パイロットA「なんで砲撃機なのに、突撃モーションが入ってるんだ?」
パイロットB「左右に回避運動しようとしたら、何でか知らないけどキャノンを撃つんだけど。おかげでめっちゃ姿勢制御がむずくてコケまくるし、バグ何かか?」
パイロットC「敵に接近されたらバルカンより右拳が先に出るってどうなってんだよ! いや割と強いからいいけど……」
パイロットD「なんか宙間戦闘訓練でサマーソルトキックしたんだけど!? 砲撃機どころか普通のMSにも必要ないだろ、このモーション!!」
いち早く重装突撃型を受領した野獣さん「ハッハァ! 実機になったら、もっとおもしれーじゃねえか!!(白い狼のマーキングがされた白塗りの盾が付いたザクの腕を持ちながら)」
マチュがホワイトベースを飛び出す少し前、ガウ攻撃空母の格納庫にはシャアとガルマの姿があった。
「なにも君まで出る事はあるまいに」
「私にも立場という物がある。ザビ家の男として、地球方面軍司令に推薦してくれた姉上の顔を立てる為にも手柄が必要なのだ。家族のいない君には分からないだろうがな」
パイロットスーツとヘルメットを繋ぐ首のファスナーを調整しながらシャアの言葉に応じるガルマ。
彼には心に決めた女性がいた。
彼女はイセリナ・エッシェンバッハといい、ジオン占領下にあるニューヤーク市の前市長にして、財界の名家の当主・エッシェンバッハの娘だ。
ガルマとイセリナは相思相愛ではあるものの、父親であるエッシェンバッハはジオン嫌いの為に結婚には反対している。
さらに言えば、ガルマ自身もサイド3の王族たるザビ家の男だ。
サイド3の有力者から嫁を娶るのが筋であり、その相手にアースノイドを選べば家族や周囲からの反発は必至である。
だからこそ、彼は功績を欲していた。
自分達の恋路を邪魔する者全ての口を黙らせる程の大功を。
そしてガルマはその獲物にホワイトベースを選んだのだ。
そんな事情から功を焦っていたからこそ、彼は気付かなかった。
己の何気ない言葉で、親友の顔が能面のような無表情になった事を。
ガルマが自身のパーソナルカラーに塗られたドップへと乗り込むと、管制室へ戻ったシャアは窓越しに手を上げて武運を願う。
『ガルマ隊、発進!』
そうして勇ましい合図と共に大空へと飛び立つ藤色のドップ。
それを見送りながら、シャアは内心で冷たい笑みを浮かべる。
「ガルマ。私は散々忠告したな、連邦のMSは脅威だと。だというのにこの軽挙、この代価はお前の命になるかもしれんぞ」
シャアの呟きは攻撃開始で増した管制室の騒々しさに紛れて消えていった。
◆
一機、また一機と敵の戦闘機を踏み台にして空を飛んでいるマリーです。
最初は自分でもかなりの無茶だと思ったけど、やってみると案外上手くいくもんだ!
「マチュ! 左から敵が来るわ!」
「わかった!」
装甲越しに伝わる気配からするに、位置的にガトリングでの迎撃は不可能。
なら、銃身で殴ればいい!
スラスターを吹かして何度目かの跳躍をしながら、左腕を横薙ぎに振ろうとした時だった。
それよりも早く、ピンクの閃光が戦闘機を貫いたのだ。
『マチュ!』
「アンちゃん!」
その出どころは矢のようなスピードで空を飛ぶガンダムだった。
アムロのアンちゃんも私と同じように敵戦闘機を足場にして、ジャンプとスラスターの併用で空中戦をやってるみたいなんだけど……。
「あたしより高く飛んでる!」
『こっちは高機動型だからね。重装甲にとっつき付けたガンキャノンには負けないよ』
うぅむ、ごもっとも。
『それより、ガンタンクとキャノン2号機のフォローを頼む。下にもお客さんが来たみたいだ』
アンちゃんの言葉にカメラを下へ下げると、妙な形の戦車がズラリと並んでホワイトベースに近づいている。
『りゅ…リュウさん! うわぁっ!?』
『クソッ! こちらガンタンク! 敵の戦車隊が現れた!! このままでは対空迎撃が出来ん! 早くカイを出してくれ! 支援を!!』
戦車隊が放つ砲弾で、あっという間にガンタンクの周りは粉塵と爆風に覆われてしまう。
そんな中、ガンキャノンの2号機がホワイトベースの格納庫から顔を出す。
『ブライトさん! 敵の数が多すぎる!! これじゃあ安心して降りられねえよ!!』
『なら、そこから一発撃て! それで相手の足並みが乱れた隙に着地するんだ! ただし撃つのは格納庫の入り口を出た場所でだ! 間違っても中で撃つんじゃないぞ!!』
『わ…わかった!』
そうして2号機が肩のキャノンを構えた次の瞬間だった。
『う…うわぁっ!?』
何故か2号機は大砲発射と同時に前へブーストしたのだ。
『ちょっ!? やべっ!? うわぁぁぁぁぁっ!!』
意図せぬ形で飛び出した2号機は、空中で前のめりになると、そのままうつ伏せの形で地面へ叩きつけられた。
当然、そんな隙を晒している敵に戦車隊が容赦するわけがない。
『うわわぁっ!? ね…狙ってやがる!』
結果、四つん這いの状態で砲弾の雨に晒されることになってしまった。
「あら、この声……」
「姉ちゃん、知ってるの?」
「サイド7で生存者を探しに出た時、素行の悪い男の子がいたの。多分その人だわ」
「カイって名前の人だって、アムロのアンちゃんが言ってたよ」
「そう。あの時は怪我人を前にしても手伝わずに斜に構えていたから思わず打ってしまったけど、戦場に出るくらいの気概はあったのね」
「……いや、なにやってんのさ」
姉ちゃんは基本か弱いんだから、あたしがいない場所でもめ事は起こさないでほしい。
それはともかくとして、ニュービー達にこの集中砲火はキツい。
となれば、空はアンちゃんに任せて助けに行かないとね!
「姉ちゃん、急降下するから気を付けて!」
「分かったわ!」
姉ちゃんに忠告すると、あたしは一気にスロットルを開ける。
そして背面のスラスター、そして腰と足の裏のブースターユニットの方向を前に飛ぶように変えれば、あたしのキャノンは降下しながらも弾丸ヨロシク空を駆ける。
『な、なんだ! この加速……あがぁっ!?』
『う…うわぁぁぁぁっ!?』
その過程で装甲が増加された肩口や胸に当たった戦闘機たちは、次々に粉砕されていく。
「よし! もう一回フルバースト!!」
そしてあたしは戦車隊の頭上を取ると、再び全火器を放って鉄の雨を叩き込む。
『う…上からだと!?』
『ぐわぁっ!?』
『だ…脱出をっ! ぎゃあっ!?』
戦車はかなりの数を減らせたけど、車列を長くとっている所為で半分くらいは生き残っている。
「よいしょっとっ!」
『総員! 退避! たい…ぐはぁっ!?』
そのうちの一台にリー師匠ばりのフットスタンプを叩き込んだあたしは、地上に降りるとすぐにスロットルを全開にする。
突撃する先には、後退しながらこちらへ砲台を向けてくる戦車の群。
「ねえ、マチュ。戦車の砲塔が空を飛んでるわよ」
「あらま、ずいぶんと変わった仕様で」
脱出装置なのか別の用途があるのか。
なんにせよ、先に絡繰りを見せてくれたのはありがたい。
あたしは車体の方にガトリング砲、そして空飛ぶ砲塔は頭部バルカンを叩き込んで次々に戦車を倒していく。
そうして更に間合いをつめようとしたんだけど……
「おわっとっ!?」
側面から飛んできた砲弾に気が付いて、急ブレーキをかける事になってしまった。
『す…すまん!』
出所に目を向けると、膝立ちの体勢で肩のキャノンから硝煙を上げている2号機の姿が。
「うん、気を付けてね」
そう声を掛けながら、あたしは再びガトリングの斉射をタンクたちに浴びせる。
フレンドリーファイアでダメージとか、正直勘弁です。
『カイ! お前は俺と同じ方向に弾を飛ばせ! そっちは嬢ちゃんに任せるんだ!』
『わ…わかった!』
リュウのお兄さんの指示でガンタンクと同じ方向を向く二号機。
けど、そんな彼等の側面を付く様に、敵の砲撃が飛んでくる。
『どこからだ!?』
『崖の上です!』
弾が飛んできた方を見れば、そこには高台に陣取った戦車たちの姿が。
『嬢ちゃん、上の方を頼めるか?』
「りょうかい!」
そう返事をすると私はアクセルを吹かせる。
その先にはガトリング斉射から生き残ったのだろう、擱座したタンクの一台が砲塔を車体から分離させている。
これは利用させてもらうしかない。
「上、借りるよ!!」
『ぐわぁっ!?』
あたしは勢いのままにキャノンをジャンプさせると、砲塔を踏み台にしてさらに上へ上昇する。
その先にあるのは、岩山の高台に展開したジオン製のタンクたち。
『なっ!? モビルスーツだと!』
『この高さを跳んできたというのか!!』
相手からは驚愕と戸惑いが伝わってくる。
けど、その隙が命取りだ!
「ごめんね!」
そうして今回三度目のフルバーストを放つと、キャノン、ガトリング、そして口径は小さいけど頭のバルカンの弾を受けたタンクたちは次々に爆散していく。
「ふぅ…これで粗方タンクはたおしたかな。姉ちゃん、大丈夫?」
「ええ、心配ないわ。けど残弾が殆ど無いわよ」
姉ちゃんの指摘に計器をみると、たしかに機体に残っている弾薬は殆どない。
キャノンとガトリングは空っぽ、頭部のバルカンもあと一射すれば無くなるだろう。
「ホワイトベースからライフルでも飛ばしてもらおうかな」
たしかカタパルトを使えば武器も射出できるはずだし。
そうして船へと無線を開こうとした時だ。
あたしの脳裏に閃くモノがあった。
「これって……!」
「奴よ! 奴が来たんだわ!!」
『こちら格納庫だ。どうしたんだ、マリーちゃん?』
「テム大尉、ハイパーハンマーを射出してください!」
「姉ちゃん!?」
空中戦がメインだというのに、あの殺意の塊とはこれ如何に!?
「分かっているでしょう。正義の怒りをぶつけるときよ!」
「あっはい」
殺意を纏い始めた姉ちゃんに服従したあたしは、さっき感じた気配のする方に目を向ける。
モニターに映るのは空中空母から発進する地球に降りる時に兄ちゃんが乗っていた緑の小型艇、そこから地面へ投下される赤いザクだった。
まったくもう、事あるごとに出て来なくてもいいのに!
そんな事を考えていた時だった。
『ぐわぁぁぁっ!?』
敵の攻撃空母の上から一条の光が降り注いだ。
その桃色の閃光が空母の左に付いた羽根ごと撃ち抜くと、その直下にあったエンジンが爆炎を噴き上げる。
閃光、ビームライフルの弾丸の出どころは、空母の頭上からパワーダイブを仕掛けているガンダムだ。
そして閃光は一発じゃない。
二発、三発と降り注ぐビームの光は右羽とエンジン、尾翼、そして操縦室があるであろう艦首を次々に撃ち抜いていく。
いかに大型空母でも、急所を次々と撃ち抜かれては堪らなかったのだろう。
その巨体が爆炎に包まれると、次々に小さな誘爆を起こしながら地面へ墜落していった。
『ガウが…私のガウが、いとも簡単に……』
『ええい! 連邦の白い奴は化け物か!』
ジオンの戦闘機乗り達が上げる悲嘆の感情の中、一際大きいのは指揮官らしき人と兄ちゃんのモノだ。
このまま退いてくれれば問題なかったんだけど、話はそう上手くいかなかった。
『木馬だ! ドップ全機は木馬のブリッジを狙え!! いくらMSが強力でも、母艦が無ければ怖るるに足りん!!』
焦りと怒り、そしてどこか追い詰められたような感覚が籠った司令官の声が頭に響くと、戦闘機達は一斉にホワイトベースへ向かっていく。
『マチュ! シャアは僕が抑える! 君は指揮官機を叩いてくれ!!』
「わかった!」
アンちゃんからの通信に頷いた私は、高台からホワイトベースがある方向へとジャンプする。
『が…ガルマ大佐! うわぁぁぁぁっ!?』
『赤い奴! おのれぇ!!』
頭のバルカンでホワイトベースの防衛機銃を掻い潜ろうとしていた戦闘機を後ろから撃ち、編隊の中に飛び込んだところでバンカーとガトリングの砲身を使って左右の二機を叩き落とす。
けれど、隊列の一番外にいる隊長機には手が届かない。
ついでに言えばさっきの一射で頭のバルカン砲の弾も切れた。
何か手は無いかと思っていた時だった。
『一号機、ご注文のハンマーだ! 行くぞぉ!!』
ホワイトベースの左側格納庫から黒光りする凶器が飛び出したのだ。
『な…なんだこりゃあ! ぎゃああっ!?』
ハンマーは進路を飛んでいた敵戦闘機を一つぶち抜いて、こちらへ飛んでくる。
「マチュ!」
「うん!」
姉ちゃんの声に伸ばした右手でたなびく持ち手を掴むと、キャノンは凶悪な鉄球をブンブンと振り回す。
標的はもちろん藤色の隊長機!
「大! 粉! 砕ッ!!」
姉ちゃんが上げる裂帛の気合と共に空を裂く鉄球。
『う…うわあああああああっ!?』
こんもりと殺意が乗った一撃に、柔な戦闘機が耐えられるはずもない。
藤色の隊長機は鉄球が突き刺さると、バラバラに砕け散ってしまった。
【イセ…リ…ナ……】
「……うん?」
「どうしたの、マチュ」
「ううん、なんでもない」
頭の隅を過った敵の隊長のものだろう無念、あたしはそれをプルプルと頭を振って払い除ける。
戦場に出ている以上、こんな物を気に掛けていても仕方がない。
相手もあたし達を殺す気だった。
あたし達だってそれは同じ。
そうして互いにぶつかり合って、相手が散るという結果になったんだ。
なら恨むのも罪悪感を持つのも筋違い。
健闘を称えて散って逝った者の冥福を祈る、それで十分だとおもう。
着地をする最中、混乱した敵の戦闘機達がホワイトベースの機銃を受けて落ちていくのが見えた。
残った数少ない者達にも戦闘の意志はないようで、散り散りになって空の彼方へ撤退していく。
それを見上げていると、アンちゃんから通信が入った。
『マチュ、上手くいったみたいだね』
「うん。アンちゃん、シャアは?」
『隊長機が落とされたのを見たら、撤退していったよ』
「そっか」
アンちゃんでも仕留められなかったか。
身内が生きているのは嬉しいけど、こう何度も戦場で遭う事を思うと素直に喜べないなぁ。
できれば、姉ちゃんが身内殺しをする前に戦場から身を引いてくれるとありがたいんだけど。
『ホワイトベースから各員へ! 敵は撤退したがまだ油断するな! MS隊はこのまま周囲を警戒! 弾薬が足りない者は今の内に補充しておけ!』
通信機からブライト少尉の指示が響く中、あたしは小さく息を吐く。
色々考えるのは後まわし。
今は生き残れたことに感謝しよう。
◆
ガルマがグランドキャニオンの戦いで木馬に討たれた翌日、シャアは地球方面軍司令官の戦死について直属の上司であるドズル・ザビへ報告をしていた。
『貴様がついていながらガルマを護れんとは! それでも赤い彗星と呼ばれた英雄かっ!?』
「申し訳ございません」
画面の向こうで烈火の如く怒りをあらわにするドズルに、シャアは深々と頭を下げる。
正直に言えば、ガルマの戦死はシャアにとっても予想外のモノだった。
いや、正確に言えばこうなる可能性があることは分かっていた。
連邦のMS相手にドップで挑むなど、シャアからしてみれば自殺行為だったのだから。
しかしガルマとて司令官としてザビ家の男として、自身が簡単に死ねない身であることは明白である。
その自覚があれば、戦況が不利になった時点で撤退すると踏んでいたのだ。
『とはいえ、だ。貴様が送ってきた戦闘記録を見る限り、ガルマが敵戦力を過小評価していた事が今回の件の原因であることもまた事実。本来なら司令官たる奴が前線に出るべきではなかったのだ』
そう肩を落とすドズルに、シャアは内心でホッとした。
ドズルが末弟のガルマを可愛がっている事は有名だ。
下手をすれば責任を取らされて軍を不名誉除隊、最悪の場合は投獄や処刑もあり得た。
だからこそ、彼は報告と共にガウと自身のザクのカメラアイで撮った戦闘記録を添付したのだ。
ドズルは軍人であり優れた武人だ。
自分が手を抜いていたわけではないという証拠映像があれば、私情でこちらを裁くことは無い。
『それに貴様が帰還しなければ、ガルマの仇を知ることはできなかった。あの赤い奴め! ガルマの受けた苦痛を数百倍にして返してやるぞ!!』
それに加えて、シャアはガンダムの攻撃を凌ぎながらもガルマの最期の瞬間を克明に記録していた。
ガルマの仇がしっかりと映ったモノを、だ。
直情的な性格のドズルがそんな物を見れば、怒りの矛先が何処へ向くかは考えるまでもない。
(正直に言えばこういう小細工は好かんのだがな。しかし、私はまだ閑職に回されるわけにはいかん。父母の仇を討てぬのなら、何のためにあの子達から姿を消したというのだ)
内心の忸怩たる思いを噛み潰しながら、シャアは自身の顔にポーカーフェイスを張り付ける。
白い奴もそうだが、赤い砲撃型にも彼は煮え湯を飲まされている。
そのプライドの高さから、自身の手で打ち倒したいと思うのは当然だ。
しかし、その機会も恐らくは無いだろう。
『奴等がいるのは北米だったな! 連邦の勢力圏内に入る前に、刺客を送り込んでくれる!!』
これから奴はザビ家公認の賞金首として、ジオンの猛者達に狙われることになるのだから。
『それとシャア、貴様は当面謹慎とする。ガルマの最期を伝えてくれた事には感謝するが、何の罰も与えんわけにはいかんからな』
「了解しました」
そうしてドズルからの通信が切れると、シャアは一息ついてコムサイに用意された自室へと戻る。
そして厳重に扉のロックを掛けると、兜と仮面を取って備え付けの椅子へ座った。
「ガルマ、お前は最後まで坊やでしかなかったな。そしてザビ家の者達よ、今は驕っているがいい。必ず私が内側から喉笛を噛み千切ってやる」
その場にいるのはジオンのエース赤い彗星ではなかった。
ジオン・ダイクンの忘れ形見であり、復讐者の青年はその青い瞳に冷たい決意を宿すのだった。
◆
北米での戦闘から数日、あたし達が乗るホワイトベースはなんとか海へ出ることが出来た。
司令官を叩けたのがよかったのか、岩山の戦いの後は追手が来ることは無かった。
なので、あとはこのままジャブローへ行けると内心ホッとしていた時だ。
「なんじゃ? 画像が急に……」
避難民の大部屋で孫とテレビを見ていたお爺さんが声を上げた。
不調ならアムロのアンちゃんに直してもらおうと思って目を向けると、二度三度ノイズが奔ったあとで画面に映ったのは今までの子供向けアニメではなかった。
「なにこれ?」
それはジオン本国で行われた国葬。
話の内容を聞けば、あたし達が北米で倒した司令官はジオンの王族の一人だったらしい。
故人の兄という銀髪をオールバックにした眉毛の無い悪人ヅラが流す演説を、難民の皆は唖然としながら聞いている。
「……ギレン・ザビ」
「姉ちゃん、このマユなし知ってるの?」
「ええ」
あたしの問いかけに難しい顔で応える姉ちゃん。
なんか答え辛い話みたいなので、これ以上は深堀りしないようにしよう。
そうして演説もクライマックスに至り、参加している人達のボルテージも上がった時だ。
スイングしたカメラが捉えた会場の脇に設置された画面、それが映し出した物にあたしは眼を剥いてしまった。
『これが諸君らが愛したガルマを殺した連邦の悪魔だ! 奴には我等ジオン国民の怒りの鉄槌が必ずや降り注ぐことであろう!!』
何故ならそれはゴツい鉄球で司令官の戦闘機を粉砕する、あたしのキャノンの姿だったからだ。
あれ?
もしかして、これってあたしはジオンの賞金首になったって事?
今回も何も知らないアズナブルさん・自身の復讐の為に、気付かぬ内に妹達を仇敵へ売ってしまう。
妹達の素性がバレると連邦のジオン切り崩しの道具にされるか、『ジオンの忘れ形見が簒奪者ザビ家に鉄槌を下した!』とダイクン派の神輿にされること待ったなし。
そうなれば、当然ザビ家側も形振り構わず殺しに来る。
静かに暮らしてほしいという思いとは裏腹に、妹達をカオスの坩堝に放り込んだ事にまだ気づいていない。
誤解がない様に言っておくが、当人は妹達が赤い悪魔に乗っているなど夢にも思っていない。
なので悪意ゼロである。
自分のやらかしに気付いたら、某ネットミームに出るマーモットのような叫びをあげる模様