ダイクン家の二女はアホの子   作:アキ山

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マチュと兄貴と黒い三連星

『つまり、お前は独断でダイクンの娘を始末しようとして失敗。しかも刺客に選んだのが悪趣味な研究の副産物である少年兵だった所為で、連邦を叩く倫理的手段が一つ失われてしまったということか』

 

『しかもだ! そんな愚連隊共に最新鋭機のドム6機も与えて全滅とは、この損失はどう補うつもりだ!?』

 

 モニター越しに自分を蔑む視線を向けるギレン、そして怒りを隠そうともせずに怒鳴りつけてくるドズルに、キシリアはマスクの下で歯を食いしばる。

 

 ドズルはともかく、兄妹ながら政敵でもあるギレンに見下されるのは、彼女のプライドが許さないからだ。

 

「独断とは心外ですな。これはデギン公王から正式な勅命を受けて行った事です。むしろ総帥が演説でダイクンの娘の存在を世に知らしめた事こそ、公王の御心に背く独断では?」

 

「その親父からの勅命は何時受けたモノだ? お前の事だから俺達に上げる前に親父へ話を持って行っていたのだろう。ダイクンの娘を消す命令をその時に受けていたなら、どうして俺達に伝えなかった?」

 

 キシリアの反論に被せるようにドズルは責めるように問いかける。

 

 頭の固い軍人気質の次兄の事だ、キシリアに憤っているのもダイクンの娘に対する暗殺云々ではなくドムを無駄に失った事だろう。

 

「それは……」

 

「私に報告すれば暗殺を止められるか、その主導権を奪われると考えたか? 浅はかだな」

 

 フンと鼻で笑うギレンにキシリアは返す言葉が無い。

 

 長兄の言う通り、あの時に釘を刺していれば今のような状態にはなっていなかったのだから。

 

「なんにせよ、ダイクンの娘には我々の計画通りに国内外の反抗勢力を誘い出す餌になってもらう。これ以上、余計な手出しは無用だ」

 

「公王の意思に背いても、という事ですか?」

 

「父の命令は奴等の存在が明るみに出ていないことが前提だ、今となっては撤回せざるをえまい。あの方とて時勢を読む力はあるだろうからな」

 

「キシリアよ、大切な事は必ず報告しろ。陰に隠れて物事を進めようとするのはお前の悪い癖だ。それが今回のような事態を招いたのだぞ」

 

 言いたい事を言って通信を切るギレンとドズル。

 

「まったく好き勝手に言ってくれる、あの愚か者共め」

 

 それを忌々しげに睨みつけていたキシリアは、舌打ち一つでモニターから目を離すと机の上に置いてあった書類を手に取る。

 

 今の査問に近い会議は、地上に送った彼女の部隊から届いた報告書に目を通していた時に突然呼び出されたのだ。

 

 それだけでも業腹だというのに吊し上げのような内容である、キシリアの機嫌が底辺へ落下するのも当然と言えた。

 

 しかし、そんなモノもある報告によって吹き飛んでしまう。

 

「シャアがキャスバルだと?」

 

 それは闇夜のフェンリル隊から上がってきた報告書だった。

 

 彼等が偶然遭遇した木馬の偵察をしていた際、シャアのパーソナルカラーのザクが現れて撃墜されたらしい。

 

 フェンリル隊はその前に行われた鹵獲されたドムとのやり取りを傍受していたらしく、国際救難チャンネルで行われた通信では、ドムに乗ったジオン・ダイクンの娘と思われる子供がシャアを兄と呼んでいたとの事だ。

 

 キャスバルの名ではなく偽名だったそうだが、対するシャアが子供をアルマリアと呼んでいた事からも可能性は高いと思われる。

 

「あの男にしては随分と迂闊なことだ」

 

 紙面に刻まれた文章を読み終えると、キシリアは小さく息を吐いた。

 

 シャア・アズナブルといえば、ルウム戦役で多大な戦果をあげたエースでありジオンの英雄の一人だ。

 

 最近は木馬相手に失態を続けているが、それでも若くして少佐の地位に付いた彼は傑物といえた。

 

 そんな男がジオンの長子であるなど、いったい誰が予測しただろうか?

 

「いや、奴がキャスバル坊やであるなら不思議はないか」 

 

 頭の中に浮かんだあり得ないという考え、それをキシリアは小さな笑みと共に振り払う。

 

 幼少期の話になるが、キシリアはキャスバルと面識がある。

 

 その際に彼女は彼の聡明さ、そして内に秘めた苛烈な性格を垣間見ていた。

 

 キシリアはそんなキャスバルの聡明さを愛し、将来は彼のような子が欲しいとすら思っていたのだ。

 

「となれば、奴の目的は我々に対する復讐か」

 

 一国の主となった自分達を討とうと思えば、ダイクン派を束ねて対抗組織を立ち上げるのが常道だろう。

 

 しかしシャアはその道を選ばなかった。

 

 己一人の力で復讐を成す為にあえて敵の中へ潜り込み、内側から自分達のハラワタを食い破るつもりだったのだ。

 

 そのプライドの高さと己の力への傲慢さは、まさに幼少期のままと言えた。

 

「だが失望したぞ、キャスバル坊や。まさか妹可愛さに己の掲げた目的を投げ捨てるとはな」 

 

 ただ一人孤高に自分達の首を狙い続けているのなら、キシリアもシャアを自分の側に引き込むつもりはあった。

 

 キシリアとてジオン・ダイクン存命の時は、彼の掲げる思想や人類の革新たるニュータイプに憧れたのだから。

 

 彼が自分の手を取るのなら、ギレンを排してジオン公国を国祖の理想通り新人類の国にする為に動いただろう。

 

 しかし、その可能性は潰えた。

 

「私情にかまけて大望を忘れる者に愚民共を導くことはできん。赤い彗星は地に堕ちた。ならば遊んでやったよしみだ、私の手で引導を渡してやろう」

 

 貴賤に囚われず有能な人材を集めては特殊部隊を設立しているキシリアには、グール隊以外にも動かせる手駒はある。

 

 机の上に置かれたファイルを手に取ると、彼女は赤い彗星を討ち取るに足る刺客の選定を始めるのだった。

 

 

 

 

 その日、黒い三連星が中央アジア付近に現れたのは偶然だった。

 

 彼等がオデッサにいるのは、連邦の大攻勢を予感した鉱山基地司令マ・クベが救援を要請したからだ。

 

 黒い三連星はオデッサ基地で受領したドムの操縦に数日で慣れると、完熟訓練も兼ねて周辺に現れ始めた連邦軍の部隊を蹴散らし始めた。

 

 彼等の熟練した戦闘テクニックが合わさったドムに敵は無く、日々連戦連勝を重ねて撃墜スコアを示す星も増えていった。

 

 そうして餓狼のように敵と戦功を求めてうろつく内に、彼等は随分と遠くまで足を延ばすようになった。

 

 マ・クベからすれば頭の痛い話だろうが、豪傑達はそんな事を気に掛けはしない。

 

 狩猟者の勘に導かれるまま、敵を食い荒らしていた彼等は極上の獲物と出会う事になった。

 

 それは連邦軍に鹵獲された灰色のドム。

 

 ガイアはその遺骨のような悪趣味な機体カラーに覚えがあった。

 

 キシリア・ザビの私兵と言われた悪名高い愚連隊『屍喰鬼隊』だ。

 

「ふん、あのならず者どもめ。くたばっただけでなく、機体まで奪われるとはな」

 

 左右に小刻みに動きながら、己の放ったバズーカの砲弾を躱す敵をモニターに捉えながらガイアは吐き捨てる。

 

 キシリアの名を笠に着てやりたい放題の阿呆共が死んだのは当然の報いだ。

 

 敵味方問わず気に入らないモノには襲いかかり、連携一つ取れない兵が生き延びられるほど戦場は甘くない。

 

 だが、自軍の最新鋭機を敵にプレゼントするなど論外というほかなかった。

 

『もらったぁ!!』

 

 ガイアの攻撃を躱した隙を狙って、マッシュのドムがヒートソードを突き出しながら加速する。

 

 身体ごとぶつかる様な刺突を華麗なスピンターンで切り抜けた相手のドムは、その回転のままにバズーカの銃身で殴りつけてマッシュを吹き飛ばす。

 

『ぐっ?! この盗人野郎、随分と手練れだぜ!』

 

 通信機から足の熱核ホバーを巧みに操って体勢を立て直したマッシュからの悪態が響く。

 

『軟弱な連邦兵が俺達の機体でちょろちょろと! 生意気なんだよ!!』

 

 マッシュの攻撃を躱したドムに、畳みかけるように片腕を失ったガイアがバズーカで追い打ちを放つ。

 

 その一撃も敵は振り返りもせずに、ホバーを活かした横へのスライドで躱してみせる。

 

 その淀みない動きは、まるで背後に目があるようだ。

 

「奴め、只者ではないな!」

 

 三人の繰り出す波状攻撃の隙間をついて相手が放ったバズーカの砲弾、それを全開にした足のホバーの勢いのままに横っ飛びでガイアは躱す。

 

 会敵から3分以上が経つ中、ガイア達は敵のドムに撃墜はおろか一撃も有効打を与えていない。

 

 三方から相手を包囲するという圧倒的優位な布陣を敷いているにもかかわらずだ。

 

 黒い三連星にとって、ここまで攻撃を凌がれたのは初めての経験だった。

 

 そして少しでも連携を緩めれば、先ほどのように蜂の一刺しのような鋭い反撃が飛んでくる。

 

 今のところは三人共に無事だが、彼等でなければとっくに撃墜されていただろう。

 

「マッシュ! オルテガ! 奴は強い! あれをやるぞ!!」 

 

『あれだな!』

 

『俺達にアレを出させるとは、大した奴だぜ』

 

 ガイアの合図にマッシュとオルテガのドムが、包囲を解いて戻ってくる。

 

 これより見せるは黒い三連星必殺の一手、

 

 戦場で磨き上げた不破のコンビネーションならば、奴を倒せるという確信がガイアにはあった。

 

「よし、奴に……」

 

 気合を入れてガイアが相方たちに指示を出そうとした瞬間だった。

 

『礼を言わせてもらおう、黒い三連星の諸君。───お陰で機体の慣熟が捗った』

 

 突然通信機がこんな言葉を吐き出したのは。

 

      

 

 

 黒い三連星との戦いが始まってから結構な時間が経つ。

 

 サブシートから見ていて、あたしは兄ちゃんの操縦技術の高さに驚いていた。

 

 兄ちゃんの操縦は、基本の積み重ねに裏打ちされた無駄のない正確な動きが強みって感じだ。

 

 アムロのアンちゃんの効率性の権化みたいなものでも、あたしのような直感と奇をてらった虚拳とも違う。

 

 なんというか、実戦と訓練で培ったカッチリした動きだ。

 

 お陰でコッチを包囲して、円運動を取りながら攻撃してくる3機のドムに一発も被弾していないし……

 

「兄ちゃん、左後ろからバズーカくるよ!」

 

「了解だ!」

 

 敵意を感じ取ったあたしの声にもしっかり反応して、相手の攻撃を躱してくれる。

 

 宇宙であたしが兄ちゃんに勝てたのって、機体の性能差が大きかったんだなぁ。

 

「アルマリアは賢いな。お陰で背後を警戒しなくていい」

 

「あたしは勘が鋭いからね、装甲越しにも殺気を感じることが出来るのさ!」

 

 サイド7で初めてガンキャノンに乗ってからドンドン冴えてるんだよね、この勘。

 

 このまま行くと何時か『頭がパーンッ!』するんじゃないかと少し不安でもある。

 

 そんな益も無い事を考えていると、あたし達を囲っていた二機のドムが正面に立っていたドムのもとへ戻っていく。 

 

 次に彼等が取ったのは、ドム3機が縦一列に並ぶという奇妙な陣形だった。

 

「来るか、ジェットストリームアタック」

 

「なにそれ?」

 

「黒い三連星の必殺フォーメーションだ。ルウム戦役では、これでレビル将軍の乗る連邦軍の旗艦アナンケを撃沈したらしい」

 

 どんな戦法かは分からないけど相手が必勝を期すのなら注意が必要だ。

 

 あたしが気を引き締めていると、兄ちゃんはレバーを掴んでいた手をプラプラと解して『これでだいたいは掴めたな』と小さく呟いた。

 

 そして何を思ったのか、通信機を操作し始める。 

 

「礼を言わせてもらおう、黒い三連星の諸君。───お陰で機体の完熟が捗った」

 

 相手と通信が繋がったとたんに、兄ちゃんが吐いたセリフがこれである。

 

「……もしかして散発的にしか攻撃してなかったのって、機体操縦の練習をしてたから?」

 

「ああ」

 

「実戦で舐めプとか馬鹿なの? 死ぬの?」

 

「心外だな、私はそんな愚かな真似はしない。お前を乗せているのなら猶更だ。機体の特性をしっかり把握しておかねば、攻勢に出るなど怖くてできんだろう」

 

「まあ、今日初めて乗ったもんね」

 

 というか、練習がてらであの包囲攻撃を躱してたのか。

 

 ホバー機でそれをやるの、相当トンデモないんですが。

 

『その声、貴様! 赤い彗星か!?』

 

「ご名答だ、オルテガ中尉。君は事あるごとに私に突っかかってきていたからな、声で気付くのも当然か」

 

『何故、赤い彗星が木馬と共にいる!?』

 

「察しが悪いな、マッシュ中尉。私はジオン軍を抜けるのだよ」

 

『貴様が…ルウムの英雄がジオンを抜けるだと!?』

 

「そうだ。ギレンは私の妹を賞金首にしたばかりか、政治的な道具や反抗勢力を釣る為の餌にした。そんな男の下で戦う事などできん」

 

 通信機で黒い三連星と話す兄ちゃん。

 

 というか、これは決意表明というべきか。

 

『なら、俺達は裏切り者として貴様を処刑するだけだ!』

 

 兄ちゃんの離脱がショックだったのだろう、名前を呼ばれていないおじさんは一呼吸置くと宣言する。

 

『せめてもの情けだ。戦士として終わらせてやるよ、赤い彗星!』

 

『へへっ! ようやく、テメエをブチのめせるぜ!!』

 

「今の私はジオンのシャアでも赤い彗星でもない、妹を守る一人の兄だ! さあ、来るがいい!!」

 

 続く黒い三連星の仲間たちの怒声にそう返すと、兄ちゃんは通信機のスイッチを切った。 

 

「知り合いだったの?」

 

「式典などで顔を合わせる程度の関係さ、特に親しくも無い。それより、シートベルトを少しきつめに締めておきなさい」

 

 言われるがままにベルトを調整すると、計器を弄っていた兄ちゃんがサングラスを外すのが見えた。

 

『オルテガ! マッシュ! ジェットストリームアタックだ!! 分かっているな!』

 

『ああ、相手はシャア・アズナブルだ! 油断はしない!!』

 

『先頭は俺が付く! 奴にどっちが上か、教え込んでやる!!』

 

 こんな思念が伝わると同時に、三機のドムは一列に並んだままこちらへ突っ込んでくる。

 

「悪いが今日の私は絶好調だ。ジェットストリームアタック、破らせてもらうぞ」

 

 その光景に兄ちゃんの口角が釣り上がったと思った瞬間だった。 

 

「あわっ!?」

 

 今までとは比較にならないスピードで、ドム1号機がカッ飛んだのだ。

 

『なにっ!?』 

 

 この速度は向こうにとっても予想外だったのだろう、先頭を走る隻腕のドムから驚愕の思念が伝わってくる。

 

 それも仕方がないだろう、こっちのコックピットじゃあ赤色の警告灯とアラームが鳴り響いているんだから。

 

 間違いない。

 

 兄ちゃん、熱核ホバーのリミッターを外しやがった!!

 

「甘いなっ!」

 

 そして相手の隙を逃す程、兄ちゃんは甘くない。

 

 加速の勢いを付けて担いでいたバズーカを相手へ投げつけると、背部のマウントから取り出したのはザクのマシンガン。

 

 ヒートソードの代わりに、テムおじさんがあたしのリクエストに応えて付けてくれた武器だ。

 

『クソが! 小癪な真似を!!』

 

 それでも先頭のドムは投擲されたバズーカを咄嗟に身を捻って躱してみせる。

 

 けれど、兄ちゃんの手は相手がバズーカを避ける事すら織り込み済みだった。

 

 投擲の直後に放たれたマシンガンの弾、それはバズーカの弾倉に食らいつくと残っていた砲弾を誘爆させて3機のドムに爆炎を降らせる。

 

『ぐおおおおっ!?』

 

『お…オルテガ! 気を付けろ!!』

 

 特に頭の至近距離で爆発に巻き込まれた先頭のドムは被害が強く、破壊されたモノアイの破片と共にヒートソードを取り落とす。

 

「もらった!」

 

 そんなドムへ兄ちゃんは三点バーストでマシンガンを放つ。

 

 解き放たれた弾丸が飛び込んだのはドムの左胸、拡散ビーム砲の砲口だ。

 

『そんな…うがぁっ!?』

 

 いくらドムが重装甲といっても、固定武装の出口まではそうじゃない。

 

 内部へ潜り込んだ弾丸は内側の機構を食い荒らし、先頭のドムは胴体から火を噴いて前のめりに倒れようとする。

 

『よくもオルテガをぉぉっ!!』

 

 二番目のドムがバズーカを放つが、前にいるドムが邪魔で照準が甘くなっている。

 

「当たりはせん!」 

 

 出来得る限り身を低くして砲弾を掻い潜った兄ちゃんは、そのまま間合いを詰めると勢いのままに二番目のドムの腹に蹴りを叩き込む。

 

『ぐおぁっ!?』

 

 先頭が倒れて減速を余儀なくされたドムが、弾丸さながらにカッ飛んできた同型機の突撃を受けきれるわけがない。

 

 こちらの足から熱核ホバーの残骸が舞う中、後ろへ弾き飛ばされた2番目。

 

 それが3番目にぶつかると同時に彼等を襲ったのは、マシンガンから吐き出される弾丸の雨だ。

 

『うおおおおおおっ!?』

 

『ぬわぁぁぁっ!?』

 

 胴体など装甲の厚い部分には大きなダメージはないみたいだけど、頭部のモノアイや指なんかの脆い部分は耐えられない。

 

 そのまま抱き合うように倒れた二機のドムは、頭部や手が半壊して戦える状態には見えない。

 

「ジェットストリームアタックは本来、宇宙空間で艦艇を仕留める為の技。重力下、それもMS相手に使うには練度が足りなかったな!!」

 

 言葉と共に重なり合った黒い三連星の残りが立てないよう、圧し掛かっている方の背を壊れた足で踏む兄ちゃん。

 

 その手には、先頭のドムが取り落としたヒートソードが握られている。

 

「さらばだ、黒い三連星!!」

 

 そして振り下ろされた黄色い切っ先は二体のドムの身体を貫いた。

 

【く…くそったれぇぇっ!?】

 

【オルテガ、マッシュ、すまん……】

 

 頭をよぎったのは、きっと黒い三連星が残した最後の残滓なんだろう。

 

 それは生き残った人間が背負うモノじゃない。

 

「南無阿弥陀仏……」

 

 あたしは小さく呟くと両手を合わせる。

 

 闘い、果てた戦士に対する手向けはこれで十分だ。

 

「お疲れ、兄ちゃん」 

 

「ああ。戦術研究で奴等のジェットストリームアタックを見た事があったが、今回はそれが功を奏したな」

 

 サングラスを掛け直して不敵に笑う兄ちゃん。

 

 こうして格好よく締めたいところなんだけど、大きな問題がある。

 

「……ねえ。ホバー、両方とも壊れちゃってるんじゃない?」

 

「どうやら無理をさせ過ぎたようだな。この機構は思った以上に繊細らしい」

 

 一方は蹴った時にオシャカになって、もう一方はリミッターを外してかっ飛ばした所為でご臨終である。

 

「どうやって帰るのさ?」

 

「行きはドライブだったのだ、帰りはゆっくり散歩というのもオツなものだぞ」

 

 ジト目で問い詰めても、まったく気にせずに兄ちゃんは笑い飛ばしてしまった。

 

 この兄貴、なんか吹っ切れたっぽいぞ。

 

「まあいっか。それじゃあ、三連星のドムで原型を留めてるの持って帰ろう。パーツ取り用に」

 

「死体あさりというのはあまり感心しないぞ、アルマリア」

 

「生き残るためには止む無しだよ、兄ちゃん。利用できるものは何でも利用するタフさを身に付けないと」

 

 グール隊とかいう奴等の機体をニコイチ修理したので、足の予備はあと二つしかないのだ。

 

 二号機をラルのおっちゃんが使う事を思えば、残していくのは勿体なさ過ぎる。

 

「とはいえ、足回りが壊れた機体でジャンク二つを持って帰るのはキツいか」

 

 どうしたものかと思案していると、見知った気配が近づいてくるのを感じた。

 

 これってたしか……

 

「艦艇が一隻近づいてきている。この反応はギャロップだな。どこかに隠れてやり過ごさねば……」

 

「大丈夫だよ、兄ちゃん。これ、ラルのおっちゃんだ!」

 

 なんてやり取りをしていると、船の方から通信が入ってきた。 

 

『こちらはランバ・ラル大尉である。そこのドム、何があった?』

 

「ラル大尉か。私はシャア・アズナブルだ」

 

「ラルのおっちゃん! あたしもいるよ!!」

 

『アルマリア様!? ということは、貴方はキャスバル様なのですね!』 

 

「そう言えば、アルテイシア達が話していたのだったな。すまないが、そこのジャンクと共に木馬まで乗せていってくれないか。詳しい事は道中で話す」

 

 そんな訳であたし達はラルのおっちゃんと合流して、ホワイトベースまで帰る事になった。

 

 おっちゃん達も合流の為に向かうそうなので、一石二鳥である。

 

 こうして不意の遭遇戦から生還したあたし達だけど、本当の危機は帰った先にあったのだ。

 

「私のマチュを何処へ連れて行ってたのか、キリキリ答えてもらいましょうか、ダメ兄貴」

 

 あたし達を迎えたのは鬼と化した姉ちゃんだったのである。

 

 姉ちゃんの怒りが炸裂した結果、あたしはゲンコツを三発もらい、兄ちゃんはヒットマンスタイルからのフリッカージャブとチョッピングライトで滅多打ちにされてしまった。

 

 いったい姉ちゃんはどうやってボクシング技術を身に付けているのだろうか?

 

 あな、おそろしや。

 

 




嘘予告・ダイクン家の二女はアホの子・逆襲のシャア

ーUC0093年 ネオジオン総帥シャア・アズナブルは地球人類粛清の為に隕石落としを敢行したー

ー地球寒冷化作戦を阻もうと彼の前に立ち塞がったのは、アムロ・レイを擁するロンド・ベル隊ー

ー今ここに宿命のライバルの最終決戦が幕を開けるー

アムロ「なんでこんな物を地球へ落とす! これでは地球が寒くなってマチュや子供達が住めなくなる!!」

シャア「私がジオン残党監視でアクシズに逝っている間に、貴様は可愛いアルマリアを寝取った! その腹いせに地球人類を抹殺すると宣言した!!」

アムロ「八つ当たりだよ、それは! というか子供が二人も生まれたのに、まだ認めてくれないのか、兄さん!」

シャア「貴様に兄さんと呼ばれる筋合いはない!! アルマリアの褥は暖かかったかぁ?」

アムロ「あっはい」

シャア「死ねやぁぁぁぁ!」

ー戦いが人を動かし、別れを産み、そして出会いが次の悲劇を呼ぶー

アムロ「あなたにだって、ハマーンという女性がいるだろうに!」

シャア「あれは妹欠乏症による一時の気の迷いだ! あんなキツい女は私の好みではない!!」

アムロ「セイラさんの方がよっぽどキツいじゃないか!!」

ーガンダム伝説! 最高最大の興奮を孕んで、ドラマはとてつもない結末を迎える!!ー

シャア「アクシズをハンマー一発で砕くだと!? なんだ、あの化け物は!」

アムロ「あれは!? ダブリンで拾ったサイコガンダムMKⅡを基に親父が趣味全開で創り上げたセイラさん専用機ベミドバンッ!?」

セイラ「身内の恥を地球圏に晒しまくって……今度こそ地獄へ送ってあげるわ!!」


ダイクン家の二女はアホの子・逆襲のシャア!

シャアは生き残ることが出来るか?  
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