少し遅れましたが新年一発目はネタ短編でございます。
けっして話が思い浮かばなかったなどと……いえいえそんな事がございません。
ええ、今年の目標は早い目に一年戦争に終止符を打つこと。
それを目指して頑張る所存でございます
マ・クベから送られてきた連邦の赤いモビルスーツを駆るパイロットの情報。
それはジオンの赤い彗星ことシャア・アズナブルに多大な衝撃を与えた。
今まで何度も自分に煮え湯を飲ませてきた敵の片割れが、安寧を祈っていた妹達だというのだから、それも当然だ。
酒場で嘔吐を繰り返しながら、シャアは鈍った頭を必死に動かそうとしていた。
(どうすればいい!? マ・クベがこれを送ってきたという事は、キシリアも知っていることになる。そしてキシリアは諜報と工作活動の元締め! 奴の持つキシリア機関なら二人がジオン・ダイクンの忘れ形見という事を掴む事は確実!!)
ザビ家があの子達の出自を知れば全力で殺しに来るだろう。
ガルマの仇という事ももちろんだが、父から権力の座を簒奪した奴等にとって連邦に与するジオンの遺児など最大級の邪魔者でしかないからだ。
そしてジオン軍や国内で息をひそめるダイクン派も、二人の事を知れば打倒ザビ家の旗頭としてあの子たちを担ぎ上げるのは想像に難くない。
このままでは妹二人が平穏に暮らすなど不可能だ。
絶望によってさらに口の中に込み上げてきた胃の内容物を便器にブチまけるシャア。
『はっ! なんてぇザマだい』
酔いと嘔吐、そして精神的ショックで朦朧とする意識の中、彼は一つの影を見た。
「ち…父上……ッ!?」
それは今は亡き己の父、ジオン・ズム・ダイクンだった。
『これが我が息子だというんだから、あきれてモノが言えんわ』
打ちひしがれるシャアの有様を鼻で笑う幻影のジオン。
その姿は政治家と思えないほどに身体が鍛え上げられていたり、上半身裸でその筋肉美を惜しみなく晒していたり、あまつさえ髭に覆われた顎がほんのりケツアゴだったりと生前とは似ても似つかぬものだ。
しかしアルコールと絶望に目が眩んでいたシャアは、それに気づくことができなかった。
『ダイクン家の男ってのはな、坊や』
そんな唖然としているシャアの眼前に顔を近づけてジオンは語る。
『この地上でイチバ~~~~ンすげえリーダーの事を言うんだぜ』
「~~~~~ッ!?」
言い切ったと満足げな表情を浮かべたジオンは、唖然とするシャアを置いて空へと浮かんでいく。
『ファイッ!!』
そして最後にファイティングポーズと共に激励の言葉を残して彼は消えた。
その幻影に後押しされたかのように、嘔吐をやめたシャアはトイレから出た。
そして自室へ帰ると残った酒精を洗い流そうとシャワーを浴びる。
「もはや私一人では二人を救う事は出来ん。だが父上が言うように、私に人を導く才があるというのなら……!!」
熱い人工の雨に打たれながら、シャアは絞り出すように言葉を漏らす。
現状、警戒すべき敵はジオンだけではない。
どういう成り行きかは知らないが民間人だった妹達、とりわけ小学生の末っ子を戦場に出す地球連邦もまたシャアにとって唾棄すべき悪だ。
連邦から二人を奪還し、ジオンの魔の手から護るなど個人の力だけで出来ることではない。
サイド3から逃げた時のように名を捨てて身分を偽って隠棲したとしても、今度は追手の目を欺けないだろう。
となれば、必要となるのは個ではなく組織の力。
妹達を守り、父の無念を晴らす。
そんな都合のいい策は一つしかない。
その後、シャアはドズルから与えれた謹慎中という免罪符を利用して準備を始めた。
彼の求める人材は地球戦線の前線に配備されている。
なのである時は身分を偽り、またある時はキャルフォルニアベースに協力者が用意した影武者を置いてシャアは地球の方々を渡り歩いた。
そうしてジオン外人部隊やオーストラリアを根城にする荒野の迅雷、潜水艦で大海原を駆けるナーガⅢ隊など、多くの者の手を借りることに成功したのだ。
それから約二ヵ月が過ぎたころ、シャアの姿は月面都市グラナダにあった。
「ガルマを守れずに干されていたお前を拾い上げた私に牙をむくというのか、シャアッ!?」
「それも私欲あってのことだろう、キシリア。私にニュータイプ部隊を預けたのも、ドズルに取り上げられたキマイラ隊の代わりとするため。こちらをいいように使おうとしたのだ、利用されても文句は言えまい」
グラナダ行政府長室、その中で部下を背後に引き連れたシャアは部屋の長であるキシリア・ザビに銃口を突きつけながらこう言った。
ギレンから謹慎を命じられ、キマイラ隊もソロモンへ取られたキシリアは北米のキャルフォルニアで閑職に回されていたシャアに目を付けた。
正史というべきモノでは早期にシャアを拾い上げてマッドアングラー隊を与えて地上で功績を上げていたのだが、こちらでは権限を縮小されていた事もありキシリアがシャアに声を掛けた時には地球戦線は連邦の勝ちは揺るがない状態だった。
その為、キシリアはシャアに地上で作り出した人脈から有能な人材を選出して共にグラナダへ脱出するように命令を出した。
目的は先ほどシャアが口にしたように、キマイラ隊に代わる新たな切り札とするためだ。
キシリアが見込んだ通り、シャアはたしかな実績を打ち立てた。
隊長に任命されたニュータイプ部隊を十全に運用し、所用でサイド6へ向かった際はララァ・スンという類まれなるニュータイプの素養を持つ少女を引き抜いてみせた。
さらには自身もニュータイプの片鱗を見せ、地上から連れてきた部下達も有能。
まさに非の打ち所の無い活躍だ。
これにはキシリアも大変満足しており、キマイラ隊を上回る切り札を手に入れたと上機嫌だった。
そんなキシリアの誤算は一つ。
自身の諜報部隊であるキシリア機関をギレンに取り上げられた為、シャアの正体を知る機会がなかったことだ。
正史ではガルマ戦死時の通信で彼を謀殺した証拠を闇夜のフェンリル隊に掴まれた事でキシリアはシャアへ疑念を持ち、それが切っ掛けで彼がキャスバル・レム・ダイクンであるという事実へたどり着く。
しかし、この世界ではシャアはガルマを謀殺していない。
加えてホワイトベースにいるダイクンの遺児とシャアの関係性も掴んでおらず、さらにはキシリア機関を奪われた謹慎中の彼女には情報を得る手がなかった。
それでシャアの叛意に気づけという方が無茶だろう。
そうして積み重なった不運の結果がこれだ。
「頼りの綱だったグラナダ防衛隊は私の部下が抑えた。マレットとかいう声のデカい無法者もニュータイプ部隊によって始末している。助けを期待するだけ無駄だ」
「……シャア・アズナブル。ザビ家に謀反を起こして何を望む!?」
「お前が知る必要はない」
キシリアが張った精一杯の虚勢にシャアは容赦なく引き金を引いた。
正確に眉間を撃ち抜かれて息絶えた部屋の主。
シャアは床に転がった屍を気にすることなく、府長席へ腰を下ろした。
「少佐、計画は万事滞りなく完了したそうです」
「了解した。──では、この世界に対する逆襲を始めよう」
ララァの報告を受けたシャアは仮面に隠れていない口元に不敵な笑みを浮かべるのだった。
◆
どうも、ジャブローでのゴタゴタを終えて宇宙へ上がったマチュです。
地球での戦いも連邦が勝利を目前にしていて、ようやくこの戦争も終わりが見えてきた。
一時はどうなることかと不安になっていたあたし達の未来も、ゴップのおっちゃんの助けもあっていい感じに絵図が書けるようになった。
民間軍事会社という事で戦争から完全に足を洗う事はできなさそうだけど、ラルのおっちゃん達の事を考えると仕方がない。
そんな中、気がかりだったのは北米での戦い以来兄ちゃんが一度も姿を見せなかったことだ。
カイさんはガルマを守れなかった罰で干されているんじゃないかって言ってたけど、ここまで出てこないとその意見も現実味を帯びてくる。
最悪責任を背負わされて処刑なんて事も、ザビ家に出自がバレたらゼロじゃない。
なので、次に兄ちゃんが戦場に出てきたら説得してこっちについてもらおうと考えていたのだ。
姉ちゃんも冷却期間を挟んだ事もあって、兄ちゃんへの殺意が薄れていたみたい。
なので、『戦争が終わればあの手の人手は必要ね。今まで苦労させられた分、現場担当としてこき使ってやりますか』と前向きに考えていてくれたんだよ。
けど、そんな物はあっさりと砕け散ってしまった。
『私はキャスバル・ダイクン。デギン・ザビに暗殺され、志半ばで非業の死を遂げたジオン・ダイクンの息子である』
「に…兄ちゃん……」
「…………」
ホワイトベースのブリッジでこれから先の事を話しあっていた時に突然電波ジャックで割り込んできた放送。
それを映すモニターでは、ダサい仮面と兜を取った兄ちゃんが演説を始めている。
しかもジオン・ダイクンの息子であることの暴露付きでだ。
「きゃ…キャスバル様……」
「これはいったいどういう事だ? マリー、何か聞いていないのか!?」
「知らないよ! 兄ちゃんとは音信不通だったって前に言ったじゃん!!」
これにはラルのおっちゃんも唖然とし、ブライト大尉はあたしに疑いの目を向ける始末だ。
『デギン・ザビの敷いた独裁により、ジオン公国はザビ家の私物と化した。この大戦も奴らの私利私欲から起こされたものである。そして連邦も民間人であった我が妹アルテイシア・ダイクン、そしてまだ10歳であるアルマリア・ダイクンを戦場に出している!』
あたし達全員が度胆を抜かれている中、兄ちゃんが放つ批判の矛先はジオンはもちろん連邦にも向いた。
しかもあたし達をダシにしてだ。
『おそらく連邦は妹達の出自を掴んでいるのだろう。そのうえでザビ家の目を向けさせる囮、そして反抗の為の旗頭として利用しているのだ! 我々の血筋は置いておくとしても非戦闘員、年端のいかない子供を戦場に出す蛮行が許されるわけがない!!』
兄ちゃんの指摘は事実だし言っていることだって真っ当だ。
けど、これはヤバい。
『私は亡き父の遺志を受け継いでこの戦いに終止符を打つため、そして兄として妹達を護る為に今ここに立ち上がった!』
あたしの顔から血の気が引いていくのに比例して、背後にいる姉ちゃんの気配がドンドンヤバくなっていく。
というか、掴まれている肩がミシミシ鳴って痛いんですけど!?
『我等ネオジオンはスペースノイドの自立を勝ち取るため! ザビ家独裁政権および地球連邦に対し、宣戦を布告する!!』
「新しいオトンってなにさ!?」
届かないのは百も承知だけど、思わずツッコミが出てしまう。
『我が妹達、そしてまだ見ぬ宇宙の民よ! 我が元に集え! そして自由のために共に戦おう!!』
そんな呼びかけを最後にプツリと切れる通信。
「あのアホがぁ! やってくれたなぁぁぁぁぁっ!!」
次の瞬間、姉ちゃんの怒りが爆発し、あたしはガックリと肩を落とした。
頭に浮かんだのは戦後の生活設計がガラガラと崩れていく光景だ。
反政府勢力の身内とか民間軍事会社なんて絶対無理でしょ!
ラルのおっちゃんの身分とか仕事とかどうしたらいいんだ!?
ハモンのお姉さんなんかお腹に子供がいるんだぞ!!
思わず頭を抱えそうになった時だ、兄ちゃんの演説から沈黙を守っていた通信モニターに再び光が宿った。
そこに現れたのは初めて見る軍のお偉いさん。
『ロンバート中佐、先ほどの放送は見たな?』
「え、ええ」
『ネオジオンの蜂起に対して、我々はセイラ・マス、そしてマリー・マスの保護を決定した。彼女達はシャアことキャスバル・ダイクンの身内だ。この状況では誰に狙われるか分からん。連邦軍本部で預かるので脱出用シャトルで二人を地上へ戻したまえ』
まあ、そうなるよね。
自分たちに反旗を翻した団体、そのボスの身内が手の内にいるなら確保に動くのは当然だ。
誰だってそうする、私だってそうする。
「……姉ちゃん、行こうか」
「ええ」
お偉いさんの指示通りにすべくブリッジを出ようとするあたし達。
正直嫌な予感がして仕方ないけど、ここで逃げたらホワイトベースの皆に迷惑が掛かる。
それに今回の話は兄ちゃんが原因だ。
あたし達の為に動いてくれたのはうれしいけど、やらかしの尻ぬぐいは家族の役目だろう。
「───了解しました」
『うむ。急ぎたまえよ』
プツリと通信が切れると、ブリッジには先ほどとは違うピリピリとした沈黙が流れる。
皆がロンバートのじっちゃんへ向ける視線には不審や失望など、嫌な感情がこもっているのが分かった。
「みんな、仕方ないからね。じっちゃんは何も悪くないから」
それを見かねてあたしは慌ててフォローに入ろうとした
「ブライト艦長、機関全速。星一号作戦で他の艦が上がってくる前に姿を眩ませるぞ」
「え……」
それもじっちゃんが口にした意外な指示に止まる事になった。
「中佐、それはいったい……?」
「幸い、我が艦はジオンの目を引き付ける囮として単艦行動を命じられている。逃げるなら今を措いてないと思わんかね?」
戸惑うブライト大尉にニヤリと笑って見せるじっちゃん。
「ちょ…ちょっと待って。じっちゃん、逃げるのは拙いよ。そんなことしたら、みんな犯罪者になっちゃう」
「そうですわ。私達が指示通りにジャブローへ戻ればいいだけの話です。貴方方が危険を冒す必要はありません!」
あたし達はロンバートのじっちゃんに思いとどまるよう訴えた。
気持ちはうれしいけど、こっちの為に皆がお尋ね者になるなんて御免である。
「マリーちゃん、セイラさん。これは私達の矜持の為なのだ。君達がジャブローへ行けば、間違いなくキャスバル総帥への人質にされるだろう。下手をすればマリーちゃんの腕を見込んで、実の兄と戦わされるかもしれん。今まで民間人、それも子供を散々戦場に出しておいて、都合が変わればいい様に利用する。そんな物は軍人…いや、大人のすることではない」
「僕はロンバート中佐に賛成です。マチュを好き勝手に使う奴等に協力するなんて嫌だ」
「そうだな。私も今の命令で連邦には愛想が尽きた。まったく、ジャブローのモグラ共は子供達を何だと思っているんだ!!」
覚悟を決めたロンバートのじっちゃんにアンちゃんとテムのおっちゃんが同意する。
「私も今回の命令には反対よ。仲間を売るなんて、お父様が生きていたら絶対に許さないもの。それが友人のご息女なら猶更ね」
「え?」
「マリーは憶えていないでしょうね。あなた達に地球からテキサスコロニーへ移住するように勧めたのは私の父なの」
「ミライさん、あなたはあの時の……」
驚く姉ちゃんにミライお姉さんはニコリとほほ笑む。
もしかして、前にどこかで会ったことがあるの?
だとしたらスゴい失礼なことをしてたんじゃないか、あたし。
「私もマリーちゃん達をジャブローへ帰すのは反対です。特にマリーちゃんは妙な実験に利用されそうになったし、なにより子供を見捨てるのは……」
通信士の椅子に座っていたフラウお姉さんも困った顔で皆に同意する。
え? みんなじっちゃんとおんなじ気持ちなの?
ありがたいけど、メッチャ罪悪感凄いんだけど!?
「カイさん、カイさんはあたし達が戻った方がいいよね? ほら、ミハルさん達が地球で待ってるし」
「アホ。アイツの弟と同い年の女の子を見捨てて、どんなツラしてミハルに会えってんだよ」
話を振ったあたしがバカだった。
だから、覚悟ガンギマリな目でこっちを見ないで。
「お姉さんも二人をジャブローへ送るのは反対かな。一緒に戦った仲だし、そんな子が政治利用されるのはねぇ」
「シイコお姉さんはそれでいいの?」
「ええ。こういうのを見過ごせないあたり、私もお父さんに似ちゃったのね」
そう笑うシイコお姉さんにどういう事かと聞いてみると、彼女のお父さんは出入管理局のお偉いさんだったらしい。
だけど仕事中に難民を見下して、子供を蹴り飛ばした政府のお偉いさんを殴ってクビになっちゃったんだって。
シイコお姉さんが軍に志願したのも、職を失って燃え尽きているお父さんに代わって一家の大黒柱になる為だったんだとか。
というか、それだったら猶更連邦軍を裏切っちゃダメじゃん!?
「僕たちに迷惑を掛けたくないって気持ちはわかるけど、諦めた方がいいよ」
「お前さん達を見捨てようなんて奴は、このホワイトベースにはいないからな。そうだろう、ブライト」
「ああ。正直、軍の上層部には言いたい事が山ほどある。というか、これ以上無理難題を押し付けられるなんてやってられるか!」
ハヤトさんの言葉に続いてリュウさんが話を振ると、ブライト大尉が怨嗟に満ち満ちた愚痴を吐き捨てる。
「こう言ってもらえるのも貴女方の人徳故です。彼らの意思を無駄にしてはなりません」
とどめにラルのおっちゃんに言葉を掛けられて、あたしはガックリと肩を落とした。
ああ…ああ……みんなの人生狂わせちゃった。
すっごく気が重い。
◆
こうして流浪の身になったあたし達なんだけど、ここから地球圏は加速度的に混迷を極めることになってしまった。
「今まで散々利用してきた子供を今度は政治の道具にしようなど何と破廉恥な! もはや今の連邦に地球圏を担う資格はない!!」
どこから漏れたのか、連邦政府のあたしに対する方針を知ったブレックスのおじさんが反地球連邦組織・エゥーゴを立ち上げてしまった。
『ホワイトベースの諸君! 我々は君たちの味方だ! 共に平和を勝ち取る為に力を貸してくれ!!』
「ブレックスのおっちゃん! なんでっ!?」
これに何故かカメマンやもみあげダンディ、さらにはとっとこモルモット隊などエースパイロットである『戦火の絆』ガチ勢が多く参加しており、組織の大きさに反して連邦軍は戦力的に大きく分割されることになった。
そしてエゥーゴ出現で連邦が混乱する中、この機に乗じて動いた者がいた。
「これだけ地球とそこに住む人々を傷つけられても、スペースノイドに忖度する連邦政府に母なる星を守る事は出来ない!! 我々タイタンズは地球を守るため、スペースノイドという侵略者を討ち倒す為にここに立つのだ!!」
それはレビル将軍率いるタイタンズだった。
「ああ…もう滅茶苦茶だよ……」
流れてきた決起放送を見ながらあたしは頭を抱えた。
レビル率いるタイタンズはルナツー要塞を拠点にしていて地球連邦とジオン、そしてスペースノイド達と戦うらしい。
もちろん、彼等の敵にはネオ・ジオンとエゥーゴも入っている。
この状況で全方位に喧嘩売るとか、あのお爺さん正気なのか?
しかもタイタンズは立ち上げ祝いと言わんばかりに、サイド6のコロニーを一つ攻撃して見せたのだ。
幸いにも、この襲撃はエゥーゴとサイド6が独自に結成した自警団によって大きな被害を出すことなくタイタンズを止める事が出来た。
けれど、これを切っ掛けにコロニーの各サイドが隠し持っていたМSや戦力を自警団という形で保有を宣言。
彼等は地球連邦にもジオンにも与せず、自分の身は自分で守ると宣言したのだ。
これによって地球圏は地球連邦とエゥーゴ、タイタンズにジオンとネオジオン、そしてコロニー連合が睨みあう戦国時代さながらの混迷に突入することになってしまった。
これにはホワイトベースで放送を見ていたあたし達も思わず白目をむきそうになった。
そんな混沌極まりない状況はあたしと姉ちゃんにとってもストレスを与えてくれた。
何故なら終わりそうだった戦争を、ここまでしっちゃかめっちゃかにしたのはウチの兄貴だからである。
「行こう、姉ちゃん」
「ええ」
あたしの言葉に横で頷く姉ちゃん。
その体からは今までにないほどに殺意の波動が立ち上っている。
今あたし達ホワイトベース隊はエゥーゴに協力していて、代表のブレックスのおっちゃんはコロニー連合とネオ・ジオンに協力する算段を付けていた。
その調印の為にグラナダへ来たわけだ。
係の人の案内で庁舎の最上階にある応接室を通ると、そこには例の赤いジオンの軍服を着た兄ちゃんが褐色の肌の少女を隣に置いて立っている。
「おお! アルテイシア、アルマリア。よく来てくれた! お前たちが無事で本当に良かった」
言葉と共に満面の笑みを浮かべる兄ちゃん。
その言葉を受けてあたしと姉ちゃんは同時に床を蹴った。
兄ちゃんが私達の事を案じていたことは分かっている。
ネオジオンを立ち上げたのだって、あたし達を守る為なんだろう。
それでも…それでもだ!!
たとえ意図していないとしても、ホワイトベース隊の皆の人生を狂わせて世間に混乱をまき散らしていいわけがない!!
「「だっしゃあああああああっ!!」」
「へいべっ!?」
「大佐ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
あたしのドラゴンキックと姉ちゃんの右ブローを受けて吹っ飛ぶ兄ちゃん。
その様子に褐色の女の子の悲鳴が部屋に響き渡るのだった。
『私は父ジオンの元に召されるであろう!!』(妹達の手によって)