ダイクン家の二女はアホの子   作:アキ山

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暖かくなってきましたが、季節の変わり目は体調が崩れがちになるものです。

夜はしっかりと温かくして、風邪などには気を付けてください。

それとGジェネエターナルの配信やジークアクスの放映日も近づいてきました。

執筆速度が落ちる可能性が高いので、それまでにしっかりと書き溜めておかねば。




マチュとゴッグと姉ちゃんスペシャル

 連邦軍ベルファスト基地から解放された物売りの少女、ミハル・ラトキエはゲートの前で小さくため息を付いた。

 

「連邦軍の奴等、戦災孤児を何だと思ってるんだい」

 

 先ほどまで自分を拘束していた屈強な軍人から聞かされた話は、彼女にとって唾棄すべきモノだった。

 

 パイロットをやっているという年端のいかないマチュという娘、彼女はジオンの攻撃によってサイド7コロニーから助け出された戦災孤児だという。

 

 最初の攻撃でサイド7に駐留していた連邦軍人の大半が死亡した為、マチュは彼女と同じく戦火によって焼け出された避難民達を護るべくMSに乗り込んだ。

 

 幸か不幸か、マチュには天才的な操縦センスがあった。

 

 それは連邦の正規軍人を遥かに上回り、ジオンのエースと渡り合える程の才能だ。

 

 結果、連邦軍は彼女を戦力としてみなし、今の今まで最前線で戦わせている。

 

 そしてミハルに軍人が要求したのは、この事に関しての口止めだった。

 

 ジオンの演説で少年兵の徴兵は周知の事実となっているが、それが誰かまでは明らかになっていない。

 

 万が一それが判明すれば、彼女に暗殺の危険性がある。

 

 だからこそ、口外するなという事だ。

 

「だったら、すぐにあの子を解放してやればいいんだ。こんなの勝手すぎるだろ……」

 

 ミハルは連邦軍ベルファスト基地の近くに住む戦災孤児の少女だ。

 

 彼女の両親は一年戦争初期の戦乱の中で命を落とした。

 

 その結果、ミハルの手に残ったのは弟のジルと妹のミリーという弟妹だけ。

 

 だからこそ、マチュやその姉を他人事とは思えない。

 

 もし、あの子がMS操縦の才を示し続ければ、連邦軍は二匹目のドジョウを狙って他の子供達も徴兵するのではないか?

 

 そうなったら、あの子と年の近いジルまで軍隊に取られるかもしれない。

 

 そんな風に考えると、ミハルは身体の震えを止めることが出来ない。

 

「こんなこと、誰にも言えるもんか」

 

 彼女は自分の腕に下げた籠に目をやる。

 

 そこには基地を出入りする軍人に売りつける為の日用品、そして拳銃が入っている。

 

 これは彼女が内通しているジオンの軍人から託されたものだ。

 

 十代半ばで手に職もないミハルには、家族三人を食わしていくだけの食い扶持を確保する術はない。

 

 だからこそ、民間のスパイ要員として親の仇ともいえるジオンに手を貸すしかなかった。

 

「あの軍人がお人好しで助かった。あたしがいなくなったら、弟達が路頭に迷っちまう」

 

 この拳銃はジオンで作られたものだ。

 

 もし見つかっていれば、より苛烈な追及は免れなかっただろう。

 

 色々と複雑な思いを頭の中で整理できずにいるミハル。

 

 そんな彼女を現実に引き戻したのは、爆発音と大地から伝わる振動だった。

 

「ジオンのMS……」

 

 ハッと見上げれば、視線の先にあるのは基地内にある市街地を破壊する茶色い表皮をした鉄の怪物。

 

 かつて戦火に逃げ惑う中で見た緑の巨人とは違うが、それでもミハルにとっては忌まわしいモノだ。

 

「早く家に帰らないと。ジル達が心配しているね」

 

 そう自分に言い聞かせてジオンのMSから視線を切ろうとした時、地響きを立ててもう一体のMSが舞い降りる。

 

 白と赤が特徴的な巨人。

 

 ジオンのMSと対峙しているところを見るに、あれは連邦のモノなのだろう。

 

「お嬢ちゃん。アンタ、また戦っているのかい?」

 

 連邦に所属する者にとって勇ましい筈のガンダムの姿、ミハルにはそれが子供を連れ去る悍ましい死神のように見えた。

 

 

 

 

 ベルファスト基地防衛の為に敷設された水中機雷群、それを潜り抜けて上陸したジオン軍のMSは3機。

 

 人型に近いザクとは違い、彼等の駆る機体は知識の無い者が遠間から見れば怪物にも見えるだろう。

 

 型式番号MSM-03 ゴッグ。

 

 鋭い鉤爪が伴った五指を先端に備えた長い腕と、卵に近い楕円形の身体。

 

 従来のジオン製MSより格段に厚くなった装甲に、腹に備わったメガ粒子砲を持つこの機体はジオンが開発した水陸両用MSだ。

 

 彼等は上陸するとすぐに目に付く基地施設を破壊し始める。

 

 もちろん、ベルファスト基地の守備隊も黙っていない。

 

 61式戦車や有線ミサイルランチャーを積んだジープを発進させて、侵攻してきた敵機体を排除しようと砲弾を放つ。

 

「そんな豆鉄砲でゴッグの装甲が破れるかよ!」 

 

 ゴッグ隊の一機を操るコーカ・ラサ曹長は、連邦軍の必死の抵抗を鼻で笑いながら腹部のメガ粒子砲を放つ。

 

 シャワーのように拡散するメガ粒子は、戦車や対地ミサイルなどの防衛施設を羽虫のように薙ぎ払った。

 

 MSにいいように蹂躙される通常兵器、それは一年戦争初期の焼きまわしのようだった。

 

「ぬぅっ!?」

 

 しかしそんなゴッグの優位も一発の砲弾が足元で炸裂するまでだった。

 

「コイツは…ジオンの新型か!」

 

 見た事のない敵機にアムロは警戒を一段階引き上げる。

 

「コイツがガンダムか。ガルマ様を殺った奴じゃないようだが、どちらにせよ手柄には変わりない!」

 

「おう! コイツを倒して十字勲章を頂くぜ!」

 

 僚機と共に気合を入れ直したコーカ曹長は、啖呵と共にメガ粒子砲を放つ。

 

「コイツ、ビームを使うのか!」

 

 左に跳んでゴッグ達の射撃を躱したアムロは、すぐさまバズーカの引き金を引く。

 

「うおおっ!?」

 

 吐き出された砲弾はコーカ曹長の操るゴッグの胸板を捉え、爆発と共に後退させる。

 

 しかし、煙が晴れた彼の機体には多少の凹みがあるだけで傷らしい傷はついていない。

 

「さすがゴッグだ! なんともないぜ!」

 

 敵の射撃武器に耐えた自機の耐久性に口角を釣りあげると、コーカ曹長と僚機はガンダムへ向けて突撃を開始する。

 

 メイン武装が通らないのなら、相手を恐れる理由はないのだ。

 

「バズーカが通らないのか! ならば!!」

 

 加速を込めた振るわれたかぎ爪を後ろに跳んで躱しながら、アムロはガンダムの左腕を突き出す。

 

 次の瞬間、手甲の手首の部分が開くと、そこから黒い球のような物が3つ発射される。

 

「なんだ!?」

 

「無駄だ! バズーカが効かないのに、そんな豆鉄砲が通用するものかよ!」

 

 警戒する僚機とは違い、ゴッグの装甲に信頼を置くコーカ曹長はさらに前へ出る。

 

 するとコーカ曹長の前で2つの黒い球は急激に膨らみ、簡易的なガンダムの姿を取る。

 

 そう、アムロが放ったのはダミーバルーンだったのだ。

 

「お遊びのつもりかよ!? ふざけやがって!」

 

 苛立ち交じりにかぎ爪でダミーを薙ぎ払う。

 

 無惨に引き裂かれたダミーだが、ただやられただけではなかった。

 

 ゴッグのカギ爪が食い込むと同時に破裂し、周囲に黒煙をまき散らしたのだ。

 

「ちぃっ!? スモークだと!」

 

 広範囲に電波障害を引き起こすミノフスキー粒子の登場によって、敵味方共にレーダーや無線通信の妨害が常道になった宇宙世紀の戦闘はMSによる有視界戦闘が主流となっている。

 

 故に視界を失うという事は致命的と言っていい。

 

「おい! ここにいたら狙い撃ちにされる! スモークから出るぞ!」

 

 コーカ曹長は僚機にそう告げると、返事を聞く間も惜しいとばかりにゴッグを前進させる。

 

 黒煙に覆われた範囲は決して広くない。

 

 如何にゴッグが地上では他の機体より鈍足とはいえ、抜けるにはそう時間がかからない筈だ。

 

 そうして煙の薄い場所に出たコーカ曹長だが、すぐに体を強張らせる事になった。

 

 何故なら、眼前にはバズーカを構えたMSらしきシルエットが見えたからだ。

 

「へへ……燻し出された所を狙おうってんだろうが、そうはいかねえ」

 

 しかし、彼とて一年戦争を今まで生きてきた古強者、すぐに気を取り直すと腹部のメガ粒子砲の発射準備に入る。

 

「狙い撃ちされるのはテメエの方だ、ガンダ───」

 

 そして引き金を引こうとした瞬間、コーカ曹長の身体は灼熱のメガ粒子に焼かれてこの世から消滅した。

 

 コックピットを的確に刺し貫かれたゴッグは前のめりに倒れる。

 

 潮風で煙幕が吹き流されると、現れたのは相棒と同じくコックピットを一突きにされて擱座したもう一体のゴッグ。

 

 そしてコーカ機の背後でビームサーベルを手に立つガンダムの姿だった。

 

 では、コーカ曹長が最後に見たMSのシルエットとは何だったのか?

 

 それは彼が見たような形に膨らんだダミーバルーンだ。

 

「ふぅ、上手くいってよかった」

 

 二体のゴッグを葬ったアムロは愛機のコックピットの中で小さく息を付く。

 

 父に思い切り動かし過ぎるなと言われた手前、操縦にはいつも以上に気を使っていたのだ。

 

「父さんに頼んで作ってもらったけど、やっぱりダミーは使い勝手がいいな。もっと活かせる戦い方を考えないと」

 

 そしてすぐに頭を切り替え、更なる戦術構築に思いを馳せるアムロ。

 

 小さな成功に慢心せず、より良いモノを目指す。

 

 そんな職人気質な気質こそが、彼の強さを支えているのかもしれない。

 

 時は少し遡り、三機目のゴッグと対峙したガンダム1号機。

 

「見た事のない機体ね」

 

「また新型かな。よくポンポン作れるもんだよ」

 

 半ば呆れながらも警戒心を高めるマチュとセイラ。

 

 それと共に一号機がブンブンと振り回すハイパーハンマーの速度が上がる。

 

 そんな彼女達と対峙したゴッグのパイロット、マーシーはコックピットの中で不敵に笑みを浮かべる。

 

「アイツがガルマ大佐を殺った連邦の鉄球魔人かよ。ジオン最高の賞金首と出会えるたぁ、俺も運が回ってきやがったぜ」

 

 ギレンが行った演説からジオン国内でマチュ達の扱いは大きく二分している。

 

 一つはガルマ地球方面司令殺害犯という賞金首。

 

 これは地球上で活動するザビ家派閥や派閥に入っていない大半の人間の認識だ。

 

 彼等からしてみればダイクンの遺児などという立場は意味がない。

 

 建国の父と言われてはいるがジオン・ダイクン自体が過去の人間であり、ザビ家との政争に破れた政治家でしかないのだ。

 

 故に連邦軍に与しているなら敵だし、賞金が掛かっているなら殺さない理由はない。

 

 そして、もう一つは建国の父の娘であり、ジオン・ダイクンの後継者という見方。

 

 これは地球侵攻作戦の最前線にいる者やサイド3の各所に潜伏しているダイクン派、反ザビ家を掲げる人々の認識である。

 

 彼等はザビ家の独裁が横行する今のジオンは正しい姿ではないと考え、ジオン・ダイクンが望んだのは他のサイドと手を取り合って地球連邦から独立する道で、それこそがあるべき姿だと訴える。

 

 そして将来的には地球から巣立ったスペースノイドは、外宇宙というフロンティアへ踏み出す事だとも。

 

 祖国の間違いを糺さんとする彼等にとってはマチュ達はこの上ない旗頭であり、同時に冷遇されて塗炭の苦しみを味わう自分達の救いの主だ。

 

 故に彼等は何とかしてホワイトベースへ接触しようと画策している。

 

 もっともオデッサを失った事で各地で劣勢に立たされ始めたジオン地上軍の最前線にいる彼等に、その余裕は無いのだが。

 

 ちなみにザビ家がマチュ達を建国の父の娘と公表しながらも賞金を解除しないのは、ダイクン派を燻り出す為のプレッシャーとして使う為だ。

 

 焦った彼等がホワイトベースへ攻め込むなら同士討ちを狙えるし、その前に尻尾を出す間抜けでも諜報部や憲兵などを使って狩り取ることが出来る。

 

 国民には戦時下を理由に解除の手続きが遅れているとでも言えばいい。

 

「ここで手柄を立てて、磯臭い生活ともおさらばだ!」

 

 そんなジオンの世情の中で一獲千金を夢見るマーシーは、どの派閥にも属さない兵士だ。

 

 だからこそ、彼女達が何者だろうと手を緩める事は無い。  

 

 欲望駄々洩れの声と共に放たれたメガ粒子砲、それをマチュが駆るガンダム1号機はサイドステップで華麗に躱す。

 

「思いっきり動かせないのはやり辛いけど、このくらいなら!」

 

 そして着地を踏み込みとして、遠心力を込めたハンマーを投げつける。

 

「ぐおおっ!?」

 

 ガンダムの膂力に加えて鉄球内に仕込まれたジェット推進を活かした一撃は躱すことが出来ず、どてっぱらに鉄球を食らったゴッグは後ろへ吹き飛ばされる。

 

「えっ!?」

 

 しかし次の瞬間、マチュは驚く事になる。

 

「や…やりやがったな!」

 

 何故なら小高い丘を抉りながら弾き飛ばされたゴッグの機体には破損が見られなかったからだ。 

 

「えらく頑丈なモビルスーツ。さすがは新型ってところかな」

 

「マチュ、攻撃は私に任せて。あなたは機体の動きを」

 

「OK」

 

 姉の言葉に頷くと、マチュは攻撃の照準や腕の制御をサブシートの姉に託す。

 

 これはテム・レイが仕込んだ複座型ならではの機能だ。

 

「食らえ! ジオンの裏切者がぁ!!」 

 

 ハンマーの一撃を食らった事で頭に血が上ったマーシーは、腹部のメガ粒子砲を連続して放つ。

 

「甘いよ、そんな狙いで!」

 

 しかしマチュはシミュレーターを含めれば、人類全体で5指に入る程の操縦経験がある。

 

 怒りに任せた雑な攻撃などそうそう当たるモノではない。

 

「姉ちゃん!」

 

「ええ!」

 

 そして何度目かの砲撃を躱したタイミングで、ガンダム1号機は再びハンマーを放つ。

 

「こなくそぉぉぉっ!!」

 

 しかしマーシーも易々とはやられなかった。

 

 なんとゴッグの強靭な手を使って、正面から鉄球を受け止めてみせたのだ。

 

「おおっ!」

 

 これにはマチュもコックピットの中で感嘆の声を上げる。

 

「へ…へへ……見たか! このゴッグに同じ手は二度ぼぉぉっ!?」

 

 自分が成したファインプレーに軽口を叩こうとするマーシー。

 

 だが、そんな彼の言葉は強烈な衝撃とメインカメラが死んだことでかき消された。

 

「愚かな。何時から私達が鉄球しか使わないと錯覚していたのです?」

 

「す…隙の生じぬ二段構え……!」

 

 姉の冷徹な言葉にマチュは戦慄を隠せない。

 

 ゴッグを襲ったのは、ガンダムがハンマーと鉞を繋ぐチェーンの中間に設けられた持ち手を巧みに操った事で、鉄球から間を置かず頭上から降ってきた凶悪な鉞。

 

 それは異形のMSの頭を割り、モノアイレールを断つ形で刃をめり込ませていた。

 

「マチュ、トドメと行くわよ」

 

 そう告げると、セイラは持ち手を思い切り引く。

 

 するとハンマーと共に鉞が撃ち込まれたゴッグも、ガンダムの方へ引き寄せられる。

 

「はぁっ!」

 

 獲物が射程距離内に入ると同時に大地を蹴って宙を舞うガンダム。

 

「大・切・断!!」

 

 そして巨体を空中で一回転させると、セイラの裂帛の気合と共に大上段からハンマーを振り下ろす!

 

 猛烈な勢いで打ち下ろされた鉄球は鉞の峰を捉えると、切れ目が入って脆くなったゴッグの頭を粉砕。

 

「ぐわぁぁぁぁっ!?」

 

 打ち込まれた鉞は勢いのままに楕円形の身体を食い荒らすと、股下に抜けてゴッグを縦に両断した。

 

「姉ちゃん、こんな癖のある武器を使いこなせるとか凄いね」

 

 ジェネレーターを破壊されて爆発するゴッグ、それを見ながらマチュは姉を賞賛する。

 

「ええ。愚兄で(・・・)たくさん練習したもの」

 

「兄ちゃんェ……」

 

 そして返ってきた答えにガックリと肩を落とした。

 

 何時になったら姉は兄にデレるのか?

 

 彼女の目指す仲良し家族計画は前途多難である。

 

 

 

 

 どうも、戦いに勝利したもののバディの戦い方に戦慄しているマチュです。

 

 アムロのアンちゃんが、またしても真正面から敵を暗殺していた件。

 

 接近戦を誘ったうえでダミーバルーンを使って、そこに仕込んだ煙幕で敵の視界を塞ぐ。

 

 そこから混乱する敵の目を引く為に更なるダミーを設置したうえで、本人は煙幕に入って背後から敵を刺し殺すわけだ。

 

 あれって新型にバズーカが効かなかったからサーベル使っただけで、ビームライフルが使えたら遠距離から撃ち殺してたよね?

 

 完全に『見えない死神』の応用じゃん!

 

 またしても初見だったら逃げられない鬼畜戦法を編み出しおって!

 

 誰だ! アンちゃんにダミーバルーンなんて凶器を渡したのは!?

 

 それはともかくとして、ベルファスト基地に来てから3日が経ちました。

 

 二日目の昼頃にあたし達が退けたのとは別の襲撃があったんだけど、そこは兄ちゃんとラルのおっちゃん達が返り討ちにしてくれました。

 

 あの時は一度目とは逆で、あたし達のガンダムが整備に回っていたから出撃出来なかったんだよね。

 

 兄ちゃんは青いズゴックとかいう敵の新型をビームライフルで瞬殺したし、ラルのおっちゃんも武装に追加したダミーを上手く使ってゴッグを斬り殺していた。

 

 遮蔽物の隠れたところで自走用ドローンを付けたダミーを囮にしたり、撃破したダミーに仕込んだ閃光弾で相手の眼を潰して背後から倒すなど、まさにゲリラ屋の面目躍如って感じだった。

 

 その時にホワイトベースの襲撃を知ってカイさんも戻ってきてくれたし、基地や母艦の被害も少なかったので万々歳である。

 

 そんなこんなで4日目を迎えて、ホワイトベースの修理とガンダム二機の強化も無事に成功した。

 

 モスク・ハンって人が施したのはマグネットコーティングという、ガンダムの関節を電磁気で包んで駆動を早める処置だそうな。

 

 シミュレーターや実機で確認したけど、前に比べて相当に動かしやすくなったと思う。

 

「これでメカニック的な干渉は全て打ち消すことが出来ました」 

 

「流石だな、モスク博士」

 

「ですが、ガンダムのパワー自体に変わりはありません。制御系のコンピューターも。彼等の操縦データを見る限り、その二つの限界を超えるのも遠くないでしょう。今回の措置はあくまで応急手当と考えるべきです」

 

 けれど、テムおじさんをはじめメカニックの人達は満足していないようだ。

 

「やはり、新型を作成せねばならんか。だが、これらを超える機体が造られているかどうか……」

 

「たしかガンダムって各地の連邦軍基地で造られているんですよね?」

 

「ああ、聞く限りでは7号機までの計画が立ち上がっているそうだ」

 

「ならデータだけでも送ってもらったらどうでしょう? それを確認して、1号機や2号機を超えるモノがあれば取り寄せてもらうってことで」

 

「うむ、ゴップ大将も便宜を図ると言ってくれていたしな。アマミヤ少尉、繋いでもらって構わんか?」

 

「了解です」

 

 テムおじさんの指示でアマミヤ少尉が通信機を弄ると、例のタヌキなおっちゃんがモニターに現れる。

 

『なるほど。だが、ガンダム開発計画は用途の違いで多少のチューンは施されているとはいえ、基礎スペックに大きな差はない。……そういえば、北米のオーガスタ基地で面白いモノを造っていたな』

 

 事の次第をテムおじさんから聞いたゴップのおっちゃんは、二重になった顎に手を当てて考えを巡らせる。

 

「面白いモノ、ですか?」

 

『ああ。ジオンから亡命してきた博士が証言していたのだが、むこうではニュータイプの研究が盛んに行われているらしい』

 

「ニュータイプとはジオン・ダイクンが提唱していた新人類ですよね。そんな物が本当に存在すると?」

 

『少なくともジオン側は信じているようだな。それに類する異能を持つ者も確認されているそうだ。そこで連邦もそれに対抗すべく、ニュータイプ専用機というべき機体の製作を開始したのだよ』

 

「そんなモノがあったとは……」

 

『たしかプロトタイプを含めて二機が完成間近だと報告があった。それをホワイトベースへ送ろう』

 

「ありがとうございます」

 

 頭を下げるテムおじさんにゴップのおっちゃんはヒラヒラと手を振る。

 

『礼はいらんよ。元よりこの二機はアムロ君とマリー嬢に引き渡される予定だったのだ』

 

「そうなのですか?」

 

『うむ。上層部の目論見では受領は宇宙での反攻作戦に合わせるつもりでな、その為に最終調整はサイド6で行う手はずになっていた。それが前倒しになっただけだから、気にする事は無い』

 

「ゴップのおっちゃん、あたし達用のMSを造ってたってことなの?」 

 

『元は別の用途の機体さ。だが君達の活躍を受けて、そのように調整する流れになったという話だ。ガンダムNTー1プロトおよびNTー1の受け渡しはジャブローで行う。最終調整は君達に任せることになるから、その辺は覚悟しておいてくれたまえ』

 

 その言葉を最後に、ゴップのおっちゃんと繋がったモニターが切れた。 

 

「アンちゃん、新型が来るらしいよ」

 

「機体の変更って結構大変なんだよなぁ。癖が無かったらいいけど」

 

 まぁ、あたし達はガンダムに慣れているからね。

 

 そこから新型の癖を掴んで使いこなすのは確かに一苦労だ。

 

『ホワイトベース各員に告ぐ! これより本艦はベルファスト基地を出発する! 総員、既定の配置に付け!』

 

 そんな事を話していると、艦内放送からロンバートのじっちゃんの声が響いた。

 

 どうやらベルファスト基地ともお別れらしい。

 

「モスク博士はどうするのかね?」 

 

「我々は少ししたら輸送機で艦を離れます。次はマドラス基地に行くことになってますので」

 

「ありがとうございました」

 

「ありがとう」

 

 あたしとアンちゃんが頭を下げると、モスク博士は少し複雑そうな顔をしたけど、すぐに笑顔で打ち消した。

 

「君達が生き残る一助になれたのなら何よりだ。できれば運用データの方もこちらへ送ってくれれば助かるがね」

 

「それなら私が送るから心配しなくていい」

 

「頼みますよ、テム博士」 

 

 そこからまた二人でメカ談義をしだしたテムおじさん達。

 

「そろそろ艦内に戻ろうか」 

 

「うん」

 

 航行を始めたホワイトベースの中を歩いていると、あたしの直感に妙な物が引っ掛かった。

 

 流れてくるのは焦りとか驚愕など、穏やかじゃない感情の波だ。

 

「マチュ、これって……」

 

「何かトラブルかも」

 

 同じものを感じ取ったのだろう、アンちゃんの声にあたしは頷く。

 

 もし騒動が起きているのなら見過ごすわけにはいかない。

 

「あれ、カイさん」

 

「そのお姉さん、ベルファストの基地にいた」

 

「げっ!?」

 

 そうして向かった先にいたのは、あたしの心配をしてくれた物売りのお姉さんを自分の部屋に入れようとしているカイさんだった。

 




アムロとの対戦した人達の置きバズ体験談

ラル「あそこまで見事に虚を突かれたのは初めてだ。実戦で使われたら、何が起こったかもわからん内に死んでいたかもな」

コズン「気が付いたら撃墜されてた。あの状況でバズーカに気を取られるなってのは無茶すぎるだろ」

クランプ「ゲリラしてる時に味わったアンブッシュやブービートラップよりひでぇ」

シャア「アムロ君の敵意を感じ取ることはできたのだが、反応が間に合わなかった。私もまだまだ甘いな」

カイ「ガンダムに背後を取られて、振り返ったらバズーカに背中を撃ち抜かれた。二択ってこういうことかよ!?」

ハヤト「機雷に巻き込まれて撃墜された。あのダミーの使い方は反則だろ」

リュウ「何が何だか分からん内にやられた。アムロも強くなったもんだ」

セイラ「アックスハンマーを振り回して作った結界で二発まではビームを打ち払ったのだけど、三発目の狙撃で撃墜されてしまったわ。私もまだまだ修行が足りないわね」

マチュ「だからアレを躱すのは運ゲーなんだって! あの人の心無いんか戦法を100%抜けられるもんか!!」

やった側の感想

アムロ「マチュは二回に一回は抜けてくるから、うまく倒せてよかった。シャアさんは流石です。もうちょっと反応が早かったら相打ちになってたかも。ラルさんも二度めは通じるかどうか。セイラさんは……なんでアレでビームが弾けるんだろう? 行動が斜め上すぎて、マチュとは別の意味でヤバい」
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