相変わらずだな ハンドラー・ドクシャァ
1話と5話のアビドスお別れシーンに齟齬あったようだ
私が修正したのは、1話だったか…
ハンドラー・ドクシャー
こんなガバ作者に執筆を任せるのはやめておけ…
とりあえず先生を出したいので、一気に時間を進めました。
時間を進めた間の出来事は簡単に本分に載せてるので、キミが書いてくれていいんだよ♡?
6話 先生
夜の深い闇が病室を包み込み、静寂の中に機械の断続的な音が響いていた。
重傷の廻はベッドに横たわり、意識を失ったまま虚ろな呼吸を繰り返している。
ベッドの傍らには、薄暗い灯りに照らされた研究者──黒服の姿があった。
重傷の廻を見つめる彼の眼光は獲物を見定める獣のように冷酷でありながら、どこか好奇心と期待に満ちていた。
その手に小さなノートを持ち、細い指が滑らかにペンを操りながら暗号めいたことを書き留めている。
「……ククッ」
黒服は廻の右手を持ち上げると、その手首に電極を貼り付けた。
そして数秒後、廻の脳波や肉体的な反応を記録し始める。
意識が完全に失われているはずの廻は、時折苦痛に顔をゆがめている。
その反応を観察しつつ、黒服はノートにペンを走らせ続ける。
「やはり……心から信じることが大きく関わってきそうですね」
◇◆◇◆◇◆
「……ここは」
夜明けの光が、カーテンの隙間から細い光の帯となって部屋に差し込んだ。
ぼやけていた視点が、少しずつ焦点が合っていく。
完全に焦点が合うと、そこには見覚えのある真っ白な天井が一面に広がる。
心臓がドキリと跳ね、身体が反射的に飛び起きた。
点滴の付いてない手、健康的な足を見てほっと息をついた。
「まだ、役に立てそうだ」
廻はゆっくりとベッドに倒れ込む。
額から汗が滑り落ちると同時に、記憶が脳裏によみがえってきた。
ビナーとの闘い、アビドスの砂漠化を解決できたこと。
何だか現実味がなく、まだ夢の中にいるような不思議な感覚だった。
立ち上がる気力が沸かず、そのままベッドの中にいると、扉を開く音が静かな病室に響く。
「お目覚めですか、廻さん」
「……黒服」
感情の読めない涼しい顔で黒服が病室に入ってきた。
黒服はベッドの近くまで歩いてきて、ゆっくりと廻の顔を見下ろす。
「体調に変化はありませんか」
「…特に、問題はないと思う。
問題がなさすぎて違和感を感じてるくらい」
「なるほど」と黒服が呟き、病室に備え付けられていた小さな冷蔵庫からペットボトルを取り出し、それを廻に渡した。
「どうぞ」
「ありがとう」
廻は上半身を起こしてそれを受け取ると、蓋を開けて中の水を一気に飲み干す。
そして一息つき、改めて黒服に向き直った。
「…それで、契約の件だけど」
「えぇ、その件ですが既に廻さんには契約を果たしていただいております」
黒服は薄ら笑いを浮かべながら告げるが、廻は疑問を感じる。
「いや、俺は寝てただけ…あー、寝てる間に終わらせた感じ?」
「クックック。そんな軽い反応で良いのですか?
貴方の体は私たちの都合の良いように体を造り替えられているというのに」
「…まぁ、俺が自分のことを人間と信じられる体のままなら気にしないよ。
動かない体よりマシだし、今回のアビドスの件も実現できなかったしね」
黒服は笑みを崩さず、小さく頷いた。
その反応に特に疑問を抱くことなく、廻は続ける。
「けど、アビドスから早急に去るっていう契約もあるのは少し驚いたかな。
何か理由が?」
黒服と契約した内容の一つ。
それは、ビナー討伐後は早急に去り、アビドスには当分近寄らないという契約だ。
アビドス砂祭り開催の手伝いをしてから退学する予定でいたため、梔子先輩や小鳥遊には大変な作業を押し付けて逃げてしまった形となってしまった。
「ふむ……そういった点は気になるのですね」
「…?」
「いえ、気にしないでください。廻さんの契約に対する疑問ですが……」
黒服は廻から視線を外し、窓の外を眺める。
それからしばらく沈黙が続いた。
「廻さん。貴方がビナーと呼ぶ生物を打倒した後、アビドス砂漠にはオアシスが生まれましたよね」
「あぁ、そうだな」
こちらに目を合わせずに黒服は続ける。
「そのことに疑問を感じなかったのですか?」
問われ、廻は考える。
黒服の言う通り、アビドス砂漠にオアシスが生まれたのは、ビナーが消滅してからだ。
正直、あの時の記憶は定かではない。
そのため、一つずつ廻は自身の思考を把握している限りで思い返すことにした。
最初のきっかけは、アビドスの砂漠化の原因について考えていた。
自分の知識では飛行機に何時間も乗って移動したわけでもないのに、急に砂漠が現れるなどあり得ないと思っていたからだ。
だから、何かしら原因があるはずだと考え、真っ先にアビドス高校の資料室へ向かったのだ。
現に、過去の生徒たちはビナーの存在を認知しており、その存在に怯えるような日誌を残していた。
ゆえに、ビナーを倒せば砂漠化の原因を解決できると考えたのだ。
そこまで考え、廻は顔をあげて黒服のほうへ顔を向ける。
「疑問って言われても、ね」
廻は苦笑し、口を開く。
──元凶がいなくなったんだ。オアシスが生まれるのも当然の結果じゃない?
◇◆◇◆◇◆
「……もう、学年上三年生になるとはなぁ」
太陽が真上に輝く昼下がり、廻は高層ビルの屋上に立っていた。
暖かい風が髪を撫で、遥か下方の街の喧騒が微かに耳に届く。
廻の服装はとある企業グループから提供されているスーツという、年齢に不相応な格好をしていた。
「多分先生が来る頃だろうけど…ギリギリ間に合った、かな」
本当に色々あった。
未来の連邦生徒会長が失踪しないよう、直談判して何故か仕事を手伝うことになり解釈違いが起きそうになったので去ろうとした際にひと悶着があり。
山海経で申谷カイと協力関係になり、竜華キサキの症状を原作よりマシにすることに成功したうえで去る際にひと悶着があり。
ミレニアムで調月リオの目的達成のための作戦に一枚噛んだり、明星ヒマリと愉快な日々を過ごして去る際にひと悶着があり。
ゲヘナで万魔殿と委員会の関係が少しでも良くなるよう活動した後、去る際にひと悶着があり。
トリニティでアリウス分校に所属する生徒の待遇についてベアトリーチェととある契約をしたり、何か問題が起きてないか歌住サクラコと学園に戻った際にひと悶着があり。
アビドスで梔子ユメの卒業式や砂狼シロコたちの入学式に参加だけしてひと悶着があり…。
……無事に去れることの方が少なかったけど、自分が出来る精一杯のことはできたのではないだろうか。
力及ばなかった点に関しては先生がきっと解決してくれるだろう。
「結局、連邦生徒会長の失踪は止められなかった」
彼女がいた場合、先生やシッテムの箱がどうなるか分からなかったが、先生との絡みが見たい一心で説得を続けたが、やはり先生ではない自分の言葉では彼女の心には響かなかったのだろう。
──貴方
彼女は失踪する前、悲痛の色を顔に浮かばせながら廻にそんな言葉を残した。
何を意図して彼女がそんな言葉を残したのか、頭が悪い自分には分からないけれど、先生がいなければキヴォトスに平和は訪れないことは分かった。
先生が来てくれた後の、色彩への対処法やその他ハッピーエンドのための施策は考えているが、自分なんかが考えたことでは無駄になる確率のほうが高いだろう。
先生の行動を見て柔軟に変えていこう。
そんなことを考えていると、ポケットにある携帯が震える。
携帯を取り出し、電話番号を見てため息をつく。
「…お待たせしました。
電話に出ると同時に、定型文となったセリフを述べる。
すると、電話口からは聞きなれた皮肉気味の男の声が返ってくる。
『まったく…ある程度の自由行動が許されてるとはいえ、定期連絡だけはしろとあれほど言っただろう』
「すみません…でもこっちも無茶ぶりの依頼をいくつも振られてきたんで、少しは許してほしいものです」
『あの程度の問題を解決した程度で何を勘違いしたのやら。
プレジデントには一目置かれているようだが、それが何だというのだ。
ただの従業員の一人にも関わらず、厚かましいにも程がある』
廻の軽口に、電話口の男は苛立ったように言葉を返す。
『…まぁいいだろう。これより次の仕事内容を伝達する。
本日の午前X時、シャーレに失踪した連邦生徒会長から指名された大人が現れるとの情報が入った』
「……へぇ」
廻は目を細める。
ミレニアムの風力発電所のシャットダウン。
矯正局からの脱走者。
武器の不法流通が1000%以上増加。
加えて、連邦生徒会長の失踪が起きたことから先生がもうすぐ来るのではないかと推測していたが、まさかカイザーコーポレーションから情報が入るとは思ってもいなかった。
「それで、その情報を聞いた俺は何を?」
『大した仕事ではない。ただの監視業務だ。
あれだけ我々の仕事の邪魔をしてきた連邦生徒会長が指名した大人だ、どういった人物か情報が欲しい』
「監視、ですか。
方法についてはこちらに一任してもらえると思っても?」
『好きにしろ。
それと、奴らの目的地はシャーレだ。間違えるなよ』
「わかりました。それでは現場に向かいますよ、カイザーPMC理事」
その言葉を最後に通話が切られる。
携帯をポケットに入れると、今までいた高層ビルの屋上から躊躇なく飛び降りた。
勢いよく当たる風に全身を包み込まれながら、考え事にふける。
──カイザーコーポレーションに入れたのは運が良かったな
廻は常に先生が来た場合の立ち回りを考えていた。
自分が生徒という身分の限り、どれだけまがい物だと言っても先生は廻も全力で守るべき存在とみなして行動するだろう。
その行動は先生として素晴らしいが、廻としては望ましいものではない。
そこで、生徒としてではなく社会人として先生と交流するためにカイザーコーポレーションに就職することにしたのだ。
…勝手に学園の退学手続きがカイザーによってされていたが、もとより出席日数について常に指摘されていた身だ、特に問題も起きないだろう。
正直、待遇は悪く、生きていくだけでもギリギリの賃金だが、先生が自分を生徒として認識しないならお釣りがくるくらいだ。
「……それはそうとして」
カイザーの動きは把握しておかなければならないだろう。
自身には原作を壊した責任がある。
先生×生徒を見るためにした行動が逆に苦しめる結果になれば、何が何でも打破する必要がある。
原作の敵ポジション側に所属したのは、カイザーやゲマトリアの動きをある程度把握し、秘密裏に先生をサポートすることが目的だ。
先生とは仕事上の付き合いに留め、原作の黒服と同様の距離感を保ちながら交流を持つ。
これまで交流していた生徒たちは、実は俺が敵側に所属していることが知られることで、失望され、距離を置くようになる。
これにより俺は先生と生徒の関係を邪魔することなく、その絡みや活躍を見守ることができるだろう。
……天才だな、俺。
そんなことを考えつつ、ビルの屋上やベランダを軽く飛び移っていくと、シャーレのオフィスがあるビルに到着する。
すると、廻の瞳には多数の不良と雨のごとく弾丸が飛来する光景が目に映った。
警察車両や救急車が次々と現場に集まり、周囲の道路は封鎖されている。青白い回転灯が不気味に瞬き、空気には緊迫感が漂っている。
「(……さて、お目当ての人物は)」
そんな騒がしい現場を見渡していると、廻の耳に不良の集団が叫ぶ声が聞こえる。
その声に誘われるように目を向けると、見知った生徒の姿が確認できる。
早瀬ユウカ。
羽川ハスミ。
火宮チナツ。
守月スズミ。
──そして、彼女たちの姿に隠れていた一人の大人の姿が現れる。
黒髪が太陽の光を受けてキラキラと輝き、その柔和な切れ長の目で周囲を静かに見渡している。
風に揺れるシャーレの制服が
銃撃戦の中にいるにもかかわらず悠然と歩を進めるその姿は──
「べ、便利屋先生だーーー!!!」
心臓が高鳴り、感情が一気に高まる。
待ち望んだ展開に、廻は歓喜した。
思わず笑みがこぼれてしまうのを隠そうともせず、その場で大きく叫ぶ。
アロナ絵の先生だった場合、どんなふうに見えるかも興味はあったが、まさかの便利屋先生フォルムで来るとは…。
遠くから見ても伝わるあの色気。
同性でも感じるのだ、間近でそのオーラに当てられた生徒はどうなるか…。
まったく、罪な男だよ。先生は。
「…ダメダメ。少し冷静になろう」
廻はその場で深呼吸し、心を落ち着ける。
まだ先生はシッテムの箱を持っていないだろう。
そのことを考えると、彼が命を落とす確率は0ではない。
野次馬根性を切り替え、周囲の状況を冷静に見極める。
……想定以上に数が多いな。
巡航戦車が5台以上。
不良たちの数も多く、先生たちはじわりじわりと囲まれ、退路までもが塞がれようとしている。
「……どこから攻めるべきか」
廻がそう呟くと、背後から声がかけられる。
「お困りのようですね」
「……ん?」
振り向くと、涼やかな顔立ちの少女が姿を現した。
その長い黒髪はまるで絹のように滑らかに揺れ、その顔は狐の面で確認することができないが廻は一目で目の前の少女が誰なのか理解する。
…いや、待て。
「──何で狐坂がここにいる」
彼女の破壊衝動を抑えるため、いろいろ関与したことで原作より罪の重さはマシになったとはいえ、矯正局にいたはず。
この騒ぎは、矯正局から脱獄した狐坂ワカモによって引き起こされているのも確認済み。
つまり、この不良たちを扇動している彼女がここにいるはずがないのだ。
「何でって…あぁ、そういう意味ですか」
「──貴方様がいる場所が、いつだって私のいる場所だからですわ♡
もう私のお傍から、離れないでくださいね……?」
…。
……。
………。
──よし、先生の手助けに行くとしますか
廻は思考を止め、全力でその場から立ち去った。
◇◆◇◆◇◆
「先生、指示を! このままでは…っ」
ハスミの声が響き渡る。
彼女は眉間に皺を寄せ、この場の打開策を必死に考えているようだった。
巡航戦車が到着したことで、私たちの勢いがそがれ、逆に不良たちの勢いが上がっている。
言葉にはしていないが、ユウカやチナツ、スズミも同じ気持ちなのだろう。
私に怪我をさせてはいけないという彼女たちの優しさが、普段のパフォーマンスを奪ってしまっている。
……このままでは彼女たちが無理をして、怪我をしてしまうかもしれない。
思考を巡らせる。
目の前の状況を的確に把握し、不良たちの動きを読み取る。
…よし。
──これなら打開できそうだね
念のためにポケットにしまっている大人のカードに触れながら、彼女たちに指示を出そうとしたその時。
一陣の風が吹く。
瞬きの間に、不良たちとの間を一人の少年が通り抜けてきた。
そんな彼の手には、さきほど不良たちが持っていた銃が握られている。
不良たちが彼の姿を確認した後、銃を撃とうとしたのだろう。
そこでようやく自身の手元に銃がないことに気づき、一団の騒ぎが大きくなる。
しかし、彼はそんな様子を気にすることなくこちらへと近づいてきた。
近くまできた彼と目が合うと、彼は親しみを表すようにお辞儀をした後、口を開く。
「初めまして先生。カイザーコーポレーション 施設防衛部門隊長の廻と申します。
──貴方にお力添えさせていただきたく、参上しました」
ヘイローを浮かばせ、こちらに笑みを浮かべる男の子。
企業のロゴがついたスーツを着こなした姿。
社会人として叩き込まれたのだろう作法。
姿からして、生徒ではない。
…それでも
彼をユウカたちがどう思うか分からないけど一旦──
そう思い、彼女たちの姿を見ると、一斉にスマホを取り出し、どこかに連絡していた。
「──ノア? よかった直ぐに出てくれて。
見つかったわ、廻よ。カイザーにいるらしいの。
すぐにリオ会長とヒマリ先輩に──」
「──委員長、廻さんを発見しました。
場所はキヴォトス郊外にあるシャーレ部室へと続く公道です。
…すぐに向かう? 分かりました、こちらもできる限りの対応をしておきます」
「──ナギサ様。彼、廻の姿を…え、今すぐに身柄を確保、ですか?
…そうしたいのは山々ですが、まずは情報を──」
戦車に追い込まれていた先ほどよりも、なぜか緊迫した空気が訪れている。
しかし、そういった空気には鈍感な先生は空気の変化には気づくことはなかった。
だが、スーツを着た少年が現れたと同時に、同じ名前を三人が電話で話していることから、知り合い以上であることが推測できる頭の良さは彼に備わっていた。
……うーん。大丈夫そう、なのかな。
先生はそう思い、目の前の少年を怖がらせないよう出来るだけ優しく笑みを浮かべながら手招きをした。
結局、男先生を登場させることにしました。
コメントで色々アイデアをいただいたのに、すみません。
……アイデアをくれた方、そのアイデアは貴方様が書き上げて読ませてくれていいんですよ?