ダイクン家の二女はアホの子   作:アキ山

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ヤバい、Gジェネエターナルが面白すぎる。

ソシャゲでしっかりGジェネが再現できるとは、本当にたまげた。

私が愛するサイコMKⅢを強くする為にもっと金を稼がねば!

目指せ、100万キャピタル!!




マチュ、悪の研究所に殴り込む

 グレイヴというコードネームで正体を隠し、連邦軍内を暗躍する男がいる。

 

 彼は主戦派であるレビル派閥に属する高官で、あらゆるモノを使ってのし上がろうとする上昇志向の強い野心家だ。

 

 そんなグレイヴが持つ手駒は罪状の抹消を餌に手懐けた、戦争犯罪で投獄もしくは処刑される予定の兵士達である。

 

 彼の名乗る墓場(グレイヴ)というコードネームは正規兵としては終わっている懲罰兵(レイス)を支配するという意味合いを持つ。

 

 グレイヴは己の手駒となったレイス達を使い、非合法な汚れ仕事を行う事で地位を上げてきた。

 

 乱戦のドサクサを利用しての反レビル派将官の殺害に、物資の横流しなどの利敵行為を行う士官の粛清。

 

 他にも自分にとって不要となる者や邪魔になる輩を排除する事もザラだ。

 

 その多くを担ってきたのは、第20機械化混成部隊という隠れ蓑を持つスペシャリスト集団、通称『スレイブ・レイス』だった。

 

 しかし、グレイヴの手駒はそれだけではない。

 

 さすがにスレイブ・レイスのようなMS小隊を安易に作ることはできないが、犯罪軍人に偽りの身分を与えて既存の部隊へ潜り込ませることはできる。

 

 彼等は戦傷があるなどの理由で顔を隠して、普段は配属された部隊での業務に従事する。

 

 そして一度グレイヴから指示があれば、部隊を抜け出して彼の部下として動くのだ。

 

 ジャブローの物資搬入部隊に配属されたマーヴィン・フォレストという小太りの兵士も、そんなグレイヴに飼われた懲罰兵(レイス)の一人だった。

 

「すみません、ちょっと妹の担当医から呼び出しがありまして」

 

「お前さんも大変だな……。わかった、上にはこっちから行っとくから行ってこい」

 

 グレイヴの指示を受けたマーヴィンは、予め決められている言い訳で仕事から抜け出す。

 

 そうして自室で作業用のツナギから軍服と歩兵用装備に着替えると、特殊部隊などが使用する顔を完全に隠すマスクを身に着ける。

 

 これが私兵として任務を受ける際の装備だ。

 

 グレイヴは懲罰兵(レイス)達を誰一人信用していない。

 

 それ故に結託される事の無いように、スレイブ・レイスのように任務上必要不可欠な場合を除いて、私兵達に顔や名前など個人情報の一切を共有する事を許さないのだ。

 

「今回の任務はパイロット適性のあるメスガキを回収する事か。ずいぶんと上玉みたいだし、つまみ食いできればいいんだけどなぁ」

 

 情報端末に送られてきたターゲットの顔写真を見て、仮面の奥でほくそ笑むマーヴィン。

 

 アイドルや子役俳優としても十分通用する愛らしい容姿に、小柄な体も快活そうなショートヘアーも彼の好みだ。

 

 そんな風に妄想にふけっていた彼は気付かなかった。

 

 自分が進む人気の無い通路のわき道から、襲撃者の魔手が伸びてきていたことに。

 

「げぴっ!?」 

 

 マーヴィンの首に鍛え上げた腕を巻きつけたラルは、裸締めの要領で一気に相手の首をへし折った。

 

 弛緩した男の手から零れ落ちた携帯端末、そこに映っているのは例のジオンに流出した難民申請時のアルマリアの写真だ。

 

「───下種め」

 

 それを見たラルの眼は侮蔑と怒りでギラリと光る。

 

 資料によれば、マーヴィンはジオン軍から奪還した領地にある村に『ジオン兵を匿っている』と難癖をつけて襲撃を掛け、そこで略奪・強姦を行った部隊の一人とされていた。

 

 そして犯行の際にこの男が毒牙に掛けたのは10歳から13歳の女子ばかりだったらしい。

 

 そんなケダモノが護るべき少女に劣情を向けていると分かれば、命を絶つ腕にも力がこもるというモノだ。

 

 ラルは人のいない通路の奥へマーヴィンの遺体を引き摺り込むと、身包みを剥いでグレイヴの私兵へと変装する。

 

 マーヴィンとラルは体型的に似ており、歩兵用の兜をかぶり顔もマスクで隠しているので外見上から入れ替わりを見破られる可能性は低い。

 

 グレイヴの私兵間に交流が無い事を思えば猶更だ。

 

 マーヴィンの携帯端末に記された集合場所へ向かうと、すでに二人の兵士が到着していた。

 

 ラルが目立たぬようにハンドサインを送ると残りの二人も無言で応じる。

 

 コズンとクランプもラルと同じくスレイブと入れ替わることに成功したのを確認すると、ラルは腕を組んで無言で他のメンバーが来るのを待つ。

 

 こういった任務では、他者に怪しまれることが最大の禁忌だ。

 

 故に目的を果たすまでは目立たず言われた事を忠実に熟し、敵の目を欺き続ける必要がある。

 

(ゴップの使いから齎された情報では、アルマリア様を確保する為にグレイヴが動かす私兵は6名。その内案内役の一名を残して、我々とゴップの手勢が入れ替わる事になっているが……)

 

 ラルが脳内で囮捜査の詳細を反芻していると、残りの二人もやってきた。

 

「お疲れ、お三方。上手くやってくれて、なによりだ」

 

 ハンドサインで入れ替わりを確認すると、兵士の一人はお気楽な賛辞を口にする。

 

 この男はゴップが手配した手勢の一人で、フィクサーというコードネームを名乗っている。

 

 彼はグレイヴの下で働いていた事があり、MS懲罰部隊『スレイブ・レイス』の隊長をしていたという。 

 

「フィクサー、どこに目があるか分からんのだ。迂闊な真似は控えてもらいたいな」

 

「大丈夫だって。どんな奴等でも雑談の一つくらいはするだろう、なぁ?」

 

「どうだかな。グレイヴの事だから、『一切喋んな』なんて命令を下してもおかしくないぜ」

 

 フィクサーの言葉に彼の後ろにいるリッパーというコードネームを名乗る青年が肩をすくめる。

 

 ラルが釘を刺すも、フィクサーの態度は気の抜けた昼行燈のままだ。

 

(相変わらず偽装が上手い。あの外面に騙されて、いったいどれだけの人間が破滅したのやら)

 

 しかしラルにとっては、その無能を装う仮面こそが恐ろしい。

 

 事前に顔を合わせた時、ラルはやる気のない無能な男という偽装に隠したフィクサーの本性を垣間見た。

 

『グレイヴの野郎は俺達を便利に使い倒した挙句、邪魔になったら始末する腹積もりだったのさ。もちろん、そんな真似は許さねえ。俺達を裏切ったケジメは付けさせてもらう。───必ずな』 

 

 そう告げたフィクサーの眼は、如何なる過酷な戦場からでも生還する信念と力を持った歴戦の強者そのものだったのだ。

 

「おっと、ガイドさんも到着したみたいだな」

 

 フィクサーがこちらへ向かってくる同じ格好をした兵士に気付いた。

 

 その言葉に応じて、ラルは部下二人に気を引き締めるようにハンドサインを出す。

 

「これより目標αの確保を行う。各自、万が一にも取り逃がす事のないよう注意せよ」 

 

 それだけ告げると、案内役は返事など期待していないと言わんばかりに歩き出す。

 

(年端も行かぬ少女が囮を演じるのだ。それを護れずして、何が大人か!)

 

 内心で自分に喝を入れて、ラルは案内役に付いていく。

 

 特に自分はこれから親になるのだ。

 

 生まれてくる子供に恥じぬ為にも、この任務は果たさねばならない。

 

 

 

 

 

「はい、マリーちゃん。オレンジジュース」

 

「ありがとう」

 

 育児センターに連れて来られて2時間が経った。

 

 今はここでコーリンという女性育児官と一緒に過ごしている。

 

「ホワイトベースからの連絡が無いわね。カツちゃん達は、まだ帰ってないのかしら」

 

「みんな、ジャブローを珍しがってたから」

 

 通信機を見ながらカツ達の事を心配するコーリンさんに少し罪悪感が沸く。

 

 もとより3人をここに預けるつもりはないので、ホワイトベースから連絡など来ないのだ。

 

 そんな事を考えながらオレンジジュースに口を付けていると、にわかに育児センターの入り口が騒がしくなった。

 

「待ってください! 急にそんな……」

 

「彼女は出自が特殊である事は事前に報告が言っている筈だ。だからこそ、ここで預かるのは危険なのだよ」

 

 受付をしていた女性士官を押しのけて入ってきたのは、顔をマスクで隠した連邦軍の兵士達だ。

 

「貴方達はいったい……」

 

「レビル将軍の指示により、マリー・マス嬢はこちらで保護する」

 

「え……」 

 

 先頭の兵士が突き出した命令書、それを受け取って確認したコーリン育児官は戸惑いながら言葉を返す。

 

「あの、彼女のご家族にはここで保護すると言っております。預け先が変わるのなら一報したいのですが」

 

「不要だ。彼女の家族には、こちらから伝える事になっている」

 

 そんな育児官の意見を切り捨てると、兵士の一人が私の肩に手を置いた。

 

 瞬間、脳裏に閃くモノがある。

 

 この人、ラルのおっちゃんだ!

 

 事前に聞いていたけど、本当に入れ替わっちゃったんだ。

 

「では行こうか」

 

 命令書をコーリン育児官に渡した兵士があたしに声を掛けると、ラルのおっちゃんが促すように軽く背中を押す。

 

「コーリンさん、お世話になりました! ありがとう!!」

 

「マリーちゃん、あの…気を付けて」

 

 あたしは最後にコーリン育児官に感謝の意を伝える。

 

 短い間だけど、彼女がいい人だってしっかり分かった。

 

 騙していた分も含めて、頭を下げるのは当然だ。

 

「それで、あたしを何処へ連れていくの?」 

 

「ザビ家の刺客から君を保護できる場所だよ、アルマリア・リム・ダイクン殿下」

 

 こちらへ振り返ることなく、先頭を行く兵士は答える。

 

 兄ちゃんやラルのおっちゃん以外からアルマリア呼びされるのは慣れない。

 

 殿下なんて猶更だ。

 

 そうしてトラック型のエレカに乗って連れてこられたのは、ナンバーが振られていない地下施設の端っこに建てられた格納庫だった。

 

 ゴップのおっちゃんから事前に聞いた話だと、あたし達の後をグレイヴの手勢に気付かれないように憲兵隊が追跡する算段になっているらしい。

 

 彼等の目印はゴップのおっちゃんが送ってきた潜入班とラルのおっちゃんが忍ばせた発信機。

 

 もしもの時の予備として、2つ用意したとか言ってたっけ。

 

 でもって、違法研究や強化兵士の証拠を掴んだ時点で二人のどちらかが発信機で合図を送れば、憲兵隊が雪崩れ込んでくるという寸法だ。

 

 研究所を押さえる時に心配になるのは相手がMSを出してくることだけど、その辺はアンちゃんと兄ちゃんにお任せである。

 

 それに、ここはアレックスがある27番と離れていないから、車さえ奪うことが出来ればあたしも手伝えるしね。

 

「ここだ。降りろ」

 

 運転していた入れ替わっていない兵士の指示で、あたしは助手席の扉を開ける。

 

 ラルのおっちゃん達は荷台に乗っているから、正直なにもなくてホッとした。

 

 格納庫はアレックスが収められているのとよく似ている。

 

 ここに例の実験機があるんだろう。

 

「あたしを保護するんじゃないの? こんな所に連れてきてどうするのさ」

 

「その保護を受ける為にやってもらいたい事があるのだ」

 

「なにそれ。保護って条件付きなの?」

 

「当たり前だ。昔から言うだろう、働かざる者食うべからずとな」

 

 エレカを運転していた兵士は、眉根を寄せるあたしを背に格納庫の入り口扉の横にあるカードリーダーにカードを通す。

 

 そうしてロックが外れた扉を潜ると、格納庫の中ではメンテナンスベッドに乗った2機のMSと、その下で動き回る整備班の姿が目に入った。

 

「おお! やってきたか 新しいサンプルが!!」 

 

 その中にいた博士風の格好をした男の人は、私達に気が付くと喜色満面でこちらへ駆けてくる。

 

 というか、いきなりサンプル呼ばわりって……少しは隠す努力をしたらどうなの?

 

「いやはや、随分と小さいな」

 

「でしょう。これで本当に使い物になるんですかね?」

 

「クロエと違って実戦を経験しているらしいし何とかなるだろう。ダメなら強化すればいい」

 

 案内役の兵士と本人を目の前に好き勝手言っている白衣のオッサン。

 

 あ、わかった。

 

 コイツ、あたしの事を人間だって思ってないな。

 

 だから、こっちがどう思うかなんて気にしないで好き放題言えるんだ。

 

(この野郎、お嬢を何だと思っていやがる!) 

 

(抑えろ、コズン。暴れるのはもう少し先だ)

 

 微かに聞こえた歯ぎしりの音に、後ろでラルのおっちゃんが視線を使ってコズンのおっちゃんを制しているのが分かった。

 

 こうやって他の人が怒ってくれると、こっちは冷静になれるなぁ。

 

「さて、面倒だが自己紹介をしておこう。私の事はドクと呼んでくれればいい」

 

「……マリー・マス。それで保護の代わりに、あたしがやる事って何なの?」 

 

 そう問いかけると奴はメンテナンスベッドに収められたMSを指さした、

  

「君にはあの機体のテストパイロットをしてもらう」

 

「あれは?」

 

「我々が生み出した戦闘用OS『HADES』を搭載した最強の機体! ペイルライダーと、その先行量産機ペイルライダー・キャバルリーだ!!」

 

 ドクと名乗ったオッサンは自慢げに紹介しているけど、あたし的にはどうにも魅力を感じない。

 

 あれ、多分アレックスより性能下だぞ。

 

 それに妙にキナ臭い雰囲気を感じるし。

 

 ゴップのおっちゃんが言っていたヤバい試作機ってアイツ等の事で間違いなさそうだ。

 

「では、君には早速働いてもらおうか。ニュータイプと言われる実力が『HADES』とどう噛み合うか───」

 

 ウッキウキでドクが話していると、彼に一人の女の子が近づいてきた

 

「クロエ、ダメよ! ドクは今大切な話をしているの!」

 

 長い金髪をおさげにして首の横から垂らしたパイロットスーツ姿の十五歳くらいの可愛い女の子は、ドクの所へ来ると彼に縋り付く。

 

「私は…もういらないの? 用済みなの?」

 

「何を言っている、クロエ少尉?」

 

「だって、新しいペイルライダーのパイロットが来るって……」

 

「馬鹿を言うな。お前の強化に、どれだけの金と手間が掛かったと思っている。薬剤だけで小さな家が建つほどだぞ」

 

 そう言いながらドクは白衣を掴むクロエという女の子の手を振り払う。

 

 その拍子にへたり込んだクロエに、奴はイヤな笑みでこう言った。

 

「心配しなくてもお前はまだまだ使ってやるさ。完全に壊れるまでな」

 

 それは胸が悪くなる光景だった。

 

 何がダメかと言えば、こんな酷い事を言われた張本人であるクロエが「…よかった」と心底ホッとしていることだ。

 

 彼女から伝わってくるのは、自分にはペイルライダーのパイロットしか価値がない。

 

 それが出来なくなったら、生きていても仕方がないというネガティブまっしぐらな想いである。

 

 それに何も思い出せない、自分が消えるという恐怖も流れてきた。

 

 もし強化の代償に彼女が記憶を失っているのなら、早急に保護してもらわないといけないだろう。

 

 クロエと呼ばれた女の子とドクのやり取りに不快感を感じているのは、あたしだけじゃないようだ

 

 ラルのおっちゃんや入れ替わった兵士さんが、背中越しでも発信機を操作するのが分かった。

  

「妙な邪魔が入ってしまったな。気を乗り直してペイルライダーまで案内しよう」

 

 ドクが嫌な笑みであたしに手を差し伸べた瞬間、耳をつんざく爆発音と共に入り口のドアが吹っ飛んだ。

 

「な…なんだっ!?」

 

 驚愕するドクを他所に、粉塵をかき分けてドカドカと軍靴を鳴らしながら多くの人間が格納庫へ乗り込んでくる。

 

「全員動くな! 非人道的な機動兵器の違法研究ならびに、戦災孤児への虐待及び人体改造の容疑で逮捕する!!」

 

 小銃を構えてそう警告を発したのは、フル武装の憲兵隊と特殊部隊だ。

 

「憲兵だと!? 何故ここの事が!」  

 

 ドクの焦る声に、むこうの整備班の一人が腰のホルスターから拳銃を抜くのが見えた。

 

 けれど銃声と同時に大きな手があたしの眼を覆って、どうなったのかが見えなくなってしまう。

 

「木馬へ戻りましょう、アルマリア様」

 

 耳元で囁かれるのは聞き慣れた野太い声。

 

 どうやら、あたしを目隠ししたのはラルのおっちゃんだったらしい。

 

「いいの?」

 

「違法研究所の摘発は成功しました。あとは憲兵たちの仕事です」

 

 たしかに囮はやり遂げたし、あたしに出来る事は無いか。

 

「分かった。妙な事になる前に───」 

 

 ラルのおっちゃんの言葉に頷こうとした、その時だった。

 

 突然爆音と共に地下施設が大きく揺れたのだ。

 

「うわぁっ!?」

 

「な…なんだ!?」

 

『ジャブロー各員に告ぐ。現在、当基地にジオンの大規模部隊が侵攻中。各員は直ちに迎撃態勢を取れ! 繰り返す。各員は直ちに迎撃態勢を取れ!』

 

「ジオンの大規模襲撃だと!?」

 

「今までは散発的なモノしかなかったのに!」

 

 憲兵や特殊部隊たちが浮足立つけど、違法施設のいる奴等はそうじゃなかった。

 

「俺は死刑をチャラにする為にグレイヴと契約したんだ! こんなところで捕まってたまるかよ!」

 

「ぐわぁっ!?」

 

 整備班の一人が放った弾丸を合図に、奴らは次々にこちらへ銃火を放ってきたのだ。

 

「チッ! コズン!!」

 

「了解!」

 

「リッパ―、スモークだ! こちらが陣地を構築する時間を稼げ!!」

 

「OK、フィクサー!」

 

 コズンのおっちゃんとリッパ―と呼ばれた兵士が缶のようなものを転がすのは同時。

 

 それは奴等の手前で黒い煙を吐き出すと、すぐにその視界を塞いだ。

 

「くそっ! クロエ少尉! ペイルライダーを起動させろ!! 憲兵共を皆殺しにするんだ!!」

 

「はい!」

 

 煙で相手の銃撃が弱まった隙を見て、憲兵と特殊部隊の人達は遮蔽物の後ろへ隠れた。

 

 あたしもラルのおっちゃんに連れられて、部品が入っているであろうコンテナの影に潜む。

 

「拙いな。この状況でMSを出されては……」

 

「兄ちゃんやアンちゃんは? こういう時の為にスタンバってるんでしょ」

 

「ジオンが襲撃に来てますからね。優先順位を考えたら招かれざる客の応対に駆り出されるでしょう」

 

 ラルのおっちゃんの呟きに問いを投げれば、他の二人と共にマスクを外したクランプのおっちゃんが答えを返してくれる。

 

 そっか、上からしてみれば身内の取り締まりよりも敵の迎撃を優先するよね。

 

 とはいえ、この状況でMSが暴れたら大惨事になるのは火を見るより明らか。

 

 しかも下手人は妙なシステムを乗せたキナ臭い機体である。

 

「何とかしないと……」

 

 スモークが徐々に晴れ始める中、周囲に視線を走らせたあたしはあるモノに目を付けた。

 

「ラルのおっちゃん、アレを奪うよ」

 

 あたしが指さしたのは、こちら側のメンテナンスベッドに収まっているペイルライダーって名前の機体、その同型機だ。

 

 たしか先行量産機でキャバルリーとか言ってたっけ。

 

「危険です! あれがいわく付きの機体である事はご存じでしょう!」

 

「分かってる。でも敵のMSを押さえないと、憲兵さんもあたし達も皆死んじゃう。それに逃げ出すにもMS相手だと難しいでしょ」

 

「……わかりました」

 

 異を唱えるラルのおっちゃんの眼を見て説得すると、苦い表情を浮かべながら折れてくれた。

 

「ありがとう」

 

「ですが、ワシも共に乗らせてもらいますそ! この身をクッション代わりにすれば、妙なシステムが起動しても少しはマシでしょうからな」

 

 ……なんかトンデモない事を言いだしたぞ、このおっちゃん。

 

「あのねえ。おっちゃん、自分がもうすぐお父さんになるって分かってる?」

 

「だからこそです。アルマリア様一人を死地に向かわせては、生まれてくる子供に顔向けが出来ませんからな」

 

 くっそー、映画に出てくるイケおじみたいな渋い笑みを浮かべやがって!

 

 こんなこと言われたら断れないじゃないか!

  

「わかったよ! 居眠りできるくらい安全運転してやるんだから!」

 

「期待しておりますよ。クランプ、コズン! 聞いていたな!」

 

「やる事は分かってますよ、大尉」

 

「MSをブン取るまでの援護は任せて下さい!」

 

 どう考えてもヤバい状況の中なのに、不敵な笑みでラルのおっちゃんの無茶振りに応える二人。

 

「もう……あたしの周りはどうして、こう格好いいおっちゃんばっかりなんだろ」

 

「その年で男の渋さに気付くとは見る目がありますよ、お嬢」

 

「これは失望されない為にも気合を入れねえとな!」

 

 そう言うと二人はコンテナの影から自動小銃の銃口を構えると、こちらへ弾丸を撃ちまくっているグレイヴの整備班へ反撃を開始する。

 

「アルマリア様、カウント3で陰から飛び出ます」

 

「OK」

 

 ラルのおっちゃんに頷くと、あたしはスタートダッシュを切れるように両足に力を籠める。

 

「3、2、1───Go!」

 

 そしてラルのおっちゃんの声に思い切りコンクリートの床を蹴る。

 

 銃弾が飛び交う中を走るのはマジで肝が冷える。

 

 耳元のすぐ近くをピュンという風切り音が通り過ぎ、足元では弾丸でえぐられて床の破片が飛び散る。

 

 それでもあたしは必死になって足を動かす。

 

 走るのを止めたら死ぬのが手に取るように分かったからだ。

 

「アルマリア様! 前だけ見て走りなさい! 周りに気を取られてはなりません!!」

 

 あたしのすぐ後ろを走りながら、自動小銃でグレイヴの手下に威嚇射撃をするラルのおっちゃん。

 

 その弾が相手を打ち倒しているのだろう、銃声がする度に絶望や悲嘆の思念が頭をかすめる。

 

 もっとも相手は犯罪者。

 

 思考というか未練がロクでもないモノばかりなので憐憫は欠片も感じないのは救いかな。

 

 そうして何とかあたし達は無事にMSが収められたメンテナンスベッドに辿り着いた。

 

「ラルのおっちゃん、乗って!」

 

「ええ!」

 

 垂れ下がっていた昇降用足場にしがみ付き、一気にコックピットへ滑り込む。

 

「失礼しますぞ、アルマリア様」

 

 先にラルのおっちゃんがシートに座って、大きく開けた脚の間にあたしが収まる。

 

 サブシートが出来る前に姉ちゃんとガンキャノンに乗った時と同じ形だ。

 

「おっちゃん、怪我とかない?」

 

「なんの。あの程度の銃撃戦で不覚を取るほど耄碌はしていませんとも」

 

 振り返って問いかけると、ラルのおっちゃんは不敵に笑う。

 

 うん、安心した。

 

 おっちゃんが怪我をしたら、ハモンお姉さんに顔向けできないもんね。

 

 機体のシステムを立ち上げると、モニターには向こうのペイルライダーが起動しているのが見えた。

 

「拙いですな、向こうの方が早いか」

 

「こっちも終わった。出すよ!」

 

 メンテナンスベッドから機体を離れさせると、あたしは憲兵隊やクランプのおっちゃん達に頭のバルカン砲を撃とうとしていたペイルライダーに割って入る。

 

「人間相手にMSで攻撃すんな!!」

 

 そして勢いのままに放ったのは腹への足刀蹴りだ。

 

『くぅっ……!?』

 

 衝撃と共に後ろへ吹っ飛ぶペイルライダー。

 

「武器は…頭のバルカンだけ!? ビームサーベルも外されてるじゃん!」 

 

『H・A・D・E・S…』

 

 機材を巻き込みながら足を踏ん張って転倒を避けたペイルライダー。

 

 同じ連邦の機体だからだろう、機械音声みたいな平坦な女の子の声が聞こえると相手の機体は雰囲気を変える。 

 

 バイザーに隠れた眼は赤く光り、胴体や足の排気口からも毒々しい赤交じりの粒子が風に紛れて噴き出している。

 

「ぬぅ……! 威圧感が増した!」

 

「例のシステムを使ったみたいだね」

 

 状況的にはかなりヤバいけど、武器が外されているのは向こうも同じ!

 

 まともな兵隊さん達を護る為にも、あたしのジークンドーでイカレたシステムをブッ倒す!

 

 




【一年戦争時のとある兄妹の会話】


マチュ「兄ちゃん、またシミュレーターに行くの?」

シャア「ああ。強敵が私を待っているのでな」

マチュ「兄ちゃんもすっかりハマったねぇ。先達としては嬉しい限りだ」

シャア「ふっ、うかうかしていると王座を奪ってしまうぞ。……ん?」

マチュ「どしたの?」

シャア「なにか期間限定のイベントがやっているのだが、なんだこれは?」

マチュ「どれどれ? 【真の産廃は俺一人でいい】レビルガンダム縛りトーナメント【こんな機体で戦えるのかよ!?】。 ……ええ」

シャア「なにやら不穏な文字が躍っているな」

マチュ「なんでこのクソ機体のデータがシミュレーターに反映されてるのさ?」

シャア「知っているのか?」

マチュ「連邦軍はあたし用にって送ってきた機体。ただあまりに低能過ぎて、テムのおっちゃんが元のガンダムに戻したんだ」

シャア「低能とは?」

マチュ「対戦するみたいだから、見てれば分かるよ」

シャア「…………まっすぐ進めていないようだが?」

マチュ「右手にくっついたパイルバンカーが重すぎるんだよ」

シャア「何故左のガトリングを棄てるのだ?」

マチュ「ハンマーを使うと誤射防止のロックが掛かって撃てないから」

シャア「右腕を破壊されてからが本番か。業が深いな」

マチュ「右腕がなかったら一応まともに動けるからね。真っ直ぐ進めるのが何よりデカいし」

シャア「信用できるのは頭部バルカン砲だけとは……。あのガンダムをどうやったら、ここまでガラクタにできるのだ?」

マチュ「それ、あたしが聞きたい」

シャア「6試合目にして初めてパイルバンカーが炸裂したな」

マチュ「偶然後ろに回り込めたのが功を奏したね。というか、決まり手『アナル・ズブ』って……」

シャア「内股で前のめりに倒れる姿は、連邦のフラグシップ機とは思えんな」



シャア「全試合を見たが、産廃という言葉すら生ぬるい代物だった」

マチュ「アレが実機で存在したという事実が一番シャレになってないよね」

シャア「連邦はあのゴミにお前を乗せようとしていたのか」

マチュ「うん。試乗した時に思ったもん、これで戦場に出たら死ぬって」

シャア「やはり連邦は信用ならんな。アルマリア、気を抜くんじゃないぞ」

マチュ「ありがと。ところで兄ちゃん、あたし達もレビルガンダムで勝負してみようか?」

シャア「冗談ではない!」
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