ポケットモンスター 朔   作:逸喪 非渡理

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それではポケモン二次創作 第三話中編になります。
前後編にすると長くなりそうだったので、三部としました。

ですので今回の話は短めです。

よろしくお願いします!


3.鈴蘭をどうかその手に(中)

 「『―シンオウ地方ポケモンリーグチャンピオン シロナ。

 

 その名を知らないバトルトレーナーは存在しないだろう。少なくともシンオウ地方には。

 

 漆黒のコートに身を包み、絹糸のような金髪を長くたなびかせ、黒曜石の髪飾りを付けたその姿は非常に有名である。

また、長い前髪からちらりと覗かせた知性と静謐さを湛えた恐ろしいまでの美貌は多くの者を惹きつけてやまないだろう。

 

 無論人気の秘訣は容姿だけではない。チャンピオンの肩書に相応しい世界最強クラスのポケモンバトルの実力も、その一つだ。

(大変口惜しいが今回のコラムは”トレーナー”シロナの紹介であるため、彼女の考古学者としての功績については割愛させていただく。)

 

 他地方のチャンピオンと異なり、実に多様なタイプのポケモンを駆使するとともに、その育成度が非常に高いことでも知られている。

全ての手持ち全てについて熱く語りたいところではあるが、ページ数も限られているため、今回は彼女の切り札にして相棒でもある『ガブリアス』に焦点を当てて紹介させて頂く。

 ガブリアスはドラゴンタイプ最強格のポケモンの一匹であり、非常に育成が困難なことで知られている。

進化元のフカマルのゲット自体希少な為困難であることに加え、誇り高い性質を持つドラゴンタイプであると共に非常に凶暴な気質であるため、並のトレーナーではその姿を間近で拝むことすら不可能だ。

このように気難しいポケモンを、チャンピオンシロナは数多のトレーナーを阻む最強の矛として君臨させるまでに育て上げた。彼女のガブリアスからは深い叡智と鋭利な暴力性が同時に感じられるのだ。

 

 高いブリーダー力だけでなく、育て上げたポケモンを手足の様に操るバトルタクティクス、そしてシロナの手持ちポケモン達が彼女に寄せる深い信頼度から伺えるトレーナー力。彼女がトレーナー最強の一角を担うことに異論はないだろう。

 

 筆者の個人的な所感ではあるが、彼女の強さはかの伝説のポケモンリーグチャンピオン達(無許可で紹介の為名は伏せる、ヒントは赤緑青)にも引けを取らないのではないかと考えている。

 

 

 

 ……えー、それはそれとしていい年こいて自分の部屋も満足に掃除できない辺り残念な人間である。また田舎訛りが酷い癖にインタビューでは澄まして標準語で話しているのを見るとうわあ……となる。

”ナンタラが感じられるガブリアス”からはだらしのないトレーナーへの呆れも感じられた。

「こいつほんまだらしないなあ、カントーのワタルかイッシュのシャガ辺りに鞍替えしよかな~」と先日ガブリアスがぼやいているのを私は耳にした。

                                 

 ―週刊シンオウ インタビュー.シンオウリーグチャンピオン シロナ!』

 

 ……へーえぇ、随分とまあお高く評価されてるじゃねーか。良かったなあチャンピオン」

 

 

 「待ちなさい一番最後の何よ!あなたの捏造でしょう!その雑誌寄越しなさい!!後最近は(おばあちゃんに怒られて)掃除するようになったもん!(月に1回以下)」

 

「なぁにが『もん』だいい年こいて。婆さんも地獄で泣いてるぞ」

 

「まぁだ死んでねぇし勝手に地獄送りばすんの止めれ!婆ちゃんに言いつけんべ……あっ、ゴホンッ、い。言いつけるわよ!!」

 

 

 「……はあ」

 

 ……おれ―コウキは二人についてきたことをちょっと後悔した。

 

・・・・・

 

 所変わって、ナナカマド研究所から現在はマサゴタウンの小さなレストランに場所を移している。

 

 研究所に突然シロナさんが現れて、更にサクさんがシロナさんと昔からの知り合いだったって知る衝撃の展開の連続。研究所では落ち着いて話が出来ないし他の職員さんの迷惑になるってことで、おれとジュン、サクさんとシロナさんは移動したんだ。

ナナカマド博士も行きたがってたけど研究があるから断念(すっごく残念そうだった……)、ヒカリは用事があるとのことで研究所で別れた。

 

 おれ達も一緒にいていいのか聞いてみたけどサクさんに「いやむしろいてくれ!頼む!サシは胃がもたない!!」って懇願されたのと、シロナさんがオーケーしてくれたので同行することになった。

 

 ……ナナカマド博士もそうだけど、シロナさんなんてシンオウ地方ではトップスター、テレビの向こう側の住人だった。そんな人と近くで話せるなんて、サクさんには申し訳ないけどラッキーだった。ウキウキ顔してジュンも多分同じ気持ち。

 

 ワクワクしながら席に着いて料理も提供されたってことで、シロナさんが本題を切り出そうとした途端サクさんが近くにあったシロナさんが表紙の雑誌を手に取って声に出して読みだした。

その結果がこれだ。……サクさんもシロナさんも最初の印象から結構外れた感じでちょっとショック……。

 

 二人の会話に耳を傾けると、まだ喧嘩をしていた。

 

 「大体あなたフタバタウンに移るまではどこにいたのよ!連絡だってしないで……。

そもそも!なんでバトルトレーナーも辞めて突然私達の前からいなくなったのよ!」

 

 「だから内緒だっつってんだろしつけえな!!……あーあれだ!!色んな地方回って女の家移り住んでたんだよ」

 

 「へッ!?……う、嘘よ、嘘だわええ。こんなだらしない甲斐性無し受け入れる女の子いるわけがないわ!」

 

 「お前より生活能力遥かに高いと思うけどな……」

 

 ……確かにサクさんの家に行った時お部屋綺麗だったし日頃料理とかしてる形跡あったなあ……本人は髪ボサボサ髭ボーボーだったけど。

二人の言い合いを聴きながらぼんやりとそんなことを考えていたら、ジュンが勇敢に二人の会話に飛び込んでいった。

 

 「つ、つーかさ、サクさんとシロナさんって幼馴染だったんだな!マジでサクさんって何者なんだよ!?ポケモンのことめっちゃ詳しいしさあ!」

 

 ジュンの言葉に二人の喧嘩が止まった。

サクさんは気まずそうに窓の外に目を逸らして、シロナさんは優しそうな顔をしておれ達の方に向き直ってくれた。

 

 「……ごめんなさい、気が逸ってしまったわ。まだちゃんとお礼を言っていなかったわね。この人を連れ出してくれて本当にありがとう。あなたたちがサクを変えてくれたのね……。」

 

 「え、ええ!?オレ達なんもしてないぜ!!」

 

 「そ、そーですよ!むしろここまでポケモンのこと教えてもらいながらついて来てくれて助かったんです!」

 

 シロナさんにニコリと微笑まれておれもジュンもドギマギしてしまう。さっきの雑誌でも紹介されてたけど、この人本当にテレビで見る女優さんみたいに美人だ……。

 

 「それから、質問の答えがまだだったわね。サクは私の故郷、カンナギタウンで小さいときから旅に出る日まで共に育った幼馴染なの。コウキ君とジュン君みたいにね。

 そしてサクが何者か。……サクはね、10代の頃はリーグチャンピオンの私を凌ぐほどの力を持った、ハイレベルなバトルトレーナーだったの。

 子供ながら数々のポケモンリーグを踏破してあっという間にリーグ優勝の座に就いたのよ。初優勝は旅に出たその年のリーグ、つまり君達と同じ10歳の時ね。

 ……尤も、当時の素行不良や問題が多々目立った結果、トレーナー引退表明後はサクの実績はあらゆる公式記録やデータからは抹消されて、『そもそもサクというトレーナーはいなかった』ことになっているわ。……本人も忽然と姿を消したし、トレーナーの引退理由も謎だし、この辺りの措置を私は少々不可解、いえ不自然に思っているわ。……まあ、今聞いてもどうせ何も教えてくれないんでしょうけどね!」

 

 「す、すごい……。そうなんじゃないかって思ってたけど、サクさんってやっぱり凄腕のトレーナーだったんだ!!」

 

 「うわーサクの兄ちゃんのバトル見たいぜー!!」

 

 「……。当時はルール整備も甘かったし今ほどポケモンバトルも高度化していなかった。運が良かったのと色々上手いこと立ち回れただけだ。今の新人トレーナー達の方が余程レベルが高いさ」

 

 ってサクさんは謙遜してるけど10歳でリーグ制覇って……。思わず腰のモンスターボールに触れて、ヒコの存在を確かめてしまう。自分が今から一年でリーグに挑戦して、チャンピオンになる―つまり、シロナさんにポケモンバトルで勝利する……?少し想像しただけでムリムリムリ!ってなる。

 シロナさんは控えめに紹介してるけど、正しくシロナさんや他の伝説のポケモントレーナーに並ぶ存在だ。

……そう考えると、ますます疑問は募る。どうしてポケモンを持ってないんだろう。どうしてトレーナーを引退しちゃったんだろう。どうしてフタバタウンで一人生活していたんだろう……。

おれは思考のうずしおに没頭しそうになったところだったけど、シロナさんの言葉で我に返った。

 

 「そうね……。良い考えだわ!久しぶりにバトルしましょう、サク!!あなたの考えていること、バトルを通してなら理解できるかも。それに、あなたと戦いたいって私のポケモン達もうずうずしてるわ。さあ、食事を済ませたらバトルフィールドに行きましょう!コウキ君とジュン君にカッコいいところ見せるチャンスよ!」

 

 「いや無理。俺もうポケモンもってねえし」

 

 ……即答。サクさんのあまりにあっさりした返事にシロナさんの時間が止まる。そりゃそうだよ、トレーナー時代のサクさんを知ってるってことはサクさんがお別れしたポケモン達のことだって知ってるってことなんだから……。

 

 「……ま、待ってちょうだい。その、持ってないって言うのはあれよね?今はボックスに預けているとか、研究所やポケモンセンターで見てもらっているとか、そういう意味よね……?」

 

 「違う。アイツらとはそれぞれの故郷で別れた。今手持ち0。だから今日もここまでコウキとジュンに守ってもらいながら来た(シロナはダークライの事知ってるけどコウキとジュンがいるから一旦全員と別れたってことで)」

 

 「…………あなた、なんてことしてるのよ……」

 

 絶句した後、シロナさんの顔が悲しそうに、そして険しくなる。気持ちはわかる。

トレーナーとポケモンとの別れは大きな意味を持つ。双方が納得しての別れでもそこには深い悲しみが生まれるのは間違いないし、一方的な離別や放棄の場合、ポケモンは人に懐きづらい、扱いづらい、危険性が高いポケモンだと判断され、トレーナーは自分のポケモンを管理できないとみなされたり悪質な場合は罪に問われたりする。

 ましてや、リーグ優勝まで共に歩んだポケモン達なんて、人生を一生共にするような存在だ。

 

 ……でも、マサゴタウンに来る途中におれ達にポケモンと別れたことを話してくれた時のあの表情を見ると、何か事情があるんだろうな、とも思う。

 

 「シ、シロナさん。きっとサクさんも色々あったんじゃないかって思うんです!子供に何が分かる、チャンピオンになまいき言うなって思われるかもしれないですけど……。サクさんおれ達にこの話してくれた時、すごい寂しそうでした。簡単な気持ちでそうしたわけじゃないんだろうなって……」

 

 「コウキ……!オ、オレもそう思うぜー!サクの兄ちゃん、オレとポッチのこと、『よく懐いてるし良いトレーナーだ』って褒めてくれたんだ!そんな人が変な理由でポケモンとバイバイするわけないぜ!」

 

 言っちゃった……!ついシロナさん相手に……。でもジュンも同じ気持ちだったんだ、おれ達の思いは間違っていないはず!全員静かになってしまったため、場に沈黙が下りる。

口火を切ったのはシロナさんだった。

 

 「……サクの事になるとれいせいさを欠くわね……。ごめんなさいコウキ君、ジュン君。そしてそこまでサクを信頼してくれてありがとう。そうね、きっと色々あったのね。それで、実際はなにがあったの?

……子供たちにばかり話させないで、自分の口からも何か言ったらどうかしら?サク」

 

 「……俺が何か言う前に話が進んだんだろ。

……分かった、言うよ。但し、お前にだけだ。コウキとジュンには聞かせない。別に意地悪したわけじゃない。理由あっての事だ。……悪いな」

 

 「いえ……おれ達は別に……!(正直知りたいけど……)」

 

 「き、気にしなくて大丈夫だぜー!(めっちゃ気になるー!!)」

 

 「そうね。そうしてもらうわ。これは幼馴染としてではなく、チャンピオンとしての仕事にも関わることよ。サク。あなたのポケモンが野生で野放しになってる。この意味、自分で理解しているわよね?あなたのポケモン、このシンオウには2匹以上いるの?」

 

 「……シンオウにはダークライ(一匹)だ。まあそいつは俺が把握してるから問題ない。残りは別の土地にいる」

 

 「……そう。……他の地方に被害は出ていないのかしら……?」

 

 「あの、シロナさん?その、『サクさんのポケモンが野放しになっている意味』って?」

 

 「それに被害ってなんのことだー?」

 

 おれ達の疑問にシロナさんが答えてくれる。

 

 「チャンピオンの仕事は多岐に渡るけれど、リーグの運営に携わるだけでなく、その力をもって各地のポケモンによる問題を解決する活動もしているわ。

……そして、サクのポケモンが野生に還る意味とは何か。即ち、()()()()()()よ。私はそれを食い止めなければならない可能性ができたってこと。サク、あなたが言うにはシンオウ地方(ここ)は大丈夫のようだけれど」

 

 「「だ、大災害!!?」」

 

 「……」

 

 「ええ、そうよ。ポケモントレーナー サクは素行不良と問題が目立った、ってさっき話したわよね?それはトレーナーだけじゃなく、この人のポケモン達もなの。

サクの手持ちポケモン達は、以前は数々の事件を引き起こしたことで、警察に指名手配されたり、人間に被害が及ぶとして処分が検討されたりするほどの凶悪ポケモン達だったの。

サクのポケモンとなってからは社会的な被害を起こすことは滅多になくなったけれど、代わりにバトル内外で数々のトラブルを引き起こしてきたトラブルメーカー。

 ……いうなれば、ポケモン世界の超問題児たちよ。あの子達が枷の無い状態で自由でいるなんて……。頭が痛くなるわ」

 

 はあ、と困ったようにため息をついてシロナさんはコーヒーを飲んだ。

おれもジュンも、開いた口が塞がらない。そ、そんなポケモン達が存在していたなんて……。

 

 野生のポケモンが危険だってことは昨日と今日で身に沁みた。でも、事件なんて呼ばれる程の事態を起こすポケモンなんて聞いたことも無かった。

そんな危険なポケモン達をゲットしてバトルを戦っていたサクさんって……。

 

 改めて、2年間の付き合いになるご近所さんはとんでもない人だったのだと知った。

 

 少々バツが悪そうにサクさんが話し出す。

 

 「……人のポケモン言いたい放題いいやがって。まあもう俺のじゃないけどよ……。

大丈夫だよ、流石に俺も別れてハイさいなら、って訳に行かなくて色々と手続きを踏んだ。それに特に問題の多かった奴らは信頼できるトレーナーに動向を監視してもらってる。

別れて何年も経つが問題起きたなんて話チャンピオンであるお前の情報網にも入ってきてないだろ?なんも無いってことだよ」

 

 「……そうだと信じたいわね」

 

 「信じろよ!」

 

 そこからまたやいのやいのと二人の言い争いは続いた。

 

 とはいえ、シロナさんも安心して、サクさんも秘密を一つ話してすっきりしたからか、さっきまでのきんちょうかんは無くなって話しやすそうだった。

 

 おれとジュンも途中からは会話に混ざって、当時のことやシロナさんのチャンピオンのエピソードを聞かせてもらった。

研究所での出会いから、どうなることかと思ったけど、結果的には楽しく終われてよかった。

 

・・・・・・

 

 外を見ると随分と日も暮れ、夕日が浮かぶ時間になっていた。夜の旅は危険だし、おれとジュンはもうそろそろポケモンセンターに行って休むことになりそうだ。

二人はどうするのかと聞くと、

 

 「私は近くまで来たしカンナギタウンの実家に顔を見せようと思うわ。祖父母にサクのことを報告しないと。というか、あなたも来るのよ。サク。まさか帰ろうなんて言わないわよね?」

 

 「……わかったよ。はあ……」

 

 ということで、一旦今日は別れた。

明日の朝、また合流してサクさんとシロナさんは俺たちがマサゴタウンから旅立つのを見送ってくれるそうだ。

おれとジュンも別々の道を行くことになる。だから明日が本当の解散だ。

……考えたら少し寂しくなったけど、気を取り直してポケモンセンターに向かった。




ご覧いただきありがとうございました!
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ぽこあポケモンやポケモンチャンピオンズ、ZAのホーム解禁などのポケモン界隈の盛り上がりに乗じたいんですけど、ダイパプラチナ、シンオウ地方ってあんまりこれらと関係ないんですよね……。
ZAでダークライがメガシンカしたタイミングで沢山更新できてたらよかったんですけど……。

超自分語りで恐縮な話なんですが、サクの手持ちは6体とも私がお気に入りのポケモンでゲームの方で全て色違いで揃えてリボンコンプまでしています。
ダークライ含めて半分以上が厳選環境が整ったSV等直近のソフトではなく1/8192時代に集めたポケモンなので愛着がヤバいです。

ウィンド・ウェーブで6匹皆内定してるといいなあ……。
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