ダイクン家の二女はアホの子   作:アキ山

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忙しい中、『機動戦士ガンダム GQuuuuuuX』を見て、キラキラに脳を焼かれたアホ作者です。

クソッ! 勢いのままに一日で書いちまった!!

スパロボとかあるのによ!

気が向いたら続くかもなので、お暇ならみてください。


マチュ、大地に立つ

 この世界には『バタフライ効果』という言葉が存在する。

 

 これは『ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こすかもしれない』という風に、小さな出来事が最終的に大きな出来事につながることを意味する言葉だ。

 

 宇宙世紀0069、この日後の歴史を正史と分ける一人の子供がサイド3で誕生する。

 

 その名はアルマリア・リム・ダイクン。

 

 ジオン共和国の国父たるジオン・ズム・ダイクンとアストライア・トア・ダイクンの二女だ。

 

 しかし彼女の誕生は祝福されざるモノだった。

 

 何故なら彼女がアストライアの腹にいる間に、父であるジオンが演説の最中に急死を遂げたからだ。

 

 共和国の父たるジオンの急死はサイド3に様々な混乱を齎した。

 

 故人の盟友であったデギン・ザビはこれを機に政界での権勢を強め、デギンの下に着くザビ家派閥が文武において多数派であったダイクン派を追い落とし始めたのだ。

 

 同時にジオンの遺族にも大きな変化があった。

 

 まずアストライアがジオンの正妻であるローゼルシアの手で幽閉される事になった。

 

 これは側室でありながら世継ぎを産んだアストライアに、子のいないローゼルシアが嫉妬を向けたのが主な理由だ。

 

 ジオンが存命ならば彼は妻子を護っただろうが、当人が冥府に落ちてはどうしようもない。

 

 なんとかアルマリアを無事に産み落としたものの、アストライアはこのままでは自分達に未来が無い事を察していた。

 

 我が子がローゼルシアにしてもデギンにとっても、目障りな存在であることは容易に察しがついたからだ。

 

 故にジオンの遺児達は、母の指示でわずかに残ったダイクン派の手勢と共にサイド3を脱出した。

 

 そして彼等は紆余曲折の末に、地球の資産家で実業家でもあるテアボロ・マスに引き取られた。

 

 話が来た当初は乗り気でなかったテアボロだが、アルマリア達と過ごす内に3人を自分の子のように可愛がる事になる。

 

 早くに妻を亡くしたテアボロには子供が無く、仕事にしか生きがいを持てなかった事が強く影響していたのだろう。

 

 マリーと名を変えたアルマリアは、そんなマス家で同じくセイラと名を変えた姉のアルテイシアと共にすくすくと育った。

 

 ダイクン派の護衛にザビ家打倒を吹き込まれていた長男のキャスバルは姿を消したが、それでもテアボロは二人の娘を愛し大切に育てた。

 

 そうして時は過ぎて宇宙世紀0079年。

 

 この時アルマリアが生まれたコロニーはジオン公国を名乗り、地球連邦と血で血を洗う戦乱を引き起こしていた。

 

 人類の総人口の約半数を死に至らしめてもなお止まぬ戦火。

 

 そんな動乱の時代の中、件の少女の姿はサイド7にあった。

 

 

 

 

 朝日が差し込む薄暗いガレージ。

 

 その中であたしは深く吸い込んだ息をゆっくりと吐く。

 

 頭に浮かべるのは氷が溶けて水になる感じ。

 

 それに合わせて力を抜けば、身体は自然体になっていく。

 

 そうしていい感じに解れると、半身に構えたあたしは左手を突き出す。

 

 その際に心がけるのは、ボクシングの殴り方ではなく拳を縦にして突き出すこと。

 

 目標に向けて最速最短で放った一撃は、木人の顔の部分に当たって軽い音を立てる。

 

 足元が起き上がり小法師のようになっている木人は、あたしの力でも大きく後ろに体を反らす。

 

 しかしそれは反撃を起こす予兆だ。

 

 反動を付けてこちらへ向かってくる木人。

 

 拳打を放った手をそのまま横に払って木人の身体から突き出た棒を叩けば、木人の動きは大きく横へ逸れる。

 

 そこから何度も拳打や脚打を放ち、反撃を試みる木人を防御の型で捌いていく。

 

 父ちゃんと一緒に見た、旧世紀のカンフー映画の鍛錬のように。

 

 そうして何度木人と組手を繰り返しただろうか。

 

 息が上がって体中を汗が流れるのを感じたあたしは、最後に全力の一撃を放つ為に腰を落として拳を───

 

「なにをやってるの、マチュ!!」

 

「あいたぁぁぁっ!?」

 

 しかしそれより先にあたしの頭を強烈な痛みが襲った。

 

 涙目になりながら振り返ると、エプロンを付けたセイラ姉ちゃんがあたしの頭に落としたゲンコツから薄く煙を立てていた。

 

「なにすんのさ、姉ちゃん」

 

「それはこっちの台詞です! なんて格好でいるの!!」

 

 姉の怒声に視線を落とせば、見えるのは着け始めて間もないスポーツブラと動きやすいスポーツパンツ。

 

 それ以外は何もつけていない10歳相応に凹凸の無い我が身である。

 

「女の子なんだから慎みを持ちなさい! たとえ家でも、そんな破廉恥な姿は許しません!」

 

「リー師匠が言ってたんだよ、『考えるな、感じろ』ってさ。だから鍛錬の時は色んなモノを感じやすいようにしてるだけなのに……」 

 

「貴方は女の子なんだから、カンフーなんてやらなくていいんです」

 

「やだよ。なんちゃってだけど、ジークンドーはあたしの趣味で父ちゃんとの思い出だもん」

 

 その為に練習用に木人だって造ったんだからな!

 

「まったく、テアボロのお義父様には困ったものだわ。マリーに悪影響を遺して」

 

「悪影響ちゃうわい。カンフー映画は人類が生み出した文化の極みですー」

 

「とにかく、シャワーを浴びて着替えてらっしゃい。もうすぐ学校に行く時間よ」

 

「はーい」

 

 姉ちゃんの言葉に目を向けると、時計の針は7時半を指していた。

 

 夢中になっていたから時間が経つのに気づかなかったよ。

 

「いってきまーす!」

 

「気を付けて行ってくるのよ、マチュ!」

 

 それから約30分後、セイラ姉ちゃんの作った飯を平らげたあたしはランドセルを背負って玄関を飛び出した。

 

 ちなみにマチュはあたしの小さい頃からの愛称だ。

 

 姉ちゃんが言うには、昔のあたしはマリーと発音できずに自分の事をマチュ、マチュと言っていたらしい。

 

 その名残で姉ちゃんや親しい人は今も私の事をマチュと呼ぶ。

 

 父ちゃんが死んだあと、私は姉ちゃんとこのサイド7コロニーへ移り住んだ。

 

 地球と宇宙の戦争で怪我人がいっぱい出たから、お医者さんを目指す姉ちゃんがいりょーボランティアをする為だ。

 

 当然、姉ちゃん以外には身寄りもないあたしもテキサスコロニーからこっちへお引越しである。

 

「おっ!」

 

 何時ものように通学路を走っていると、道路沿いの家の一つに新聞受けをまさぐるランニングシャツとガラパン姿の兄ちゃんの姿が見える。

 

「ガラパンのアンちゃん、おはよー!!」

 

「ガラパンはやめてくれよ。アムロだよ、アムロ」

 

 おっきい声で呼びかけると困った顔でアムロのアンちゃんが振り返る。

 

 そこはあれだ。

 

 毎日そんな恰好で現れるアンちゃんが悪い。

 

 どうせ、夜遅くまで機械いじりをやってたんだろう。

 

 まあ、あたしもゲーム機なんかを直してもらってるからアムロのアンちゃんの機械いじりは悪く言わないんだけどね。

 

 そうして息を切らせて走っていると、10分ほどで学校が見えてくる。

 

「おいーす!」

 

「おう。今日も無駄に元気だよな、マリー」

 

「元気と笑顔があたしのとりえだからね!」

 

 クラスメイトの男子にニカッと笑うとあたしはトイレへ駆け込む。

 

 そして洗面台の前に立つと、備え付けの鏡で髪型と服装のチェックだ。

 

「うーん……これならいいでしょ」

 

 走っていると両方ともに結構崩れるんだよね。

 

 姉ちゃんは人前では身だしなみはキッチリとって口を酸っぱくして言うから、自然と点検する癖がついてしまった。

 

 一息つくとあたしは鏡に映る自分を見ながらショートヘアに整えた茶色の髪を撫でる。

 

 目の色は一緒だけど髪の方は金髪の姉ちゃんと違って結構地味だ。

 

 姉ちゃんが言うには、この髪色は本当の父親から受け継いだものらしい。

 

 父親の髪はもっと黒だったらしいけど、その辺は姉ちゃんに金髪をあげた母親と混じって薄くなったんだろう……たぶん。

 

「けど、顔を見た事も無い人から貰ったモノだから、ありがたみ無いよなぁ」

 

 姉ちゃんが聞いたら泣くから言わないけど、ぶっちゃけあたしは実の両親に興味は無い。

 

 なんか偉い家の人達だったそうだけど、欠片も記憶にないから家族だとは全く思えません。

 

 行方不明の兄ちゃんだって顔を忘れかけてるんだから、その辺は仕方ないと思うんだよ、うん。

 

 あと少し不満があるとすれば、あたしの目は切れ長で美人さんの姉ちゃんと違って大きめでクリクリしてる。

 

 この所為で顔的に子供っぽいんだよねぇ。

 

 とはいえ、文句を言って目の形が変わるわけじゃないし、大きくなったら姉ちゃんみたいになるように祈るしかない。

 

 そんな感じで朝の儀式を終えたあたしは、教室にある自分の席に着いた。

   

「おはよ、マチュ」

 

「おーす! 今日もアンちゃん、ガラパンだったぞ!」

 

 そう言うと、隣の席に座るアンナは顔を赤くする。

 

「もう……アムロさんには何時も色々直してもらってるんだから、そんな風に言わないの!」

 

「大丈夫だって! あたしとアンちゃんの仲なんだから!」

 

 ちなみにどんな仲かと言えば、格ゲーのライバルでロボゲーのネット対戦ではバディだったりする。

 

 あ、そうだ。

 

 またロボゲー筐体のレバーが調子悪くなったから直してもらおっと。

 

 アンちゃんがアンちゃんのお父ちゃんと作ったあの筐体、めっちゃリアルで楽しいんだよね。

 

 放課後のお楽しみを考えながら上機嫌でいると、外から何やらサイレンが聞えてきた。

 

「マチュ、何があったんだろう?」

 

 アンナがそう声を掛けてくるけど、あたしは答えを返す事ができなかった。

 

 この胸がイガイガする感じ、どこかで……。

 

 そうだ!

 

 地球にいた時にお父ちゃんの家を難民が襲った時と同じヤツだ!

 

「ということは敵が来た!!」

 

 私がガタンと立ち上がるのと同時に教室に先生が飛び込んできた。

 

「皆さん! コロニーに非常警報が発令されました! 落ち着いて避難してください!!」

 

 どうやらあたしの勘は大当たりだったらしい。

 

 

 

 

 あたし達は先生の誘導に従って、シェルターへ避難していた。

 

 携帯端末でなんとか連絡を取ろうとしたのだが、回線がパンクしているとかでセイラ姉ちゃんとは繋がらない。

 

 それにアムロのアンちゃんの事も気になる。

 

 アンちゃんは機械いじりに熱中すると周りが見えなくなるから、ちゃんと避難してくれているといいけど。

 

 そんな事を考えながら皆と共に移動していると、ビルの谷間から巨大な影が見えた。

 

 緑色の鋼で出来た一つ目の巨人。

 

「なぁ、あれって……」

 

「もしかして、モビルスーツ?」

 

 そうだ。

 

 ゲームにも出てたジオンのザクとかいう奴だ。

 

 ザクは二機いて、先行していた一機が両手に銃を構えるとコロニーの中で撃ち始めていた。

 

「きゃああああああっ!?」

 

「みんな、避難するんだ! 走れ!!」

 

 爆音が辺りに響くのを合図に、先生と他の生徒達は我先にと走り出す。

 

 あたしも逃げようとしたその時だった。

 

「……あっ!」

 

 何かが私の心に触れた。

 

 次に頭に過ったのは、ザクの放った弾丸の流れ弾に当たって吹き飛ぶ避難民の姿だった。

 

 その恐怖、悲しみ、そして断末魔。

 

 様々な負の感情が頭の中に渦巻いて、酷く気持ち悪い。

 

 思わず膝を突きそうになるけど、それを留めたのは心の中で燃え上がる別の火があったからだ。

 

「よくも……普通に生きていた人たちを、よくもっ!!」

 

 それは罪もない人達を虫けらのように殺したジオンへの怒りだった。

 

 私は学校の皆から離れると、直感の示すままに足を進める。

 

 学校から少し離れた場所にあるフェンスを越えれば、そこは軍の敷地だ。

 

 先生からは絶対に入っちゃダメと言われていたけど、非常事態の今はその言いつけを守ってはいられない。

 

 幸いというべきか、軍人がザクの対処に出払っている所為であたしを止める人はいない。

 

 そうして走った先には、赤くてゴツいロボットがあった。

 

 両肩に大砲が付いているのが特徴のそれはザクの攻撃の影響からか、トラックの荷台から落ちて地面に寝そべっている。

 

「よいしょっと……」

 

 落ちたら大怪我だとビビりながらロボットの上に登ると、コックピットの入り口は開いていた。

 

「これ……ロボゲーの筐体に似てる」

 

 モニターの位置や計器には違いはあるけど、コンソールやレバーなんかは筐体そのまんまだ。

 

 そういえばアムロのアンちゃんは、自分のお父ちゃんは軍の技術者って言っていた。

 

 あの筐体を作った時、本物のMSをモデルにしたのかもしれない。

 

 ペダルに足が届くようにシートの位置を限界まで前に出して、あたしは筐体の時と同じくレバーやボタンを操作する。 

 

 するとコックピットのハッチが閉まり、重苦しい振動と上がっていくエネルギーメーターで機体の動力に火が入ったのが分かった。 

 

 モニターが映るとトラックの上で寝ていた青と白の機体が起き上がって、2機のザクと対峙しているのが見える。

 

 けどパイロットが慣れていないのか、その動きは酷く緩慢だ。

 

「ああもう! さっさと起きてよ!!」

 

 レバーとペダルを操作して何とかこっちも起きようとするけど、やっぱりゲームとは少し違うのか動きが妙にもっさりだ。

 

 焦って文句を言っている内に、青い奴が逃げようとしていたザクを後ろからサーベルで上半身と下半身を泣き別れにする。

 

 やった! と思ったあたしは次の瞬間にそれを後悔する事になる。

 

「きゃあああああああっ!?」

 

 真っ二つになったザクが空中で大爆発を起こしたからだ。

 

 爆風でガタガタとコックピットが揺れたと思ったら、今度は凄い力で機体が吸い寄せられていく。

 

「ええっ!?」

 

 モニターで確認すると引き寄せられた先にあるのは、なんとコロニーの外壁に開いた宇宙へ続く大穴!

 

「ひゃあああああああっ!?」

 

 もちろんあたしは為す術も無く、そこへ吸い込まれてしまった。

 

 大穴を抜けるとモニターに映ったのは一面の黒。

 

 テキサスからこのコロニーへ移る際に見た宇宙空間の光景だ。

 

 普通ならコロニーへ戻るとか何かリアクションを取るんだろうけど、私はそれどころではなかった。

 

 ここが宇宙だと認識した途端に、目の前に広がる光景がまるでチャンネルを変えたかのように切り替わったからだ。

 

「うわぁ……」

 

 それは様々な色が入り混じった空間の中を数多の光が駆け抜ける不思議な世界。

 

 あたしはそのキラキラに目を奪われていた。

 

 そうしていると、光の向こうから何かが近づいてくる。  

 

 赤い大きな影、あれは……。

 

 いったい私はどのくらいボーッとしていたのだろう?

 

 気が付くと視界は元に戻っていて、乗っているモビルスーツと一緒に宇宙を漂っていた。

 

 爆発や宇宙に出た影響もなく、コックピットの中は今までと変化はない。

 

 けれど、あたしの目に映るその全てが大きく変わっていた。

 

「よくわかんないけど……なんか分かった!!」

 

 そう、今の私にはこの機体の動かし方が手に取る様に理解できたのだ。

 

 ペダルとレバーを操作して体勢を立て直すと、私はコロニーに開いた大穴へ機体を飛ばす。

 

 見れば緊急時の安全機構が働いているのか、コロニーの穴が隔壁で閉じようとしていた。

 

 ヤバい、ここで飛びこまないと宇宙に置いてけぼりだ!

 

 後ろのスラスターを全開にして急いでいたあたしは、その途中であるモノを見つけた。

 

 それは宇宙を漂う宇宙服を着た人間だった。

 

「ああもうっ!!」

 

 あたしは咄嗟に手を伸ばすと、極力優しく遭難者だろう二人を回収する。

 

 本当ならいったん止まった方がいいんだろうけど、そうすると閉め出されちゃうからね。

 

 そのまま手でコックピットを塞ぐ形でハッチを開いて、二人が中へ入るとすぐにハッチを閉じる。

 

「子供がMSの操縦を!?」

 

「き…君は!」

 

「アムロのアンちゃんのお父ちゃん!」

 

 驚いたのは、転がり込んできた内の一人がアムロのアンちゃんの父親だったことだ。

 

 ロボゲーの筐体を受け取りに行った時に一度顔を合わせたけど、まさかこんな形で再会するとは思わなかった。

 

「どうして君がガンキャノンに乗っているんだ!?」 

 

「話はあと! その辺に掴まってて!」

 

 今はその辺の事情を説明している時間は無い!

 

 あたしは更にペダルを踏みこんで加速すると、外壁に開いた穴へ飛び込んだ。

 

 そうしてコロニー内へ戻ってくると、背中を向けた青い連邦のモビルスーツに向かってザクが襲いかかろうとしている真っ最中だった。

 

『なんだっ!?』

 

『連邦のMSがもう一機だと!?』

 

 通信機からどこかで聞いた事がある声とオッサンの声が木霊する中、あたしは足のペダルを三度踏み込んだ。

 

 すると帰ってきた勢いのまま、あたしの機体は大きく宙を舞う事になる。

 

「な…何をするつもりだ!?」

 

「もちろん! チャンスを活かすの!!」

 

 そこから背面のスラスターと足の振り、腰の回転を活かして姿勢を制御!

 

 そして落下スピードとブースターの加速を乗せて、伸ばした右足からザクへ突貫する!!

 

「アチャアアアアアアッ!!」

 

『ぐおわぁぁぁぁっ!?』

 

 ちょっと変則気味だけど、これぞリー師匠が映画で見せたジークンドーの奥義ドラゴンキックだ。

 

 流星のように突っ込んできた蹴りを胸に受けたザクは大きく吹き飛び、地面を二度三度転がると動かなくなった。

 

「よし、やった!」 

 

「な…なんて無茶を……」

 

 ガッツポーズするあたしにアムロのお父ちゃんが呆れ半分で文句を言ってくる。

 

「だって、あの状況だと武器を撃つの無理じゃんか」

 

 この機体って頭のバルカンと高威力のキャノンしかないんだもん。

 

 これでもアムロのアンちゃんと一緒にロボゲーでサイド7チャンプを務める身。

 

 間合いや射角なんかの計算はお手の物なのだ。

 

「よっこいしょっと」

 

 そんな訳であたしはザクの胸の上をガンキャノンで踏みつけておく。

 

 たしかゲームだとここにコックピットがあった筈だ。

 

 こうしておけば、軍人さんが来るまで中のパイロットは逃げられないからね。

 

 とりあえずザクはやっつけたけど、こっからどうしたらいいのやら。

 

 なんて首をひねっていると通信機に反応があった。 

 

「うん? 友軍から通信だ。ガンダムからのようだな」

 

 アムロのお父ちゃん曰く、例の青いMSはガンダムというらしい。

 

 視線で促されるままに通信を受信すると、サブモニターに相手のコクピットの様子が映し出される。

 

 それを見て私は思わず息を呑んだ。

 

「アムロのアンちゃん!?」

 

『マチュ! どうしてそんな物に乗ってるんだ!?』

 

 それはこっちの台詞だよ!!

    




・マリー・マス(10歳) ダイクン家の二女だがそんな事はまったく知らぬ存ぜぬで人生をエンジョイしているアホの子。

突然変異かNT能力がリタ・ベルナルと同等なほどに高く、宇宙に出ただけで刻を垣間見るほど。

性格は明るく活発な反面、趣味に生きる女という事で学校の成績は中の中程度。

カンフー映画を参考に我流でなんちゃってジークンドーを体得しており、ジークンドー創始者のブルース・リーを脳内師匠として尊敬している。

養父のテアボロ・マスを本当の父親だと思っており、旧世紀のカンフー映画鑑賞を好むのは彼からの影響によるもの。

なので自分がダイクン家の人間という自覚はほぼ無く、実の親の顔も知らなければ自分の本名はもちろん、失踪した兄の名前と顔も半分忘れている有様。

そんな体たらくなので兄や姉のようにダイクン派に担ぎ上げられる可能性は低い。

現状における将来の夢は少林寺に入門すること


・セイラ・マス(17歳)破天荒な妹の所為でオカン化が進む苦労人。

年が離れた妹の事は可愛いが、その奇行の数々に日々頭を悩ませている。

養父のテアボロの事は尊敬しているが、妹にカンフー映画を布教した事は許さない、絶対にだ。

ダイクン云々については黒歴史でしかなく、是非とも闇に葬り去りたい。

妹と二人で慎ましく生きていくのが人生の目標。

12歳だった自分に当時5歳の妹の事を丸投げして失踪した兄の事はクズ野郎としか思っておらず、目の前に現れたならマリーの躾で鍛え上げられたゲンコツを顔面に叩き込むつもり。
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