ルナ2近郊の宙域。
戦艦などの大戦初期に出たデブリが漂うこの場所では、二頭の獣が互いの首を噛み千切らんと牙を合わせていた。
宇宙を高速で移動しながら、弾切れになったバズーカを捨てるのは全身純白に染め上げた高機動型ザク。
そのザクに向けて左腕のガトリングから弾雨を放つのがボディを濃い青、その他の部分は薄めの青に塗り直された強襲突撃型ガンキャノンだ。
『そら! 落ちな!!』
牽制でバラ撒いた弾丸を追うように、背部の大型スラスターと腰と足の裏のブースターユニットを使って襲いかかるガンキャノン。
その突進力は機動性が最大の売りである高機動型ザクをも容易く凌駕する。
『チィッ!』
純白のザクを駆るシン・マツナガは、機体に増設されたスラスターを巧みに吹かしてガンキャノン最大の牙である右手のパイルバンカーを間一髪で躱す。
(この男、前より動きがいい! それに奴の機体は……!!)
左肩のアーマーに生えたスパイクを一つ持って行かれた事に、内心で舌を巻くマツナガ。
『白狼』の異名を持つエースパイロットの彼だからこそ今の一撃は躱せた。
並の者なら大した反応すらできずにどてっ腹に風穴を開けられていただろう。
『その機体、色は違うがガルマ様の仇のモノだな! どうしてそれが宇宙にある!?』
怒鳴る様な問いかけと共に、マツナガは左手に抜いたヒートホークを袈裟斬りに振り降ろす。
『何をバカな事を聞いていやがる!』
渾身の右を打ち終わった隙を突く形で放たれた斬撃、それに対して蒼い強襲突撃型が出した答えは肩のキャノンを撃つ事だった。
もちろん、見当違いの方向を向いた状態で放たれた砲弾が白狼を捉える事はない。
『なにっ!?』
しかし発射の反動は青い獣の身を大きく後ろへ撥ね飛ばし、迫りくる白狼の爪に空を切らせたのだ。
『あの坊ちゃんをぶっ殺したのは、俺だからに決まってんだろうが!』
攻撃を防御へ転化するという離れ業をやってのけた男、ヤザン・ゲーブルはガンキャノンのコックピットの中で不敵に笑う。
『貴様がガルマ様を!?』
『いいとこのボンボンが物見遊山で戦場に出るから、ああなる! 分相応にサイド3のド田舎で、ママのおっぱいでもしゃぶってりゃあよかったのさ!!』
驚愕するマツナガの隙を突いて、AMBACの応用でザクの顔に回し蹴りを叩き込みながらヤザンは煽るように言葉を浴びせる。
『貴様ァッ!!』
そしてヤザンの言葉は白狼の逆鱗に触れた。
巧みなスラスター操作で吹き飛びながら体勢を整えたザクは、すぐさまガンキャノンへマシンガンを放つ。
マツナガは知っている。
弟であるガルマの死が、同じ武人として兄のように慕う上官ドズルをどれだけ悲しませたか。
訃報を知った彼が部下の眼も憚らず上げた慟哭は、今も彼の耳に残っているのだ。
『そんな豆鉄砲、当たるかよ!』
しかし怒りを込めた弾丸を、ヤザンのガンキャノンは猛烈な加速を伴う前進で回避する。
『チィッ!』
舌打ちと共にマシンガンをフルオートしながら逃げるガンキャノンを追うマツナガ。
宇宙の中、流星のように飛ぶ二機のチェイスが続く。
『あれは……!』
そうしてガンキャノンを追い立てていた彼はあるモノに気付く。
それはルウム戦役で撃沈されたものだろう、サラミス級巡洋艦の残骸だ。
『これこそ千載一遇の好機!』
勝機を察したマツナガはスロットルを最大まで開ける。
あれだけのパイロットだ、デブリに激突するような愚は犯すまい。
しかし、この速度を維持したままMSの数倍はある巨大な船体は躱せない。
必ず、どこかのタイミングで減速する必要がある。
『その時だ! その時こそ奴の首に牙を突き立てる!!』
獲物を追い立てた狼のように加速をする白いザク。
しかし、デブリを目前にしたガンキャノンはマツナガの予想していなかった行動を取った。
奴はデブリへ向けて両肩の砲弾を放ち、その反動で即座に余剰スピードを殺してみせた。
『あらよっと!』
そして駆けあがるようにデブリの壁を連続で蹴ると、上方へ弧を描くように大きくトンボを切ったのだ。
『なんとっ!?』
一瞬で背後を取られた事で咄嗟に減速しようとしたマツナガ。
『何を泡喰ってやがる! デブリ蹴りなんざ、手垢が付いた使い古しの技だろうがッ!!』
しかしそれが仇となった。
弾丸のようなスピードで突進してきたガンキャノンが、逆制動を掛けたザクの背中に体当たりをブチ込んだのだ。
『ぐおおおおおおっ!?』
強烈な衝撃とGによって、コックピットの中でもみくちゃにされるマツナガ。
その状態でも何とか機体を制御しようとしたが、それは窮地を脱するに値しなかった。
勢いのままにデブリへ叩きつけられる白いザク。
『これでチェックメイトだ、駄犬』
そのバックパックに蒼い野獣の牙、強襲突撃型の決め手であるパイルバンカーが押し当てられる。
『冥途の土産に全弾くれてやるよ!!』
腕の強固な装甲の中に詰め込まれたケースレス炸薬の力によって連続で発射される牙。
それは瞬く間に白狼の身体に風穴を開けた。
『むぁぁああぁ!!』
破損したジェネレーターから噴き出た爆炎は一瞬でマツナガの身体を焼き尽くし、ガンキャノンが離れると白いザクは宇宙を彩る火球と化した。
『やれやれ、これでようやく前にブン取ったトロフィーを飾れるってもんだ』
『あの白狼を倒したのか! やったじゃないか、ヤザン少尉!』
『独断専行の処罰は無しだ! ついでに帰ったらビールを奢ってやる!!』
『エースの首がビール一杯かよ』
『なんだ、いらんのか?』
『いいや。ありがたくご馳走されるぜ、中尉殿』
かくして勝者は仲間と共に自軍の拠点であるルナツーへと帰るのだった。
◆
『厚顔無恥な地球連邦は10歳の少女を徴兵し、MSに乗せて戦場へ出したのだ! しかもその少女は我等が建国の父、ジオン・ダイクンの遺児であることが判明した! ジオン亡き後、市井に紛れて静かに暮らしてた彼女達を見つけ出し、強引に兵士へと仕立てあげた連邦の所業は邪悪としか形容のしようがない!! 結果、少女は互いの事を知る事無く、我が末弟ガルマを手に掛けるという罪を背負ってしまった! これは我等ジオン公国のみならず、その前身たるジオン共和国に対するこの上ない侮辱である!』
ギレンが行った緊急の演説を自室で見ていたキシリアは唖然となった。
「あ…兄上は何を考えているのだ!?」
彼女が憤るのも当然だ。
キシリアは父であり、公王でもあるデギンから命を受けて秘密裏にジオン・ダイクンの娘達を消すつもりだったのだ。
その為に私兵であるグール隊に最新鋭機のドムまで配備した。
なのに、長兄はジオンの娘の存在を白日の下に晒してしまった。
それはキシリアの計画に唾を吐くに等しい行為である。
驚きが怒りへの転嫁される中、直通回線から通信が来たことを知らせるアラームが鳴る。
スイッチを入れれば、困惑した表情のマ・クベがスクリーンへ現れた。
『キシリア様、これは一体どういうことなのでしょう?』
「……私にもわからん、総帥からは何も聞かされていないのだ。ところで派遣したグール隊からの連絡は?」
『ありません。こちらから呼びかけても誰一人反応しないので、恐らくは……』
「馬鹿な! 奴等にはドムを6機も与えたのだぞ!? 連邦のMSには、ジオンの娘にはそこまでの力があるというのか!」
『どういたしましょうか、キシリア様?』
「ここまで大々的に存在が公表された以上、こちらから刺客を送るわけにはいかん。グール隊に関しては、そちらで適当に処理しておけ」
『承知しました』
そう言って通信を切ると、キシリアは苛立ちのまま乱暴に椅子へ腰を下ろす。
「ギレンめ、あの娘の抹殺は父上から受けた勅命だったのだぞ! よくも私の顔に泥を塗ってくれたなっ!」
これは手柄を取られると考えて、ジオンの娘暗殺の事をギレンへ伝えなかった彼女にも非はある。
しかし怒れる女傑にはそんな理屈は通用しない。
彼女の頭の大半は兄への怒りに満ちていたが、その一方で気がかりなこともあった。
「それにジオンの娘だ。あの年でMSを操り、グール隊まで退けるだと? まさか奴はニュータイプとでもいうのか」
ニュータイプ。
ジオン・ダイクンが提唱した宇宙へと進出した人類の革新。
キシリアも少女時代には、このニュータイプに憧れて自身にも素養がある筈と信じた。
しかし現実は非情なモノで、彼女にその力は無かった。
今のキシリアがフラナガン機関などを運営してニュータイプを研究しているのは、政敵でもある兄への対抗手段であると同時に、人の革新への礎になる事でその憧れへの折り合いを付けている部分もある。
「私に素養が無いというのに、ジオンの娘が人の革新に手が届くというのか……!」
だからこそ、キシリアはその事実を認められない。
それを認めてしまえば、ザビ家がダイクンの後塵を拝する事を容認することになる。
故にキシリアは考える。
如何にして秘密裏にジオンの娘達を消し去るかを。
◆
「父を殺したザビ家の頭目が何を言うのか!!」
ファット・アンクルのコックピットでギレンの演説を見ていたシャアは怒りで歯を食いしばる。
この演説、表面上は妹達を案じるモノだが実態が違う事をシャアは見抜いている。
10歳の娘を戦場に出している連邦を非難すると同時に、ジオン国内に潜むダイクン派を炙り出すのが目的だ。
ザビ家に排斥され、冷や飯を食っている彼等が形勢逆転の為に旗頭を欲するのは想像に難くない。
そしてジオンの遺児は神輿としてはこの上ない人材だ。
連邦に無理やり戦わされているという大義名分がある以上、彼等は嬉々としてその身柄を奪還する為に木馬へと襲いかかるだろう。
その結果が悲惨な同士討ちになるとも知らずに。
「こうしてはおれん! 一刻も早くアルテイシア達の下へ行かねば!」
通信を切る事で耳障りな演説を止めたシャアは、ファット・アンクルをさらに加速させる。
ダイクン派の事などどうでもいいが、妹達を良いように使われるのは看過できない。
奪還の際に彼女達が傷つく危険性があるなど以ての外だ。
しかし中央アジアは広い。
この数日、必死に探しているもののシャアは木馬の姿を見つけることが出来ずにいた。
「どこだ? どこにいるのだ、木馬!!」
焦りと苛立ちで、操縦桿を握り潰さんほどに力を籠めるシャア。
そんな中、ついにファット・アンクルのモニターは目的のモノを見つけ出した。
「ようやく見つけたか! あれはっ!?」
しかし彼の喜びもすぐに驚愕と不安に圧し潰されてしまう。
何故なら、木馬の周りを一機のMSが我が物顔で旋回していたからだ。
その機体をシャアは資料で見た事がある。
それはジオンの最新鋭局地戦用MSドム。
しかもカラーリングは愚連隊と悪名高いキシリアの私兵『屍食鬼隊』のモノだ。
それがいるのにMSが発進していなければ、木馬からの迎撃も無い。
彼の頭に最悪の予感が過るのも無理はなかった。
「おのれ、キシリア!」
シャアは弾かれたようにファット・アンクルのシートから立ち上がると格納庫へ急ぐ。
そしてザクへ乗り込むとありったけの武器を手に、ハッチの扉を開いた。
「アルテイシア、アルマリア、待っていろ! 今助けてやる!!」
キシリアの私兵を討って木馬を助ければ、シャア・アズナブルとしての実績も今まで積み重ねた苦労も無に帰す事になるだろう。
それでもシャアは不退転の決意と共に愛機を宙へと躍らせる。
全ては愛する妹達を護る為に。
◆
モニターが高速で流れる景色を映す中、ガンダムとは一風変わったコックピットの中で私は違和感にため息を吐く。
「うーん、やっぱりホバー機は慣れないなぁ」
今私が乗っているのはテムおじさん達が直してくれたジオンの最新鋭機ドムの一号機だ。
あの戦いのあと、テムおじさんたち整備陣は徹夜でドムのジャンクをバラバラに解体した。
次の日の朝にカツ・レツ・キッカと一緒にご飯を持って行ったら、格納庫の床一面にドムのパーツが散乱してたのにはビックリしたもんだ。
まあ、部品に紛れて寝ていた整備士さん達の顔はスッゴイ満足そうだったんだけどさ。
それから昼頃になると整備士さん達が起きてきて、ダルマにしたドムのニコイチ修理を開始。
組み上げながら各種データ取りをやって、3日目にはこの一号機のレストアが完成したのだ。
でもってお偉いさんに提出する為の資料を作る為にあたしやアムロのアンちゃん、リュウさんやカイさん達がパイロットになって、テストしているという訳だ。
『動かした感じはどうかね、マリーちゃん?』
「やっぱり癖が強い。ホバーだしMSに慣れた人じゃないと、動かしづらいと思うよ」
着陸したホワイトベースの周りを何周か回ってみたけど、ドムって思った以上に重い所為で移動している時の重心の取り方が微妙に難しい。
これで主武装がバズーカでしょ?
新人や操縦に自信がない人が乗ったら、反動でコケちゃうんじゃないだろうか。
あと背中に差した長い剣も取り回しが悪そう。
熱で溶かすと言っても加速付けてこんなの叩きつけたら、梃の原理で腕の関節への負担がヤバいのでは?
「あたしだったら装甲を削って機動力と小回りを上げたうえで、マシンガンとザク斧で戦うけどなぁ」
あれだったら反動も小さいから弾をばら撒きながら高速でかく乱できるし、斧の方もリーチは短くなるけど使いやすいと思う。
ロボゲーのホバー機が高速移動が売りだったから、重装甲で正面突破なドムは違和感が拭えないのだ。
「そういえばテムのおっちゃん、2号機をラルのおっちゃんに使ってもらう件ってどうなったの?」
『アマミヤ少尉を通じて、連邦のお偉いさんに掛け合っているところだ』
ちなみにラルのおっちゃんは今ホワイトベースから離れている。
自分達のキャンプに装備やMSを取りに戻っているのだ。
おっちゃん達もグール隊の一件からジオンにはいられない事が分かっているみたい。
ただ、連邦も信用できないみたいなんだよねぇ。
原因は正規人員を派遣しないで半民半官の船を戦場に出している事や、お偉いさんが子供のあたしをMSから降ろさせない事。
そこに来て、意気投合したテムおじさんがヘビーガンダムのデータを見せたから連邦への不信が一層増しちゃったんだよ。
ジオンは抜けるけど、連邦に亡命はしない。
かといって、あたし達から離れるつもりもない。
ラルのおっちゃんが上げた相当に無茶な条件、その解決策を示したのは姉ちゃんだった。
『分かりました! ならあなた方をマス家の私兵として雇います!!』
これを聞いた時、私の頭にはこんな言葉が過った。
『姉ちゃん、狂ったか!?』と。
だって、ウチは姉妹二人で慎ましく暮らす程度の貯金しかなかったはずなのだ。
私兵なんてブルジョワなモノを雇う余裕があるわけない。
しかし、我が姉はあたしの知らない隠し球を持っていた。
『義父の遺産を幾つか投資運用に回しているので、貴方達を雇う資金は用意できます』
姉ちゃんが投資に手を出していたなんて寝耳に水である。
しかも父ちゃんの遺した金を6倍に増やしているという、トンデモないトレーダーぶりときたもんだ。
そんなに金があるならゲーム機とかもっと買えたじゃんと文句を言うと、ゲンコツと一緒にこんな答えが返ってきた。
『これは何かあった時のお金! 普段は人並みの生活できるだけでいいの』
なんとも堅実かつ立派なセリフに、ダメ人間なあたしはぐうの音も出なかった。
でもって、姉ちゃんは今がその『何かあった時』と捉えたようだ。
結局、ラルのおっちゃんは姉ちゃんの案を選んだ。
部下の人達もそれに文句は無いんだってさ。
連邦的にどうなのかって話だけど、その辺はアマミヤの兄ちゃんが動いてくれるらしい。
『俺の上司はタヌキみたいに胡散臭いオッサンだけど頼りになる』だそうな。
だったらという事で、あたしは2号機をホワイトベースに置いてもらうようにお願いしておいた。
1号機はデータ取りで持って行かれるのは仕方ないけど、やっぱりホワイトベースも戦力不足だからね。
これからザビ家の刺客が来ることも考えると、戦力は多い方がいいのだ。
そんな事をポヤッと思い返していた時だ。
ブリッジから通信が入ってきた。
「ほいほい、こちら試運転中のマリーです」
『こちらへ近づいてくる飛行物体をキャッチした! どうやらファット・アンクルというジオンの輸送機らしい。我々が迎撃態勢を整えるまで、時間を稼げるか?』
ブライト中尉に言われて、あたしは手持ち武器を確認する。
今の武装はドムと一緒にゲットしたバズーカと背中に差したヒートソードである。
「ちょっと戦い辛いけどやってみるよ」
『アムロ達もすぐに出す、気を付けるんだぞ』
「りょーかい」
ポキポキと指を鳴らしてからレバーを掴むと、皆が言っていた輸送機らしきものが飛んでくるのが見えた。
そして、そこから一つの影が落ちてくる。
スラスターを吹かして突撃してくるその影、それは最近見慣れた色のザクだった。
赤とピンクのアホみたいに目立つ色は間違いない、兄ちゃんのザクだ!
「おわっとっ!?」
兄ちゃんはスラスターを吹かしながらこっちへ突撃すると、容赦なくマシンガンを撃ってくる。
それを慌てて回避したあたしは、狙いを付けられないように後ろへ下がりながら蛇行運転を行う。
「どうしよう! どうしよう!? これは呼びかけないとダメかな!?」
散々やり合ってきて今更だけど、あたしとしては兄ちゃんと殺し合いはノーサンキューだ。
今までは殺意の化身になった姉ちゃんがいたから『
「えーと、ジオン向けの周波数って何番だっけ? あーもう! 連邦とレイアウトが違うから使いづらい!!」
マシンガンを投げ捨てて、今度はバズーカを撃ち始めたザクの砲弾を何とか躱しながらあたしは叫ぶ。
というか、そんなモン攻撃をされながら調整できるか!
相手は赤い彗星って言われた兄ちゃんなんだぞ!!
蛇行運転だって、そろそろタイミングを掴まれてもおかしくない!
コイツ、身体が重いからターンの時に軌道が膨らんじゃうんだよ!
そこを狙われたら終わる!
……こうなったら仕方がない!
あたしは通信機に付いた赤いボタンを押す。
これは国際救難用チャンネルで、通信機ならどんな規格でも届く緊急用チャンネルだ。
「兄ちゃん! 聞こえる、エドワウ兄ちゃん!!」
『なにっ!? まさか、それに乗っているのはアルマリアなのか!』
あたしが通信機に叫ぶと、斧を手に突進しようとしていたザクの足が止まる。
『なぜ、お前がドムに乗っているのだ?』
「襲ってきた敵を上手く倒せてさ、勿体ないからニコイチ修理したんだよ。でもって、今は試運転中だったんだ」
答えると兄ちゃんのザクはゆっくりとこっちへ歩み寄ってくる。
敵意は無いみたいなんだけど、油断するべきではないな。
「兄ちゃんはどうしてここに来たの?」
あたしの声に攻撃を止めたって事はザビ家の刺客じゃないみたいだけど……。
『私はお前とアルテイシアを護──ぐふぉっ!?』
兄ちゃんが私の問いかけに答えようとした瞬間だった。
横合いから飛来したナニカによって、ザクの頭が粉々に吹っ飛んだのだ。
「ええっ!?」
反射的にモノアイを向けると、画面に映ったのは『正義の怒り』を手にしたあたしのガンダム!
『可愛い妹を殺させるものですか! 死ぬのはお前よ、毒虫!!』
やっぱパイロットは姉ちゃんだった!!
というか、いつの間にガンダム動かせるようになったんだ!?
「姉ちゃん、待って! そんなのぶつけたら、兄ちゃんが『兄ちゃんだったモノ』になっちゃう!!」
『マチュどいて! ソイツ殺せない!! 鬼子め、逆襲などさせるものですか!!』
「何に逆襲するってのさ!?」
必死に姉ちゃんのガンダムを抑えながら叫ぶあたし。
アムロのアンちゃん! ヘルプミー!!
ザビ家に必要なモノ
デギン「報告」
ドズル「連絡」
キシリア「そ・う・だ・ん!!」
ギレン「そんな物は無用。お前達は私の言う通りに動けばいいのだ」