ポケットモンスター 朔   作:逸喪 非渡理

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1話後編になります。

オリ主のポケモンがちょっとだけ出ます!本当にちょっとだけ!最後だけ!

(今話は以前投稿した長すぎる一話を二分割したものになります。)



1.金魚草は空に伸びる(後)

 以外にも律儀にジュンは草むらの前で待っていてくれた。そわそわと落ち着かなさそうだったけど。

とりあえず一安心。おれの姿をみるなり駆け寄ってきて、「おそーい!!」って怒鳴ってきたけど、これもいつものことだからこっちも気にしない。

 

 ジュンは満面の笑みで

「さ!ナナカマド博士の研究所に行くぜ!」って満面の笑みで言ってから草むらに全力ダッシュしようとした。

 「ちょ、ちょっとストップ!」と慌ててジュンのマフラーの端を掴んで止める。

 

 ジュンはグエッて小さく叫んでからこっちを見て「なにすんだよー!!」って怒りだした。

やっぱり何もわかっていなさそうだったから改めて説明する。

 

 「……あのね、ジュン。ナナカマド博士のいそうな街に行くためには草むらを通らなきゃいけないと思うんだけど、草むらには……」

 ポケモンがいないと入っちゃいけないんだ、って言いかけようとしたらジュンは遮って、

「なんだよ?草むらに入るな!だろ?」って言ってきた。

 

 「平気!平気ッ!ポケモンいなくても大丈夫、オレに考えがあるんだよ!」

 

 ……ほう。聞こうじゃないか。

何を言いだすのかとジト目で黙って見つめていると、ジュンは胸を張って言い切った。

 

 「いいか?草むらに入ると野生のポケモンが飛び出て来るだろ!」

 

 「だけどさ、それよりも早く次の草むらに入るんだよ!」

 

 「そうやって駆け抜ければ野生のポケモンに会わずにマサゴタウンに行けるってわけ!!」

 

 

……???

 

 久しぶりに親友の言っている言葉の意味が分からなかった。コイツはポケモンよりも素早く動けるつもりらしい。呆れてものも言えなくなっているおれをみて、ジュンは何故か説得できたと思ったみたいで、ニカっと笑うと、

 「んじゃ、ついてこいよな!」って声を掛けながら助走距離をつけようとして、ジリジリと後ろに下がっていった。

 

 「それじゃ、いくぜ!せーのっ!」

 「ちょ、待って……」

 

 おれの制止も間に合わず、ジュンは草むらに向かって走り出してた。

足を止めようと追いかけるも、言うだけあって全速力のジュンには追い付けない。ダメだ……折角サクさんが見逃してくれたのに……!

 

 「待ていっ!!」

助け舟は背中から届いた。低く、しわがれているのにビリビリと空気が揺れるような大声。

おれも意識しないところからの大声でビクッとしたけど、今まさに草むらに飛び込もうとしていたジュンはそれ以上の反応で効果はばつぐんだった。

 

 「おおわぁっ!?」

突然の声に驚いたジュンは途中で足を止めようとしたけど、勢いを殺し切れなくて前につんのめって激しく転んだ。あちゃあ、と思ったけど、入らないでくれて助かった。

それよりも、気になる声が聞こえたシンジ湖に続く歩道を見つめる。

 

 「君たちポケモンを持っておらんようだな?それなのに草むらに入るとは、いったいどういうことだ!?」

 

 険しい顔で近づいてきたのは一人の初老の男性だった。鼻の下にあるふさふさした真っ白な髭が凄い目立っている。びっくりして思わず気を付けの姿勢になってしまった。

さっきの大声やおっかない顔に萎縮したからじゃない。さっきまでテレビに映っていたからだ!

 

 この人は……!なんでこんなところに!?

どうしていいか分からなくなってジュンを見れば、ジュンも完全にフリーズしていた。目を真ん丸に開いて口をぽかんと開けて。

 

 「……」

 

 「……」

 

 「……」

 

 「……」

 

 微妙な沈黙が続く。目の前のこの人は、『ポケモンを持たずに草むらに入った理由の説明』がオレ達からされるのを待っているんだと思う。

でもおれもジュンもそれどころじゃない。衝撃と緊張で喉が塞がって言葉が出てこない。

 

 3人黙りこくった状態がもうちょっとだけ続いたけど、勇気を出して「ジュ、ジュン……」ようやく声を絞り出して内緒話をするみたいにしてジュンに話しかける。

「なあコウキ。この人って……」同じタイミングで喋り出したジュンがついに答えを口にする。

 

 「ナナカマド博士だよな……。なんでここにいるんだよ……?」

 

 そう。おれたちの目の前にいるのは紛れもない、ナナカマド博士だった。

シンオウが生んだ超天才。ポケモンの世界的権威で主にポケモンの進化に関する研究をしている。

そんな世界中を飛び回っているメチャメチャ偉い博士が、なんでこんな何もない田舎に……?

それも、ジュンが会いたい会いたいと願っていた奇跡のタイミングで。

 

 質問に答えないおれ達をみて呆れてしまったのか、博士はおれ達に背を向けて少し離れて立ち止まった。

何をしに来ていたのか分からないけど帰ってしまうのかも。何も言えなかった身でズルいとは思いつつも、もっと話をしたいと思ってしまった。それに―。

 

 ジュンのことは否定したけど、おれも、おれだって。もらえるならナナカマド博士からポケモンが欲しい!!

 

 その思いを伝えようと、おれはナナカマド博士に声を掛けようとした―。

 

 

 ―――

 

 

 すんでのところで間に合った。説教されるとでも思っているのか、身を固くして立っている少年二人に背を向け数分前の出来事を思い出す。

 

 ポケッチに届いた電話の送信相手の名前を見て驚いた。アイツが私に最後に電話をかけてきたのはいつだっただろうか。

 要件は何だ。私には心当たりがない。

 

 一緒にシンジ湖の調査に来ていたヒカリに少し離れることを伝えてから応答ボタンを押して、電話に出た。

 

 「もしもし。何年ぶりだ。急にどうした。たまには連絡を寄越しなさい。きちんと食事は摂っているか?節制した生活を心掛け……」

 

 話している途中で怒鳴られた。子ども扱いするな、お前は親かと。……私からしてみればいつまでも子供のようだし、両親のいなかったお前を思えば親心も出るというものだ。

とはいえ、確かに自立した大人の男に聞くことではなかったかもしれない。久しぶりの会話が嬉しいのだ。若者言葉で言うならついテンションが上がってしまった。

 

 反省しつつも、娘のように思う小僧と幼馴染だった彼女のことも思い浮かべる。

今や世界的大スターだ。なにせ地方のチャンピオンなのだから。それでもあの娘は偶に連絡してくれるぞ、主にお前の近況を聞くために。毎回毎回私も知らないんだと謝るのも、悲しそうに分かりましたといって電話を切る彼女にも悪いだろう。やっぱりたまには電話をかけてきなさい。

そのままを伝えると、また怒鳴られた。

 

 いい機会だからと言葉を続けようとすると、向こうから捲し立てるように現在地を聞いてきた。そういえば、要件があったから電話してきたのだろうという当初の予想がすっかり頭から抜けていた。

 それにしても今私のいる場所を知りたいとはどういうことなのか?会いに来るつもりなのか?

理由を尋ねようとしたら機先を制すように、質問で返さないで早く答えろときた。

 

 結論を急ぎたがる癖は変わらないなと思いながら、シンジ湖に眠る伝説のポケモンの調査に来ていることを伝える。湖の方を見遣ると私のカバンを持って大人しく待っているヒカリの姿が目に入った。

 

 こうして会話は続けていたいが、調査を中断するわけにはいかないし、あまりヒカリを待たせるわけにもいかない。そろそろ切り上げなければ、と内心考えていると、電話の向こうで随分驚いているようだった。わざわざフタバタウンの横の湖かと場所を詳しく聞いてくる。

 

 これは本当に何かありそうだと、ヒカリに視線を送る。すぐに察して頷いてくれた彼女は自分のポケモンの世話を始めた。気が利く助手で助かる。

何があったのか、言葉の続きを待つ。アイツは事の仔細を話し始めた。

 

 

 「実は、近所の子供が、201番道路の草むらに、ポケモンを持たないで入ろうとしてるんだ。あ、実は俺、今フタバタウンに住んでて……。そのご近所さんの子供なんだよ。

場所が場所だけに大して危険なポケモンもいないとは思うけど、念のため様子を見に行ってやってくれないか?

……あとそれから、あんまり厳しく怒らないでやってくれ。そんなに付き合いがあるわけじゃねえけど、本当にポケモンが好きな子たちなんだ。

毎日のように町でポケモンの話をして走り回ってる。ポケモンが欲しくて欲しくてたまらなくて、爆発しちまったんだと思う。

そういう奴らが、嫌な思い出作ってポケモンから距離をとるような人生にならないでほしいから……」

 

 

 ……驚いた。アイツが私のいるシンジ湖から最寄り町のフタバタウンで生活していたことも、人の子を気にかけられるような人間になっていたことも。やはり大人になったという事か。それとも、かつての自分と彼女の影を、その少年達の後ろ姿に重ねたか。

 いずれにしても、事情は分かった。今から急いで向かえばどうにか間に合うだろう。

 

「了解した。すぐに向かおう。」

 

 私の言葉にアイツは安堵したように、「ああ……。その、……あり、がとう」とたどたどしく言ってきた。思わず口が緩む。やはり子供だ。ポケッチの向こうで、罪悪感を覚えたような、面映ゆいような微妙な表情を浮かべているのが見なくても分かる。

 

 私は電話を切ってヒカリに「非常事態だ。201番道路に行ってくる」と一言告げ、駆け出した。

 

 

 

 「は、博士!?せめてバッグを……!い、行っちゃった。私も追いかけないと……」

 

 

―――

 

 

 背中を向けていたナナカマド博士が突然振り返ってまたおれ達に近づいてきた。怒られるのだろうか。肩が自然と縮む。ちらりと上を見上げたら、口を結んだ博士がジーっとおれ達を見つめていた。

 「君たち」博士が口を開く。

「君たち、本当にポケモンが好きなんだな?」

 

 てっきり怒られると思っていただけに、予想外の質問にびっくりする。というか、「本当に」?

まるで誰かから、おれ達がポケモンを好きなことを聞いていたような言い方だ。よく分からないけど、質問の答えは決まっている。強い決意を胸に秘めて、今度はちゃんと返事をする、

 

 「はい、好きです!」

隣のジュンも嬉しそうに、元気に答えた。

 「オレも!オレもポケモン大好きだぜ!」

 

 おれ達の答えに返事することなく、博士はまた訊いてきた。

「もう一度聞く!

君たちは、本当にポケモンが好きなんだな?」

 今度はおれより先に、ジュンが怒りながら即答した。

「なんだってんだよー!100回聞かれたって同じだぜ。オレもこいつも、100回答えるよ!

ポケモンが大好きだって!な、コウキ!」

 

 あんまりジュンみたいな態度はよくないんだろうけど、おれも同じ気持ちだ。100回聞かれても、1000回聞かれても、罰金100万円でもこの気持ちに嘘はない。博士の目を見て、もう一度答える。

 「うん。……おれは、ポケモンが大好きです!」

 

 博士は表情を崩さない。それどころかより威圧的に詰めてきた。

「……ポケモンも持たずに草むらに入ろうなどと危ないことをする人間が、ポケモンを持ったら何をしでかすか心配だがな」

 

 その言葉には項垂れてしまう。正論も正論だ。言い訳のしようがない。なんて返そうか困っていたら、呻くジュンの声が聞こえてきた。

 「うぅ……それは、その……」

 流石のジュンも、これには言い返せないようだった。そんな親友の姿を見て、急に悔しくなってきた。

 

 確かに、ルールを破ったのは事実だけど、ジュンはそれだけポケモンが好きなんだ。おれと同じくらいに。

……今回の出来事が親や、研究所に伝われば、ポケモンをもらえるのが先になるかもしれない。そんなの絶対嫌だ。でも、それならせめてジュンだけでも……!

 

 バッと顔を上げて、変わらずこちらを睨むナナカマド博士を見つめ返す。おれはいいから、ジュンだけはポケモンをもらえるように。

 「なら、おれはいいから……」

「じゃあオレはいいからさ、こいつにはポケモンをあげてくれよ!

草むらに、入ろうとしたのは、オレだからさ……」

 

 おれと同じタイミングで喋り出した後、頭を下げたジュンの、声は震えていた。鼻をすする音も聞こえる。

ジュン……。お前が、お前が一番、本当はポケモンが誰よりもほしいはずなのに……!

 

 「ナナカマド博士、おれはいいです!代わりに彼は、ジュンはポケモンをもらえるようにしてください!こいつは、誰よりもポケモンが好きなんです!!お願いします!お願いします!」

バッと頭を下げる。顔を下にしたら鼻の奥がツンとして、気付いたら、地面にシミが出来ているのが見えた。

 

 「!!……生意気を……」

博士の言葉に怖くて顔を上げられない。表情が見れない。

 

 「……」

オレもジュンも、頭を下げたままだった。さっきみたいな沈黙が流れる。

永遠に続くかと思った静寂は博士の声で断たれた。

 

 「成程分かった!!」

その声に二人して顔を上げる。ポケモンがもらえないのは―いや、もらえるのはどっちだ。

目が合った博士は、さっきまでの怖い顔が嘘みたいに晴れ晴れしていた。

 

 「ポケモンは君たちに託そう!

こちらこそ、君たちを試すような真似をして悪かった」

 

 ……博士の言葉に目を見開く。ポケモンをもらえる?ナナカマド博士から?

まさかの展開に思わず隣をみる。こっちを見つめていたジュンの顔は、涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。

でも、表情は笑顔いっぱいで、二人揃ってハイタッチ!しようと手を掲げた。

 

 「但し!!」

またも響いた博士の大声に二人ともビクッとして気を付けの姿勢に戻る。怖そうだと思ったら優しい博士だったけど、やっぱ怖い。

 

 「もう二度と無茶をしないと約束してもらうぞ!」

博士の声に二人して間髪入れず「「はい!!」」と返事をする。もう完全に博士には逆らえない。

 

 おれ達の言葉にウム、と一つ頷いた博士は

「では……」と厳かに呟いてから、しばらく黙った後に首を傾げた。どうしたんだろう。おれとジュンも真似をして首を傾げる。

「うむう?どうしたことだ……?」

 

 そんな疑問を打ち破ったのは、この場に現れた、第三者だった。

「ナナカマド博士ー!湖にカバン忘れてましたよ!……あれ?どうしたんですか?」

そんな声とともに現れたのは、女の子だった。白のニット帽に長い青髪。赤いコートに帽子と同じ色の白いマフラーのコントラストが映える。おれ達とほとんど歳が変わらなさそうな、可愛い女の子だった。

 

 彼女の登場に顔をほころばせた博士は、

「おお!ヒカリ助かったぞ!いやなに、彼らにポケモンを託そうと思ってな」そう話した。

博士の言葉に女の子―ヒカリはびっくりしたように小さく仰け反った。

 

 「えっ!?大事なポケモンなのに預けちゃっていいんですか?」

 

 「うむ!私達はポケモンと共に生きている。人にはそれぞれポケモンと出会うべき時がある。共に歩むべき世界がある。彼らにとって今日がその時!ここがその場所なのだ!

さあ!カバンをあけて好きなポケモンを選べ!」

 

 そういって博士はおれ達にカバンを渡してくれた。

……ここから少し先までにあったことは内緒にしようと思う。おれもジュンも、とてもじゃないけど人に見せられないような顔とテンションだったから。お互い先を譲り合ったり、悩んだりして、時間はあっという間に過ぎていった!

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 ポケモンを選び終えたおれ達をみて、博士は満足したように頷いた。

「成程!二人ともいいポケモンを選んだようだな!」

博士は声を張り上げる。

 

「いいか!君たちに託したポケモンは、まだ外の世界を知らない。そういう意味では、君たちと似ているかもな。うむ!似た者同士うまくやってくれい!何か困った時はマサゴタウンにある私の研究所に来るといい!それから―」

 

 言うべきことを伝えた後、博士は去っていった。その後をヒカリという女の子も追いかけていった。

 

 瞬く間に過ぎていった出来事に、これが夢なんじゃないかと思ってしまう。でも、こんな幸運を夢で終わらせるわけにはいかない。大切にしていかないと。

ジュンをみれば、愛おしそうにモンスターボールにほおずりしていた。

 

 ジュンと目が合う。突然こちらをみてニヤニヤしだした。もう何が言いたいかピンと来たぞ。

ジュンの言葉を待つ。

 おれの目線の意味を感じ取ったのか、一つ大きくにやりと笑って、ジュンが話しかけてきた。

「へへ!コウキ!お互いポケモン持ってるんだ。やることは1つ!だろ?心の準備はOK?」

 

 挑発的なその言葉に笑って口を返す。

「もちろんだよ!そっちこそ、準備できてるの?」

 

 ジュンはぶんぶん腕を振りながら堪りかねたように吼える。

「ずっと言いたかったこのセリフ……やっと言える時がきた!」

 

 オレも声を合わせる!

「コウキ!」「ジュン!」

「「ポケモン勝負だぁっ!!」」

 

 

 

 ジュンと戦いながらナナカマド博士の最後の言葉を思い出す。

『それから、サクという青年を、知っているな?

私に連絡をくれたのは彼だ。君たちが今こうして、怪我もなくポケモンを、モンスターボールを手にしているのは、あの子のおかげだ。

彼がいなければ私は君たちが草むらに入ることに気付かなかっただろう。

君たちに何かあった後であれば、ポケモンを託そうとは考えなかったかもしれない。

町に戻ったら、きちんと礼を言いなさい。いいな』

 

 おれ達を救ってくれたのは、今日初めて話したあの不気味な町の住人だった。

彼は何者なんだろう。ナナカマド博士の知り合いで、恩人。

ジュンはよくわかっていないだろうから、村に戻ったらちゃんと挨拶しなきゃ。ポケモンをもらえたことも報告したい。

 

 そんなことを考えていたら、ジュンのポケモンの技が飛んできた。

とりあえずそれは村に戻ってから。今はバトルに集中集中。たとえ遊びでも、ジュンには負けたくない。

ポケモンに技を避けるよう、指示を出す頃には頭の中はポケモンバトル一色になっていた。

 

 そうして夜になるまでジュンと戦っていたら、あっという間に夜になって門限が過ぎ、おれもジュンも家に帰ってから結局親にしこたま怒られた。

 

 きっちり絞られてから、ポケモンと一緒に夕飯を食べて、ポケモンと一緒にお風呂に入って、ポケモンと一緒にベッドに入った。

ポケモンとこそこそ話をする。明日になったら、サクさんにお礼を言って、それからすぐに旅に出ようね。きっとジュンも、ジュンのポケモンも同じ気持ちのはずだよ。明日が楽しみだね!

 

 そうやっておしゃべりしていると段々眠たくなってきて、気付けば二人とも眠ってしまっていた。

カーテンを閉め忘れた窓からは、少しだけ顔を覗かせた月が、透明な光を贈ってくれていた。

 

 

 

―――

 

 

 

 なぜ、ポケモンを持たずに草むらに入ることが、それほどまでに厳しく禁止されているのか。

答えは単純。危険だからだ。

 

 ではポケモン一匹の有無で何が変わるのか。

これが驚くほどに恩恵が多いのだ。どれだけ弱くても、どれだけ戦うことに不向きなポケモンであったとしても、いるのといないのとではまるで違う。

 純粋な頭数が違うから獲れる動きの選択肢が増える。目の数が増える、耳の数が増える、足の数が増える。ボールに入っていてもトレーナーを思って気を配ることはできる。

そういった実測面もあるが、何より『頼れるパートナーがいてくれる』この事実がヒトを強くする。

 

 レベルの低いポケモンしかいない草むらだからと、ポケモンを持たずに踏み入った者が、取り返しの付かない事態に見舞われることがある。これは年齢関係なく、その頻度も決して軽視できないものだった。

 

 フタバタウン近くの201番道路に生息するポケモンは、いずれも低レベルだ。ポケモンがいれば苦労もなく通過できるだろう。だがしかし、ポケモンを連れていなければ、話は変わる。

 ポケモンに対してなす術のない状態で、草むらから突如飛び出すムックルやドードーの嘴で、目を突かれたら、簡単に失明するだろう。

ビッパに指を噛まれれば欠損し、ニドランに角を飛ばされれば大出血するかもしれない。

 

 微々たる力だからと侮ったり、気にも留めないというのは絶対に草むら、水中、洞窟など、ポケモンが生息する環境においてとっていい行動ではないのだ。

 

 

 

 ……新たにポケモンを手に入れ、ポケモンバトルに熱中する少年たちがいる。

彼らの視界には、自分と、相手のポケモンの二匹しか映っていない。

草むらには入らないよう、道路の中で戦ってはいるが、その戦闘の余波は草むらにも響いていた。

 

 それを煩わしく感じ、腹を立てるポケモンだって当然いる。

今も、ポケモンを戦わせる少年のうち、よく喋る騒がしい方に照準を定めて火を吐いてやろうとするガーディがいた。ゲットして、図鑑で強さをみれば『Lv.3』と表示されているだろう。

 レベル相応の、大した火力でないとしても、直撃すれば少年の火傷は免れないだろう。

草むらにひっそりと潜んでいるため、簡単には気づけない。

少年2人も、彼らの手持ちであるポケモン2匹も、今日がポケモントレーナーとパートナーポケモンとしての第0歩目。気配を察知できるわけもなかった。

 

 ガーディが喉元に力を込める。

 

 今にも炎を口から発射せんとしたその時、ガーディの足元に巨大な影が染み出した。

突然の出来事にガーディは攻撃を中断して身構える。

 

 影はスルスルと足元から下腹部へと伸びてガーディの身体を覆い、徐々に浸食を始めた。

バタバタもがくも抵抗むなしく、ガーディの全身は光を通さない漆黒の影に包まれた。

影が解ける。気づけばガーディは、眠っていた。

 

 

 何が起きたのか。

少年達も、そのポケモンも、野生のポケモン達も。その答えは知らない。

 

 ただ少し離れたところで、揺れる闇があった。




最後までご覧いただきありがとうございます。

出てきたけどポケモンの名前も技も出ず、という感じでした。
こういう持って回った書き方よくないよね……と自覚あるのですがやめられないです。

あとハーメルン的には文やっぱ長いですかね。短く明瞭に書けるようになりたい……。

そんな拙作ですが、感想お待ちしております!
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