ポケモン二次創作 第三話後編になります。
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ポケモンセンターへ向かうコウキとジュンの背中が見えなくなってから、シロナは口を開いた。
「さあ、私達も行きましょう」
「……おう」
「……」
「……」
沈黙が続く。
俺はこの後カンナギタウンに戻って、シロナの祖父母から怒られたり問い詰められたりする自分の姿を想像してげんなりした。
先行するシロナもシロナで口を開かない。何を考えているのか。
コウキとジュンが居なくなると妙に話しづらくなる。子供の頃はこんなこと気にもしなかったのに。時間は人と人との距離を変えてしまう。
会話のきっかけを探していると、シロナが立ち止まった。
「……ん?」
たどり着いた先はマサゴタウンの宿屋だった。
てっきりシロナのポケモンの「そらをとぶ」辺りを利用してカンナギタウンに行くものだと思っていた。
「おい、カンナギに行くんじゃないのか?」
「そのつもりだったけれど、サク。あなた自分に何があったのかあまり知られたくないんでしょう?
おじいちゃんとおばあちゃん、あなたに数年ぶりに会うってなったら何がなんでも聞き出してくるわよ」
それに、とシロナは言葉を切って、俺の背後―正確には、夜になり地面との輪郭が曖昧になりつつある俺の足元から伸びた影を見つめた。
「久しぶりに
朝からずっとサク達の護衛をしてたのね、お疲れ様」
「……気づいてたのか」
「勿論。伊達にチャンピオンを名乗ってないわ。というか、長い付き合いでしょう私達。分からないわけないじゃない」
シロナは影に潜むダークライに気づいていた。今思えば先程のレストランで俺のかつての手持ちの所在を尋ねてきた際に、
『2匹以上シンオウ地方にいるの?』と言っていた。
あれは、『ダークライの他にまだいるのか』と暗に聞いていたんだな、と遅まきながら理解した。
ダークライは語り継がれるその伝承や生態の殆どが人間とポケモンにとって悪しきものだ。そのためダークライを嫌う者は多い。
目の前の幼馴染が相棒を変わらず受け入れてくれることを嬉しく思った。
やっぱり時間が経っても人はそんなに変わらないのかも、と現金にも考えを改める。
「……ありがとうよ。アイツも喜ぶさ。んじゃあ話は宿屋に入ってからってことでいいな?」
「ええ。さあ、行きましょう」
ということでコウキとジュンと同じく、結局マサゴタウンに泊まることになった。
『……』
二人に追随して揺らめく影が静かに後を追う。
シロナに反応こそしなかったが、サクの言葉通りダークライはいつになく気分が少し上がった。
・・・・・・
「いらっしゃいませ、ご予約のお客様でしょうか……って、チャンピオンの……シ、シロナ様ァ!!??」
「こんばんは、急にごめんなさい。予約はしていないの。大人1ずつ、2部屋空いているかしら?
部屋はどこでも構わないのだけれど……」
「あ、は、はい!少々お待ちください!
……ええと、申し訳ございません。
本日予約済でないお部屋は1部屋しかございませんね。何分町唯一の宿屋なもんで……。
ダブルベッド1つのお部屋になるのですが……」
「へ!?あ、ああそうなのね!
……ベ、ベッド1つ……。どうしましょう……!
え、久々に会ったその日に
そういう空気じゃないものね!?
で、でももう大人と大人な訳だし……。ああどうするべ!!
心の準備さしてねがっだあ……!!」
……シロナに予約を任せて壁の調度品を眺めていたら何やら小声で独り言を話ながら悶えだした。
宿屋の主人も困惑しているし、何してるんだこいつ……。
「何ブツブツいいながら百面相してんだ。
あー、その部屋で大丈夫です。それで取ってもらえます?」
「へっ!?ちょ、ちょっとサク!」
「別にいいだろ一日くらい部屋が一緒でも。ガキの頃からの付き合いだってのに。今から別な場所探したりしてたら話進まねえって……ああ失礼、そんな訳でよろしくお願いします」
「あ、は、はい!承知しました!こちら鍵になります!ごゆっくりどうぞ!」
「は、はぇ、ひゃあぁ……」
「どうも。……何だ急に顔赤くして変な声出して……。ほら行くぞ!」
・・・・・・
宿屋は至って質素で取り立て目立つ部分も無いが、素朴で落ち着く設えになっていた。
部屋の片隅に荷物を雑に放る。コートを脱いでハンガーに掛け、ニット帽を脱いだ。
壁際にあった固い座り心地の椅子に座って小さく息を吐く。
と、シロナの言葉を思い出す。
「出てこいよ。ここなら人の目も無いし、シロナもお前の姿を見たがってるぞ?」
『……』
やはり言葉は返って来ないものの、室内の灯りに照らされていた俺の影が不定形な形をとり、やがて波紋の様に広がったかと思うとそこからダークライが姿を現した。
黒衣の様な肉体をはためかせ、俺の背後に音もなく佇む。
日頃はトレーナーである俺の前にも滅多に姿を見せないダークライだ。簡単に現れると言うことは先程のシロナの言葉が嬉しかったのだろう。
そのダークライに会いたかったという肝心のシロナはというと、
ダークライが姿を見せたことにも気付かずにモジモジとしながら入口で立ちすくんでいた。
「何してんださっきから?お前も座れよ」
「……へ!?え、ええそうね!……き、切り替えなきゃ……!
そういうことになったら……その時考えるってことで!
……ってあら、ダークライ!?久しぶりね!元気だったかしら?」
『……ああ』
何だか分からないが問題は自己解決できたようで、ダークライと二、三言葉を交わした後、一つ深呼吸をするとシロナは向かい側の椅子に座った。
その後も目線を俺とベッドの間でしばらく往復させていたが、やがて落ち着きを取り戻し、先程までの凛とした様子で俺に向き直った。
「……失礼したわ。ダークライにも色々聞かせてほしい話はあるけど一旦置いておいて。
それじゃあ、聞かせてもらいましょうか。あなたがこの数年間、どこで何をしていたのか。
何故トレーナーを引退したのか。
何故危険なポケモン達をわざわざ手放したのか。
……どうして、何も言わずに、突然私達の前から姿を消したのか」
「……長くなるぞ?」
「ええ、そのつもりよ。まだ夜は長いわ」
真剣な表情と揺るがない視線から目を逸らし、どこから話したものかと天井を仰ぐ。
今日はコウキとジュンへのポケモン講座から始まって人に語ってばっかりだ。
話すのは苦手だと言うのに。これも身から出た錆かと色々諦めて、話の入口を探した。
・・・・・・
「……唐突だけどよ。
シロナ、お前は『このままだとシンオウ地方が滅ぶ!今すぐ助けてくれ!』って言われたらどうする?」
「本当に唐突ね……。当然ある程度話の信ぴょう性は精査するけれど、チャンピオンとして、シンオウ地方の人間として動かない訳にはいかないわ。その迫る危機に対して策を講じるわよ」
「ご立派な回答だ。……じゃあ、それを告げてきた相手が自称『世界の創造神』を名乗るやつだった場合はそれも信じるか?」
「……流石に突拍子が無さすぎるわね。仮に相応の根拠を提示されたとしても、にわかには信じ難いわ……」
「大いに同感だ。ああ、ちなみにその自称神はポケモンな」
「なっ、ポケモン!?
ポケモンが自ら神を名乗ってシンオウ地方の危機を防ぐ為に協力を要請してきたというの?……荒唐無稽にも程があるわ……。
……というか、サク……それが、あなたの身に起きた出来事だというの?」
「まあまあ落ち着けよ。次が最後の質問だ。
もしもその神ポケモン様が『危機を防ぐのは現代ではない。今から数百年前のシンオウ地方でだ。お前には過去に遡って歴史を改変することで世界の危機を救ってもらう』……って言ってきたら……どうするよ?」
「………」
シロナは表情を強張らせたまま二の句が継げないようだった。
理解はしたが、到底受け入れられない話、というところなのだろう。
「……改めて、確認するわ。
あなたが表舞台から姿を消して、数年間何をしていたのか。
その答えが、『シンオウ地方の危機を訴える創造神を名乗りしポケモンにより、過去のシンオウ地方に飛ばされて、その危機を防ぐために活動していた』……。そういうことで、良いのよね……?」
シロナが言いにくそうに、途切れ途切れに言葉を繋ぐ。
その非現実さに口にしていて違和感が募るのだろう。
「自分事ながら人に面と向かって言われると意味分かんねえな」
「茶化さないで!どうなのよ!?」
「悪い悪い、ついな。……そうだよ、その通り。
俺はこの数年間現代のシンオウ地方にないなかった。はるか昔……当時は『ヒスイ地方』と呼ばれたこの土地で、まあ色々やってたってわけだ。具体的に何してた、って話は割愛させてもらうぞ。とても一日じゃ語り切れない。
んで、幸運にも数年後に現代へと戻ってこられたわけだ。」
「つまり、この世界はあなたが過去に戻って歴史を変えたことでシンオウ地方の危機を回避できた世界、ってこと……?」
「ああ、かなり頑張ったんだぜ?
順当に行っていれば俺が過去に飛んだ一週間後に本来ならシンオウ地方は消滅していた。
……ちなみに俺が過去に飛ぶ前の世界との差異はシンオウ地方の危機を回避できたかどうかってだけだ。
いわゆるバタフリーエフェクトみたいなのは起きていない。
俺とお前の関係を初めとして、その他諸々元のまんま。
随分都合の良い話だが創造神様の御業のおかげだそうだ」
「……そう。一旦分かった、ということにしておくわ。話が進まないもの。
それで、トレーナーを引退したことと、ポケモンを手放したこともこの件に関連するのかしら?」
「そう。早い話、過去に飛んだ後また戻ってこられる保証が無かったからな。
後を濁さない様にしたかったんだ。
当時は俺もそれなりに知名度があったし、『少年トレーナー突如失踪!』って騒がれるよりは、『引退』の形を取って人々から忘れられた方が消えた後詮索されずに済むと思ってな。お前含め周りに迷惑も掛けたくなかったし。
ポケモンを手放したのは俺も本意じゃなかった。
でも生態系の異なる時代に現代のポケモンを連れていくのは歴史の改変に障るんだと。
それで連れていけなかった。だったら、って話だ。
帰ることのない主人を待たせてボールに入れて放置、って訳にはいかない。
他人に制御できるような奴らじゃないしな。
そう考えた時に、俺にゲットされるまで一番伸び伸び活動できていた故郷の野生環境に戻してやる事が当時俺のできた最善策だったんだ。
一部は頼れるトレーナーの監視付きでな。
……その後誰にも会ってなかったのは、まあなんだ、気まずさからだな。
そのお告げがあってからあんまり時間も取れなくて人ともポケモン達ともかなり急ぎ足で無理な別れになっちまった。
そんなやつがどの面下げてあいつらの前に顔出せるんだ、って考えると動けなかったんだよ」
俺の話をシロナは黙って聞いていた。
しばらく沈黙が続いたが、やがてシロナが口を開いた。
「……そう。それも理解したわ。でも、まだ答えてもらっていないことがある」
「? 聞かれたことは全部答えたと思うが……」
「……私は」
「?」
「……私はどうして『何も言わずに』『ある日突然』いなくなったのか、って聞いたのよ……!
……私に。いえ私が力不足と思うならナナカマド博士でも、他のトレーナーにでも!
誰かを頼れば良かったじゃない!
独りで抱え込もうとしないで!!
黙って去ること無かったじゃない!!
迷惑掛けたく無かった!?
掛ければいいでしょう!!少なくとも私達は家族じゃない!
気まずかろうがなんだろうが、無事に戻ってきたのなら連絡くらいしなさいよ!!
……ずっと、ずっと心配してたんだから………!!」
気づけば。
彼女の目からは涙が溢れていた。堪えていた感情が決壊したのだろう。
今にして思えば研究所でも同じことを言われた。『ずっと探していた』と。……改めて事の大きさを実感する。
自分を俯瞰してみると、過去に飛ぶ前も、戻ってきた後も、上手いやりようはあったんじゃないかと思う。少なくとも大切な人にこんな顔をさせないような。
きっとこの一件の全貌を知られたら、怒られる……というと幼稚だが、否定的な反応をされると確信していた。
でも違った。シロナも、ナナカマド博士も、怒っていたんじゃない。
悲しんでいたんだ。
彼女達は心配してくれていたんだ。
俺という存在を、居なくなると困ると思ってくれていたんだ。
『サク』という人間の価値を誰より低く見ていたのは、どうやら自分自身だったようだ。
それに気づくのに5年以上かかった。大切な幼馴染を泣かせて、ようやく気づけた。
研究所で再会してから一度もはっきりと言えなかった言葉が今では簡単に心から言える。
「……本当に、本当にすまなかった」
頭を深く下げる。
「俺が馬鹿だった。考え無しだった。
周りの事を考えず自分だけが犠牲になるならいいか、って軽く考えた。許してくれとは言わないが……すまなかった」
「……」
「あ、後さっきの質問の答えな。なんで何も言わずに居なくなったか、ってやつ。
……そのなんだ、決意が揺るぎそうだったんだ」
「……決意が?」
少しばかり目を赤く腫らしたシロナが聞き返す。
「ああ。紆余曲折あって過去に飛ぶことを決意した後、ポケモンを手放す都合上なんだかんだ結構な数の人には会ってたんだ。
でも、お前やカンナギの爺さん婆さん、ナナカマドには……顔見せられなかった。
……寂しくなったり、悲しくなったりして行きたく無くなったら困るだろ?」
俺の言葉にシロナは目を見開く。そして言葉をこぼす。
「それは、私たちと離れがたかった、ってこと……?」
「……当たり前だろ。その、家族……なんだからな」
その言葉に、シロナは少しだけ微笑んだ。
「……そう。だったら私も連れて過去に行けば、って……そういう訳にも行かなかったのでしょうね」
「ああ。ああだこうだと制約やルールがあった。一方的に現れて迷惑な話だよ全く」
「……そうよね、あなたにも色々あったはずなのに。……ごめんなさい。取り乱したわ。
トレーナーとして経験を積んで、人として成長したと思っていたのだけれど……。
自分の感情に振り回されてるようじゃまだまだだね」
「いやあ、俺が悪いわけだから……」
その後、微妙な空気がしばし続いた。
ただ、終始拭えなかったよそよそしさがようやく払拭できた気がする。
ここに、本当の意味で幼なじみとの再会を果たすことができたのだった。
・・・・・・
双方気持ちが落ち着いたところで、シロナが質問を投げかける。
「あなたの身に起きたことは大体わかったわ。……聞くほどに別な疑問も募るけれど一旦置いておく。
……それで、これからはどうするつもり?
またフタバタウンに戻るの?」
「……そう、だな……」
フタバタウンに戻った後の日々を考えてみる。
有り余る貯金を少しずつ食い潰しながら波風立つことのない平凡な生活を送る。
関係が改善された今ならマサゴタウンの研究所に遊びに行って、ナナカマドに会ったり、シロナと定期的に交流するのもいい。今ならカンナギタウンに住む、俺にとって親同然だったシロナの祖父母に会いにも行けるだろう。
決して悪くない、いい事づくめの毎日が送れそうだ。
だが……。
「……いや、それよりやらなきゃならないことがある。何年も目を背けてきたが、向き合わなきゃな」
俺の言葉にシロナが頷く。
「あなたのポケモン達の行方、ね。
トレーナー サクを支えた6匹の
ええ。私もそれがあなたが次にやるべきことだと思うわ」
「そうだよな……」
共に覇道を歩んだ仲間達の姿を脳裏に描く。
ポケモンを題材にしたアニメやゲームに出てくる登場人物達のような、トレーナーとポケモンの間に紡がれる美しくも尊い絆……なんてものは俺達の間には無かったが、俺もアイツらも何かが欠けた、どこか歪な者達の集まりで、数少ない互いに分かり合える存在だった。
「会いたいな……また……」
思わず言葉がこぼれる。
「……うん。アイツらに会いに行こう。
また俺のポケモンになってくれるかは分からないけど、急な別れになったことを詫びよう。許してもらえなくてもいいから。
……最悪殺されるかもしれないけどな」
「縁起でもないこと言わないでよ……。あなたのポケモンはやりかねないんだから!
……でも、とってもいい選択肢だと思うわ」
シロナと笑みを交わす。
先行きの決まらなかった道がハッキリして清々しい気分だ。
「……てことで、俺の次の方針は『アイツらに再会する』にしようと思うんだが……付き合ってくれるか?ダークライ」
『お前に委ねる。ワタシはお前の行先に最期まで着いていくと、
再び影と同化して、俺達のやり取りを終始黙っていたダークライが返事をする。
今更だが、ダークライは人の言葉で会話している訳では無い。
一部のポケモンが使うことのできる希少技、『テレパシー』を用いて、脳に直接響くように語りかけて来ている。その際、人間の言葉に自動で翻訳されている……らしい。
テレパシーが使用可能なポケモンの数が少なすぎて調査が進んでいないためそのメカニズムは依然不明だ。
と、そういう訳で俺の方針が固まった。
目標1:『かつての仲間達に再会し、一方的な別れになったことを謝罪する。そのうえで願わくば、もう一度仲間になってもらう』
・・・・・・
「元ポケモントレーナー サク。
君がかつてのパートナーと再会することは認められない」
「はあぁ!?ふざけんな!!」
つづく
ご覧いただきありがとうございました!!
もう少しでシンオウ編第一部は終わりの予定です。
お付き合いよろしくお願いいたします。
ポケモンチャンピオン始まりましたね!
筆者は対戦はそこまで得意じゃないので始めるに始められないでいます……。
あとはメガダークライがポケカに実装されます!めっちゃ嬉しいです!
パック買えるといいなあ。
それでは次回もよろしくお願いいたします!
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