ダイクン家の二女はアホの子   作:アキ山

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 ソロモン戦、開始。

 まずはジャブという事でよろしくお願いいたしまする。


マチュのいないソロモン攻略戦・序盤

 亡命艦隊が艦隊を離れると、間を置かずにチェンバロ作戦が開始された。

 

「ユウ中尉、我々の目的は新兵器発動までの陽動だ。それまでパブリクが撒いたビーム攪乱幕を利用して、有利に立ち回ってくれ」

 

「了解しました、ブレックス閣下」

 

「よし、MS隊発進!!」

 

 ホワイトベースⅡのブリッジにある提督席に座るブレックスの指示で、カタパルトから次々とMSが飛び出して来る。

 

 その先陣を切るのはユウ・カジマが率いる第11独立機械化混成部隊、通称「モルモット隊」だ。

 

「がんばりましょうね、ユウ、フィリップ中尉」

 

「ああ」

 

「あのしつこい青塗れ共との因縁にもカタを付けたんだ。この戦争もさっさと終わらせて、全員で祝勝会といこうや!」 

 

 ユウが駆る宙間戦闘用に換装されたガンダム・ピクシーを先頭にフィリップ・ヒューズのジム・ドミナンス、そしてサマナ・フュリスの操るジム・ライトアーマーが左右に付く。

 

 彼等が進軍していると、ソロモンからの迎撃射撃が光の群となって襲いかかってくる。

 

「来たっ!」

 

「心配するな、パブリクがビーム攪乱幕を敷いてくれている! 俺達はそれを抜けてくるモノだけ警戒すればいい!!」

 

 緊張した声を上げる後続のジムパイロットにユウは冷静に指示を飛ばす。

 

 幸い、要塞からの第一射は全てビーム攪乱幕が無効化してくれた。

 

「皆、第二波のミサイル接近多数! その後ろには迎撃のMS部隊が控えているぞ!!」 

 

「各員、ここで敵MSを迎撃する! ミサイルに当たるなよ!!」 

 

 ユウの指示と共にミサイル群を掻い潜るホワイトベースⅡのMS達。

 

「連邦の雑兵共が! ソロモンには近づけさせん!!」

 

 そんな彼等に牙を剥くのは、高機動型ザクやリックドムなどで構成された敵迎撃部隊だ。

 

「遅いっ!」

 

「がぁっ!?」

 

「う…うわぁぁぁぁっ!?」

 

 しかし次の瞬間、先陣を切ったザクはモノアイを撃ち抜かれて仰け反り、リックドムもコックピットに風穴を開けられて火球へと化ける。

 

 それを成したのは、ユウが操るピクシーが持つ二丁の拳銃タイプのビームガンだった。 

 

「道は俺が切り開く! フィリップ、サマナ! 皆を連れて先に行け!!」

 

「相変わらず手が早いな、『トゥー・ハンド!』」

 

「頼みましたよ、ユウ!」

 

 背面の大型ブースターや脹脛に増設されたバーニアユニットを吹かし、縦横無尽に宙を駆けながら二丁拳銃を乱射するピクシー。

 

 一見すれば弾幕を張っているように見える連続射撃だが、放たれたメガ粒子の弾丸は次々と彼等に狙いを定めたソロモン守備隊のコックピットやメインカメラを射抜いていく。

 

「これ以上はやらせんぞ、ガンダム!!」

 

 しかし熟練兵が操る高機動ザクの一機がユウの狙いを躱し、ヒートホークを手に襲いかかる。

 

 頭部をカチ割らんと振り下ろされた高熱の刃、それを防いだのはハンドガンの銃口の下から生えたビームの刃だった。

 

「なにっ!?」

 

「侮ったな。俺の武器は遠近双方に対処可能だ」

 

 手首の回転でヒートホークの刃をいなすと、ピクシーは銃床で斧を持つザクの手首を打ち据える。

 

「ごわぁっ!?」

 

 そして相手が体勢を崩したところでコックピットへ狙いを定めたもう一方のハンドガンをゼロ距離で叩き込んだ。

 

 ザクを屠ったユウがクルリと機体を反転させると、そこにはヒートサーベルを振り上げた体勢のリックドムの姿。

 

「ひっ!?」

 

 漆黒の重MSを操るパイロットはその瞬間、情けない悲鳴を上げた。

 

 それも無理はないだろう。

 

 何故ならモニターに大映りしているのは、敵機がこちらへ突きつけている拳銃の銃口だったのだから

 

「……」

 

 接触回線で聞こえる相手の声を耳にしながらも容赦なく引き金を引くユウ。

 

 銃声は一つ、しかしリックドムの身に開いた穴は二つ。

 

 モノアイと動力部を撃ち抜かれ、一瞬の間を挟んで爆発する敵機を背にピクシーは宙を駆ける。

 

 次にユウの行く手を阻んだのは、ナギナタの両端にビーム刃を展開したゲルググだ。

 

「これ以上はやらせんぞ、連邦めぇっ!」

 

 頭上で高速旋回させて勢いを増したナギナタを唐竹に振り下ろすゲルググ。

 

 その機体反応速度はジオン最新鋭機の名に恥じぬものだ。

 

「はぁっ!!」

 

 しかしその一撃をユウはガンブレイドにビーム刃を展開して受け止める。

 

「なにぃっ!?」

 

 否、ただ受け止めたのではない。

 

 相手の斬撃の軌道上に掲げたブレイドに少し角度を付け、敵と自身の刀身を形作るメガ粒子の反発を利用して刃を滑らせたのだ。

 

 まるで本物の刀剣を使った殺陣のように。

 

 思わぬ形で斬撃をいなされたゲルググは、否応無しに前のめりの体勢を取らざるを得ない。

 

「もらったっ!」

 

 そこへ跳ね上がるのはもう一つビームガン。

 

「がぁぁぁっ!?」

 

 銃口から放たれた薄紅の弾丸は狙い違わずにゲルググのコックピットを射抜き、相手のモノアイとナギナタから光が消える。

 

「ルスタン!? よくもルスタンをぉぉぉっ!!」

 

 怨嗟の籠った怒声と共に襲いかかってきたのは、撃破されたゲルググの僚機であろうリックドム。

 

 漆黒の巨人は相棒の変わり果てた姿に激昂しながらヒートサーベルを引き抜いて突撃してくる。

 

「甘いな」

 

 そんな重MSに対し、ユウが放ったのはサーベルでもメガ粒子の弾丸でもない。

 

 それはAMBACと腰の駆動を活かした前蹴りであった。

 

「ぐぅっ!?」

 

 強かに胴へと突き刺さった敵の右足が伝える衝撃に、リックドムのパイロットは思わず息を詰まらせる。

 

 その一瞬が命取りになった。

 

「ふっ!」

 

 鋭い呼気と共にユウは蹴り足を起点に跳びあがると、左足の脹脛に備わったブースターとバックパックの推力を全開にして上昇する。

 

「うわぁぁぁぁぁっ!?」

 

 そしてリックドムの頭に蹴りを入れてさらに体勢を崩したところで、ハンドガンの二射によって後頭部と背面からコックピットを撃ち抜いた。

 

 これこそが蟲毒さながらのシミュレーターネットワークの中で、『ガンブレイド』という漢のロマンに魅了されたユウ・カジマの戦い方だ。

 

 ルウム戦役の際に戦闘機のパイロットだった彼は、その際の苦い敗北からMSの脅威を肌で感じ、ジオンにこれ以上何も奪わせない為にも対抗できる力を欲した。

 

 V作戦の派生で募集されたMSパイロットへの転課募集にもいち早く応募したのも、より強い力を求める為だった。

 

 そんな彼が鹵獲したザクによる操縦技術習得に並行して行ったのが、MSシミュレーターによる仮想対戦だった。

 

 そこは軍のパイロット候補だけでなく、『戦火の絆』というゲームを介して多くの一般プレイヤー達が鎬を削る修羅の世界。

 

 当然戦略や選ばれる武器も千差万別で、多くの者が基本であるマシンガン・ヒートホークを使う中、ウォーハンマーやパイルバンカーなどのキワモノも出回っていた。

 

 初太刀に全てを賭ける薩摩兵子さながらのプレイヤー、両腕や肩・腰部にまで大小様々なガトリング砲を付けた火力バカ。

 

 身の丈ほどのランスに蛇腹剣、鎖鎌やワイヤーブレイドを使うモノ好きもいれば、ナックルガードのみで戦うまさかのステゴロ野郎も存在した。

 

 そんな多種多様なライバルたちを前に、ユウが選んだのが拳銃と銃剣が一体になったガンブレイドだった。

 

 取り回しの良さと二丁拳銃の速射性、そしてリーチは無い代わりの近距離での手数の多さ。

 

 なにより見栄えの格好良さが彼の心を掴んだ。

 

 もちろん、ガンブレイドはクセの強い武器だ。

 

 一朝一夕でモノにできる程甘くは無い。

 

 しかしユウはシミュレーターの中で幾度も失敗と敗戦を重ねながら、必死にその腕を磨いていった。

 

 それに加えて戦い方の研究の為にナイフコンバットと拳銃による戦い方をあらためて学び、更には旧世紀の映画からガン・カタという武術まで研究し取り入れたのだ。

  

 そんな血のにじむような努力は実を結び、モルモット隊が正式稼働する頃にはユウは上位ランカーとして『トゥー・ハンド』の異名を轟かせるほどになっていた。

 

 ジムの装備にガンブレイドが採用されたのも、ひとえに彼の情熱の賜物と言っていいだろう。

 

 その後、ユウはとある作戦で暴走した蒼いジムと遭遇する事になるが、その際に彼はガンブレイドを有効に使って鎮圧した。

 

 たしかに暴走したジムの動きはすさまじかった。

 

 通常のジムを大きく超える機動性とパワー、そして狙いを付けた瞬間に反応する避け勘の良さ。

 

 奴が多くの友軍機をスクラップに出来た理由を、交戦して1分もしない内にユウ達は痛感させられた。

 

 しかし、ユウとて伊達に猛者が蠢くシミュレーターで名を馳せたわけではない。

 

 強者が互いを喰い合う蟲毒さながらの世界では、蒼いジム程度の避け勘と反応速度を示すプレイヤーはゴロゴロいた。

 

 だからこそ、ユウは部隊に被害を出すことなくジムを鎮圧する事が出来た。

 

 その際に何時もの癖で頭を撃ち抜いたのはご愛敬といったところか。

 

 アルフ・カムラという技術士官が暴走機の回収に現れたのだが、蒼い機体が頭部を消失していることに呆然としてしまう。

 

 どういう事かと詰め寄ってきた彼にユウはこう語ったという。

 

『速さと避け勘が少し厄介だったが、動きが酷く雑だった。あれならサイド7の死神共なら一分かけずに撃墜できる』

 

 その後にジムでは操縦技術に追いつかないとの上の判断からガンダム・ピクシーに乗り換えたユウは、ジオンの騎士を名乗るニムバス・シュターゼンが駆る蒼を基調に肩を赤く塗ったジオンのMSと遭遇。

 

『まさか! EXAMの力を得た私が、連邦の雑兵などに!?』

 

『そのシステムは不完全だ。生き残りたければ、自分自身の腕で戦う事だな』

 

 この機体『イフリート改』には先に鎮圧した蒼いジム、『ブルーディスティニー1号機』と同じ特殊機構『EXAMシステム』が搭載されていたのだが、ユウはピクシーの機動性とガンブレイドの手数の多さで相手を圧倒し撃破に成功する。

 

 そんな彼等へ次に下った任務は、ジオンに奪われた試作機の追跡と破壊だった。

 

 奪われたのは例の蒼いジムの兄弟機であるブルーディスティニー2号機、犯人はイフリート改に乗っていたニムバスだ。

 

 元々ニムバスはイフリート改やブルーディスティニーの生みの親であるジオンからの亡命者、クルスト・モーゼス博士の抹殺を目的としていた。

 

 本懐を遂げたニムバスは、クルストの研究所に置いていたブルー2号機を奪って宇宙へ逃げたのだ。

 

 そしてユウ達モルモット隊は、標的であるニムバスと2号機と相対する事となった。

 

『今回は同じタイプのMSだ! 前のような不覚は取らんぞ!!』

 

『まだシステム頼りか。如何に反応が速かろうが、パイロットの意思から離れた動きは隙にしかならないと、まだ理解できんようだな』

 

 相手は連邦製のMS、しかも最新鋭のRX-80をベースにしたピクシーと同じガンダムタイプだった。

 

 しかしユウはEXAMシステムを発動させたニムバスの駆る2号機を、己の技量のみで圧倒してみせた。

 

 しかし、こうなるのは当然のことでもあった。

 

 3機の蒼いMSに搭載された『EXAMシステム』、それはとあるニュータイプの少女の意識を取り込んで完成したシステムだ。

 

 機体のリミッターを解除してニュータイプの動きを再現する事が売りのこのシステムだが、致命的な欠点がある。

 

 それは基盤となる少女がテストパイロットであり、実戦経験など殆どないということだ。

 

 ならばピンキリとはいえ勘の良い人材に事欠かないシミュレーターネットワークで、日夜しのぎを削り続けたユウが対処出来ないわけがない。

 

 ブルー1号機やイフリート改との戦いで『EXAMシステム』…いや中にいるマリオン・ウェルチの癖を見抜いた彼は、二丁流の手数と取り回しの良さを活かしたフェイントなどでニュータイプ特有の先読み反応を誘った。

 

 そしてシステムが齎すパイロットが予期しない回避行動などの隙を突くことで、中に乗っていたニムバスごと『EXAMシステム』を完封してみせたのだ。

 

 こうして2号機は撃破され、モルモット隊は誰一人欠ける事無く任務を達成する事が出来た。

 

 その実績を買われた彼等は、チェンバロ作戦への参加を命じられてここに至るわけだ。 

 

「初撃は退けたがまだ油断はできん。この戦い、鬼が出るか蛇が出るか」 

 

 打ち倒した敵の骸が宙を漂うのをバックに、ビームガンから空になったマガジンを排出するピクシー。

 

 この短期間でユウは7機もの敵機を撃墜、もしくは無力化している。

 

「モーリン、フィリップ達はどこまで進んでいる?」

 

「今は敵が敷いたと思われる第一防衛線の中間程度、ビーム攪乱幕の効果範囲内ギリギリで戦っているわ」

 

「了解。これより合流する!」

 

 そう独り言ちたユウは、腰部にマウントされた予備弾倉を流れるような仕草で装填すると仲間と合流すべく宙を駆ける。

 

 蒼い運命を撃ち砕いた二丁流の悪魔は、この戦いに何を齎すのか? 

 

 

 

  

 連邦軍がソロモン攻略の為の精鋭を送り込む中、ジオンもまた先制パンチの為に切り札の一つを切っていた。

 

「ここまでの戦いを見るに、数だけのザコってわけじゃないようだ。お前達、油断するなよ!」

 

「分かってるよ、ジョニー!」

  

「それでも私達キマイラ隊の敵じゃないけどね!」

 

 第一部隊の隊長であるジョニー・ライデン少佐の忠告に、部隊でも若年のユーマ・ライトニングとイングリッド・0が自信満々に答える。

 

 彼等キマイラ隊はジオン公国軍突撃機動軍に創設されたキシリア・ザビ直轄の特別編成大隊だ。

 

 彼等は各地から選別されたトップエースのみを集めて編成され、最新鋭機だったゲルググ系のMSが優先的に配備されている事から『エース部隊』とも呼ばれている。

 

 本来であればキシリア・ザビの命令にのみ従う彼等だが、当の主が総帥であるギレンに謹慎を食らったために一時的にドズルの配下としてソロモンの防備に就いている。

 

 そんなキマイラ隊は小隊規模に分かれて東西南北の各フィールドに配置され、各々が連邦の侵攻を食い止めていた。

 

「ジャコビアス、そっちはどうだ?」

 

 青の高機動型ゲルググと赤のゲルググキャノンを引き連れ、紅の高機動型ゲルググを駆るライデンは相棒へ問いかける。

 

 ジャコビアス・ノードはキマイラ隊第一小隊の副隊長で、ジオン軍屈指の腕前を持つスナイパーだ。

 

 彼はライデン率いる隊から少し後方にあるデブリ帯に身を隠し、狙撃特化の装備を持つ黄土色を基調にしたゲルググキャノンで狙撃体勢に入っていた。

 

「とっくに所定位置に着いている。だが、奴等の艦隊を狙うには少し遠いな」

 

「なら、お前の弾丸が届くところまでおびき寄せる……!?」

 

 ライデンは通信の途中で右側の操作レバーを大きく左へ傾けた。

 

 それに応じて紅の機体が右側へ大きくバレルロールすると、次いで膨大なエネルギーの奔流が先ほどまでライデンがいた場所を薙ぎ払う。

 

「どうした?」

 

「……なに、少しばかり気の早い客が来ただけだ」

 

 不敵に笑うライデンが向けた視線の先、モニターに映ったのは重装甲を鎧ったガンダムだ。

 

 水色を基調にしながら胴体などは濃い紺色に染め上げたその機体は大型のバックパックに二枚の盾とミサイルポッド、ビームキャノンを備えていた。

 

 そしてなにより目を引くのは右手に備わった凶悪な牙。

 

 俗にパイルバンカーと呼ばれる鉄杭である。

 

「よう、そこの赤いの。俺と遊んで行かねえか?」

 

 国際チャンネルを使っているのだろう、通信機から流れてきたのは傲慢さとヒリ付くような闘争心が籠った声。

 

 それを耳にしただけで、ライデンには眼前の敵は自分が相手をすべき手練れである事が分かった。

 

「おいおい、勘弁しろよ。いくら俺が色男だからって、野郎にナンパされる趣味は無いんだがな」

 

「つれない事を言うなよ。これだけデカいダンス会場なんだ、性別なんて関係ねえ。強い奴が強い奴と食い合うのがマナーってもんだろ」

 

 ライデンの減らず口に相手のパイロットはニヤリと笑う。

 

「強い奴ねぇ……。お前さん、腕に自信があるようだが、俺のお眼鏡に適うかな?」 

 

「へっ、なら試してみろ!!」

 

 ライデンが不敵に口角を吊り上げると、ガンダムは大型バックパックを吹かせて宙を駆ける。

 

 大きく左に回り込みながらライデン機へ向けた左腕、そこには大型の盾とガトリングガンが一体になった武器がマウントされていた。

 

「チッ!」

 

 回転する銃身が鉄火を吹き出すと同時に、ライデンは機体を右へ旋回させて襲い来る弾雨から逃れる。 

 

「ジョニー!?」

 

「ユーマ! コイツは俺が抑える! お前達は任務を続行しろ!!」

 

 ユーマ自身も相手が強敵と分かったのだろう、イングリッドと共に援護に回ろうとしたが、それに当のライデンが待ったをかける。

 

「大丈夫なの、ジョニー?」

 

「バカ、俺が負けるわけないだろ!」

 

 自分を気遣うイングリッドにライデンは高速機動でGが掛かる中、ニヤリと笑みを浮かべてみせる。

 

 それを受けて進軍を続けようとしていたユーマ達。

 

「くっ!?」

 

「あぶなっ!」

 

 しかし彼等の行く手を阻むように三条のビームが通り過ぎる。

 

「ヤザン中尉! 先走るなと言っておいただろう!!」

 

 ビームが飛んできた方向にいたのは、4機のジムスナイパーⅡで構成された小隊だった。

 

「悪いな、バニング大尉。美味そうな獲物がいたんで我慢できなかった」

 

「チッ! コイツも狂犬の類か! まったく、俺の部下運の悪さはどうなっているんだ」

 

 まったく悪びれる様子の無いフルアーマーガンダム・カスタムのパイロットであるヤザン・ゲーブルに、ジムスナイパー小隊の隊長機の中でサウス・バニングは舌打ちをもらす。

 

「ホント困っちまいますよね、大尉?」

 

 そこへチャチャを入れるチョビ髭が特徴的なちょい悪オヤジ、ベルナルド・モンシア。

 

「お前は問題児筆頭だろうが、モンシア!!」

 

「す…すみません!!」 

 

 しかし、モンシアの台詞は上官の怒りの矛先を自分へ向けるだけだった。

 

 一大作戦で部隊の面子が固くなっていない事に内心で安心するバニングだが、何時までも漫才をしている余裕はない。

 

 自分達の前にいるのはモニター越しに見るだけで分かる程の手練れなのだ。

 

「モンシア、ベイト! お前達は俺と共に前衛に付け! アデル、お前は後衛で支援射撃だ! 奴等の布陣から見て、向こうにも後方支援要員…おそらくはスナイパーが配置されている可能性が高い。各員は常に狙われていると頭に叩き込んでおけ!!」

 

「「「了解!」」」 

 

 バニングの指揮のもと、淀みない動きで陣形を取る不死身の第四小隊。 

 

 その動きからむこうも熟練の兵である事を悟ったライデンはヘルメットの奥で小さく舌打ちをする。

 

「ジャコビアス、俺の事はいいからガキ共のフォローを頼む」

 

「わかった、奴等への指示はこっちで出す。だが気を付けろよ、ジョニー。あのパーソナルカラーと装備、おそらく奴は『白狼殺し』だぞ」

 

 ジャコビアスの忠告にライデンの眼が鋭さを増す。

 

 ソロモンのエースであり、白狼の異名を持つシン・マツナガが討たれた事は当時のジオン軍にとって衝撃だった。

 

 MSの実戦配備が始まったばかりの連邦に、それだけの腕を持つパイロットがいるなど想定外だったからだ。

 

 しかも相手は一対一で白狼を下したとなれば猶更だ。

 

 生き残った兵の証言から、白狼を討ったのは青を基調にした右手に凶悪な牙を備えた重MSを駆る野獣のような男という事は分かった。

 

 件のMSはルナツー宙域や地球の衛星軌道上で行われた小競り合いに度々現れ、圧倒的な戦闘力でジオン宇宙軍の刺客を次々と食い殺していった。

 

 そういったこともあり『白狼殺し』はジオン宇宙軍、とりわけソロモン所属の者達にとって恐怖の代名詞となっていた。

 

「面白いじゃないか。赤い彗星と闘る前のウォーミングアップにはちょうどいい」

 

 しかし、強敵を前にしてもライデンに焦りはない。

 

 その精悍な顔に浮かぶのは獰猛な笑みだけだ。

 

「むこうも対戦カードが決まった事だし、こっちも続けようじゃねえか。なぁ、赤い彗星モドキ」

 

「ははははははは。───ぶっ殺す!」

 

 こうして紅い幻獣と青い野獣はソロモンを舞台に互いに牙を剥くのだった。

 




二丁流誕生秘話

ユウ「二丁拳銃なぞ、おのれ───そんなもの誰が使ったって格好いいに決まってる! オレも使いたいなー!!」
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