ・・・・・・

 

 

 家を出ると道路の角を曲がるジュンの背中が見えた。このままだと野生のポケモンがいる草むらに一人で入っていきかねない。少し焦っておれも駆け出す。家を出て道を曲がろうとした瞬間、目の前にヌッと人が現れた。マズイ、と思ったときにはドン!と少し強めの衝撃と一緒に目の前の人にぶつかってして後ろに倒れ込んでしまった。

 咄嗟にぎゅっと目を瞑って衝撃に備えるけど、痛みはいつまでもやってこない。

あれ?と思っていたら声がかかった。

 

 「……大丈夫か?悪い。よく見てなかった」

 

 目を開いたら、目の前の男の人が倒れるすんでのところを、腕を掴んで支えてくれていた。

助けてくれた相手はおれの知っている人だった。とは言ってもあんまり話したことのない人だから、緊張しながらお礼を言う。

この人、ちょっと怖いから目線は下にうろうろさせて。

 

 「あ、ありがとうございます。……サク、さん」

 

 サク。

フタバタウンの住人で、オレや、ジュンの近くに住んでいる。といっても、初めから住んでいたわけじゃなくて、どこかから移住してきたらしい。おれとジュンが7歳か8歳になる頃から見かけるようになった。

 

 当時はこんな何もない町に引っ越してくる人なんて珍しいからって、とジュンと二人でこそこそ付け回したりもした。

親に気付かれて怒られてからはやめたけど。

 小さな町だから、住人は皆交流があって、よく知る間柄に自然となる。でもこの人だけは良く分からない。元からこの町の住人じゃない、っていうのもあるし、彼も人と関わるのを避けようとしているように見える。働いている様子もないからどうやって生活しているのかも謎。

 

 それに、と目の前の男を見上げる。腕も足も体もひょろっとしていて、ボサボサのくすんだ金髪が目にかかってる。髭も中途半端に鼻の下とか顎の下に伸びていてだらしない。服も無地の灰色っぽいスウェットの上下でいかにも適当に選びました、って感じだ。

顔がよく見えないから年齢も分からないし、全体的に不気味。だから怖くて少し苦手だ。ゴーストタイプのポケモンと一緒にいそう。

 

 なんというか、全体的に危険な雰囲気だからか周りの大人もあまり近づかないように、って忠告してくるし、そもそも同じ町に住んでいても滅多に合わないから関わることも無い。

ジュンもオレも初めは不思議にしていたけど次第に興味を無くしていった。

 

 気まずい空気が流れる。

どうしよう、というところでジュンの事を思い出す。急いで追いかけなきゃ。ちょっと時間を使いすぎた。

 

 「あ、ありがとうございました。じゃあこれで」

パっと挨拶をして、サッと走り出そうとした。けど、意外にも話を続けてきたのは彼の方だった。

 

 「待ちな。……そっちは草むらだぞ。さっきお友達……ジュン君?も走っていったが……。君ら、もうポケモンもらってたか?」

 

 背中にかけられた言葉にギクッとする。ギギギっと錆びついたはがねポケモンみたいに振り返る。まずい。まさか普段町の人と関わらないこの人がそんなこと気にするとは思わなかった。

 

 もしジュンが先に草むらに入ってたとしたら、おれだけ入らないわけにはいかない。でも二人して草むらに入ったことがこの人経由で母さんに伝わったら絶対怒られる。

 頬を汗が流れた。どうしよう。黙っててくれませんか、って言ったら聞いてくれるだろうか。

前髪で目元がほとんど隠れちゃって表情も見えないから考えも読めない。

 「あの……」とか「え、えっとです、ね……」なんてアワアワしていたら、

 

 「……親には言わないでおく。だから、草むらの近くで、静かにポケモン観察する程度にしておけ」

って、全部おみとおしみたいに話してきた。

思いがけない言葉に驚く。言葉はぶっきらぼうだけど、見かけによらず優しい人なのかも?

 

 慌てながらももう一度しっかりと礼を言う。「ありがとうございます!ジュンにもちゃんと伝えます!……聞いてくれるかわかんないけど……。そ、それじゃあ今度こそこれで失礼します!」

ペコっと頭を下げてもう一度走り出した。サクさんの言葉をジュンに伝えるためにも。

 

 

―――

 

 

 こちらの返事も待たずに走り去るその小さな背中に既視感を覚える。が、すぐに厄介な幻を振り払った。

 

 彼らは約束を守るだろうか。草むらに入って野生のポケモンに危害を加えられたら……。どうしたものか、としばし思案する。思案していて、何故俺が気に揉まなきゃならないんだとハッとする。

 

 これ以上何かしてる義理は無い。いう事を聞かなかったら野生のポケモンに襲われる。襲われて怪我の一つでもすればいい薬になるだろう。201番道路のポケモンなんてたかが知れているから、そうそう大怪我にもならない。これに懲りて、ルールを守って生活するようになれば万事解決だ。

 

 さあ、気を取り直して家に帰って撮り溜めていた映画でも観よう。イッシュのアクションスターとカロスのムービースターが夢の競演を果たしたあの名作をまだ観ていなかった筈だ。一人納得して踵を返す。

 

 しかし、軽いアタリで踏み出したその足取りは数歩で止まってしまった。

小さく息を吐く。……どうにも、自分を誤魔化すのは不得手だ。

振り返り、完全に姿が見えなくなった、コウキが走っていった一本道を眺める。

 

 もし、今回の一件が露呈して、罰としてポケモンをもらえる日が遠のいたら。

ポケモンに襲われた、怪我をしたという負の経験から―ポケモンを嫌いになったら。

 

 自分が思う以上に自分が彼らの助けになりたいと思っていることに気付く。が、彼らは自分に助けられることをあまり望まないだろうという確信もある。

 周囲から浮いた不審者であることを理解しているくらいは自分を客観視できている。働いてもいない、素性の知れない大人が介入したところで不満に思うのは間違いない。

 

 頼りになりそうな大人はいないだろうか。頭の中で古びた人間関係を洗い出す。

 「……あ」

 一人の人物が頭に浮かび上がった。

 

 滅多に使う事のない型落ちでヒビの入ったポケッチを、懐から取り出す。連絡先一覧から目的の人物を探し出してコールする。

 

 「……早く出ろ……。……あっ、も、もしもし、久しぶり。アンタ、今、どこにいる……?

 ……ああもううるせぇな、アンタは俺の親かよ!!なんだって大人になってまで定期的に連絡しなくちゃならない!……は?アイツはまめに連絡寄越してくる?俺となんの関係がある?……は、俺の近況を尋ねてくる!?だからお前の方からも連絡してやれ!?余計なお世話だ!

 

 ……ああ話が逸れた!そうじゃなくて、アンタ今どこにいるんだって聞いてるんだ!シンオウに帰ってきてんだろ?何で?とかいいから!…………え?シンジ湖?……フタバタウン横の?

……まさかそんな都合よく近くにいたとは。ムクホークで飛んできてもらおうと思ってたんだ。

……!丁度いい、実は、近所の子供が……」

 

 通話を終える。

どっと疲労感が押し寄せてきた。久しぶりに人と長く話したからか、どうにか少年二人が良い収まりどころに着地しそうで安心したからか。

 

 本当に家に帰ろうと再び振り向いて歩き出す。歩きながらふと、どうして自分はここまで干渉したのだろう、と疑問が湧いてきた。フタバタウンに移住してから3年弱。まともに町人と交流などしてこなかったというのに。

 

 ……その答えは面白いものにはならなさそうだったため、途中で考えるのを止めた。

 

 

 




 最後までお読みいただきありがとうございました!
「いやなげえよ」とか「オリ主のポケモン出てこないんかーい」
的なツッコミはご勘弁してください!次話でちょっと出ます。


 評価、感想のほどお待ちしております。
あのポケモンが好き、とかあのタイトルが好き、みたいな皆様のポケモンエピソードも是非お聞かせください!

 よろしくお願いいたします!
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