ダイクン家の二女はアホの子   作:アキ山

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お待たせしました。

夏真っ盛りで日々暑いですが、冷房などで体調を崩さないように用心してください。

筆者はこれを書き始めた頃から定期的にガンダムの原作映画を見ています。

やっぱり初代の三部作はすばらしい。

少しでも雰囲気が再現できればいいなぁ。


マチュと大規模遭遇戦開始

「ジオン共和国亡命政府、か。連邦め、本気でこの戦争を終わらせに来たな」

 

 地球連邦政府が発した公式声明の記事が書かれた新聞を執務室の机に置くと、ギレンは三白眼から発する視線をさらに鋭くする。

 

 連邦が今になって何故共和国の亡命政府なるモノを担ぎ出したのか、ギレンの聡明すぎる頭脳は彼等の意図を見抜いていた。

 

 彼は小さく息をつくと、机のブザーを鳴らす。

 

「ギレン総帥、お呼びでしょうか?」

 

 少し間を置いて執務室に現れたのは、赤を基調にしたジオン軍の軍服に金髪を後ろで纏めたグラマラスな女性だ。

 

 彼女はセシリア・アイリーン。

 

 専属秘書としてギレンを補佐している才女である。

 

「セシリア、今朝連邦が発した声明を見たか?」

 

 ギレンの問いかけにセシリアは真剣な表情で頷く。

 

「ジオン共和国亡命政府承認および支援の件ですね。諜報課に依頼して市民たちの様子を確認しましたが、思いのほか動揺は広がっていないようです」

 

 声明発布から4時間程度、それだけの短期間で独自に動いて必要な情報を掴む。

 

 眼前の女性が見せる優秀さにギレンは内心満足していた。

 

「それについては以前に行った糾弾演説が効いているようだな。亡命政府の代表はダイクン家の遺児達だ。連邦が奴等を徴兵して前線で戦わせていた事実を市民に伝えていたからこそ、今回も奴等は傀儡として亡命政府のトップに据え置かれていると捉えたのだろう」

 

 共和国亡命政府は亡きジオン・ダイクンの遺児を旗頭としている。

 

 シャア・アズナブルことキャスバルについてはネットの反応を見る限り賛否が分かれるところのようだが、奴が原因で連邦政府と亀裂が生じる事態にはなっていないようだ。

 

 やはりキャスバルが両親の敵討ちの為に単身ジオン軍に潜入していたことや、その過程で妹達と戦うという悲劇に襲われたこと。

 

 そして妹達を護る為にジオンを抜けた事実を美談として語ったのが大きいのだろう。

 

(愚民共はああいったお涙頂戴な話や英雄譚を好むからな。連邦の広報もなかなかにやるではないか) 

 

 実際のところ、世に公表された話がどこまで本当かなど分かったものではない。

 

 そういったモノに騙される民衆の浅はかさこそ、正しく『管理』せねばならないとギレンに認識させる原因なのだ。

 

「ですが総帥、この時期に連邦が共和国の名を出してきたのは何故でしょう?」

 

「この時期だからこそ、だ。忌まわしい事に現状では、我々ジオンは連邦に劣勢を強いられている」

 

 セシリアの問いかけにギレンは小さなため息交じりで応える。

 

「軍や政府高官の中には宇宙は自分達の主戦場と息巻いている者もいるが、そんな物は戦略的に見ればたわ言でしかない。なにせジオン軍は自軍を敵領土から叩き出されて、連邦に逆侵攻を受けているのだからな」

 

「そう…ですね」

 

 戦意高揚を狙ってか、それとも本当にそう思っているのか。

 

 ジオンの将校の中には宇宙の民である自分達は、そのホームグラウンドでなら連邦に負けるわけがないという意見がある程度浸透している。

 

 おそらくはブリティッシュ作戦やルウム戦役で大勝を飾った成功体験から出た言葉なのだろう。

 

 しかし冷静に考えればわかる。

 

 30倍という国力差を持つ敵に優位を覆されたリカバリーが困難を極めるということを。

 

 ギレンがサイド6を始めとする各コロニーへ秘密裏にザクなどの型落ち機や試作機を横流ししているのも、その為の資金を調達する為なのだ。

 

「そして今回の声明によって、身を潜めていたダイクン派も大きく動き出すだろう。ここも安全ではなくなるという訳だ。──そこでセシリア、お前に一つ命令を下す」 

 

「なんでしょう?」

 

 重苦しくなった執務室の空気で下降しつつあった気を取り直して表情を引き締めるセシリア。

 

 そんな彼女を前にギレンは机の上にキャリーケースを乗せる。

 

「グレミーと共にアクシズへ渡れ。仮にジオンが負けても、連邦もあそこまでは追ってはこられんはずだ」

 

「総帥!?」 

 

 予想外の言葉にセシリアは悲鳴のような声を上げる。

 

 そこに込められているのは驚愕とギレンを責める想いだ。

 

「お前がグレミーと会う為にトト家へ行っているのは知っている」

 

 しかしギレンは彼女の声に取り合う事無く言葉を続ける。

 

「そ…それは……!」

 

「その事を責めるつもりはない。母が子と逢いたいと願うのは当然だからな。むしろ、お前には私の事情で多くの我慢を強いて申し訳ないと思っている」

 

 言い淀むセシリアにギレンは腰掛けたまま小さく頭を下げる。

 

 グレミーとはギレンとセシリアとの間に生まれた今年で8歳になる男児だ。

 

 ギレンは表向きは独身という事になっているが、秘書を務めるセシリアとは長年事実婚に近い関係を築いていた。

 

 その中で生を受けたのがグレミーだった。

 

 しかし、ギレンは父であるデギンが自分の子を望んでいないことを見抜いていた。

 

 ギレンが生まれた当初、デギンは彼をザビ家の後継者にするつもりだった。

 

 幼少期からの高等教育や政治家としてのイロハを教えていたのも、その為の準備だったのだろう。

 

 しかし正妻ナルスとの間にガルマが生まれた事でデギンの思惑は変わった。

 

 溺愛するナルスとの子であるガルマにザビ家の当主を継がせ、彼の血脈に今後のザビ家を託したくなったのだ。

 

 その思惑に感づいたギレンはデギンとの対立を避けるため、公的に独身を貫くことを選んだ。

 

 三男であり政治的センスのないドズルは妻を得て子を成したが、彼とギレンは立場が大きく異なる。

 

 長男であり政治家として着実に力を付けていた彼の長子が生まれては、デギンの計画に大きな障害となるからだ。

 

 だからこそ彼はグレミーを生まれてすぐ、信用が置ける家であるトト家に養子として託した。

 

 その際にセシリアには接触しないように伝えていたのだが、彼女がそれを破っている事をギレンは知りつつ黙認していた。

 

 秘密裏に親衛隊から腕利きの護衛と防諜の為の人員を付けて。

 

「この中にはアクシズまでの旅券と私の資産の半分に当たる貴金属、そしてお前達の身分証明書が入っている」  

 

 ギレンの言葉を受けてセシリアはケースの中を確かめる。

 

 そこには金塊とダイヤなどの貴金属、そして旅券に各種書類が入っていた。

 

「私とグレミーの身分証なのですが、夫と父親の欄がジャン・ポール・ロッチナになっているのですが?」

 

「ザビ家の人間と分かれば向こうの連中に担ぎあげられるのは明白だ。お前やグレミーが我々の業を背負う必要はない」

 

 セシリアの問いかけにギレンは席を立つと背を向ける。

 

「アクシズにはデギン公王も避難しようと動きだしていると聞いていますが、それはどうすればよろしいのでしょうか?」

 

「それに付いては心配するな。あの男には我々と共にこの戦争を起こした責任を取ってもらわねばならん。楽隠居などさせんよ」

 

 そう告げるギレンは背中越しでも並々ならない決意が感じられた。

 

「行くがいい。総帥府の前に車を用意してある。それを使えば今日の定期便には間に合うだろう」

 

「……ありがとうございます。ご武運を、あなた」

 

 出立を促すギレンの背にセシリアは深々と頭を下げると、託された荷物と共に執務室を後にする。

 

 そうして扉が閉まると、その音を合図にするかのようにギレンは通信機に手を伸ばす。

 

『兄貴か。そっちで何かあったのか?』

 

 少しして画面に現れたのは傷面の厳つい巨漢、ドズル・ザビだ。

 

「例の亡命政府艦隊の件だ。今は木馬と行動しているらしいが、どこにいるか掴んでいるか?」

 

『ああ、サイド6に入り込んでいるらしい。衛星軌道を警戒していたキャメル艦隊を取り込んで更に艦の数を増やしたと聞く。小癪な奴等だ』

 

「やはり厄介だな。あの連中を放置すれば、これからも寝返る者が現れるだろう」

 

『たしかにな。亡命政府という確かな形が出来た以上、ダイクン派や俺達に反意を持つ者は向こうに行く可能性が高いか』

 

 ギレンの言葉にドズルが顔をしかめる。

 

 現状においてジオンに最も不足しているモノは人材だ。

 

 長引く戦争に加えてオデッサを始めとする地上での敗戦は、ジオンに深刻な軍人不足を齎した。

 

 その問題を学徒兵で埋めるために国家総動員令と徴兵年齢の引き下げを行おうとしているのだ。

 

 なのに、キャメル艦隊のように離反を促す部隊がいるなどジオン側にとっては堪ったものではない。

 

「ドズル。連邦の攻撃が予想される中だが、ソロモンから動かせる部隊はあるか?」

 

『むぅ……そこまで余裕はないが、奴等を放っておくほうが拙い。コンスコンに艦隊を預けて送り出してみよう』

 

「すまんな。出した分の戦力はア・バオア・クーから補充させる」

 

『頼む』

 

 こうして共和国亡命政府艦隊への対応を整えると、二人の間に少しの沈黙が降りる。

 

「時にドズル、ゼナ君とミネバはどうするつもりだ?」

 

『もう少ししたら本国へ疎開させようと思うが、どうかしたのか?』

 

「こちらへ送るのは止めておけ。亡命政府の影響でダイクン派の動きが活発になっている。避難させるならアクシズの方がいいだろう」

 

『親父もガルマの嫁と渡ると聞いているが大丈夫なのか?』

 

「心配するな、あの男は絶対に逃がさん。この戦争の結果がどうあれ、私と共にサイド3の土に骨を埋めてもらう」

 

『兄貴……』 

 

「ドズル、妻子を逃がすなら急げよ。連邦に追われながら向かうのと安全に行くのでは、旅の負担も違うだろう。───私はもう送った」

 

 ドズルはその言葉で兄の言葉が本気であると理解した。

 

 彼は兄妹の中で唯一グレミーの存在をギレンから知らされている男だ。

 

 そんな彼がアクシズへ妻子を送ったという事は、そういう事なのだと。

 

『……わかった』

 

 言いたい事は山とある。

 

 同じザビ家の男として兄を止めねばならないのだろう。

 

 しかしドズルはその全てを己の胸の内に仕舞いこんだ。

 

 同じ子を持つ父親として、ギレンの気持ちと覚悟も痛いほどわかったからだ。

 

 そんなドズルの表情から内心を読み取ったギレンは無言で通信を切った。

 

「さて、あの男を封じ込めるのに障害となるのは……やはりキシリアか」

 

 そうして再び席に着いたギレン。

 

 その顔は先ほどまでの家族を憂う男ではなく、冷徹な独裁者にして策謀家のそれだった。

 

 

 

 

 亡命艦隊、そしてソロモン攻略のための艦隊が出払った後のルナツー。

 

 そこに一隻のランチが入港した。

 

「お疲れ様です、レビル准将」

 

「うむ」

 

 整備担当の兵士によって開かれた扉、そこから降り立ったのはヨハン・イブラヒム・レビルだ。

 

「准将、こちらです」

 

「ありがとう」

 

 士官に先導されて会議室へ通されるレビル。

 

 そこのいたのは彼の下に集った過激派の連中だ。

 

 バスク・オムやジャミトフ・ハイマンなど、グレイブに関する失態の余波を受けた事でレビルを見限った者も少なくはない。

 

 それでも彼の下に集う者達は派閥を形成するには十分なほど存在していた。

 

「諸君、監視が厳しい中でよく集まってくれた」

 

「なに、付けられた監視の中にジオンへの恨み骨髄な者がいましてね。彼に協力してもらって、整備備品と共にコンテナで南米の穴倉から脱出したのですよ」

 

「私も同じく」

 

「なにせ奴等は人類の半分をブチ殺したイカレ野郎どもだ。ギレンなど100回殺しても殺りたりないなんて奴は掃いて捨てる程いますからな」

 

 問題行動から前線から隔離され、監視付きで閑職に回されていた彼等を枷から解き放ったのはジオンを憎む潜在的過激派の連邦士官達だった。

 

 連邦政府や上層部は己の軍、いやアースノイドのジオンに対する恨みの深さを見誤っていたのだ。

 

「まずは作戦の進捗具合だが、どの程度進んでいる?」

 

「戦力の大半がソロモンへ出向いているお陰ですね。すでに60%は達成しています」

 

「例のモノはここに幾つ貯蔵されているのかね?」

 

「最速で使えるモノなら20発程度」

 

「例のプランをジムへ適用することは?」

 

「ジムはガンダムの量産機ですから互換性はあります。ですが、どうしても機動性の低下は否めないかと」

 

 レビルの問いかけに打てば響くと言った感じで各担当に将官達は答えを返す。

 

「よろしい。各員は詰めを誤らないように」

 

 それに満足したように一つ頷くと、レビルは決意を込めた表情で顔を上げる。

 

「───我々の戦争はまだ終わってはいないのだから」

 

 そう笑うレビルの眼には狂気の光が灯っていた。

 

 

 

 

 どうも、思わぬ出会いに少しテンションが上がったマチュです。

 

 短いサイド6での休暇も終わり、あたし達はホワイトベース達が停泊する宇宙港に戻ってきた。

 

「マチュ。さっきの対戦データ、コピーして貰ってもいいかい?」

 

「いいよ。例のビーム腕攻撃の対策を考えるんでしょ」

 

「そういうこと」

 

 こちらの確認にアムロのアンちゃんは不敵に笑う。

 

 あたし達がチャンプの座にいるのは、テクニックもそうだけど情報収集と対策の構築も大きい。

 

 行き当たりばったりの戦いでのし上がれるほど、ロボゲー世界は甘くないのだ。

 

「ふむ。アルマリア、そのデータはMSシミュレーターと互換性があるのか?」

 

 アンちゃんの端末に対戦データを送信していると、今度は兄ちゃんが声を掛けてくる。

 

「あのゲームは基がシミュレーターだからあると思うよ。もし、ダメだったら整備の人に言ったら反映してくれるんじゃないかな」

 

「ならば私も一つ貰おう。今後、ああいう兵器が戦場に現れる可能性もゼロではないからな」

 

「そういう事なら俺も」

 

「俺も頼むよ、マリーちゃん」

 

 兄ちゃんに続いてアンディさんとリカルドさんも端末を差し出して来るので、あたしは全部にデータを送る。

 

 本当に実戦であんな兵器が出てきたら、初見殺しにも程があるからね。

 

 対策が命綱になる可能性を考えると、シイコお姉さんやカイさん達とも共有しておいた方がいいかもしれない。

 

「アンちゃん。ララァとの戦闘データ、パイロットの皆に渡してもらっていい?」

 

「わかった」

 

 こちらの意図を察してくれたのだろう、アンちゃんは快くあたしの頼みに頷いてくれた。

 

 こっちで直接渡せればいいんだけど、スワメルの修理が済んだことも含めて亡命政府艦隊へ挨拶に行かないといけない。

 

 たとえ飾りな神輿だとしても、やるべき事はあるというワケですよ。

 

 そうしてアンちゃん達と別れたあたし達は、兄ちゃんの部下が艦長を務めるファルメルのブリッジへ行った。

 

「ようこそ、ファルメルへ。そしてお帰りなさい、少佐」

 

 そう言ってクルー達を背に笑顔を浮かべるのはドレンのおっちゃんだ。

 

「木馬もMSの機体数が増えて手狭になっているからな、私のガンダムとラル隊はファルメルへ引っ越しする予定なのだ」

 

「そうなの?」

 

「ああ。お前達のNT-1は専用のメカニックマンが必要なので、そういう訳にはいかんがな」

 

 ふむ、それは初耳である。

 

「私的には少し残念ですがね。妹さん達が来てくれれば、このむさ苦しい男所帯も少しは華やぐと思ったのですが」

 

「まったくですよ!」

 

「お嬢様。今からアンディ中尉とリカルド中尉の二人と、木馬にいる他の女性パイロットをトレードできませんか?」

 

「おいおい、ひでぇな!」

 

「お前等、苦楽を共にした仲間にそんなこと言うか?」

 

 他のクルーから飛んできた言葉にアンディの兄ちゃん達がツッコむと、ブリッジの中が笑いで満たされる。

 

 へぇ、兄ちゃんの船って思った以上にいい雰囲気なんだなぁ。

 

「それで少佐、我々はこれからどういう風に動くんですか?」

 

「ああ。予定ではこのまま月に進路を取ってグラナダへ向かうように見せかける」

 

「たしか連邦の本命はソロモンと言ってましたね。なら我々はザビ家ジオンの目を引く囮、もしくは陽動と言ったところですか」

 

「察しが良くて助かる。ダイクンと共和国の名がある以上、ザビ家は我々に対して必ず何らかのアクションを起こさずにはいられないだろう」

 

「長く続く戦争でザビ家の独裁に不満を持つ者が増えてきてますからね。別の受け皿があるのなら鞍替えもするでしょう」

 

「そして人員不足の公国にとって、それは何よりも痛い打撃になると」

 

「そういう事だ。だからこそ、奴等は我々を優先的に狙ってくる。連邦はそれでソロモンの戦力を釣れれば儲けものと考えているのだろうさ」

 

 ドレンのおっちゃんと兄ちゃんに部下ズが混じっての打ち合わせ、それが盛り上がり始めた時だった。

 

「……っ!?」  

 

 突然、あたしの脳裏に警告のように閃きが走ったんだ。

 

「どうしたの、マチュ?」

 

 姉ちゃんのこちらを案じる声に、あたしは深呼吸で息を整える。

 

「姉ちゃん、兄ちゃん、敵が来たよ」

 

 そう、この胸がザラつく感じは間違いない。

 

 ジオンがサイド6の宙域、それもあたし達のすぐ近くにまで接近しているんだ。

 

「敵って……おい、索敵手! レーダーに何か映っているか?」

 

「ちょっと待ってください! 反応在りました! このパルダコロニーに艦隊が接近中です!!」

 

「ドレン艦長! サイド6行政府から我々へただちに出航するように命令が出ています! ジオンのコンスコン艦隊がこちらを狙っているので、自分達の戦いに我々を巻き込むなと!」

 

 通信担当の声に兄ちゃんとドレンの表情が引き締まる。

 

「コンスコン少将か。この時期にドズルが己の懐刀をソロモンから離すとはな」

 

「こいつはまた、思わぬ大物が釣れましたな」

 

「相手はジオンでも指折りの艦隊戦の名手だ。やれるか、ドレン?」  

 

「下馬評があれば向こうが断然有利なんでしょうがね、そんなモン覆してみせますよ」

 

 兄ちゃんの問いかけにドレンのおっちゃんはニヤリと笑う。

 

 敵の艦隊を率いている人はかなりの戦上手みたいだけど、それだけじゃないらしい。

 

「兄ちゃん、MSのパイロットも手練れがかなり来てるみたい。強そうな気配を何個か感じる」

 

「そうなのか?」

 

「うん。手貸して」

 

 兄ちゃんが差し出した手を握ると、それを通して感じたイメージを伝える。

 

「───なるほど、これは厄介だな」

 

 ロボゲーの対戦でララァと繋がった時の感覚を憶えているんで、あの時の再現は無理でも心の内が少しくらいは伝わるかなとやってみたのだが、どうやら上手くいったらしい。

 

「アンディ、リカルド。コンスコン艦隊にはエースが複数いるようだ。奴等は亡命艦隊の兵士では手に負えん、我々で抑えるぞ!」

 

「了解しました」

 

「そんなのまで送って来るって事は、やっぱり奴さん達は俺達がよほど目障りなようですね」

 

 兄ちゃんの指示に闘志を燃やす部下ズ。

 

 さて、敵が来たとなればあたし達ものんびりはしていられない。

 

「姉ちゃん、ホワイトベースに戻ろう」

 

「ええ、分かったわ」

 

「兄ちゃん、あたし達行くね!!」

 

「ああ、気を付けてな!」

 

 兄ちゃんの声を背に受けてあたし達はファルメルを後にする。

 

「ただいま!」

 

「おかえり、マリーちゃん。帰って早々で悪いが出撃だ!」

 

「うん、わかってる!」

 

 ホワイトベースに戻って格納庫に駆け込んだあたしに、アストナージの兄ちゃんがパイロットスーツを渡してくれる。

 

「アンちゃん、シイコお姉さん、敵のパイロットに強い奴がいるみたい。気を付けよう!」

 

『わかってる。このプレッシャー、只者じゃない』

 

『そうね。アムロ君達ほどじゃないけど、私も威圧感を感じるわ』

 

 素早く着替えてプロトに乗り込んだ時には、ホワイトベースはサイド6の港を離れ始めていた。

 

『発進したMSはホワイトベースの直衛に付け! 後方からジオンの艦隊が追ってくるが、サイド6宙域を抜けるまでは絶対に攻撃するなよ!!』 

 

 宇宙に出てホワイトベースの左舷に付いたあたしは、モニターに映るジオン艦隊をズームする。

 

「……コイツだ」

 

 こちらに応じて向こうも発進させたMS、その中でさっきから圧を与えてくる奴をピックアップする。

 

 一機は胴体が緑で頭と手足が青のゲルググ、もう一つが赤く塗られたカニに何処か似ているMA。

 

 それと全身水色で太腿が白のザク、あとは全身真っ黒なヅダだ。

 

 それとゲルググの傍にいるリックドムも腕の立つパイロットみたい。

 

『MS隊各機、ゲルググと随伴機は私達が抑える』

 

『なら、僕はあの水色のザクの相手をします』

 

『ハセガワ少尉、パーソナルカラーが付いたMAは艦隊の脅威になるわ。私達で対応しましょう』

 

『了解しました、マッケンジー中尉』

 

「それじゃあ、あたしは黒いヅダだね。カイさん、リュウさん。ヤバい奴等は船から引き離すから、他のリックドムをお願い。ラルのおっちゃんは遊撃で。特にMAの動きに注意してほしいの」

 

『やれやれ。他のって一言で言うけどよ、20機くらいいるんだぜ?』

 

『ぼやくな、ぼやくな。しんどい相手はあいつ等が受け持ってくれるんだ、防御くらいは任されてやらないとな。ハヤトも行けるな?』

 

『ええ、もちろんですよ!』

 

『うむ、任された。コズン、クランプ、亡命艦隊との本格的な連携はこれが初だ。戦況には逐一気を配って行けよ!』

 

『了解です、大尉!』

 

『それじゃあ、シゴキの成果を見せてもらうとしますか!』

 

 簡単な打ち合わせを行った後、あたし達はそれぞれのポジションへ移動する。

 

 エースに対処する者は亡命艦隊の最後尾付近に、リュウさん・カイさん・ハヤトさんのガンキャノン隊はホワイトベースの護衛。 

 

 そしてラルのおっちゃん達は亡命艦隊とホワイトベースのどちらにもフォローが入れられる中間に。

 

「そういえば、ホワイトベースの前を飛んでる小さなクルーザーはなんなの?」

 

『サイド6のお偉いさんだよ。奴さん、ミライさんの許嫁らしくてな。サイド6の領域いっぱいまで水先案内を申し出てきたのさ』

 

「ほぇ~、度胸あるねぇ」

 

『惚れた女にいい所見せてやりたいのさ。──気持ちは分かるぜ』

 

 あたしの素朴な疑問にカイさんが答えてくれた。

 

 ミライお姉さんの許嫁か、どんな人なんだろう?

 

 そんな事に意識を割けたのはほんの僅かな間だった。 

 

『各砲座回頭! 後方の敵艦隊を狙い撃て!!』 

 

『奴等はまだサイド6宙域だ! こちらに攻撃できん!!』

 

『今の内に敵の数を減らすのだ!!』

 

 ブライト大尉、ドレンのおっちゃん、そしてダグラスさんの指示によってホワイトベースと亡命艦隊からメガ粒子の光弾が飛ぶ。

 

 それはこちらを追っていたジオン艦隊のムサイ一隻を撃ち抜いて、緑の船体を火球へ変えた。

 

『よしっ!』 

 

『各員、気を抜くなよ! 奴等は戦艦は砲撃できない代わりにMSをけしかけてくるはずだ!』

 

『MS各隊は迎撃を!!』

 

 艦長達から矢継ぎ早に指示が飛ぶ中、戦艦に先んじて敵のMSがこちらへ攻めてくる。

 

「姉ちゃん、行くよ!」

 

「ええ!」

 

 相手は見るからにわかる強敵だ、気合を入れていこう!

 

 

 

 

〈オマケ〉エドワウ君とシャア総帥

 

 

 サイコフレームの共振によって、緑のオーロラは地球へ落下する筈だったアクシズの進路を変えた。

 

 この奇跡の中心となったのはνガンダムを駆るアムロ・レイと、Ζガンダム3号機P2型ことレッドゼータに乗っていたエドワウ・マスだった。

 

 なお、サザビーに乗っていたアゴい彗星は二人のエースパイロットに追い詰められた結果、アクシズにダメ押しの加速を掛ける為に核パルスエンジンの中で自爆したのでここにはいない。

 

 二人の地球を、そして愛する人々を想う気もちは連邦やネオ・ジオンの垣根無く兵士達の心を溶かしてアクシズを押し返す原動力となった。

 

 そんな奇跡が成った瞬間、エドワウは刻の彼方へ導かれた。

 

『貴様は……』

 

「お前はまさか、私なのか?」

 

 様々な原色を無作為に塗りたくった背景に大小さまざまな光が流れる不可思議な世界、そこで彼は一人の男と邂逅する。

 

 それは自分達が倒した偽物ではない、ネオジオンの総帥として立った別世界のシャア・アズナブルだった。

 

 この刻の彼方ではニュータイプの認識能力は最大限に増大する。

 

 それゆえに二人の男は目を合わせた瞬間、互いが歩んだ道を知る事になった。

 

『まさか、私にもう一人妹が出来る世界があったとは……。しかもその子がアムロの嫁だと?』

 

「アルマリアがいないと私とアルテイシアの関係はここまで拗れてしまうのか。しかもアムロ君と敵対して殺し合ったうえに、ララァ・スンに懸想しているとは……。あの女はメールでいきなり『カーマ・スートラ』を送ってくるマン・イーターだぞ。お前は自殺願望でもあるのか?」

 

『ララァを侮辱するのは止めてもらおうか。彼女はそんな事をする女性ではない!』

 

「実際にやったのだ! 私の記憶を読んだのならわかるだろう!!」

 

 怒りをあらわにするシャアにエドワウはうんざりした顔で言い返す。

 

 この自由人にとって、善悪問わず重い感情を向けてくる女は天敵である。

 

 実際、エドワウはグリプス戦役で立ち寄って以降サイド6に一度も足を向けていない。

 

 その時に何があったのかは、彼自身が固く口を閉ざしている為に不明である。

 

『しかし随分といい御身分じゃないか。平社員として齧るアルテイシアの脛はそんなに美味いか?』

 

「実に美味い! なんの責任も無く気楽にパイロットをやれて、そのうえ愛する家族と仲良くできるのだから最高だ!! しかも地球圏最高クラスのMS技師である父性満載な親戚のチューン付きだぞ!!」

 

 煽りのつもりで吐いた言葉にドヤ顔で返されて、シャアのコメカミに青筋が浮かぶ。

 

『貴様、何故そんな形で腐る事が出来るのだ!? 貴様の世界は私と同じ道筋を辿っている! インベーダーやウルガルなど、外宇宙からの侵略者に腐った連邦政府では対処できん事はわかるだろうに!!』

 

「私はパイロットと神輿しか能のない男だ! そして一年戦争が終わった際にダイクンの名と共に神輿である事も捨てた! ならば、一パイロットとして全力を尽くす事の何が悪い!!」

 

 ガシッと手四つで腕を組み合って力比べを行うシャアとエドワウ。

 

 シャアは同じ存在でありながら、責任を全てブン投げて自由人を満喫する眼前の男が気にいらない。

 

 エドワウの方も意味不明な思想に取りつかれて自縄自縛で雁字搦めになった挙句、家族を蔑ろにし続けたオールバック野郎に腹が立つ。

 

 元は同じ存在だが、歩んできた人生が違い過ぎて相容れる事などあり得ない程に二人は乖離していた。

 

 このまま行けば互いに拳を相手の頬に叩き込んでいたのだろうが、生憎と刻の彼方は醜い争いを好まなかった。

 

 グニャリと周囲が歪むと、組み合う二人を分かつかのように空間が分かたれ始めたのだ。

 

『これは……』

 

「まさか、元の世界に戻れるのか?」

 

 エドワウがそう呟いた瞬間、シャアの眼がギラリと光った。

 

『フンッ!』

 

「貴様! なにを!?」

 

 そして彼は組んでいた腕に渾身の力を入れて、エドワウと自分の位置を入れ替えようとしたのだ。

 

「させるかぁ!!」

 

 しかしシャアの意図を一瞬で読み取ったエドワウは、別世界の自分の思う通りにさせまいと必死に踏ん張る。

 

「まさか私の世界に逃げようとするとはな! 責任云々というセリフは何処へ行った!?」

 

『黙れ! あれだけの事をした以上、生きて戻ったところで私は社会的に死んだも同然! むしろ生き地獄だ!! そんな世界に帰ってたまるか!!』

 

 そう、シャアの世界では彼はネオジオンを率いてアクシズ落としを敢行した大罪人なのだ。

 

 戻ったところで何一つ希望などないだろう。

 

「だからといって私に押し付けるな! アルマリアやアルフォンス、フミナが私の事を待っているのだ! 帰らないわけにはいかん!!」

 

『それだ! アルテイシアとの仲も悪くなく、可愛い末の妹や姪や甥もいて、そのうえアムロと義兄弟だと!? そんなおいしいポジションを貴様一人が占有していいわけがない!』

 

「私の選択と努力の結果だ! それを堪能するのは当然だろう!!」

 

『貴様も私なら、一度は重い十字架を背負う苦しみを思い知れ!!』

 

 互いに唾を飛ばして罵り合い、真っ赤な顔で相手を地獄(正史スパロボ30世界)へ押し込もうとするシャアとエドワウ。

 

『は゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!』

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!!!!」

 

 汚い声を上げて争うその光景はナナイ・ミゲルでもクェス・エアでも、一目見れば幻滅間違いなしな代物だったという。

 

 一方、その頃のアムロは……

 

『シャアが俺のお義兄さん……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!』

 

「付き合ってみると面白い人なんだけどなぁ」

 

 一方は衝撃の事実に頭を抱え、もう一方はその反応に苦笑いを浮かべているのだった。

  

      




次回、ガノタのとっての地獄が始まる

三分で全滅するのはリックドムか、ガノタか?
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