これもスパロボαを久々にプレイしてしまった作者がアホなんや!
この世界はあくまで新西暦であり、宇宙世紀ではございません。
ですのでソロモン攻略戦までは一緒でも、そこから先は本編とは全く別の道筋を辿っています。
それでよろしければ、皆さまの暇つぶしになれば幸いにございます
亡命艦隊を引き連れて宇宙を行くホワイトベース。
間もなく宇宙要塞ソロモンを攻める『チェンバロ作戦』が始まる。
戦艦の各艦長やパイロットのブリーフィングも終わり、あたしは出撃の為にアレックス・プロトのコックピットの中にいた。
「マチュ、緊張はしていない?」
「緊張はしているかな。でも怖いって言うのはあんまりないよ」
作戦開始時間が差し迫り、サブシートの姉ちゃんにそう答えた時だ。
「……っ!?」
突然、あたしの脳裏へ強烈な思念が叩き込まれた。
頭に浮かぶイメージはソロモンへ集まった連邦とジオンの艦隊に向けて巨大な流星のようなものが激突し、双方の戦力が壊滅的な被害を受けるというモノだった。
「なに、今の……」
「マチュ、貴方も見たのね」
「うん」
『マチュ! ブリッジと亡命艦隊の皆に伝えよう! このままだと拙い!!』
同じモノを見てしまったのだろう、後ろから姉ちゃんの声がすると、次にアムロのアンちゃんも通信を繋げてきた。
そうだ。
あのイメージが本当に起こるのなら、少しでも被害を押さえる為に動かないと!!
「ブリッジ! ブライト大尉!! ソロモンに近付いちゃダメ! デッカい流星がやってくる!!」
そして、あたし達は部隊の皆にこの事を伝えた。
幸いだったのは、あたし達の他に兄ちゃんやシイコお姉さん、カイさんもこのイメージを見ていて警告を発してくれたこと。
そして亡命艦隊の人達がすぐに信じてくれた事だった。
「アイエェェエ! α! アルファナンデ!?」
「この地球、無数の信管が刺さった核爆弾じゃねえか!!」
「スパロボセカイ、コワイッ!?」
あとで聞いた話だと、向こうはかなりの人が頭を抱えたり異様に絶望したりしていたらしい。
けれど連邦軍の本隊はそうはいかなかった。
ブレックスのおっちゃんや部下の人とか少しは止まってくれた人はいたけど、大半の艦とMSは作戦通りに進んでしまったのだ。
そうして迎えた運命の刻。
私達が見たビジョンは現実のものとなってしまった。
宇宙の黒を歪ませて突然現れた巨大な流星はジオンと連邦の艦隊の大半を薙ぎ払い、双方に夥しい被害を齎してしまう。
連邦はジオン打倒の為にかき集めた宇宙戦力の五割を失い、ジオンもまたソロモンに集めた防衛戦力の7割を喪失。
これだけの大惨事が起こったからには要塞攻めなど出来るわけもなく、チェンバロ作戦は敢え無くとん挫する事になった。
あたし達も含めて連邦軍の艦隊は撤退したんだけど、ジオンの方だって艦隊の大半を失ってソロモンが大きく欠けるほどの被害を受けているのだ。
当然ながら逃げるこちらを追う余力は無かった。
そんな中で亡命艦隊の殿を務める形で出撃したあたしは、宇宙空間の中で流星に関しての警告を送ってきた相手の事を考えていた。
ビジョンの最後に現れた光の中に浮かぶシルエット、それはあたしより少し年上の少年に見えた。
そして彼はこう言ったんだ。
『この星を護る幾多の剣よ、我が元へ集え』と。
「……ビッグ・ファイア」
「何か言った?」
「ううん、何でもない」
あたしは口の中で警告の送り主であろう人の名を転がす。
彼はいったい何者なのだろうか?
◆
こうしてソロモン攻略は失敗に終わったんだけど、その後がまた滅茶苦茶だった。
なんとチェンバロ作戦中にルナツーを占領していたレビル将軍率いる強硬派の勢力が作戦失敗を知って暴走したのだ。
彼等はルナツーに貯蔵されていた核兵器を持ってサイド3へ進撃、あたし達はそれを止めるため緊急出撃する羽目になった。
一方地球では流星の正体が巨大な隕石という事が判明、南アタリア諸島に堕ちたソレの始末に連邦政府が大わらわ。
さらにこちらが混乱している隙を突いてザビ家の連中はサイド3から地球圏外へ逃亡ときた。
その所為で旧ジオン公国は無政府状態となり、亡命政府艦隊は公国内に残っていたダイクン派と早期に合流して国内の統制と連邦軍との折衝をする必要がでてしまった。
これが一月あまりの間に起きたんだから、もう誰も彼もがヘトヘトである。
あたしもレビル将軍の反乱部隊を止めたと思ったら、今度はサイド3まで引っ張られてオトンの弟子というアンリ・シュレッサーっておっちゃんと会見。
それが終わると間髪入れずに姉ちゃん達とジオン共和国再興の式典に出たりと、スケジュール的にブラック労働百連発でした。
そんな風に厄介事が山のように積まれていた事もあってか、全部片付いてあたしと姉ちゃんが軍を辞めた時には日付が翌年の三月になっていた。
ソロモン攻略がクリスマス・イブだったから、カレンダーでそれを知った時は唖然としてしまった。
しかも復興式典が終わってサイド3から地球へ帰ろうと思ったら、いつの間にか兄ちゃんが姿消してるし。
後でゴップのおっちゃんからの依頼を受けたって知ったけど、一言くらいあってもいいと思う。
こうして軍から足を洗ったあたし達姉妹だけど、このまま一般市民に戻るという訳には行かなかった。
オーガスタやムラサメなど研究所から派遣された手勢が、ニュータイプ研究の為にあたしと姉ちゃんを狙ってきたからだ。
実験動物になる気などないあたし達は奴等の追跡から逃れるため、すぐさま故郷だったテキサスコロニーの家財を引き払った。
保護を求めたのはマスの父ちゃんと付き合いが深かった弓弦之介という教授。
彼の庇護下に入る為に弓教授が所長を務める光子力研究所へ逃避行を開始した。
姉ちゃん曰く、父ちゃんは弓教授の師匠に当たる兜十蔵博士が見つけ出した新素材ジャパニウムと、そこから取れる光子力というエネルギーの基礎研究にも多額の出資をしていたんだってさ。
でもって極東支部がある日本は地理的な観点や新エネルギー研究等の盛んさから、連邦軍の主流は中々手が出しづらいらしい。
なんか箱根ってところにあるゲヒルンとかいう研究機関に国際的に偉い人達が沢山投資しているから、そっちに遠慮しているとか何とか。
こうしてトンズラを決め込んだあたし達だけど、相手は連邦軍関連のエージェント。
ラルのおっちゃんや部下の皆もいたけど、同時に身重なハモンお姉さんを抱えての旅である。
そう簡単に逃げる事はできなかった。
そんなあたし達が奴等の追撃を振り切れたのは、謎の勢力による助けがあったからだ。
目出し帽にスーツ姿の妙な集団。
彼等はBF団という秘密結社らしく、あたし達を捕まえようとする追跡者の邪魔をし続けた。
敵がMSを持ち出した時なんて、顔に痣がある鷲鼻でハゲなお兄さんが車がコックピットになる謎のロボットを地面から呼び出していたし。
出てくるときに「ウラエヌゥゥゥゥスッッ!!」なんて叫んでいたから、多分それがロボの名前なんだろう。
ちなみにBF団があたし達の事を助ける理由は、なんとなく察していた。
何故なら彼等から凄く微かだけど例のビッグ・ファイアの気配が感じ取れたからだ。
まあ、逃がしてもらう時に『ビッグ・ファイアに、ありがとうって言っといて!』と返したら団員達が凄くビックリしていたけどね。
こうして日本へ逃げてきたあたし達だけど、大きな問題が一つあった。
それは一年戦争のゴタゴタであたしの名前が広く知られているという事だ。
顔の方は一般的に割れていないのが不幸中の幸いだけど、さすがに元の名前だと日常生活もままならない。
そんな訳であたし達は弓教授と養子縁組を行い、弓マリ、弓セイラという別人して生きる事になった。
付け焼刃と笑うことなかれ、髪だってショートから腰に掛かるくらいまで伸ばしたし、普段は瓶底な伊達眼鏡で変装もしているのだ。
こうして弓家の義娘となったあたしだけど、義家族との仲は良好だ。
二人目の義父になった弦之介お義父さんはマスの父ちゃんへの義理もあってか、あたしを実の娘みたいに接してくれる。
でもって、義妹になったさやかもあたし達に良くなついてくれた。
特に姉ちゃんはお姫様みたいと憧れの的になっていて、その所作や言動を真似しているのを何度か見た。
お陰で弓のお義父さんからは、さやかが前よりお淑やかになったと喜ばれたっけ。
こうして日本での生活基盤を確保すると、姉ちゃんはすぐに企業を立ち上げる為に動き始めた。
資本金が豊富な上に後見人に弓のお義父さんとゴップのおっちゃんが名を連ねた事もあり、会社の立ち上げはとんとん拍子で上手くいった。
そうして発足したのが『マス・セキュリティサービス』って民間軍事会社。
あたしも非正規雇用だけどパイロットとして登録してあるし、お小遣いがピンチの時にはお世話になっている。
そんな感じでさ、日本に来て5年くらいは静かに暮らせていたんだよ。
NT狙いな研究所の刺客も手を出してこなかったし、地球に残っていた旧ジオン残党だって鳴りを潜めていたからね。
お陰であたしも普通の学生生活を送れて、MSの操縦テクもシミュレーターの通信対戦とマス・セキュリティーの仕事があったから鈍らずに済んだ。
弓のお義父さんが紹介してくれたお陰で兜十蔵博士とも知り合えたうえに、マスの父ちゃんの話だってたくさん聞けたからね。
けど、そんな平和な日々は6年目には吹っ飛んでしまった。
動乱の始まりはDr.ヘルを名乗るマッドサイエンティストが、古代ミケーネ文明の遺産を再構成した機械獣を率いて日本へ攻めてきた事だった。
世界征服を掲げる奴は、その為に兜十蔵博士が生み出したジャパニウムを生成して造られる超合金Zと光子力を狙い、手始めに光子力研究所の占拠を目論んだのだ。
Dr.ヘルの手下であるあしゅら男爵の襲撃によって兜十蔵博士は亡くなり、彼の孫である甲児君が十蔵博士が秘密裏に開発していたスーパーロボット『マジンガーZ』に乗って奴等と戦う事になった。
もちろん、光子力研究所の禄を食むあたしもこの件について知らぬ存ぜぬではいられない。
義妹のさやかがアフロダイAというロボットで戦うなら猶更だ。
Dr.ヘルの手勢が研究所に攻めてきた時、あたしは倉庫に眠っていた警備用のガンキャノンを拝借して参戦した。
機械獣はMSに比べて頑丈だけど、関節部や武装の発射口はそうじゃない。
そして遠隔操作で動くうえに基本鈍重な奴等相手なら、弱点を狙撃するのは容易かった。
そうして三体の機械獣をあっと言う間に片づけたら、さやかはもちろん敵の指揮官にも驚かれたっけか。
機械獣との戦いが激しさを増す中でマジンガーZは何度も改修と強化を繰り返し、あたしのガンキャノンも光子力研究所の3博士に協力してもらって強襲突撃型へ改造してもらった。
そんな中で現れたのは地底から復活した爬虫人類が治める国、恐竜帝国だった。
奴等は現行人類から地上を取り戻すとメカザウルスという半生体機動兵器を使って侵略を開始した。
しかし、そんな奴等の前に立ちはだかる者がいた。
それが浅間山にある早乙女研究所で建造されたゲッターロボだった。
ゲッターは三機の戦闘機が合体して完成する特機タイプの機体で、合体する順番によって3つの形態を持つ事が特徴だ。
ある戦いが切っ掛けであたしや光子力研究所の面々はゲッターロボと共闘、そこから協力関係を結ぶことになった。
ゲッターを操るゲッターチームは流竜馬君、神隼人君、巴武蔵君という三人の男子高校生で構成されていた。
みんないい子達なんだけど(あたしが一番年上なので、こういう言い方も問題ない!)、初対面で『チビの癖にボイン』と言った隼人君にドラゴンキックをかました事については謝らない。
それからも古代ムー帝国と敵対していたとかいうオカルト全開な妖魔帝国、さらには火星からやってきた改造人類メガノイドなんかも攻めてきて、半年前に恐竜帝国が滅ぶまでは日本はマジで激戦区だった。
あの頑丈なガンキャノンを超合金Zで補強した強襲突撃型がぶっ壊れたと言えば、その過酷さは分かるだろう。
そんな激戦を乗り越えたこともあって、ようやく平和に暮らせると思ってたんだけどさ。
どうやらその考えは甘々だったようなんだよ、これが。
◆
あたしは今、Dr.ヘルの襲撃を受けた学校、光子力研究所、そして早乙女研究所を巡り、マス・セキュリティサービスの本社へやってきている。
理由は姉ちゃんへの事情説明とあたしの使える機体の確保のためだ。
「はぁ……また厄介な事になりそうだなぁ」
なんともはや、短い平和だった。
来年で高校も卒業だったのに、あたしの最終学歴は高校中退で終わるのか……。
「なに黄昏てんだい、お嬢」
そんな感じで少しヘコんでいると、後ろから声がした。
振り返るとそこに立っているのは、光の当たり具合では緑に見える長い黒髪が特徴のキャリアウーマン風なお姉さま。
「また戦いが始まるみたいだからさ、ちょっと昔を思い出しちゃった」
「聞いたよ、学校と研究所がマトにされたんだって。もっとも、狙いはアンタじゃなくて軍の試作機と兜のボウズらしいけどね」
あたしの返しに不敵に笑うこの人はシーマ・ガラハウという。
元ジオンの将校さんで、今はマス・セキュリティーサービスのリリー・マルレーン班を束ねる女傑様だ。
彼女と知り合ったのは、あたしがテキサス・コロニーから日本への逃避行の最中だった。
シーマの姉御はジオン軍でも色々と汚れ仕事を押し付けられていて、忠誠心や愛国心なんかが大きく削れていったらしい。
そこに彼女達の故郷であるマハル・コロニーがソーラレイなる巨大レーザー砲へ改造された事を知り、ジオン公国を見限る判断をしたそうだ。
でもって、連邦に渡りを付けるか海賊稼業で食っていくかと迷っていたところにあたし達と出会い、紆余曲折の末にマス・セキュリティサービスの従業員として雇用する事になったのだ。
「しかし試作機の護衛部隊にいた腰抜けが乗り捨てたジムをかっぱらうたぁ、アンタの手癖の悪さも相変わらずだねぇ」
「後輩が巻き込まれたんだもん、シェルターで大人しくなんてできないよ」
学校に堕ちた輸送機に乗せられていた特機タイプの試作機に偶然乗ってしまったのは、あたしの後輩でさやかのクラスメイトであるクスハ・ミズハという女の子だった。
彼女は他の学校の生徒や街の人間を護る為、戦場に立つ事を厭わない優しい性格の子だ。
甲児君もパイルダーしかない状況で、そんな彼女を一人戦場に残すなんてできるわけがない。
「でもって、そのジムはアンタの操縦に付いていけずにオシャカ。7年前にあたしの所から持ってったゲルググとおんなじ運命を辿ったわけだ」
「ぐぬぬ……我ながら進歩が無い」
ケラケラと笑う姉御にあたしはガックリと肩を落とす。
姉御が口にした話は、7年前に彼女と出会ったときまで遡る。
当時彼女の持ち船であるリリー・マルレーンに乗っていたあたし達は、研究所の刺客から追撃を受けていた。
その際に奴等は奥の手として、試作機と思われるガンダムタイプを出してきたのだ。
その黒いガンダムが妙に性能が良くて、姉御の部隊は奴一機の所為でピンチを迎える事になってしまった。
一緒に日本までトンズラする予定だった事もあり、見ていられなくなったあたしはリリー・マルレーンに残っていたゲルググを一機パクって迎撃に出たのである。
なんとかガンダムを倒すことはできたんだけど、無理をさせ過ぎたゲルググは関節やら何やらがボロボロで廃棄処分になってしまった。
今だから笑い話に出来るけど、当時は姉ちゃんや姉御に滅茶苦茶怒られたんだよなぁ。
「次の目的地は極東支部か。岡のオッサンは連邦軍にしちゃあ信用のおける男だけど、近頃は少しばかりキナ臭いねぇ」
「うん。今回の件でも極東支部は全く動きを見せなかったからね」
あたし達が出くわした3件に及ぶDr.ヘルの襲撃、そのいずれにも連邦軍が姿を見せた事は無い。
自分達の領土がテロリストに攻めれらているのに放っておくのは、どう考えても異常だ。
「あたしの経験から言わせてもらえば、こういったケースは当人が腹に一物持っているか、上から押さえつけられているかの二つに一つだ。岡のオッサンの性格を考えれば恐らくは後者。もしかしたら、例のティターンズとやらが絡んでいるのかもね」
「ティターンズねぇ。レビルがタカ派引き連れて暴走したって言うのに、連邦軍も学ばないというか懲りないというか……」
なんでこの時期に地球至上主義でスペースノイド弾圧を良しとする部隊なんて立ち上げるのか。
ゴップのおっちゃんはザビ家を倒しきれなかったのが痛かったって言ってたけど、人類全体を敵とみなす謎の勢力がポコジャカ出てる状況で内輪もめとかしてる余裕ないでしょうに。
考えれば考える程に陰鬱になっていく現状にため息を付いていると、袖を破ったジオンの軍服を着た海賊然とした強面のおじさんが格納庫から出てきた。
彼はデトローフ・コッセル。
シーマの姉御の長年の腹心でリリー・マルレーンの艦長を務めているナイスガイだ。
「シーマ様、お嬢! 出発準備が整いましたぜ」
「ああ」
「コッセルのおっちゃん、ごめんね。新婚なのに仕事入れちゃって」
「謝る事はないさ。なにせ、奥様も一緒なんだからねぇ」
「そういうこった。それにこれからを考えたら、稼げるときに稼いでいた方がいいからな」
ニヤリと笑ってコッセルのおっちゃんにヘッドロックをする姉御と、苦笑いを浮かべながらも満更でもないコッセルのおっちゃん。
実はこの二人、恐竜帝国が壊滅から少し経った頃にゴールインしたのである。
あたしも式で姉御の花嫁姿を見た時は感動したもんである。
コッセルのおっちゃんの先導でリリー・マルレーンへ乗ったあたしが最初に向かったのは格納庫だ。
そこにはシーマ班のゲルググ・マリーネやゲットマシン、マジンガーが発進時に倒れないようにハンガーに固定されている。
その中で姉御専用のゲルググの横にあったのはガンダムタイプのMSだった。
「これがアナハイムから実戦データ取得依頼で送られてきた機体?」
「ああ、ガンダム試作四号機・ガーベラ。ジョン・コーウェン中将が主導になって行っている次世代ガンダム開発計画の一機らしいよ」
肩の大型ブースターに加えて背部にもデカいバックパックを背負っている。
背面から下に伸びてるのは、多分プロペラントタンク兼ブースターだろう。
というか、これって元はトリコロールカラーだったんだよね。
胴体を赤く塗ってるのはあたしが乗るからだったりするのかな?
「かなり足が速そうな機体だね。ただ、その分操縦はピーキーそう」
「アンタなら乗りこなせるだろう? それに仮にもガンダムを名乗る最新鋭機だ、多少振り回してもぶっ壊れやしないさ」
「その辺はテムのおやっさんも言ってましたぜ。インナー・フレームを使ってないから運動性と拡張性は高くないが、機体自体は悪くないって」
コッセルのおっちゃんの言葉にあたしは思わぬ眉根を寄せる。
「アナハイムの試作機なのに、テムのおっちゃんに見せて大丈夫なの?」
テムおじさんは今、アムロのアンちゃんと一緒に北米のシャイアン基地でMS開発とテストパイロットで働いているって聞いている。
だから見せるって言っても実機じゃなくてデータになる筈なのだ。
これって機密漏洩とかにならないかな?
「つまらない心配するんじゃないよ。あの人はウチの技術顧問なんだ、社員の安全確保の為に調査するのは当然さね」
そういう事なら大丈夫か。
まあ、これのテストがウチに回されたのってゴップのおっちゃんの口添えもあるだろうし、スクラップにでもならない限りアナハイムも文句は言ってこないだろう。
『シーマ様、コッセル艦長! 出発準備が整いました! ブリッジまで来てください』
「おっと、そろそろ出発みたいですな」
「それじゃあ、あたし達はブリッジへ行くよ。マリー、あんたは坊や達の相手でもしてな」
そう言い残して格納庫から出ていく姉御たち。
あたしはそれを見送るともう一度眼前の巨人に目をやる。
しかし、あたしもつくづくガンダムタイプに縁があるもんだ。
けど、これなら今まで見たいに援護に徹するだけじゃなく、少しは前面に出る事も出来るだろう。
「よろしくね、ガーベラ」
姉ちゃんの負債になったら申し訳ないし、極力壊さないようにしよう。
◆
こうしてリリー・マルレーンの協力を得たあたし達は、極東支部で岡長官と対面した。
シーマの姉御の言った通り、長官は連邦軍の中では良識のある人で恐竜帝国や機械獣との戦いでは色々便宜を図ってもらった事もある。
クスハの試作機『グルンガスト弐式』無断使用の件については、機体がパイロットを選ぶ仕様であるという事情も加味して、彼女がテストパイロットとして協力する事で決着がついた。
その後は伊豆諸島に地球圏に戻ってきたザビ家残党改めネオ・ジオンの対処に行く羽目になったけど、そこにいたのがオデッサ基地司令をしていたマ・クベだった。
奴があしゅら男爵を相手に何を取引していたのかは分からないけど、ネオ・ジオンがDr.ヘル一味と繋がっているのを知れたのは幸運だと思う。
そんなあたしだけど、今は市街地をバックにビームで出来た大鎌を持った黒が基調のガンダムと対峙している。
『マリー! 今、岡のオッサンがむこうとコンタクトを取ろうとしている。アンタがそのはねっ返りをけん制するだけでいいんだ! 無理はするんじゃないよ!!』
「わかってる。上手くいなしてみせるよ」
シーマの姉御の通信を聞きながら、あたしはモニターに映る白亜の戦艦を見る。
あれは眼前のガンダムの母艦みたいなんだけど、懐かしい気配がするんだよね。
岡のおっちゃんはアレがネオ・ジオンの船だって言ってたけど多分違う。
どう見てもジオン系のデザインじゃないし、情報の出どころがティターンズというのなら信じる方が無茶だ。
『胴の赤いガンダムたぁ、マリー・マスにでもあやかってんのかよ!!』
こちらへの挑発染みたセリフと共に動き出す黒いガンダム。
同時にモニターから死神染みたその姿が消えてなくなってしまった。
「えっ!?」
素早く計器を調べてみると、どうやらセンサーやカメラがジャミングされているらしい。
MSのモニターに映る映像はカメラやセンサーが捉えた情報をコンピューターが視覚情報に変えて画像として映すものだ。
そこを殺されたら相手の姿が捉えられなくなる。
けれど、知り合いのアンちゃんは言いました。
『たかがメインカメラがやられただけだ!』と!!
「そこっ!」
あたしは直感が上げる声に従って、手にしていたビームライフルを斉射する。
ガーベラのライフルは特別製で、セレクターを変えるとマシンガンのようにメガ粒子の弾丸を連続で放てるのだ。
『なにぃっ!?』
あたしの予測は大当たりで、ビームが着弾するとバックラーのようなシールドで防御する黒いガンダムがモニターに復活する。
「姿を消した程度じゃあ、あたしからは逃げられないよ!」
『クソッタレ! どうやってハイパージャマーを見抜きやがった!?』
フットペダルを踏み込んで間合いを詰めようとすると、ガンダムはこちらへ頭のバルカンと鎖骨部分にある機関砲で弾幕を張ってくる。
迎撃の速度としては花丸だけど方法が単調すぎる。
飛んでくる弾丸を躱しながらシールドの内側にマウントされた缶を投げれば、黒いガンダムの近くでバルカンに撃ち抜かれたソレは弾けて辺りに黒い煙をまき散らす。
『スモークだと!?』
センサーとカメラを殺す特殊な物質が混ぜ込まれた対MS用スモーク、今度はソッチが相手を捉えられない恐怖に怯える番だ。
視界を失った事で戸惑い動きを止める黒ガンダム。
戦闘能力を奪う為にビームライフルを撃ち込んでみれば、なんと右の肩口と左太腿に直撃したにも関わらず黒いガンダムは壊れないじゃないか。
「うそぉっ!?」
これには正直驚いた。
機械獣やMAならともかく、MSがビームの直撃に耐えるのを見たのはこれが初めてだ。
『そこかぁぁぁっ!!』
そしてビームの弾道は視界を失っていた相手にこちらの位置を知らせる導になる。
大鎌を振りかぶってスモークを突っ切る黒いガンダム、けれど彼は取り戻した視界に映るモノを見て驚愕する。
『な…なんだよ、これ!?』
何故ならビームが発射された場所にあったのは、地面に突き立てたシールドの上に置かれたビームライフルだったからだ。
では、本体たるあたしは何処にいるのか?
「引っかかった!」
それは黒いガンダムの背後だ。
これぞアンちゃん直伝の遠隔射撃の術!
悪名高い置きバズ二択に通じる鬼畜戦法の一つである。
『なっ!?』
驚愕と共に振り返ろうとした黒いガンダムだけど、それよりも先に二刀流に構えたビームサーベルの右が相手のバックパックを斜めに切り裂く。
ビームライフルを防ぐ装甲でも、さすがにサーベル相手では勝手が違うらしい。
そして返す刀で首を刎ねようとしたところ、咄嗟に相手が軌道へ差し込んだ大鎌の柄によって防がれてしまう。
『テメエ! もしかして本物のマリー・マスかよ!?』
「今のあたしは弓マリだ! それ以上でもそれ以下でもない!!」
相手の言葉にそう返した時だった。
直感があたしに向けられた敵意を察知したのだ。
「敵! そこか!!」
即座に黒いガンダムと距離を取ったあたしは、直感の示す方向へ右手に持ったビームサーベルを投げる。
さらに腰にマウントしていた予備のライフルでビームは放てば、回転するサーベルはメガ粒子の弾丸を弾いて周辺を襲う散弾に変える。
『なっ!? うわぁぁぁぁぁっっ!!』
そしてそれは、小高い山の岩陰から出てきた全身火薬庫と言わんばかりの機体が背負ったミサイルに突き刺さる。
自分の武器が体内で破裂した事で爆発を起こした黄色い機体は、同じ部隊であろう同型機を爆炎に巻き込むことで連鎖爆発を誘う。
「見た事もない機体だけど、もしかしなくてもネオ・ジオンかな?」
『そうだよ! クソッ! アンタも俺もティターンズに一杯食わされたって訳かよ!!』
コックピットの中で首をかしげていると、例の黒いガンダムから通信が帰ってくる。
なるほど、やはりティターンズからの情報はアテにならないなぁ。
「おのれ、弓マリめ! 貴様の所為で吾輩の知略が台無しではないか!!」
黒いガンダムとそんなやり取りをしていると、Dr.ヘル一味のブロッケン伯爵まで機械獣を引き連れて現れる始末である。
とはいえ、誤解が解けたのならあたし達だけで戦う理由はない。
『MS各機は直ちに出撃! ネオ・ジオンと機械獣を迎撃せよ!!』
『よっしゃ! 俺達も行くぜ!!』
白の戦艦からは多数のMSが、そして甲児の激と共にリリー・マルレーンからもマジンガーやゲッターが飛び出して来る。
素早く展開されるMS隊の中にあたしの見知った機体があった。
「アリアドネってことは、シイコお姉さん?」
『久しぶりね、マリーちゃん。操縦の腕は落ちて無くて安心したわ』
乗っていたのはホワイトベースで一緒に戦っていたシイコお姉さんだった。
『俺達もいるぞ、マリーちゃん!』
『相変わらず、戦い方がえぐいなぁ』
「アンディさん、リカルドさん!」
『スマン、今はアポリーって名乗ってるんだ』
『俺はロベルトで頼む』
続いて通信を繋げてきたのは、兄ちゃんの部下だったアンディさんとリカルドさんだ。
さらに黒く塗られた胴が特徴な新型ガンダムから感じる気配も覚えがあった。
といっても、彼とは直接会ったことが無い。
知り合ったのはバーチャルの世界だ。
「そこのガンダム、乗ってるのカラテキッドでしょ! 煽ったら秒でキレる瞬間湯沸かし器なカラテキッド!!」
『やっぱり人食い魔猪じゃないか! アレはアンタ達の煽りが大人げなさすぎるんですよ!!』
彼はロボゲーの中で少し前から頭角を現してきたプレイヤーながら、メンタルがブレブレな為に上級ランカーのカモにされている残念新星である。
ちなみにハンドルネームはカラテキッド。
ヅダやザクで正拳突きをしてくるスタイルなクセ強のファイターだ。
さて、懐かしの再会はいいとしてだ。
「そこの金ぴかな機体に乗ってる人、後で話があるから」
『う……』
「逃げちゃダメだよ」
やる事も出来たし、とっとと邪魔者達を片付けよう。
◆
ネオジオンとDr.ヘルの同盟軍は強敵でした!
邪魔者達をベコベコに凹ませたあたしは、今白い戦艦ことアーガマの格納庫にいる。
本当なら姉御が待つリリー・マルレーンに戻るべきなんだけど、ちょっとした用事があるのだ。
シイコお姉さんやアンディさん達との挨拶もそこそこに視線を巡らせると、そこには赤いパイロットスーツを着た憎いアンチクショウの姿。
「アチャアアアアアアッ!!」
「うげぇっ!?」
あたしは相手がヘルメットを取ったところで助走をつけたドラゴンキックを叩き込んだ。
「あ…アルマリア……」
「久しぶりだね、兄ちゃん。いきなり姿を消したと思ったら、7年間も音信不通とは何考えてやがりますか、コノヤロウ」
倒れた兄ちゃんに馬乗りになって、極上の笑顔を見せてあげるあたし。
「クワトロ大尉! あんた、なにやってんだ!?」
「これは兄妹の話だ! 他人が口を挟むんじゃない!!」
慌てて駆け寄ってきたカラテキッドを、あたしは一睨みで黙らせる。
「カミーユ、いいんだ……」
そう言って兄ちゃんが身を起こそうとしたので、あたしも素直に退いてあげる。
「今のキックはあたしと姉ちゃん、あとラルのおっちゃん達に心配をかけた分だよ。テムのおっちゃんだってエドワウ君から連絡はないのかって、何度も気に掛けてたんだから」
「すまない。任務の関係上、そちらへ連絡を入れるのは危険だったのでな」
あたしだってゴップのおっちゃんから兄ちゃんが何らかの密命を受けていたのは知っていたからね。
姉ちゃんみたいにボッコボコにする気はない。
今の蹴りだって、音信不通で心配を掛けた事に対するケジメなのだ。
「というか、クワトロってララァから逃げる時に使った偽名じゃん」
「……あの女の話はしないでくれ」
あたしのツッコミに絞り出すような声を返す兄ちゃん。
その瞬間、頭によぎったのは腕が六本に増えたビショップに追い掛け回される赤い機体というビジョンだった。
え、なにこれ?
ビショップ・アスラ?
というか、兄ちゃんは何をやらかしたのか?
「なんか苦労したみたいだね」
「……ああ」
ハンガーのキャットウォークにある手すりにもたれて話す中、あたしがポンと背中を叩くと兄ちゃんは深々とため息を付いた。
「まあ、あたしも名前三つ持ってるしね。兄ちゃんの事は言えないか」
「三つ目の名だと?」
自嘲しながら話すとギョッとした兄ちゃんがこちらへ向く。
「連邦のニュータイプ研に狙われてね、身を隠す為に日本の高名な学者さんと養子縁組をしたんだよ。だから、今のあたしは弓マリです」
「そちらも苦労をしたんだな」
「まあね」
ぶっちゃけ、一年前の戦いは何度か死ぬかと思ったし。
そういえば、火星に行った万丈さんは元気にしているのだろうか?
「マリーちゃん、艦長が呼んでるよ! むこうも久しぶりだから積もる話があるんじゃないか?」
そんな事を考えているとアストナージの兄ちゃんが声を掛けてくれた。
なんと、このアーガマの艦長はブライト大尉だったのだ。
身を隠していた関係でミライさんとの結婚式にも行けなかったし、その辺の謝罪も含めて話にいくとしますか。
弓マリ・マリー・マスことマチュの世を忍ぶ仮の姿。
背中の半ばまで届く長い茶髪をポニーテールにし、レンズの厚い眼鏡を掛けてあくまでクラスでも目立たないモブ少女に擬態している。
しかし目立たないなんて考えているのは当人だけで、ちっちゃいロリ巨乳に野暮ったい眼鏡とポニテ、更には体育祭などで見せる運動能力の高さも相まって、学内には隠れファンが結構いたりする(その筆頭が義妹のさやか)。
告白された事も何度かあったが、恋愛に興味が無かった事と自分達の事情に巻き込まない為にすべて断っている。
その為、男子たちからは『鉄壁のロリ』という本人が知ったらドラゴンキックを食らうような綽名がつけられていたりする。
バルマー戦役に本格参戦した後は髪型を昔のショートに戻したのだが、その際にさやかからは大層嘆かれたという。