先生×生徒ガチ勢一般男子生徒   作:妄想厨

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誤字報告機能に今更ながら気づきました。
皆様、ありがとうございます…! 皆様の優しさがあったけぇ・・・

次で過去アビドス編最後になります。

…ちなみに前回渡そうとしたバトン、だれも受け取ってくれなくて傷つきました。

読者のみんな、人の心とかないんか?




4話 とある少女の独白

──俺は学校を辞めるから

 

あの日の夢を見ている。

 

──だから小鳥遊、後のことは頼んだ

 

傷だらけの彼に必死に手を伸ばす。

でもその手はいつも届かなくて。

 

そして、最後にいつもアイツが現れる。

 

──契約履行のお時間です、廻さん

 

ふざけるな。

 

バネにはねられたように勢いよく起き上がる。

見渡すと、砂漠の光景はいつもの自分の寝室に戻っていた。

 

胸をキュッと抑える。

 

「…うへ。動いてないのに胸が痛いよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

──第一印象は最悪だった。

 

突然現れた一つ年下の男が、廃校に近い学校に転入したいだなんてありえない。

だから、いつもの不良たちが頭を使った作戦に変えて襲ってきたのだと思っていた。

 

しかもよりにもよってアイツ──廻は入学理由が砂漠化の解決と言ったのだ。

 

腹が立った。

信じていたユメ先輩の現実味がない言葉でも苛立っていたというのに、同じようなことをいう人間がまたか、と。

 

それでもユメ先輩ほど希望に満ちた人間でもなかった。

だからきっと、すぐに廻もこの学校を去るだろう。

 

そう思い、資料室に案内することにした。

 

熱心に色々な資料を読み込んでいたけど、長続きしない。

それか、私の目があるから調べているように見せているだけ。

 

そっと部屋を立ち去り、立ってできる書類を資料室前に持ってきて彼の気配を確かめながら作業をする。

 

…その日、私がいる間に彼は外に出てこなかった。

 

ふんっ、と少しはやる気はあるやつだと思い、そっと扉を開けて缶コーヒーを机の上に差し入れした。

 

翌日、缶コーヒーに全く手がつけられておらず、少しむしゃくしゃしたのでそのことについて聞くと廻は目をパチパチさせてこういった。

 

「…え、コーヒーなんてあったか?

 って何で肩を叩くの?! 痛い痛い!!」

 

…別に、気にしてないし。

 

それから、彼は何かに気づいたのか資料室にはこもることはなくなり、朝は掃除、昼は私たちの手伝いをするようになった。

もう諦めたのかと聞くと、腹立たしい顔で廻はチッチッチと指を振った。

 

「ふっ、なんだ小鳥遊。

 あれだけ初めは俺のことを疑ってたのに今は俺のアイディ~アを求めて──って痛い痛い! すぐに暴力に訴えかけるな! 俺たちは人間だぞ、言葉をつかえ!」

 

…絆されたわけじゃない。

 

ただ、こんな悪だくみできなさそうな奴が原因で廃校になるくらいなら、近いうちに関係なく廃校になるだろうと気が抜けただけだ。

 

別に、こいつが本当に砂漠化を解決できるとは思っていない。

ただ、もし廻が何かするのだとしたら……その時はきっと廃校回避のための行動だろうと思うようになったから協力するようになっただけ。

 

廻は本気でアビドスの問題を解決するために動いている。

そう確信したのが、夜中に不良たちがいないか見回っていたある日のことだった。

 

激しい銃撃の音が聞こえ、駆けつける。

明日はこのあたりでユメ先輩が活動するので少しでもトラブルのもとは減らしておきたかったのだ。

 

気配を消し、銃に手をかけ、あと一歩で曲がり角から音源のもとに辿り着く。

そんな時には銃撃は止み、話し声が聞こえてきた。

 

──なんだよ、なんなんだよお前!

 

ヘルメットを被った不良たちの怯える声が静寂の中に響く。

対面していたのは、いつも頼りない笑みを浮かべている姿とは違う影のある笑みを浮かべる、廻の姿があった。

 

──いや、話を聞いてもらおうとしただけなのに撃ってきたのはそっちでしょ…

 

──こんな夜中に近づいてきて、明日のアビドスを襲うのは辞めてくれって急に言うやつなんて撃つにきまってるだろ

 

──仕事の障害になると思ったから?

 

──…そうだよ。明日、ここで梔子ユメがここに来るという情報が入った。それを邪魔するのが私たちの仕事だ。

 

手に力がこもる。

ただでさえ、砂漠化に苦しめられているというのに余計な問題まで起こす不良が腹正しい。

 

一言何か言ってやろうかと思う前に、話は続いていく。

 

──それってさ、何でやってんの?

 

──は?

 

──いや、生徒会長の活動を妨害するって作業に利益は生まれない。なのに高い銃と銃弾まで用意するのが分からなくてさ。

 

本当に気になっているかのように、廻が質問する。

その瞬間、静かな路地裏でも耳を澄ませば聞こえなかった話し声が鮮明に耳に届く。

 

「っ! あぁ…。あぁ、そうだろうよ! お前みたいなブラックマーケットで人生を過ごしたことがないやつには分からないだろ!!」

 

「私、私たちみたいな学校に通えない人間は薄汚い仕事に依存するしかないんだよ!

 何でやってるの? お金のために決まってるでしょ…!

 私たちができるお金稼ぎなんて…これくらいしかないのよ…」

 

それは、慟哭だった。

クズの集まりだと思っていた、不良たちの心からの叫びだった。

 

……でも、廻はそれにも動じなかった。

 

「…よかった、君たちは望んでその仕事をしているんじゃないんだね」

 

「当たり前だろ…! でも、綺麗事を言って死ぬよりはマシなんだよ!」

 

廻は、それならいい案があると不良たちに紙を手渡す。

彼に向けられた銃口は既に降ろされ、不良たちは彼の発言に聞き入っている。

 

──君たちに向いてる真っ当な仕事がある。高い確率で君たちの学校生活も手に入るかもしれない仕事が。

 

だから、君たちはまだやり直せる。

廻はそういった。

 

不良たちの手は、震えていた。

ここからじゃ顔は見えないけれど、あれは、きっと。

 

…私はそっと、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…これ、あげる」

 

あれから幾つかの日が経ったある日、私は廻に珈琲を奢った。

 

「えっと…なんか小鳥遊にプレゼント貰えることしたっけ…?」

 

「別に…気まぐれ。

 それとさ…今までごめん」

 

謝罪の言葉は思ったより簡単に出た。

ずっと疑って、ずっと嫌な態度を彼に取り続けていた。

 

…私より周りを見れている彼を見て、自分が情けなくなった。

 

ポカンとした彼は、少し目を閉じた後に珈琲を一口飲む。

ずっと彼の返事を待つ私にとって、その一瞬は何より長かった。

 

廻が口を開く。

 

「…何か、謝ることでもあった?」

 

「え? いや、今までの態度とか…結構ひどいことも言っちゃってたし…」

 

「…? いつ言われた? 当たり前のことしか言われた覚えないんだけど…」

 

彼は本当に気にしてなさそうに言う。

 

そんなはずはない。

だって今も現に。

 

「だって! …だって、廻はずっと私とユメ先輩と一定の距離を取り続けてる。

 それって私の発言のせいなんでしょ…」

 

そういうと、廻はバツが悪そうな顔になる。

やっぱり私のせいなんだ…と落ち込みながらも言葉を続ける。

 

「その…私はこんなんだから距離をとってもいいからさ。

 ユメ先輩にはもっとフランクに接してあげてほしい」

 

顔を上げると、廻はすごい勢いで顔を横に振っていた。

 

「ごめん、それは無理だわ」

 

何を言われたか一瞬分からなかった。

 

「あー…今の距離が俺には最適だと思ってる。

 それに小鳥遊、俺は全く気にしてないぞ」

 

「じゃ、じゃあ何で勉強会や放課後の買い出しには絶対ついてこないの」

 

「それは個人的なポリシーがありまして…」

 

「やっぱり私がいるからなんだ…」

 

「だから違うって!」

 

ガシガシと頭をかく廻に対してドンドン落ち込む私。

そんな私を見て何を思ったのか、廻は決意したような顔になる。

 

「はぁ…じゃあ言うけどさ」

 

…何を言われても覚悟はできてる。

 

あれだけ酷いことを言ったのだ。

何を言われても受け止めようと背筋をただす。

 

彼の目を真っ直ぐ見つめると、廻は目を外しながら口を開く。

 

「小鳥遊の梔子先輩スキスキオーラを遠くで見てたいなーて思ってただけでして…」

 

…は?

え、は? 思考が止まる。

 

私が原因で廻は私たちと距離をとっているのかと思っていたが、全く想定していない答えが返ってきた。

 

というか。

 

「スキスキオーラなんて出してませんけど!? 真面目に答えて!」

 

私の反応を見た廻がネバついた笑みを浮かべる。

…正直、うざい。

 

「いーや、出てるね。

 そうだな…前に梔子先輩が買い出しに行こうとまず俺に声をかけた時あったよな。

 そん時の小鳥遊の写真」

 

すっと差し出されたスマホの写真に私が映っていた。

その写真に写る私はショックを受けたような、寂しそうな顔を──って。

 

「これ盗撮!! 早く消せ! というかスマホをよこせ!」

 

「あー! お客様困ります!! これは弊社の大切な商品でして!」

 

「人の写真を勝手に商品扱いすんな! っこの──」

 

気づけばいつものバカ騒ぎをしており、お互いが息を切らしながら落ち着いたころ、廻は口を開いた。

 

「ま、俺はこんなやつだからさ。小鳥遊も気にしないでよ。

 …苦労している小鳥遊には申し訳ないけど、今の生活はとても楽しいんだ」

 

さっきのネバついた笑みとは違い、年相応の男子の笑顔だった。

なんだか、こっちが悩んでたことをいい感じにはぐらかされた感じがして悔しくて。

 

頭に浮かんだ言葉をそのまま口にする。

 

「…ふぅ。そこまで言うなら気にしないようにする」

 

「うんうん、それでいいよ。

 それじゃ、この話はここで──」

 

「別に、私のせいで距離を離しているわけじゃないんだよね」

 

解散しようとした廻の言葉を遮る。

 

「それならせっかくだしさ、私のこと下の名前で呼んでみてよ」

 

ずっと気になってたことを口にした。

正直、廻が悪人でないことに気づいてから呼び方には引っかかっていた。

 

これを機に、彼も私の名前を呼んでくれるかもしれない。

そう思って期待の目で顔を上げると、扉を開けて逃げようとする廻の姿があった。

 

「──今、逃げようとするっておかしくない?

 なんかすごく、腹が立っちゃったな」

 

「悪い、俺宗教上の理由で下の名前呼べないんだわ!

 じゃあ今日の話はここまでってことで、サラバダー」

 

そう言って小走りで教室から廻は出ていく。

 

…ふーん。

 

「遮蔽物…確認。目標はまだそこまで離れてない。

 直ちに制圧する」

 

「なんか臨戦モードっぽいオーラを感じるんですが!?

 二年ほど先取りしちゃってますよー!」

 

わちゃわちゃしているうちに背中から飛びついて拘束し、こちらに顔を向かせる。

最初は暴れていたが、逃げられないことを悟ったのか次第におとなしくなっていた。

 

…怒りが収まるにつれ、また不安が大きくなってくる。

 

「そんなに…」

 

「ん?」

 

「そんなに私と仲良くなるのはいやですか…」

 

廻は目を見開く。

女の子の曇らせはNGだよな、と理解できない言葉をつぶやいた後、彼は真剣な顔にうっすらと笑みを浮かべた。

 

「仲良くしたいにきまってるでしょ。…ホシノ、でいいか?」

 

「…もういっかい」

 

「……ホシノ」

 

「最後にもう一度」

 

「………ホシノ、恥ずかしいんだけど」

 

頬が火照り胸が弾んだ。

 

「…えへへ。遅いよ、バーカ」

 

その瞬間、閉まっていた扉が勢いよく開かれる。

 

「ホシノちゃーん、廻くーん! ここにいたんだね、探した──」

 

ユメ先輩の瞳に倒れている廻と押し倒している私の姿が映る。

 

「ほ、ホシノちゃんが廻くんを押し倒してるー!?」

 

「ち、違います! これは──」

 

「そうです、梔子先輩! 小鳥遊のこれは事故で──」

 

…小鳥遊。

 

戻っていた呼び名にカチンときた。

そっちがそういう態度をとるなら後でそれとなく促してやろうと思ってたけど、やめることにする。

 

私は体勢をそのままに、ユメ先輩のほうを向く。

 

「この体勢で下の名前で呼んでってお願いしてくれたら了承してくれたんですよ。

 ユメ先輩もどうですか?」

 

「えっ──廻くんがついに下の名前で呼んでくれたの!?

 よーしそれなら!」

 

「ざけんなや、こんなもん解釈違いの塊だろ!

 …お前ら人の心とかないんかって、ちょっと梔子先輩その位置はマズ──」

 

その後、二人でいっぱい下の名前を呼んでもらった。

 

…次の日には名字呼びに戻っていたので、また押し倒せば下の名前で呼んでくれるだろうか。

 

廻の背中がビクッと震えたような気がして、私は思わず笑ってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

「…一週間後、でしたか」

 

暗がりの部屋、調整を終えてストレッチをしている廻に黒服が声をかける。

 

「んー? そうだな、ビナーの討伐を決めた日は」

 

「…それにしては、緊張した様子がありませんね」

 

黒服は一息ためを入れて言葉を続ける。

 

──高確率で死にますよ、廻さんは。

 

「…そう、かもね」

 

廻はストレッチを中断する。

黒服の力により、廻はとある縛りはありながらもキヴォトス最上位の力を持っている。

 

それでも、今回の敵は強大だった。

 

「──でも、策はある。

 無駄死にする気はないよ、それだときっと彼女たちは心を痛めてしまうだろうから」

 

廻は心優しい二人の少女を思いうかべる。

本編までに余計な荷物を減らそうとしているのに、自分が原因で先生に重りをつけるわけにはいかない。

 

「…クックック。根拠のない発言ですが、いいでしょう。

 ですが私との契約をお忘れなく」

 

「それはもちろん。

 じゃあ、今日は失礼するよ。ありがとうね」

 

扉が閉まる。

 

廻が立ち去った後、部屋には静寂が戻った。

薄明かりが窓から差し込み、部屋の隅々まで薄らと照らし出していた。

 

部屋の隅に置かれた机には、最近の興味深い事象をまとめた研究レポートが並んでいた。

 

「…ビナー、ですか」

 

黒服はアビドスの砂漠化を調べたことがある。

 

あの現象には神秘が関わっているかどうか。

あの砂漠にはどんな資源が眠っているか。

 

答えは拍子抜けするほどすぐに導き出せた。

 

──砂漠化の原因は自然現象であり、神秘も何らかの資源も影響はしていない。

 

にもかかわらず、廻がアビドスに訪れてから不思議なことが起こった。

 

黒服は買い取った鉱石を手に取る。

 

アビドスの砂漠に興味をもったとある企業が調査した際、このような鉱石の反応はなかったはずだ。

しかし、ただの三人の学生がスコップで広大な砂漠の中、真偽もわからぬ情報一つだけで探り当てた。

 

…それだけなら奇跡としてあり得る。

 

しかし、ビナー。

あの存在だけはあり得ない。

 

黒服が調査したとき、間違いなくあのような存在はいなかった。

梔子ユメも学生が退学した理由にビナーと呼ばれる存在が関わっていたのなら、多少なりとも耳に入ってきていただろう。

 

だが、梔子ユメはそのような存在は知らないと答えた。

 

「…クックック。更なる検証が必要ですね」

 

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