ポケットモンスター 朔   作:逸喪 非渡理

6 / 11
ご覧いただきありがとうございます!
UA数1000越えました!感謝です!



3.鈴蘭をどうかその手に(中)

「『―シンオウ地方ポケモンリーグチャンピオン シロナ。

 

 その名を知らないポケモントレーナーは存在しないだろう。少なくともシンオウ地方には。

 

 漆黒のコートに身を包み、絹糸のような金髪を長くたなびかせ、黒曜石の髪飾りを付けたその姿は非常に有名である。

また、長い前髪から覗かせる、知性と静謐さを湛えた恐ろしいまでの美貌は多くの者を惹きつけてやまないだろう。

 

 無論人気の秘訣は容姿だけではない。チャンピオンの肩書に相応しい世界最強クラスのポケモンバトルの実力も、その一つだ。

(大変口惜しいが今回のコラムは”トレーナー”シロナの紹介であるため、彼女の考古学者としての功績については割愛させていただく。)

 

 他地方のチャンピオンと異なり、実に多様なタイプのポケモンを駆使するとともに、その育成度が非常に高いことでも知られている。

全ての手持ち全てについて熱く語りたいところではあるが、ページ数も限られているため、今回は彼女の切り札にして相棒でもある『ガブリアス』に焦点を当てて紹介させて頂く。

 ガブリアスはドラゴンタイプ最強格のポケモンの一匹であり、非常に育成が困難なことで知られている。

進化元のフカマルのゲット自体希少な為困難であることに加え、誇り高い性質を持つドラゴンタイプであると共に非常に凶暴な気質であるため、並のトレーナーではその姿を間近で拝むことすら不可能だ。

このように気難しいポケモンを、チャンピオンシロナは数多のトレーナーを阻む最強の矛として君臨させるまでに育て上げた。彼女のガブリアスからは深い叡智と鋭利な暴力性が同時に感じられるのだ。

 

 高いブリーダー力だけでなく、育て上げたポケモンを手足の様に操るバトルタクティクス、そしてシロナの手持ちポケモン達が彼女に寄せる深い信頼度から伺えるトレーナー力。彼女がトレーナー最強の一角を担うことに異論はないだろう。

 

 筆者の個人的な所感ではあるが、彼女の強さはかの伝説のポケモンリーグチャンピオン達(無許可で紹介の為名は伏せる)にも引けを取らないのではないかと考えている。

 

 

 

 ……えー、それはそれとしていい年こいて自分の部屋も満足に掃除できない辺り残念な人間である。また田舎訛りが酷い癖にインタビューでは澄まして標準語で話しているのを見るとうわあ……となる。

”ナンタラが感じられるガブリアス”からはだらしのないトレーナーへの呆れも感じられた。

「こいつほんまだらしないなあ、カントーのワタルかイッシュのシャガ辺りに鞍替えしよかな~」と先日ガブリアスがぼやいているのを私は耳にした。

                                 

 ―週刊シンオウ インタビュー.シンオウリーグチャンピオン シロナ!』

 

 ……ふーん、随分とまあお高く評価されてるじゃねーか。良かったなあチャンピオン」

 

 

「待ちなさい最後の何よ!あなたの捏造でしょう!その雑誌寄越しなさい!!最近は(おばあちゃんに怒られて)掃除するようになったもん!(月に1回)」

 

「なにが『もん』だいい年こいて。婆さんも地獄で泣いてるぞ」

 

「まぁだ死んでねぇし勝手に地獄送りばすんの止めれ!婆ちゃんに言いつけんべ……あっ、ゴホンッ、い。言いつけるわよ!!」

 

 

「……はあ」

 

 ……おれ―コウキは二人についてきたことをちょっと後悔した。

 

・・・・・

 

 ナナカマド研究所から現在はマサゴタウンの小さなレストランに場所を移している。

 

 研究所に突然シロナさんが現れて、更にサクさんはシロナさんの昔からの知り合いだったって知る衝撃の展開の連続。研究所では落ち着いて話が出来ないし他の職員さんの迷惑になるってことで、おれとジュン、サクさんとシロナさんは移動した。

ナナカマド博士も行きたがってたけど研究があるから断念(すっごく残念そうだった……)、ヒカリは用事があるとのことで研究所で別れた。

 

 おれ達も一緒にいていいのか聞いてみたけどサクさんに「いやむしろいてくれ!頼む!サシは胃がもたない!!」って懇願されたのと、シロナさんがオーケーしてくれたので同行することになった。

 

 ……ナナカマド博士もそうだけど、シロナさんなんてシンオウ地方ではトップスター、テレビの向こう側の住人だった。そんな人と近くで話せるなんて、サクさんには申し訳ないけどラッキーだった。ウキウキ顔してるジュンも多分同じ気持ち。

 

 席に着いてシロナさんが本題を切り出そうとした途端サクさんが近くにあったシロナさんが表紙の雑誌を手に取って声に出して読みだした。

その結果がこれだ。……サクさんもシロナさんもイメージとはちょっと違う人だった……。

 

「大体あなたフタバタウンに移るまではどこにいたのよ!連絡だってしないで……。

そもそも!なんでバトルトレーナーも辞めて突然私達の前からいなくなったのよ!」

 

「だから内緒だってんだろしつけえな!!……あーあれだ!!色んな地方回って女の家移り住んでたんだよ」

 

「へッ!?……う、嘘よ、嘘だわええ。こんなだらしない甲斐性無し受け入れる女の子いるわけがないわ!」

 

「お前より生活能力遥かに高いと思うけどな……」

 

 ……確かにサクさんの家に行った時お部屋綺麗だったし日頃料理とかしてる形跡あったなあ……本人は髪ボサボサ髭ボーボーだったけど。

二人の言い合いを聴きながらぼんやりとそんなことを考えていたら、ジュンが勇敢に二人の会話に飛び込んでいった。

 

「つーかさ、サク兄ちゃんとシロナさんって幼馴染だったんだな!マジで兄ちゃん何者なんだよ!?ポケモンのことめっちゃ詳しいしさあ!」

 

 ジュンの言葉に二人の喧嘩が止まった。

サクさんは気まずそうに窓の外に目を逸らして、シロナさんは優しそうな顔をしておれ達の方に向き直ってくれた。

 

「……ごめんなさい、まだちゃんとお礼を言っていなかったわね。この人を連れ出してくれて本当にありがとう。あなたたちがサクを変えてくれたのね……」

 

「え、ええ!?オレ達なんもしてないぜ!!」

 

「そ、そーですよ!むしろここまでポケモンのこと教えてもらいながらついて来てくれて助かったんです!」

 

 シロナさんにニコリと微笑まれておれもジュンもドギマギしてしまう。この人テレビの女優さんみたいに美人だ……。

 

「サクは私の故郷、カンナギタウンで小さいときから旅に出る日まで共に育った幼馴染なの。コウキ君とジュン君みたいにね。

 ……サクは、10代の頃はリーグチャンピオンの私を凌ぐほどの力を持った、ハイレベルなバトルトレーナーだったの。

 子供ながら数々のポケモンリーグを踏破して、初めて旅に出たその年、つまり君達と同じ10歳の時に優勝してチャンピオンになったわ。

 ……尤も、トレーナー後はサクの実績はあらゆる公式記録やデータからは抹消されて、『そもそもサクというトレーナーはいなかった』ことになっているわ。確かに素行不良も問題行動も多かったけれど、私はこの処置を不当だと思ってる。なのに、当の本人が忽然と姿を消すし、トレーナーの引退理由も言わないし、抗議のひとつもできなかったわ。……理由を今聞いてもどうせ何も教えてくれないんでしょうけどね!」

 

「す、すごい……。サクさんってやっぱり凄腕のトレーナーだったんだ!!」

 

「うわー兄ちゃんのバトル見たすぎるぜー!!」

 

「……。当時はルール整備も甘かったし今ほどポケモンバトルも高度化していなかった。運が良かったのと色々上手いこと立ち回れただけだ。今の新人トレーナー達の方が余程レベルが高いさ」

 

 サクさんは謙遜してるけど10歳でリーグ制覇って……。おれが今から一年でリーグに挑戦して、最終的にシロナさんにポケモンバトルで勝利するってことだよね……。いやムリムリムリ!

 ……それだけのトレーナーなら、どうしてトレーナーを引退してポケモンと別れてしまったんだろう。

 

「そうね……。ジュンくんの言う通りだわ!久しぶりにバトルしましょう、サク!!あなたの考えていること、バトルを通してなら理解できるかも。それに、あなたと戦いたいって私のポケモン達もうずうずしてるわ。サク、あなたもコウキ君とジュン君にカッコいいところ見せるチャンスよ!」

 

「いや無理。俺もうポケモンもってねえし」

 

 サクさんのあまりにあっさりした返事にシロナさんの時間が止まる。そりゃそうだよ、昔のサクさんを知ってるってことはサクさんがお別れしたポケモン達のことだって知ってるってことなんだから……。

 

「……そ、その、持ってないって言うのはあれよね?今はボックスに預けているとか、研究所やポケモンセンターで見てもらっているとか、そういう意味よね……?」

 

「違う。アイツらとは別れた。今手持ち0。だから今日もここまでコウキとジュンに守ってもらいながら来た(シロナはダークライの事知ってるけどコウキとジュンがいるから一旦全員と別れたってことで)」

 

「…………あなた、なんてことしてるのよ……」

 

 絶句した後、シロナさんの顔が悲しそうに、そして険しくなる。気持ちはわかる。

トレーナーとポケモンとの別れは大きな意味を持つ。双方納得しての別れでもそこには深い悲しみが生まれるのは間違いないし、一方的な離別や放棄の場合、ポケモンは人に懐きづらい、扱いづらいと判断され、トレーナーは自分のポケモンを管理できないと悪質な場合は罪に問われたりする。

 ましてや、リーグ優勝まで共に歩んだポケモン達なんて、人生を一生共にするような存在だ。

 

「……それで、実際は何があったの?サク。トレーナーを引退してもポケモンと別れる必要までは無かったじゃない。それも言わない、は流石に通らないわよ」

 

「……分かった、言うよ。但し、お前にだけだ。コウキとジュンには聞かせない。これも理由あっての事だ。……悪いな」

 

「いえ……おれ達は別に……!(正直知りたいけど……)」

 

「き、気にしなくて大丈夫だぜー!(めっちゃ気になるー!!)」

 

「ええ。そうしてもらうわ。これは幼馴染としてではなく、チャンピオンとしての仕事にも関わることよ。サク。あなたのポケモンが野生で野放しになってる。この意味、自分で理解しているわよね?あなたのポケモン、このシンオウには2匹以上いるの?」

 

シンオウにはダークライ(一匹)……だと思う。まあそいつは俺が把握してるから問題ない。残りは別の土地にいる」

 

「そう……他の地方に被害は出ていないのかしら……?」

 

「あの、シロナさん?その、『サクさんのポケモンが野放しになっている意味』って?」

 

「それに被害ってなんのことだー?」

 

「……サクのポケモンが野生に還る意味とは何か。即ち、()()()()()()よ。私はチャンピオンとしてそれを食い止めなければならない可能性ができた。サク、あなたが言うにはシンオウ地方(ここ)は大丈夫のようだけれど」

 

「「だ、大災害!!?」」

 

「……」

 

「ええ、そうよ。ポケモントレーナー サクは素行不良と問題が目立った、ってさっき話したわよね?それはトレーナーだけじゃなく、この人のポケモン達もなの。

サクのポケモン達は、以前は数々の事件を引き起こしたことで、警察に指名手配されたり、人間に被害が及ぶとして処分が検討されたりするほどの凶悪ポケモン達だったの。

サクのポケモンとなってからは社会的な被害を起こすことは滅多になくなったけれど、代わりにバトル内外で数々のトラブルを引き起こしてきたトラブルメーカー。

 ……いうなれば、ポケモン世界の超問題児たちよ。あの子達が枷の無い状態で自由でいるなんて……。頭が痛くなるわ」

 

 はあ、と困ったようにため息をついてシロナさんはコーヒーを飲んだ。

おれもジュンも、開いた口が塞がらない。そ、そんなポケモン達が存在していたなんて……。

 

 野生のポケモンが危険だってことは昨日今日で身に沁みた。でも、事件なんて呼ばれる程の事態を起こすポケモンなんて聞いたことも無かった。

そんな危険なポケモン達をゲットしてバトルを戦っていたサクさんって……。

 

 改めて、2年間の付き合いになるご近所さんはとんでもない人だったのだと知った。

 

 少々バツが悪そうにサクさんが話し出す。

 

「……人のポケモン言いたい放題いいやがって。まあもう俺のじゃないけどよ……。

大丈夫だよ、流石に俺も別れてハイさいなら、って訳に行かなくて色々と手続きを踏んだ。それに特に問題の多かった奴らは信頼できるトレーナーに動向を監視してもらってる。

別れて何年も経つが問題起きたなんて話チャンピオンであるお前の情報網にも入ってきてないだろ?なんも無いってことだよ」

 

「……そうだと信じたいわね」

 

「信じろよ!」

 

 そこからまたやいのやいのと二人の言い争いは続いた。

 

 とはいえ、シロナさんも安心して、サクさんも秘密を一つ話してすっきりしたからか、さっきまでのきんちょうかんは無くなって話しやすそうだった。

 

 おれとジュンも途中からは会話に混ざって、当時のことやシロナさんのチャンピオンのエピソードを聞かせてもらった。

研究所での出会いから、どうなることかと思ったけど、結果的には楽しく終われてよかった。

 

・・・・・・

 

 気づけば夕日が浮かぶ時間になっていた。夜の旅は危険だし、おれとジュンはもうそろそろポケモンセンターに行って休むことになりそうだ。

二人はどうするのかと聞くと、

 

 「私は近くまで来たしカンナギタウンの実家に顔を見せようと思うわ。祖父母にサクのことを報告しないと。というか、あなたも来るのよ。サク。まさか帰ろうなんて言わないわよね?」

 

 「……わかったよ。はあ……」

 

 ということで、一旦今日は別れた。

明日の朝、また合流してサクさんとシロナさんは俺たちがマサゴタウンから旅立つのを見送ってくれるそうだ。

おれとジュンも別々の道を行くことになる。だから明日が本当の解散だ。

……考えたら少し寂しくなったけど、気を取り直してポケモンセンターに向かった。




ご覧いただきありがとうございました!

ぽこあポケモンやポケモンチャンピオンズ、ZAのホーム解禁などのポケモン界隈の盛り上がりに乗じたいんですけど、ダイパプラチナ、シンオウ地方ってあんまりこれらと関係ないんですよね……。
ZAでダークライがメガシンカしたタイミングで沢山更新できてたらよかったんですけど……。

超自分語りで恐縮な話なんですが、サクの手持ちのうち半分は私が実際お気に入りのポケモンで、ゲームの方で全て色違いで揃えてリボンコンプまでしています。
ダークライ含めて半分以上が厳選環境が整ったSV等直近のソフトではなく色違い確率1/8192時代に集めたポケモンなので愛着がヤバいです。

ウィンド・ウェーブで6匹皆内定してるといいなあ……。


励みになりますのでよろしければ感想やお気に入り登録、お願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。