ダイクン家の二女はアホの子   作:アキ山

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ふ…ふふ……戦闘描写は難しゅうございます。

まさかここまで文字数が上がるとは……げふっ!?(返事が無い、ただの屍のようだ)


対コンスコン艦隊・前編

 時はサイド6でホワイトベースと戦火を交えたコンスコン艦隊がソロモンを出撃した頃に遡る。

 

「今回の任務は木馬とジオン共和国亡命政府を騙る反乱分子の撃滅にある! かなりの激戦が予想されるが、各員の奮戦に期待する!!」

 

 格納庫で行われたコンスコン少将の長い演説が終わると、作戦に参加する将兵達は各々の持ち場へと動き出す。

 

「今回の件どう思う、ガトー」

 

 艦隊の中で唯一のMAであるヴァルヴァロを任されたケリィ・レズナー大尉は、戦友であるアナベル・ガトー大尉へ声を掛ける。

 

「開戦の折に祖国に背を向けた軟弱者と反乱分子が、連邦の威を借る狐となって救国を騙るなど笑止千万。戦場を宇宙へ移したこの大切な時に、兵や民心を惑わす不逞の輩を放っては置けまい」

 

 その問いかけにガトーは不機嫌さを隠さずに鼻を鳴らす。

 

「ですが、ジオン・ダイクンの遺児を旗頭にしているのは厄介ですね。彼の思想は本国だけでなく、スペースノイドにも深く浸透していますから」

 

「思えばあの姉妹も可哀そうなモノだ。避難民として連邦へ身を寄せれば戦場に放り出され、生き残る為に足掻いた結果がガルマ様を殺めて本国から賞金首認定。そのうえ反乱組織の神輿に担がれちまったんだからな。戦争に巻き込まれるまでは市井に紛れて生きてきたと聞くし、本人たちが自らの意思で決めた事など一つもないんだろうさ」

 

 ガトーの副官というべきカリウス・オットーの言葉にケリィは小さくため息を付く。

 

 シャアを名乗り獅子身中の虫としてジオンに潜り込んでいた長男は論外として、下の姉妹は哀れと思う。

 

 特に末の娘はまだ10歳。

 

 戦場に出した連邦や旗頭に担ぎ出した亡命政府の正気を疑ってしまう。

 

「だからこそ我等の手で介錯してやるのだ。反逆者であるシャアはともかく、建国の父の血を引く姫君が腐った連邦や祖国に弓引く愚か者の傀儡になるなど生き恥でしかない」

 

「そうですな。せめて、これ以上利用されぬよう楽にしてやるのが慈悲かもしれません」

 

「……勝つせよ負けるにせよ、彼女達の未来はロクでもないだろうしな」

 

 そう呟きながら自分達の機体が収められたムサイへ歩いていく三名。

 

 格納庫の中にはガトーたちとは別に、兎を咥えた狼のエムブレムが付いたムサイへ足を運ぶ一組の男女がいた。

 

 一人は黒髪に精悍な顔と隻眼、そして左腕の義手が特徴的な男。

 

 もう一人は男と同じくらいの歳の黒髪が特徴の極東系の20代前半の女性。

 

 彼等は『黒衣の狩人隊』のエースであるウォルフガングと、その婚約者であり部隊の母艦でオペレーターを務めるサキエだ。

 

「なんだか妙な任務に駆り出されちゃったわね」 

 

「今の状況で国を二つに割りかねない勢力が現れたんだ。上が早急に始末したいと考えるのは当然だろう」

 

「でもウォルフは何時も言ってるじゃない。ザビ家のやり方は──」

 

「よせ、サキエ。ここだと誰が聞いているか分からないんだ」

 

 上層部の批判を口にしようとした婚約者の口を生身の手で塞ぐウォルフガング。

 

 たしかに彼はザビ家の独裁も祖国の現状も良しとしていない。

 

 しかしこの場で口にするのは迂闊に過ぎる。

 

 婚約者は自分を追って軍に入ってきたために、未だにシャバっ気が抜けきっていない。

 

 なので、必要のない所でドジをしでかすのだ。

 

「お帰りなさい、ウォルフガング少佐」

 

 彼等の母艦であるムサイ級に戻ると、艦長を務める青年オーランド大尉が二人を迎える。

 

「すまんな。衛星軌道上の警備からお尋ね者の討伐に任務が変わってしまった」

 

「例のジオン共和国亡命政府ですね。よくもまあ、あんな物が出てきたモノですよ」 

 

 ウォルフガングの言葉にオーランドは苦笑いを浮かべる。

 

「ねえ、ウォルフ。さっきの話なんだけど、ウォルフは亡命政府の事をどう思っているの?」

 

「今は何とも言えない。だが連邦を後ろ盾にしている事、例の女の子を担ぎ出している事に関しては信用できん」

 

「アルマリア・リム・ダイクンですか。たしか亡命艦隊を立ち上げる前は連邦兵として戦場に出ていたとか」 

 

「まだ10歳の少女だ、どんな理由があろうと銃を持つべきじゃない。それを破った連邦軍は外道だ」

 

「ウォルフ、まだあの時のことを……」

 

 ウォルフガングはとある任務の際、『エースダック』のブラントンという士官が駆るジムの小隊と戦闘した事がある。

 

 その際、撃墜寸前まで追い詰められたブラントンは戦場に迷い込んできたサイド6の民間シャトルを盾に取った。

 

 そしてブラントンは手が出せないウォルフガングを民間船ごと攻撃した上に、その民間人殺しの罪をプロパガンダの為にウォルフガングへなすり付けたのだ。

 

 結果、今まで敵兵でも戦意を喪失した者や戦えない者の命を奪わなかったウォルフガングは、船を撃沈されて宇宙を漂うようになった連邦の船乗り達を見捨てるような冷徹さを身に着けるようになってしまった。

 

「ともかく、この任務は国防に必要なモノだ。私情を挟むことなく遂行するぞ」

 

「了解!」

 

 ウォルフガングの言葉にオーランド大尉に釣られて敬礼で応えるサキエ。

 

 しかし彼女だけは見抜いていた。

 

 ウォルフガングが迷っている事を。

 

 かつて、サキエはウォルフガングから聞いた事がある。

 

 ブランドンの罠に嵌って民間船の爆発に巻き込まれた際、その衝撃によって彼は操作ミスを起こしてマシンガンを放ってしまったことを。

 

 それは民間シャトルの窓からこちらを見ていた女の子を巻き込んでシャトルを破壊してしまった。

 

 彼の失った右目には、その女の子が怯える表情が刻まれて未だ消えていない事も。

 

『ウォルフ、無理はしないで』

 

 ウォルフガングは古代日本にいた武士が書いた思想書を愛読し、武士道という彼等の生き方に敬意を払うほど戦士の誇りを重んじる男だ。

 

 そんな婚約者だからこそ、言葉で止める事はできない。

 

 サキエにはただウォルフガングが無事に帰ってくることを祈るしかできなかった。

 

 ウォルフガング達を乗せて出航するムサイ級、それをジェリービーンズを頬張りながら見ている男がいた。

 

「アナベル・ガトー達はシロ、狩人共は黒寄りのグレーか」

 

 彼の名はロバート・ギリアム。

 

 ジオン公国軍突撃機動軍所属のエースパイロットで、スカイブルーとクリーム色のパーソナルカラーを持つ男だ。

 

 ロバートもまた共和国亡命艦隊撃滅の為に作戦に参加する。

 

 しかしそれは表向きの理由に過ぎない。

 

 彼が持つもう一つの姿、ギレン・ザビ親衛隊から下された命令は寝返る素振りを見せた仲間の粛清である。

 

 故にロバートは出撃前の演説でも一歩退いた位置からコンスコン艦隊の人間を俯瞰し、裏切る可能性のある者の目星をつけていたのだ。

 

「ウォルフガングは以前から敵への甘い処置が噂に上がる男だった。民間人殺しの一件で少しは現実が見えるようになったと思ったが、頭の中のお花畑は吹き飛んじゃいないようだな」

 

 くぐもった声で呟くとロバートは口の中にあるビーンズを飲み込む。

 

「さて、今回は敵の他に何機落とさなきゃならんのかねぇ?」 

 

 愛機であるパーソナルカラーを纏った高機動型ザクR-2へ移動する彼の呟きは、発進作業の喧騒の中に消えた。

 

 

 

 

【君は】一年戦争を生き抜く転生者のスレ 15スレ目【生き残ることが出来るか?】 

 

 

501 名無しのガノタ

 

アイエエエ!?

 

 

502 名無しのガノタ

 

ガトー!?

 

ガトーナンデ!?

 

 

503 名無しのガノタ

 

コワイ!!

 

 

504 名無しのガノタ

 

ゴボボーッ!

 

 

505 名無しのガノタ

 

正気に戻れ!

 

忍殺めいた感じで失禁しながらゲロ吐いてる場合じゃねえ!!

 

 

506 名無しのガノタ

 

コンスコンなんて天パの数え歌で余裕とか思ってたのに!

 

0083のエースが出てくるとか予想外過ぎる!!

 

 

507 名無しのガノタ

 

というか赤いのヴァルヴァロじゃねーか! 

 

この時期にはまだ無いはずだろ!?

 

 

508 名無しのガノタ

 

いや、ヴァルヴァロ自体は1年戦争末期に試作機が数体できてる!

 

ここで出てきてもおかしくはない!! 

 

 

509 名無しのガノタ

 

問題はGP-01フルバーニアンといい勝負した

 

アレにジムで勝てるかって事だ!?

 

 

510 名無しのガノタ

 

無理でやんす!!

 

 

511 名無しのガノタ

 

ちょっと待て!

 

ガトーたちの他にもパーソナルカラーの機体がいるぞ!

 

 

512 名無しのガノタ

 

水色の高機動型ザクR2と黒い…ヅダ?

 

ザクはともかくヅダは珍しいな 

 

 

513 名無しのガノタ

 

誰か知ってる奴いるか? 

 

 

514 名無しのガノタ

 

水色はロバート・ギリアム専用ザクだ

 

MSVのキャラで一説では戦績としてMS115機と艦船6隻を沈めたガチエース 

 

黒いヅダはウォルフガング。

 

『黒衣の狩人』ってマンガの主人公だな

 

こっちもヅダやザクでジムを沈めまくった凄腕だぞ

 

 

515 名無しのガノタ

 

もうダメだ…おしまいだぁ 

 

 

516 名無しのガノタ

 

俺達みたいなモブのガノタが本物のエースに勝てるわけがなぁい!

 

 

517 名無しのガノタ

 

諦めるな! コッチには天パとシャアがいるんだ!

 

エースは奴等に任せて俺達は雑魚だけやっていればいい!! 

 

 

518 名無しのガノタ

 

そ…そうだな!

 

 

519 名無しのガノタ

 

今コズンの兄貴からも指示があった!

 

数は俺等が勝ってるからリックドムには2対1で当たれって!  

 

 

520 名無しのガノタ

 

けどよ、コンスコン隊のリックドムって美少女じゃなかったか?

 

 

521 名無しのガノタ

 

ジオン少女物語か! 

 

 

522 名無しのガノタ

 

なんてこった! 

 

俺には介錯先生画の可愛い女の子を殺す事なんてできねぇ!!

 

 

523 名無しのガノタ

 

コッチの命が掛かっている時に言ってる場合か!?

 

 

524 名無しのおっぱい

 

心配しなくていいよ

 

アイツ等の中身はオッサンだ カイジに出てくるみたいなね 

 

 

525 名無しのガノタ

 

名無しのおっぱい!

 

 

526 名無しガノタ

 

アイツすげえぞ!

 

もう3機は落としてる!!

 

 

527 名無しのガノタ

 

だが良い事を教えてもらった!

 

 

528 名無しのガノタ

 

ああ! 相手が美少女じゃないと分かったらこっちのモンだ!

 

 

529 名無しガノタ

 

エグバで鍛え上げたテクを見せてやるぜ!!

 

 

530 名無しガノタ

 

へへっ…ぶっ殺せぇ!!

 

 

530 名無しのガノタ

 

ごあぁっ!? コイツ等滅茶苦茶強ぇ!!

 

 

531 名無しのガノタ

 

そう言えばコンスコン隊のリックドムって手練れって設定が……!

 

 

532 名無しのガノタ

 

マジでシャレにならねぇ!

 

誰か支援を!?

 

やられちまう! やられ千葉ぁっ!?

 

 

533 名無しおっぱい

 

バカ野郎!

 

死に際までガノタのノルマ果たしてんじゃねーよ!!

 

 

534 名無しガノタ

 

いや、アイツ生きてるぞ!

 

コアブロックシステムで何とか脱出した!!

 

 

535 名無しガノタ

 

ジム乗り共! 絶対にコックピットに直撃を受けるなよ!

 

ヤバくなったら躊躇なく脱出装置を使え!!

 

 

536 名無しガノタ

 

相棒がやられたらもう一方はフォローだ!

 

命大事に!!

 

 

537 名無しおっぱい

 

おい、ヤバいぞ!

 

赤いMAがコッチに来た!! 

 

 

538 名無しおっぱい

 

装甲がビームを弾きやがる! 

 

これってもしかしてビームコートか!?

 

 

539 名無しのガノタ

 

しかもヴァルヴァロの野郎!

 

ガンダムを一機引き摺ってるじゃねえか!!

 

 

540 名無しのスガイ衆A

 

あれはシイコさんのアリアドネ!

 

 

541 名無しのガノタ

 

なんとかしろよ!

 

あれじゃあ後ろから狙い辛くて仕方ねえ!!

 

 

542 名無しのスガイ衆A

 

わかってる!

 

一刻も早く彼女を救い出さねば!

 

行くぞ! スガイ衆!!

 

 

543 名無しのスガイ衆B

 

ここでシイコさんを助ければ彼女の心は俺のモノだ!!

 

 

544 名無しのスガイ衆C

 

ケリィなんてコウに不覚を取った敗北者じゃけえ!

 

 

545 名無しのスガイ衆D

 

4機いっぺんに掛かれば敵じゃねえ!! 

 

 

546 名無しのガノタ

 

やめろ! スガイ衆!

 

いくなぁぁぁぁぁっっ!!

 

 

547 名無しのスガイ衆A

 

あべしっ!?

 

 

548 名無しのスガイ衆B

 

母さん…僕の…ピアノ……ッ!?

 

 

549 名無しのスガイ衆C

 

めちゃぁぁぁっっ!? 

 

 

550 名無しのスガイ衆D

 

パソコンのHDにあるシイコさんのコラ画像消しておいてくれよ!

 

あれは…いいものだぁぁぁっ!?

 

 

551 名無しのガノタ

 

ああ……スガイ衆が……

 

 

552 名無しのガノタ

 

メガ粒子砲一発で吹っ飛びやがった!

 

……バカ野郎!!

 

 

553 名無しのガノタ

 

悲しんでる暇はねえぞ!

 

ヴァルヴァロの奴 船を狙ってやがる!!

 

 

554 名無しのガノタ

 

アムロぉぉぉぉぉっ!

 

早く来てくれぇェェェェッ!!

 

 

 

 

 サイド6宙域近くで行われた連邦・共和国亡命艦隊とジオン軍の戦闘。

 

 その口火を切ったのは連邦からの艦砲射撃だった。

 

「どうした!?」

 

「サイド6領域を先に越えた連邦軍からの砲撃です! クワメルがやられました!!」 

 

 艦隊旗艦であるチベ級のブリッジを襲う振動。

 

 それを受けたコンスコンの問いかけにクルーの一人が叫ぶように答える。

 

「小癪な……! MSを全て突撃させろ! 艦隊が領域を超えるまでの時間を稼がせるのだ!!」

 

 僚艦の一隻撃沈の方を聞き、してやられたと歯噛みしたコンスコン。

 

 彼はすぐに自分の席から立ち上がるとよく通る声で艦隊全てへ指示を出す。

 

「連邦め、汚いマネを! 行くぞ、カリウス! ケリィ!! 」

 

「ああ!」

 

「奴等に卑怯な手がどれだけ高くつくか、教えてやりましょう!!」

 

 ガトーのゲルググを先頭に後方のスワメルへ向けて牙を剥こうとする三機。

 

 しかし彼等の進路を一条のビームが遮った。

 

「くっ! 何者!?」

 

「あれはっ!?」

 

 急制動の反動に歯を食いしばるガトー、そしてモニターに映る敵影に驚愕の声を上げるカリウス。

 

 ビームの出どころ、それは赤いパーソナルカラーに身を包んだガンダムだった。

 

「あのパーソナルカラー……! おのれぇ!!」

 

 ガトーは怒りの声と共に素早くゲルググを操作すると、近づいてくる赤い流星に向かってビームライフルを放つ。

 

「ふっ、当たりはせんよ!」

 

 一射、二射、通常のパイロットなら火球と化しているであろうメガ粒子の弾丸をガンダムは巧みに軌道をズラして回避する。

 

「ケリィ、奴等の相手は私達がする! 君は敵母艦を!!」

 

 ガトーはシャアを狙い撃ちながら傍らのケリィへ指事を出す。

 

「しかしガトー! 相手は赤い彗星だぞ!」

 

 それを聞いたケリィはガトーの選択を無謀とばかりに声を荒げる。

 

 しかし、ヘルメットのシールドグラス越しに見えるガトーの表情は変わらない。

 

「心配するな! たとえルウムの英雄でも祖国を謀る腐り者に後れは取らん!」

 

「──わかった! カリウス、ガトーを頼む!!」

 

「お任せください!!」

 

 友の覚悟を見たケリィは、部下に後を任せて亡命艦隊に向けてヴァルヴァロを加速させる。

 

「リカルド、アンディ。お前達は周りのリックドムを抑えてくれ」

 

「了解!」

 

「MAはどうします?」

 

「打ち合わせ通りクリス中尉達に任せる。彼女達なら止めてくれるさ」

 

 短い打ち合わせの後、ガンダムに付き従っていた二機のリックドムが軌道から外れる。

 

 彼等が獲物と定めたのはカリウス機と、コンスコン隊から随伴していたリックドムだ。

 

「母国に弓引く裏切者め! 恥を知れ!!」

 

 ヒートサーベルで斬りかかってきたアンディ機の一撃を、同じくサーベルで防ぐカリウス。

 

 そんな彼の糾弾にシャアの部下達は不敵な笑みを浮かべる。

 

「人聞きの悪いこと言うなよ。俺達は誰も裏切っちゃいないぜ!」

 

「なんだと! ぐおっ!?」

 

 言葉と共に、上官のお株を奪うかのようにカリウス機の腹へ蹴りを叩き込むアンディのリックドム。

 

「俺達が従うのは後にも先にもシャア少佐だけだからな! ジオンやザビ家に首を垂れた事なんてないのさ!!」

 

 そしてリカルドは、自分に狙いを定めたリックドムのバズーカが火を噴く前にその砲口へMMP-80マシンガンを叩き込んで誘爆させる。

 

 部下達が奮戦を始める中、四発目のビームを巧みに躱したシャアは、勢いのままにガトーへビームサーベルで斬りかかる。

 

「その赤い機体! 貴様、シャア・アズナブルだな!!」

 

 右から袈裟斬りに振り下ろされるメガ粒子の刃を、すんでのところでビームナギナタの片刃を展開して防ぐガトー。

 

「いかにも。そういう君は何者かな?」

 

 しかし、突撃してきたガンダムの勢いまでは殺す事はできずに深紅の機体と共に大きく進路を外されてしまう。

 

「私はアナベル・ガトー大尉だ! ジオンを揺るがす獅子身中の虫め!!」

 

 怒りと共にガトーが右のレバーを押し込むと、ゲルググはガンダムのサーベルをはじき返す。

 

「獅子身中の虫とは言い得て妙だな。だが、ザビ家が獅子とは誇張しすぎではないか?」

 

 浴びせられるガトーの怒声にもシャアは余裕を崩さない。

 

「建国の父の血を引きながら、私怨で大義を忘れた愚物が言う事か!!」 

 

 そんなシャアの態度が癇に障ったガトーは、手が高速回転するゲルググの機構を活かして両刃展開したビームナギナタを振り回して襲いかかる。

 

 二人の間合いはまだ刀剣で競うモノ、状況はサーベルを弾かれたガンダムが不利と言えた。

 

「貴様を討てば反逆者共は大義の支柱を失う! ここで果てろ、赤い彗星!!」

 

 袈裟斬りから切り上げ、更に横薙ぎと高速回転する両刃の特性を生かして連続攻撃を放つゲルググ。

 

「甘いな!」

 

 しかしシャアは慌てる事無く連続で襲い来るビーム刃を躱すと、相手が大上段にナギナタを振り上げた隙をついて左のレバーを引くとフットペダルを思い切り踏み込んだ。

 

 それを受けてガンダムの胴体に備わった増加装甲にある両胸のシャッターが開く。

 

 その奥から顔を覗かせたのは横に左右二つづつ、計4つ並んだ小型のブースターだ。

 

 ブースターが火を噴くとガンダムの身体は急速に後方へ加速する。

 

 それはガトーが一気呵成に攻め込んでいた剣の間合いからの離脱を意味していた。

 

「いけっ!」

 

 ナギナタが振り降ろされる前に中距離へ脱したガンダムはサーベルと持ち替えたビームライフル、そしてバックパックに装備されたサブアームが持つ二門のビームガンを放つ。

 

「ちぃっ!」

 

 必殺の一撃にカウンターを合わせられた事に、ガトーは忌々しげに舌打ちをしながらシールドを構える。

 

 ゲルググのシールドには耐ビームコーティングが施されている。

 

 シールド表面を叩いたビームガンは弾かれて宇宙の闇に消える。

 

 しかしビームライフルが吐き出した光弾はガトーの予想だにしない場所を狙っていた。

 

 それは未だに旋回をやめないビームナギナタの刃だった。

  

「ぐっ!?」

 

 ガンダムのビームがナギナタによって弾かれた瞬間、ガトーは己はツイていると思った。

 

 何故なら、もし弾かれなければ光弾はゲルググの右肩を射抜いていたからだ。

 

 しかし、それが大きな間違いである事を彼はすぐに思い知る事になる。

 

「なにっ! メインカメラが……!?」

 

 突然大きく歪んで正確な情報を映さなくなったカメラ映像に焦るガトー。

 

 もちろん、これは故障ではない。

 

 ナギナタとの接触で飛び散ったビームライフルのメガ粒子、それがゲルググの頭部へ食らいついた事でセンサーやカメラに不具合が生じたのだ。

 

 マリーが見つけ出したライフルとサーベルの干渉でメガ粒子を散弾のように飛ばす戦術。

 

 それはゲルググでようやくMSに携行できるビーム兵器が現れたジオンのパイロットに分かるはずが無い

 

「アナベル・ガトー、MSの戦闘は貴様等が思うよりも奥が深いものだ!」

 

 明確にゲルググの動きが鈍った事を見たシャアは、バックパックのロケットエンジンを全開にしてガトー機へ突貫する。

 

「っ!? 来るか!!」 

 

 メインモニターの画像が異世界を映したように歪み、センサーの大半が死んだコックピットでは外の様子を殆ど察知する事が出来ない。

 

 それでもガトーは持ち前の勝負勘でシャアが仕掛けてくることを肌で感じた。

 

「モニターの不調程度で……! 落ちろぉ!!」

 

 ナギナタをライフルに持ち替えて銃を放つゲルググ。

 

 だが歪んだ視界を当てにした弾が赤い彗星を捉える事は無い。

 

「ジオンの士官学校でやっていたような、ただ銃で撃ち剣で斬り合うなど序の口である事を私は知った!」

 

 更なるブーストを掛けながら、脹脛に備わったビーム発生装置からメガ粒子の刃をつま先に伸ばすガンダム。

 

「この宇宙には奇手・奇策は当たり前! どんな状況でも必殺の牙を突き立てんとする猛者が五万といる!」

 

 フットペダルを踏み込むシャアの脳裏に過るのは可能性の野獣やモミアゲが眩しいスピードスター、ホワイトディンゴの頭目や蒼い死神。

 

 そしてナックルパートで自分を修正した謎のカラテキッドなど、ネットの海で刃を交えた多くのライバルの姿だ。

 

 『赤い彗星』と呼ばれた自分でも上位ランカーを相手にして楽に勝てたことは一度もない。

 

 そんな強者との切磋琢磨は確実にシャア・アズナブルの腕前を鍛え上げていた。

 

「彼等に比べれば貴様はまだ未熟!!」

 

 加速を込めてアッパースイングで振り上げられたガンダムの右足。

 

「南無三!!」

 

 その瞬間、ガトーの命を救ったのは戦士としての直感だった。

  

 機体を投げ出すように左へ飛んだ結果、胴体を切り裂くはずだったガンダムのビームブレイドは、すんでのところで狙いを外すことになったからだ。

 

 しかし、それも何の代償も無くやり過ごせたわけではない。

 

 ゲルググのコックピットを襲う振動と共に宇宙空間へ飛んだのは、ビームライフルを握ったままの右腕だったのだ。

 

「今のを躱すとはな。──だが!」

 

 右の蹴り上げが躱されたと分かると、シャアは頭部バルカンをけん制に放ちながらAMBACを利用して左足に展開したビーム刃を振るう。

 

「う…うおおおおおおっ!!」 

 

 胴を狙った必殺の一撃にガトーは左に構えた盾を手放すと、それを蹴った反動で大きく間合いを開ける。

 

 身代りにした盾、そしてコックピットハッチを横一文字に切り裂かれながらも撃墜を免れたゲルググ。

 

 しかし無茶な挙動の中でバルカンが頭部に当たったのだろう、不調だったメインカメラがとうとうブラックアウトしてしまう。

 

「ガトー大尉!!」

 

 劣勢に追い込まれた上官を見てカリウスが援護に向かおうとする。

 

「おっと、俺達に背中を向けてどうするつもりだ?」

 

「少佐の邪魔はさせないぜ」

 

 しかし、ヒートサーベルで正面から斬りかかるリカルド機、そしてその援護にマシンガンの弾をばら撒くアンディ機を相手にしていては動くことができない。

 

「私は負けん! スペースノイドの真の自由を勝ち取るという大義によって立っているのだから!!」 

 

 己を鼓舞せんと大義を叫びながら残った手にビームナギナタを構えるガトー。

 

「スペースノイドの解放だと? そんな理想は同胞たる彼等を虐殺したザビ家に与している者が言うべき事ではないな!」

 

「黙れ、裏切者がぁ!!」

 

 それを鼻で笑うシャアに、ガトーは突撃を掛ける。

 

 まだ『ソロモンの悪夢』という二つ名を持たぬ武人の執念は、赤い彗星に届くか否か。

 

 そうしてガトーとシャアがしのぎを削っている一方、ロバート・ギリアムはコックピットで歯噛みをしていた。

 

「コイツ! なんなんだっ!!」

 

 彼は自身の持てる技術を使い、ザクの最終型とも言われているR-2型高機動ザクを全力でぶん回している。

 

 それでも眼前の白い悪魔を振り切る事はできない。

 

「うおおっ!?」 

 

 モニターに映る宇宙の黒、その向こうで薄紅の光点が光ると同時にロバートの背中に悪寒が駆け抜ける。

 

 ほとんど反射的に機体を左へバレルロールさせると、次の瞬間にはビームの光弾がシールドを掠めて通り過ぎていく。

 

 これだ!

 

 ロバートは今まで多くの同僚や連邦兵を屈服させてきた高機動戦闘に置いて、完全に後れを取っていた。

 

 こちらの持つバズーカや対艦ライフルの砲弾は相手の白い機体に掠りもせず、むこうのビームは死ぬ思いで回避を掛けてもこちらの機体を削っていく。

 

 しかも奴はロバートの癖を掴み始めているのか、スラスターが焼け付くほどの勢いで飛び回っているのに狙いの正確さが増しているのだ。

 

「距離を置いていたら鴨撃ちで殺される! 間合いを詰めるしかない!!」 

 

 だが、相手の推力は完全にR2型を上回っている。

 

 間合いを詰め切れるか!?

 

「おおおおおおおっ!!」

 

 胸中の不安を怒号でかき消したロバートは、バズーカから持ち替えたマシンガンをばら撒きながら白い機体へ突貫する。

 

「来るのか! なら!!」

 

 ロバートが白い悪魔と称した機体、NT-1アレックスに乗るアムロは相手の敵意に眉根を寄せる。

 

 そして先ほどまでの距離を置いた高機動戦闘を敵が棄てた事を察した彼の脳裏では、一瞬にして相手を討つための方式が組み上がった。

 

 アムロは敢えて速度を落とすと、敵の牽制射撃を躱しながら中間距離まで誘い込む。

 

 そして相手が更に距離を詰めようとするのに合わせて、左へ逃げながら右手のカバーからあるモノを放った。

 

「逃がすかぁ!!」

 

 弾切れになったマシンガンを棄てて、盾から取り出したシュツルムファウストを手にアレックスを追うロバート。

 

 そんな彼の前に立ち塞がったのは、簡易な形でアレックスを象ったダミーバルーンだ。

 

「子供騙しを!!」

 

 先ほどまで追い詰められていた反動から冷静さを失いつつあるロバートは、ダミーを押しのけながらアレックスを追おうとする。

 

「ぐおぁぁっ!?」

 

 しかし彼の機体が触れた瞬間、ダミーは破裂して中から爆炎をまき散らした。

 

「クソッタレ! 機雷が仕掛けてあったのか!!」 

 

 不幸中の幸いというべきか、仕掛けられていた機雷はMSを破壊するほどではなかった。

 

 機体のコンディションをチェックしながらも爆炎から脱出したロバートは、眼前に現れたモノに思わず呆気に取られた。

 

「……は?」

 

 何故ならそれはアレックスが持っていたビームライフルとシールドだったからだ。

 

「いったい何のつもり……これは囮か!」

 

 ロバートとて伊達にエースパイロットはしていない。

 

 直感の告げるままに視界を上に上げれば、そこにはサーベルを手に切りかかろうと迫るアレックスの姿があった。

 

「ダミーの爆発で視界を塞ぎ、置かれた武器で意識を反らし、本命は上からの奇襲ってか! そんな手に引っかかるかよ!!」

 

 迫って来る奴のスピードからして、見抜かれるとは思っていなかったはずだ!

 

 ここで逆転のカウンターパンチをくれてやる!!

 

 勝利を確信して手にしたシュツルムファウストを固く握りしめるロバート。

 

 そしてアレックスがこちらの射程内に入った電子音声を耳にすると同時に、逆転の一手を向けようとした瞬間だった。

 

 突撃してくると思っていたアレックスは後方宙がえりをするような挙動と共に、背面に背負ったバズーカから二発の砲弾を吐き出したではないか!

 

「───ッ!?」

 

 高性能炸薬がたっぷりと込められた対MS用弾頭は、高機動ザクの顔面と胴体へ連続して突き刺さった。

 

 そしてロバートは声一つ上げる間もなく、愛機と共に宇宙を刹那の間彩る火球と化したのだ。

 

「よし、上手くいった。こちらアムロ! これより艦隊の援護に入ります!!」

 

 相手の撃墜を確認したアムロは、宇宙を漂っていたライフルとシールドを回収すると味方を援護すべく更なる戦火へ身を投じるのだった。

 




マチュ「なんてエゲツない戦法を!? アンちゃん! 殺意を押さえるんだ!!」

アムロ「……できぬぅっ!!」
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