先生×生徒ガチ勢一般男子生徒   作:妄想厨

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既に主人公くんの能力についてはほぼ正解がコメントであったので術式を開示します。
そこに主人公”を”曇らせる要素を一つまみ。

主人公くんが矛盾した行動してるってのはその通りですねぇ…考えてた能力と紐づけできないか考えてみるっすよ。

……誰か読者の中に潔 世一くんいない? 作者に適応して代わりに執筆して!!!




7話 彼の軌跡

実験体ー4219 『シュレーディンガーの猫(シナリオテラーの神秘)』 神秘クラス:Euclid

 

この記録は実験※回目の映像を書き起こしたものです。

 

<記録開始>

 

研究者──黒服と雲隠廻が研究所の一室で向き合っている。

X回目の人体実験が終了し、黒服が結果を廻に報告している。

 

「──廻さん。貴方の神秘の力の一端が分かったかもしれません」

 

雲隠廻は怪訝そうに眉をひそめる。

 

「神秘の力って……俺には特別な力は何もないって聞いてたけど?」

 

「ククッ、そうだと思っていたのですがね。

 しかし、ビナーが現れたときから考えていたのです。

 もしかすると、あなた自身が何らかの影響を周囲に及ぼしているのではないか、と」

 

「ふぅん……なるほどね。ま、せっかくだし聞かせてもらおうか」

 

雲隠廻は用意してある椅子に座り、リラックスした様子で黒服に向き合っている。

黒服は机の上に置いてあるレポートを手にし、口を開く。

 

「あなたは、自身が確信した事象に対して、無意識のうちに『シナリオ』を形成し、それを現実へと変換する力を持っているのです。

 現実を、ある種のテクストとして“貼り付ける”ように」

 

「……どういうこと?」

 

「簡単に言えば、たとえ解決が不可能と思われる事象でも、あなたがその事象に原因を見出すと信じれば、その原因が生成される。

 そして、それを排除することで、あなたの望む結末が訪れる──といった力です。」

 

「……正直、何を言ってるかわからない。

 んー…例えば、俺が“宇宙の中心は太陽である”という学説を信じた場合、地動説を証明するための何かしらの原因が出てきて、それを解決できたら地動説になる……そんな感じで合ってるか?」

 

「その認識で概ね正しいでしょう。

 ただし、現在のところ、あなたの力がそこまでの影響力を持つかどうかは不明ですがね」

 

数秒間の沈黙が続いた後、雲隠廻が突然顔を上げ、焦った声で黒服に問いかけた。

 

「待ってくれ。

 それって……俺の無意識で思っている結末も引き起こす可能性があるってこと?」

 

黒服はレポートに目を落としながら静かに答えた。

 

「理論上、そう考えられます。

 深層心理はしばしば本人にすら気づかれませんが、それこそがあなたの能力が現実に干渉する鍵かもしれません。

 ……なにか心当たりが?」

 

「いや、まさかそんなことがあり得ていいはずが…」

 

廻の顔が蒼ざめていく。

やがて彼は右手で首を力強く握り、か細い声で呟いた。

 

「もしかして俺は、彼女たちの気持ちを捻じ曲げて──」

 

 

<記録終了>

 

この雲隠廻の仮定と黒服の同意は誤りだったことが後の研究で判明しています。

彼の力は人間に影響を及ぼすことはありません。

 

 

・補遺

 

 

 

 

 

……私は、失敗しました。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

──私が初めて廻に出会ったのは、まだ私が高校1年生の頃でした。

 

その頃、廻は中学生でしたが、学校中に「ヘイローを持つ男子生徒がいる」という話題が広まっており、噂に疎い私の耳にも自然とその名が届いていました。

特に、彼が転入初日に受けた試験の結果が驚異的だったという話は、まるで物語の主人公が現実に現れたようだ、と同級生の間で大いに盛り上がっていたのを覚えています。

 

……気づけば私と同じ三年生になっている理由は今も分かりませんが。

 

当時の私は学年の違う彼にあまり関心を持っておらず、また自分自身の悩みに押しつぶされそうになっていたため、噂について深く知るのは後のことでした。

 

その悩みというのは──

 

「体重が減らない…!  む、むしろ増えてる…?」

 

恥ずかしながら、健康診断の結果に気を動転させていたのです。

スマホに表示された自身の体重を凝視しながら歩いていたせいか、前方から歩いてくる人の影に気づきませんでした。

 

「正義実現委員会で不良を更生させるために動き回ってるし、食事だって控えめにしてるはずなのに──きゃっ!」

 

「いてっ…」

 

衝突の拍子に手からスマホが滑り落ちる。

 

「危ない……!」

 

素早くスマホを受け止めたのは、目の前の男性──廻でした。

その瞬間の動きの速さに驚くよりも先に、私はスマホの画面に目を奪われていました。

 

……私の健康診断の結果が表示されたままのスマホを彼はキャッチしたのです。

運が悪いことに、画面は廻の方に向いたまま。

その画面は私によって拡大された体重が表示されていて。

 

焦る必要はない。すぐに謝罪してスマホを返してもらえばいい。

そうすれば良識ある人は他人のスマホの画面など見ずに返してくれるでしょう。

 

現に「運よくキャッチできて良かったです」と廻は言い、スマホを見ないよう配慮しながら私に差し出してくれました。

しかし、私は体重増加に対するショックと人とぶつかってしまった動揺、さらに体重データを見られたかもしれないという恥ずかしさが重なり、その場で硬直してしまいました。

 

私の奇妙な反応を訝しんだのか、廻は一瞬スマホに目を落としました。

そして、画面に表示されたデータを目にして、今度は彼が硬直する番でした。

 

「あ、ああぁの、見ましたか!!?」

 

そこでようやく体が動くようになり、差し出されたスマホを取った。

 

「えっ……と、すみません。決して見るつもりはなくて…」

 

「…何が書いてあったか覚えてますか?」

 

「………いや、正直一瞬で何も見えませんでしたよ」

 

「そ、そうでしたか」

 

その返答に一瞬安心するも、不自然に間が空いた返答とバツが悪そうに目をそらしたのが気になり思わず言葉を続けてしまいました。

 

「お礼が遅れましたね。

 スマホを落とす前に拾っていただいて、本当にありがとうございます」

 

「いえ、気にしないでください。それでは自分はこれで──」

 

「──ところでなんですが、いい体をしていますね。

 体重など伺ってもいいですか?」

 

「あ、ありがとうございます?

 ……53キロぐらいだったかと」

 

「ごじゅっ…」

 

……今思えば私が歩きスマホをしていたせいでぶつかったというのに、謝罪せずに絡む人を廻はこんなにも付き合ってくれたものです。

 

ですが、その時の私は違いました。

 

「わ、私の体重より…」

 

ぽつりと呟いた私の言葉が聞こえたのでしょう、廻は慌てたように言葉を重ねました。

 

「あ…、あ〜! でも俺の体重は軽い方ですよ!

 先輩は身長も高くてきっと筋肉もありますし、体重はそんなに気にしなくても大丈夫だと──あ」

 

廻も喋っているうちに気づいたのでしょう。

不穏な空気を廻は察知し、逃げ出そうとする。

 

しかし、私は絶対に離すまいと彼の腕を強く握りました。

 

「……やはり、見えていたのですね」

 

「な、なんのことだか…。

 俺はこれから部活動があるから失礼…」

 

「逃がしませんよっ! 私の秘密を忘れてもらうまでは…!」

 

「誰にも言いませんから──って痛いわ! 離せコラ!」

 

──懐かしい思い出です。この出来事から彼と関わるようになりました。

 

「先輩ー、今回は楽しみながら運動にもなるフィットネスゲームを持ってきました!」

「ゲーム、ですか。

 確かにそちらには注目したことがなかったですね…。

 教えていただきありがとうございます」

 

運動が得意ではない私が楽しめる企画を持ってきてくれたり。

 

「も、もう我慢できません!

 放課後にはお気に入りのあのお店に…!」

「限界が早すぎます羽川先輩!!

 あっちょ…力強っ!?

 ほら、先輩のために高たんぱく低脂質のお菓子作ってきましたから…!」

 

我慢が限界に達した私に、廻がお菓子を作ってくれたり。

 

「──廻、どうしてここに」

「たまたま散歩中に、雨の中傘もささずに走っていく先輩を見かけたからです。

 ほら、そんなとこに座ってると風邪をひきますよ」

「…偶然のわりには廻の服は随分濡れていますね」

「……ちょっとはカッコつけさせてください」

 

落ち込んでいた時に励ましてくれたり。

 

特別なきっかけがあったわけではありません。

むしろ、初めは私にとっては恥ずかしい黒歴史といってもいいかもしれません。

ただ、それでも彼との日々は楽しいものでした。今のように副委員長という立場もなく、失敗しては先輩にかばってもらい、不甲斐ない思いをしていたときに癒しを教えてくれた友達──それが廻でした。

 

休日に誘っても快く来てくれたことからいい関係を築けていたと思っています。

 

──だから、廻が休学するという話が信じられなかった。

 

それも、本人ではない第三者から知らされたのだ。

私に一切の相談もなく。

 

思わず、その情報を私に聞かせたシスター──歌住サクラコの肩を強く掴んでしまった。

 

「どういうことです…!

 彼は、廻はそんな様子は一つも…」

 

「あぁ…そうかもしれませんね。

 ──私が彼に休学するように働きかけましたし」

 

カッと頭に血が上る。

しかし、何か誤解しているかもしれない。

必死に呼吸を整える。

 

「……どうしてそんなことを?」

 

「ハスミさんは廻さんと仲が良かったと伺っていましたから。

 …ふふっ、感謝してくれてもいいんですよ?」

 

…この発言は後々誤解ということが分かりましたが、あの時は怒りでどうにかなりそうでした。

 

 

その後も、廻が帰ってきたときの騒動や誰かの手によって退学手続きされていた時など色々ありましたが、私がその経験で感じたのは、情報を得ることの重要性です。

 

正直あれはサクラコ様にも非はあると思いますが、廻と関りがあったティーパーティーや救護騎士団、正義実現委員会があそこまで取り乱したのはサクラコ様から聞いた情報以外何もなかったからともいえます。

 

「──だから私は廻を確保するのではなく、情報を集めるようナギサ様に…っとこの話はいいですね。

 私と廻が交流するきっかけはこんなものでしょうか」

 

簡単に説明するつもりが、思ったよりも話し過ぎてしまった。

乾いた口を潤すために、目の前の大人──先生が用意してくれた飲み物を口に含む。

 

「うん。聞かせてくれてありがとうね、ハスミ」

 

珈琲を飲みながらにこやかに笑みを浮かべる先生。

ミレニアムとゲヘナに追いかけられて逃げる廻の姿を見送った後、帰ろうとした私を、サンクトゥムタワーの制御権を取り戻した先生が「廻の話が聞きたい」と引き留めた。

 

最初は話す気はなかったが、彼の優し気な目と雰囲気に絆され、気づけば廻との思い出を語っていた。

…これが大人の包容力というものでしょうか。

 

「でもどうして急に廻の話を?

 話してしまった私も私ですが、先生はあまり廻のことを知らないのでは?」

 

疑問を口にすると、先生は苦笑しながら口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

「スーツ姿の男の子と学生のみんなが知り合いのように見えたからね。

 どんな関係なのか気になったんだ」

 

「あぁ…言われてみれば」

 

私は生徒たちに嘘をつかないように努めつつも、その理由をすべて話すことは避け、ハスミにさりげなく伝えた。

しかし、本当に廻の話を聞かなければならないと思ったのには別の理由がある。

 

あのシャーレの地下で出会った、狐面の少女のことだ。

彼女は私の姿を目にすると、一瞬息を呑むように硬直した。

その後、「その目は……貴方は信頼できる御人のようですね」とつぶやきながら、祈るように話しかけてきた。

 

──どうか彼を、廻様の心を救ってください

 

ワカモと名乗った彼女がどんな気持ちでその言葉を口にしたのかは分からない。

その前にリンの気配を感じて立ち去ってしまったからだ。

 

ただ、彼女の切実さがにじむ声色と、私が見た廻の目。

…とても無視できる内容ではなかった。

 

「それより今日はごめんね。

 シャーレまで守ってくれて、休んでもらうどころか話にまで付き合ってもらっちゃって」

 

「いえ、気にしないでください。私も充実した時間を過ごさせていただきました。

 今日はこの後用事があるのでここで失礼しますが、近いうちにぜひ、トリニティ総合学園にお越しください、先生」

 

「ありがとう。

 次に伺うときは手土産を持参するよ」

 

玄関までハスミを見送ると、私はシッテムの箱を手に取り、呼びかけた。

 

「──アロナ」

 

画面に向かってそう言うと、透き通った青空が広がる教室の中へと、世界が変わる。

そして、幼い少女が目の前に現れた。

 

『はい! お呼びですか、先生?』

 

「サンクトゥムタワーの問題を解決してもらったばっかりなのにごめんね。

 少し調べてもらいたいことがあるんだ」

 

『任せてください! 先生のご期待に全力でお応えします!』

 

「…ありがとう、本当に助かるよ」

 

アロナの頭を軽く撫でると、彼女はふわりとした笑顔を見せ、私が伝えた「雲隠廻」という名前をもとに検索を始める。

 

『んー、かなり有名な方のようですね。

 カイザーで出世街道を進んでいるみたいで、関連する情報はカイザー絡みばかりです。  どうやら社会人のようですので、先生とも話が合うかもしれませんね~』

 

「それはそれで興味深いけれど、廻の過去について詳しい情報はないかな?

 彼は少なくともミレニアム、ゲヘナ、トリニティの生徒たちと関わりがありそうだし……もしかしてカイザーが学校を支援しているとか、そんな話は?」

 

『今のところそういう情報は見つかりませんが……ちょっと待ってくださいね!

 もう少し調べてみます!』

 

アロナがそう言うや否や、わずか十数秒が経った頃だった。

突然、彼女が驚きの声を上げた。

 

『…うぇ!? なんですかこの人!

 い、いったい何をしたらこんなことに…?』

 

「どうかしたの?」

 

「見てください!」と、アロナが差し出してきたデータに目を通すと、そこには彼の経歴が詳しく記されていた。

最初は「カイザー所属」とだけ書かれていたが、アロナが目を閉じて解析を進めるにつれ、少しずつその内容が明らかになっていく。

 

「これは──」

 

『学校に入学しては退学になっています!

 キヴォトスで退学になるなんてよっぽどのことをしないとされないはずですよ!』

 

その経歴を見ていると、キヴォトス事情に疎い私でも異常だと感じるほど奇妙なものだった。

複数の学校に入学し、すべて退学に至った履歴が、一つの日付に集中していたのだ。

 

「アロナ、キヴォトスでは複数の学校への同時入学なんて許されてるの?」

 

『そんなはずありません!

 …この情報はかなり深くまで調べないと出てこない情報でした。

 雲隠廻という方が意図的に隠していたのか、第三者が原因なのかまでは分かりませんが、軽くデータを閲覧しただけでは学校に入学していた形跡すら見当たりません。

 きっとこの人は何らかの方法で複数の学校に在籍していたんだと思います』

 

自分のデータを隠しながら様々な学校に籍を置き、最終的には退学に至る。

そんな行動を、彼はいったい何の目的で繰り返していたのだろうか。

 

アロナは「怪しい人です」と断じる。その判断に異論はない。

 

だが、どうにも腑に落ちない。

 

シャーレの地下で聞いたワカモの切実な声。

ハスミの話から感じられる廻の人柄の良さ。

 

──彼の眩しそうに私に目を向けたあと、生徒たちに視線を移した瞬間に瞳に浮かんだ深い痛み。

 

それは、胸を締め付けるような地獄の呵責を抱えているかのようだった。

 

そんな目をした人間が悪人だとは到底思えない。

ただし、ほんの些細な勘違いで致命的な過ちを犯しかねない危うさを感じた。

私はアロナに礼を述べて電源を落とすと、冷めてしまったコーヒーを一息で飲み干した。

 

「雲隠 廻くん、か……」

 

彼の瞳が脳裏に焼き付いて離れない。

大人として、あんな目をした子供を放っておくわけにはいかない。

……彼の連絡先を聞いておくべきだったな。

 

「とりあえず足を動かさないとね。

 廻くんにはどこに行けば出会えるのかな──」

 

そうつぶやきながら椅子から立ち上がると、廊下をどたばたと駆ける足音が聞こえた。

次いで、扉をノックする音が響く。

リンちゃんが何か忘れ物をしたのかなと思いつつ返事をすると、扉がゆっくり開いた。

 

そこに立っていたのは、見覚えのない緑髪の少女だった。

 

「お、遅れてごめんなさーい!

 リンちゃんはもう帰っちゃいましたか!?」

 

「…はじめまして。

 君がリンちゃんが言ってたおっちょこちょいの先輩かな?」

 

冗談混じりに問いかけると、目の前の少女はバツが悪そうな顔を浮かべる。

 

「ひぃん…ひどい紹介されてるよぉ……。

 …あっ、自己紹介がまだでした!」

 

少女は乱れた髪を整えつつ、眩しいほどの笑顔を浮かべた。

 

「私、連邦生徒会 特任アドバイザーの梔子ユメって言います!

 ユメって呼んでくださいね!」

 

「よろしくね、ユメ。

 特任アドバイザーっていうと、リンとはまた別の組織なんだね?」

 

「そうだよぉ! あっそうです!

 私は既に学校を卒業しているんですけど、やり残したことがあって連邦生徒会に相談したら、この役職にしてもらえました!」

 

「ふふっ、喋りやすい口調でいいからね。

 教えてくれてありがとう。

 …ところでその手に持ってる書類は?」

 

「リンちゃんから先生へ渡してほしいって託された書類です!

 ……もしかして何も?」

 

「聞かされてないなぁ…。

 緊急のものはあったりするかな? 少しこの後したいことがあるんだけど…」

 

「今回の書類に関しては急を要する内容ではないので、先生のご予定を優先してもらって大丈夫です!

 それより、先生はこれからどこかに出かけるんですか?

 もしよければ、私が護衛しますよ!」

 

「それは助かるよ。正直、まだこの辺りの道に詳しくなくてね」

 

「任せてください!

  それで、先生のご用向きを聞いてもいいですか? お力になれるかもしれませんし!」

 

彼女の前向きな姿勢に、思わず頬がほころぶ。

遅れてきた彼女を本来は叱るべきなのだろうが、その真摯な態度に、とてもそんな気持ちにはなれなかった。

 

私は知ったばかりの情報が個人的なものであるため、多くは語れないものの、ハスミのようにユメも何かを知っているかもしれないという期待を抱き、軽い口調で答えた。

 

「ちょっとさっき知り合った雲隠廻くんのことで気になることがあってね。

 ユメは何か知ってたりする?」

 

その瞬間だった。 にこやかだった彼女の笑顔が、凍り付いたように硬直する。

 

まるで──深い感情に押し寄せられたかのように。

 

「──先生、廻くんを知っているんですか」

 

……これは、もしかしたら相当根深い問題なのかもしれない、かな。

 




作者は曇らせ民なので油断するとそっちの方向に流れていきます。ぴえん。
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