【裏】ただのTS一般人が、主人公相手に召喚されし戦う使い魔面してみた。   作:御花木 麗

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本編主人公のヒョウが原作ゲームの世界に介入しなかったらの正規ルートを書いたやつです。


【原作ゲーム準拠の場合】ルシファーとの初邂逅

 

「よーし、ここも良い感じに綺麗に出来たな」

 

 

俺、宝生稔(ほうじょう みのる)は額から落ちそうになる汗をタオルで拭き取りながら、満足げに部屋を見渡していた。

 

 

ばあちゃんの家は古いながらも広く、掃除するには手間がかかる。しかし、ばあちゃんはもう歳でここを掃除をするのにはちょっと厳しい。

今日は土曜日で学校は休み。

だから俺はばあちゃんの代わりに、前々から計画していたばあちゃんの家の大掃除を決行することにした。ばあちゃんが住む古民家は、長年のホコリや汚れが蓄積しており、一度きれいにしておかないといけないと思ったからだ。

 

「この家もある程度掃除し終わったし、あと残るは庭の倉だけだな…。もう、空はだいぶ暗いけど、出来るだけ今日でこの作業を終わらせたいし急いで終わらせるかぁ」

 

という事で、俺は蔵の掃除に取り掛かることにした。その蔵は、生前のじいちゃんが趣味で集めていた骨董品やガラクタが詰まった蔵で、じいちゃんが亡くなってからというもの、しばらく誰も手をつけていなかった。ホコリまみれなのが容易に予想できるその場所だけど、面倒なことを先延ばしにするのは性に合わない。

 

「よーし、行くか…」

 

俺は意を決して、庭にある蔵に向かった。

 

 

 

 

蔵の中は予想通りホコリだらけで、まずは中の物を全て外に出さないと掃除ができそうにない。俺は蔵の中の物を一つ一つ外に運び出し始める。その中で、ふと目に留まったのは、他の物とは系統が異なる一冊の本だった。東アジアの文化を感じさせる骨董品やガラクタが多い中、それは西洋風の見た目をしていて、どこか浮いていた。幾何学模様が描かれており、魔法陣のようにも見える。まるで――

 

「――魔導書だな」

 

アニメや漫画でしか見たことのないような見た目の本。

俺はその本も他のどかした骨董品やガラクタと一緒に外に置く。なんだか俺の厨二心をくすぐるデザインをしているせいで、気になって仕方がない。後で中身を見てみようかな。

 

 

 

 

 

 

「ちょっといいだろうか?」

 

俺が掃除を続けていると、蔵の外から声がかかる。この敷地内には今、俺と部屋に居るばあちゃんしかいないはず。だからそれ以外がこの敷地内に居るはずない。

なのに聞こえたな謎の声。

男の声で明らかに、ばあちゃんの声ではない。

俺は驚きつつも声の方を見てみると、普通に生活していればまず見ない、白を基調とした軍服のような格好をした男が立っていた。

 

「…あの、一応ここ敷地内なんですけど。あなた誰ですか?」

 

「いやね、ここでしれっと盗みのような事を働くのは私の正義には反するので声をかけたまでなのだが、単刀直入に言う」

 

勝手に敷地内に入るのは自分の正義に反しないのかい、と心でツッコむ。

もちろん口には出さない。

 

「…はい?」

 

「ここにある魔導書…いや、本を私にくれないだろうか?」

 

指を差されたのは、先ほど俺が興味を示した幾何学模様の入った本だった。

 

 

 

先ほど軽くホコリを払ったが、まだホコリで白っぽいその本。

 

まぁ、俺のでもないし、さっき見つけたばかりだから愛着もクソもない。

だが――。

 

 

 

「……すいませんが、ちょっとそれは無理です」

 

 

「……は?」

 

その男は驚きを隠せない表情を浮かべる。どうやら彼にとっては、貰えるという前提で話していたようだ。

 

この事を知り合いに言われたら、俺もあげたかもしれないが、見知らぬ赤の他人、それも怪しい格好をした男にあげる気はなかった。じいちゃんが大事にしていたかもしれない物だからな。

 

俺がそう告げると、男はワナワナと震え出し、俺を睨みつける。その眼光の強さに俺は思わず怯んでしまう。

 

「人間、私より下等種族のお前に対して、下手に出てやったと言うのに、調子に乗りやがって。もう良い。上の命令は絶対だ。その魔導書を頂く!」

 

言葉が終わると同時に、男の背中から大きな白い翼が広がった。その翼は純白で、顔を見せたばかりの月の光を受けてほのかに輝く。そして頭上には光の輪が浮かび、柔らかな光を放っている。俺は決してこれが現実に起こっている事だと簡単に飲み込める物ではなかった。

 

「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

俺はこうなった時点で、この本を渡しておけばよかったのだ。

 

しかし、なぜかこの時、俺はそれをせず、気づけばその本を持ち出して逃げ出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「待て!!人間!」

 

冷たい声が後ろから聞こえた。

 

 

俺はばあちゃんの家から抜け出し、必死に走り続けていた。肺が痛むほど呼吸が荒くなる。

 

小中帰宅部の俺はこんもんかと自分に言い聞かせながら。

 

俺の後ろを翼をはためかせながら、追いつづけてくる。

しかもあの男と同じような格好をした者達が合流して来たのか、数が増えていくのがわかった。

彼らの白い翼が暗闇に浮かび上がり、不気味に輝いていた。心臓が激しく鼓動し、血液が全身に急速に流れるのを感じる。焦りと恐怖が入り混じった思考が乱れ、頭が混乱していた。

 

なんなんだ、あれ。なんなんだ、あれ。なんなんだ、あれ。なんなんだ、あれ!!!!

 

羽生えてるし、輪っかついてるし、しかも飛んでるし!!

 

背後から迫る翼の羽ばたき音が、ますます大きくなってくる。絶望感が胸を締め付け、全身から冷や汗が流れる。

 

なんで、俺はこんなのに必死に逃げてるんだ?

いくら、この本の厨二デザインが気に入ったからって、命の危険を感じるような事に巻き込まれる必要はないはずなのに!!!

 

これを今渡しさえすれば、俺の命だけは取られないかもしれないのに!!!

死にたくない!死にたくない! 

なんで!なのにどうして!

俺は、こんな事を!

 

俺は自分に問いかけながらも、本を握りしめて走り続ける。しかしそんな時、足元に注意を払えておらず、地面に突き出た石に足を引っかけてしまう。そのままバランスを崩し、俺は前のめりにドサッと倒れてしまった。

 

「痛っ!!!!!」

 

腕を擦りむいて血が滲んでくる。痛みと共に襲ってくる絶望感が、俺の心を一層追い詰める。後ろからは、先ほどの男の冷酷な声が再び聞こえてきた。

 

「そこまでだ!!人間。よくも手間取らせてくれた。」

 

振り向くと、翼を持つ者たちが俺に追いついていた。

その中でも、一際異様な雰囲気を纏う女性が、俺を見つめていた。

背中の翼は、他の翼が生えている者達よりも一際大きく、輝く輪っかも二重になっている。服には肩書までつけていた。

 

「魔導書の発見御苦労だったな。あとは私がやる。下がっていてくれ」

 

「ハッ」

 

彼女の指示に従い、さっきの男は敬礼をする。

 

「悪い事は言わない。その本を渡してくれ。渡してさえしてくれれば、その傷も私が癒そう」

 

 

 

そう言って、その人の手にボッという音を立てて紫の炎が灯る。

 

え?そんな事言ってるけど、あの危ない感じの色の炎は、俺を燃やす気満々だよね????

 

てかなんで普通の顔して手から炎出してんの??

意味わからん!

怖い!怖い!

 

その人はどんどん一歩また一歩と俺に近づいてくる。

 

嫌だ!死にたくない!

 

でも俺には立つ気力すら残っていなかった。

 

もう駄目か。

そう思った瞬間だった。

 

それは、まさしく勘のような物。

この本を開ければ何かが変わる。

このピンチを逆転してくれるような、何か。

俺はその希望にすがる思いで、本を開く。

 

「お願いだ!!誰でもいいから助けてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

その叫びが届いたのか、本を開いた瞬間、眩い光が俺を包み込んだ。視界が白く染まり、一瞬であたり一面が光に覆われる。光が収まると、俺を翼の生えた者たちから守るようにして、漆黒の翼を複数生やした女性が立っていた。彼女からは、圧倒的な威圧感を感じる。

 

「あんたは一体……?」

 

恐怖と驚きで声が震える俺に、女性は冷ややかな目で天使たちを見つめながら静かに口を開いた。

 

「我が名はルシファー。堕天使にして、闇の支配者。かつては魔界を統べし者、まぁ、今は追われている身だがな」

 

その声は低く、しかし力強く響き渡った。白い軍服の者たちは一瞬たじろいだが、すぐにそれぞれが構え直す。

 

「ルシファーが召喚されただと!?…馬鹿な!あんな普通の人間の小僧にそんな力があるわけ…!」

 

「黙っていろ!!」

 

一人の軍服の兵士が叫ぶが、肩書を持つ軍服の女性が冷や汗を垂らしながら一喝する。

 

俺は混乱しながらも、目の前の状況を理解しようと必死だった。ルシファーと名乗った女性は、挑戦的な笑みを浮かべながら俺に向かって言う。

 

「お前の願いが届いたのだ。だが、これからどうするかはお前次第だ。我と契約するのならば、お前の願いを叶えよう」

 

そう言ってルシファーと名乗った女は、怪しく妖艶に振る舞う。

 

 

 

 

 

 

 

……俺の答えは出ている!

 

 

「契約でもなんでもする!!俺を助けてくれ!」

 

「……良かろう!それが聞けて我も満足だ!ではその腕から出ている血を指に塗りたくって我の首筋に血判をしろ」

 

「……はい?」

 

「いいから、するのだ!」

 

「あ、あぁ。」

 

俺は言われるがままルシファーの細い首筋に血で塗りたくった指紋のあとをつける。つけてすぐ、その指紋のあとが赤から黒に変色した。

 

「これで契約完了だ。この印は、契約が切れるまで残り続ける。」

 

この間、軍服の者たちは近づこうとするが、ルシファーの12枚の翼がはばたかれる事で強力な突風が生まれ、一歩も近づけなくなっていた。

 

「さぁ、我との契約も終わった事だし、天使共、風を止めてやる。かかって来たいやつから来い。ぶちのめしてやる。」

 

「き、貴様!舐めやがって堕天の分際で!」

 

軍服の者たちは叫ぶが、ルシファーは冷静に俺に再び言葉をかける。

 

「あぁ、それと言い忘れていたが、小僧。お前との契約の代償だが、…そうだな。我の魔界の王の座を取り戻すのにちっとばかし協力しろ」

 

「……え?」

 

この時俺の人生は、思いもよらない方向へ動き出した。

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