ダイクン家の二女はアホの子   作:アキ山

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終盤だから仕方ないけど戦闘に継ぐ戦闘!

脳がはちきれちまうぜェ!!



マチュと復讐のテロリスト(中編)

 その瞬間、レビル率いるテロリスト艦隊に激震が走った。

 

 怨敵であるジオン公国へ向けて進軍していた彼等の戦艦一隻が、突然ビームによって撃ち抜かれたのだ。

 

 間が悪い事に攻撃が命中したのは、虎の子であるジム・エクスプレスが数機収まっていたMS格納庫。

 

 主武装である核弾頭も当然そこにあり、装備された機体が破壊されたことによって誘爆し、被害に遭った船は周囲の僚艦を巻き込む原子の火球となって更なる被害をまき散らした。

 

「な…何事だ!?」

 

 爆発の衝撃に晒されて大きく揺れるかつてはグレイファントム、今はアナンケⅡと名を変えたペガサス級強襲揚陸艦の一隻。

 

 その中で提督席から転げ落ちたレビルは、額から血を流しながら叫ぶ。

 

 床にぶつけて切った場所は奇しくもルウム戦役で負った傷と同じ場所だ。

 

「索敵範囲外からの砲撃……いえ、狙撃です! 巡洋艦ドミニオン轟沈! ジムに搭載していた核弾頭が誘爆した事でヴァーチャー、ケルプ、ソロネも消滅しました!!」

 

「くっ!? 何時でも使用できるようにしていたのが仇となったか! 敵の位置は!?」

 

「ただいま、レーダー範囲を拡大する為のセンサードローンを……うおおっ!?」

 

 レビルの鬼気迫る声に艦長を任された大佐が現状を答えようとしたその時、再びアナンケⅡを激震が襲う。

 

「どうしたぁっ!?」

 

「敵の第二射です! 今度はパワーズが僚艦4隻を巻き込んで撃沈! 被害甚大です!!」

 

「おのれぇ!」

 

 これでレビル達が喪った艦艇は9隻、これはテロリストが擁する艦の三分の一に相当する数だ。

 

 それが腹に抱えていた特別仕様のMSと核弾頭も同様の損失を受けている。

 

「我等の悲願の為にもこれ以上被害を受けるわけにはいかん! 各艦、陣形を放棄! 味方を巻き込まぬように僚艦の距離を取るのだ!! 同時に索敵も急げ!!」   

 

 このままでは自分達は猟師に狙われた鴨の如く、いい様に狩られるだけだ。

 

 その危機感と己の悲願を前にして現れた邪魔者への憎悪も相まって、鬼気迫る表情で指示を飛ばすレビル。

 

 そんな中、レーダー手が半ば怒鳴る様に叫びをあげる。

 

「レーダーに感あり! 敵は南西! 仰角120! 距離は6km! 識別信号に該当する船籍がありました! 敵はペガサス級強襲揚陸艦番外『トリビューン』!! ジオン亡命艦隊の旗艦です!!」

 

「亡命艦隊だとっ!?」 

 

 レーダー手の報告にレビルはきつく奥歯を噛み締める。

 

 ジオンの足元を崩す為に飼っていた捨て駒達が、こんな所にいるなど想定外だ。

 

「ソロモン攻略で正規軍を動かせん代わりに、我々を止める為に奴等を差し向けてきたか! ティアンム、いやゴップの差し金だな!!」

 

 星一号作戦に参加していた奴等が自分達の邪魔をする理由など、これ以外に考えられない。

 

「MSを緊急発進させよ! 奴等に第三射を許してはならん!!」

 

「ピースメーカー隊はどうしましょう?」

 

「5機だ! 奴ら程度の規模ならそれで十分だろう! 通常の部隊に敵MSを露払いさせ、奴等の母艦へ核を叩き込んでやれ!!」

 

「了解しました!!」

 

 レビルの指示に艦長が頷くと同時に、オペレーターから緊張を含んだ報告が飛ぶ。

 

「敵MS接近!」

 

「こちらもMSを出せ! さきほども言ったがピースメーカー隊は5機のみだ!!」 

 

「了解! スカーレット隊、出撃!!」

 

 アナンケⅡからスラスターが放つ光の尾を引いて飛び立っていくのは連邦軍最新鋭のMS達。

 

 ソロモンエクスプレス同様、レビル達がこれを手に入れるのは本当に骨が折れたのだ。

 

 しかし、その苦労に見合うだけあって彼等の性能は折り紙付きだ。

 

 ジオンの新型機ゲルググはもちろん、連邦のフラグシップ機であるガンダムすら凌駕するほどである。

 

「ふぅ……」

 

 信頼できる刺客を送り込んだからだろう、提督席に戻ったレビルは先ほどまで頭に上がっていた血が降りるのを感じていた。

 

 自分が知る限りでは、ジオンの亡命艦隊に配備されているのは鹵獲したザクをレストアした物くらいだ。

 

 トリビューンを与えたのも、連邦が支援する亡命政府がみすぼらしく見えては意味がないという政治的パフォーマンスに過ぎない。

 

 そんな雑兵共は自分達に適うはずがない。

 

「スカーレット隊、全滅!!」

 

「なにぃっ!?」

 

 しかし、レビルの耳朶を叩いたのは自分が思い描いた結果とはかけ離れたモノだった。

 

「敵MS、こちらへ向かってきます!!」

 

 そしてブリッジのモニターに映った望遠映像、その中で宇宙を駆けるのはドム2機を従えた深紅のガンダム。

 

 その通常のパイロットを寄せ付けない機敏な動きは、映像を見るテロリストたちに最悪の人物を思い浮かばせた。

 

「赤い…彗星……」

 

「ダイクンの子倅め、我々の前に立ち塞がるか……!」

 

 艦長が呆然と呟く中、レビルの口からは怨嗟の声が漏れる。

 

 そして彼は提督席から立ち上がると、ブリッジ全体へ聞こえるように声を張り上げる。 

 

「各艦に通達! 全戦力を以て敵を迎え撃つ!! 通常戦力は出し惜しみをするな!! アズラーイール隊を、プロト・ゼロも出せ!!」

 

「よろしいのですか?」

 

「赤い彗星がいる時点で我々の知る亡命艦隊ではない! 敵戦力を見くびるな!!」

 

 驚きと共に振り返る艦長へ決意を込めて頷くレビル。

 

 ジオン本国攻めに用意した虎の子だが相手が相手だ、出し惜しみをして全てを失うなど愚の骨頂。

 

「我々は負けるわけにはいかんのだ。正義の為に、散って逝った命の為に……!」

 

 こちらへ向かってくる特殊装備のジム隊を映すモニターを見るレビル、その眼には狂気の光が宿っていた。

 

 一方、テロリストへ向けて進軍を続けるシャア達はコクピットの中で小さく首をかしげていた。

 

「少佐、今の奴等はなんだったんですかね?」

 

「敵が近づいてきているのに一発も撃つことなく棒立ちとか、いったい何がしたかったんだ?」

 

 先ほど文字通り蹴散らしたスカーレット隊はジム・スナイパーⅡに量産型ガンキャノン、そしてジム・コマンドという連邦軍の最新鋭機で構成された部隊だった。

 

 しかし彼等は抵抗らしい抵抗もなく、宇宙の塵へと還って逝ったのだ。

 

 新兵か下手をすればそれ以下な練度のパイロットに高性能機を任せるテロリスト、リカルドやアンディには彼等の意図がさっぱり理解できなかった。

 

「さてな。だが、奴等を連邦パイロットの基準と考えるなよ」 

 

 内心では二人に同意しつつもシャアは敢えて注意を促す。

 

 戦場での慢心は死への一本道だ。

 

「大丈夫ですよ。例のシミュレーターをやれば、奴等の腕前がどれほどか嫌でも分かりますから」

 

「あんな奴等の頂点に立ってるんだから、アムロの坊主や妹さんの腕が立つのも納得ってもんだ」

 

 そんな上官の忠告に軽口を叩きながらもアンディやリカルドは表情を引き締める。

 

 実際、二人は未だに連邦軍で稼働しているシミュレーターネットワークでは、中堅レベルを突破できないでいる。

 

 ジオン軍パイロットの中でも上澄みと思っていた自分達がだ。

 

 そして今対峙しているテロリストの中には、あの蟲毒のようなシミュレーターで腕を磨いた猛者がいる可能性が高い。

 

 ならば、相手を侮るなど愚の骨頂である。

 

 部下二人から伝わる静かに燃え上がる気迫に小さく笑みを浮かべていたシャアだが、前方から襲ってきた肌を刺すような重圧に表情を引き締める。

 

 次いでモニターに現れたのは、全身をモスグリーンに染めた重装甲のガンダムと2機の見覚えのない量産機らしき機体だった。

 

「噂をすればなんとやらだ。ぬかるなよ、二人とも!」

 

「「了解!!」」

 

 シャアの言葉に威勢よく応じると、アンディとリカルドは左右へと別れる。

 

 シャアは重装甲のガンダム、そしてアンディ達が相手取るのはガンダムの後方に位置する量産機。

 

 この辺は言葉にせずとも伝わるのは、いくつもの戦場を共に駆けてきた阿吽の呼吸という奴だ。

 

「赤い彗星がこちらへ着いたと聞いていたが、まさかガンダムまで紅く塗るとはな」

 

 凄まじいスピードで襲い来る深紅のガンダムを前に、モスグリーンの機体ことフルアーマーガンダムのコックピットの中でハインツ・ベアはぺろりと自分の唇を舌で潤す。

 

 連邦の傑作機たるRX78の第三仕様G-3に増加装甲を纏わせた彼の愛機は、本体に施されたマグネットコーティングと相まってドムなど他の重MSとは一線を画す運動性を有している。

 

 そして自分が背を預けているのはジーラインというRX-78・ガンダムを完全量産するというコンセプトで生み出された試作機だ。

 

 ジムの登場で正式採用は見送られたが、それでも生み出された目的を果たせなかったわけではない。

 

「コイツ等……速い!?」

 

「ジムとはモノが違う!」

 

 紅いガンダムの背後にいたリックドムへ襲いかかる二機のジーライン。

 

 そのスピードは明らかにシミュレーターや亡命艦隊で相手取ったジムを上回っている。

 

「俺達に尻尾振って降伏した負け犬共が! 血迷いやがって!!」

 

「テメエ等も所詮は宇宙のクソってわけか! なら遠慮なくぶっ殺せるぜ!!」

 

 憎悪と殺意を込めて手にしたビームライフルを放つ2機のジーライン。

 

 しかし放たれた光弾が相手へ食らいつくことはない。

 

「甘いんだよ!」

 

「こっちだって、ただのリックドムじゃないんだぜ!!」

 

 重MSとは思えない加速で宙を駆ける彼等はジーラインの攻撃を躱してみせたのだ。

 

 アンディ達の加速力の源泉は背中に背負ったロケットモーター付きの大型バックパックにある。

 

 二人のリックドムはテロリストを追う航海の中、メイ・カーウィンがゲイルディアスのデータを基に亡命艦隊のジム隊から得た予備パーツを使って改装が施されたのだ。

 

 二人はこれをリックドム・高機動型と呼んでいる。

 

「今度はこっちの番だ!」

 

 アンディは素早くコンソールにあるキーボードを操作すると、レバーに付属されたトリガーを引く。

 

 それに連動してリックドムのバックパックに付いたサブアームが前面に展開し、それが持つビームガンとドム本体の右腕が向けたマシンガンが弾幕を張る。

 

「ドムがビームだと!?」

 

 予期せぬ攻撃に慌てて盾を構えるジーライン。

 

 盾にはビームコーティングが施されている為に光弾によって貫かれる事は無かったが、それでも着弾の衝撃を逃す事はできずに大きく後退する。

 

「もらった!」

 

 相方が反撃を放つ間にも、リカルドは天地逆の状態で手にしたバズーカを放つ。

 

「ちぃっ!?」

 

 弾速が遅いバズーカならばと相対していたジーラインは回避を試みるが、それは罠。

 

「掛かったな! 本命はこれだ!!」

 

「うおおっ!?」

 

 その動きをトレースしたサブアームから放たれたビームガンの光弾によって、ジーラインは左足の膝から下を吹っ飛ばされてしまう。

 

 一方、シャアとベアが駆る二機のガンダムも熾烈な争いを繰り広げていた。

 

「くらえっ!」

 

 ベアは右手に備わった二連装ビームガンと背面のキャノン砲を放つ。

 

「甘いなっ!」

 

 しかし相手はガンダムの機動力を極限まで高めたカスタム機だ。

 

 襲い来る二条の光と砲弾に、その影すら踏ませはしない。

 

「さすがは扱いが難しいBプランのバックパックを背負っているだけはある! だがなぁ!!」

 

 しかし、ベアは相手のスピードに振りきられてはいなかった。

 

 左腕が掴んでいるレバーを思い切り引けば、フルアーマーガンダムは胸部と両膝の装甲を展開。

 

 その中から現れたのはズラリと並んだマイクロミサイルだ。

 

「いくら速かろうと、コイツは避けられないだろ!!」 

   

 気合と共にトリガーを引き絞れば、それに応じてミサイルが次々と吐き出される。

 

「ちっ! だが!」

 

 前方だけでなく左右からも進路を塞ぐ形で襲い来るミサイルの雨に小さく舌打ちをするシャア。

 

 そんな態度とは裏腹に、彼はフットペダルを踏み込んで愛機を加速させる。

 

 ロケットモーターが唸りを上げる中、深紅のガンダムが選んだのは後退ではなく前進。

 

 そう、敢えてミサイルの群へと飛び込んだのだ。

 

 もちろんシャアは無策で死地へ突撃したわけではない。

 

 加速によるGの中でサブモニターに表示されたウエポンセレクターの操作に合わせてトリガーを引けば、ガンダムの頭部に備わっているバルカンが火を噴いた。

 

 放たれた鉛弾は進路上のミサイルへ食らいつくと、次々と誘爆させていく。

 

 そうして造り上げた突破口を潜る事で、ミサイルの雨を切り抜けた深紅のガンダム。

 

「アレを抜けてくるか!?」

 

「もらった!」

 

 驚愕の声を上げるベアに向けてシャアは手にしたビームライフルを放つ。 

 

 マチュからコツを教えられたビームライフルの連射、それによって放たれた3条の光弾はフルアーマーガンダムの胴、顔、胸へと牙を剥く。

 

「悪いが、その程度じゃあくれてやれねえなぁ!!」

 

 同じ連邦製の機体という事で通信機が吐き出すシャアの声にベアが選んだのは突撃。

 

 背部の大型バックパックと脹脛側面のスラスターを吹かして加速に乗ったフルアーマーガンダムは掲げた左腕のバックラーで顔を護ると、胴と胸を狙ったビームを装甲で弾き飛ばす。

 

「! ビームコート!?」

 

「ジオンもビームを実用化させてるんだ! こっちが対策を練ってないわけねえだろ!!」

 

 サングラスの内側で目を見開くシャアの声に、ベアは嘲りと共にフルアーマーガンダムの全身を紅いガンダムへ叩きつける。

 

 そして後方へ弾き飛ばされたガンダムへ向けて、再び二連装ビームガンと360mmロケット砲を放った。

 

 これがシミュレーターネットワークの中で猛威を振るったベアの必殺パターン。

 

 相手の射撃を重装甲で耐え、ぶちかましで体勢を崩したところに持ちうる火器の全てを叩き込むのだ。

 

 今回は牽制でミサイルベイを撃ち尽くしたために全火力とは言えないが、それでも直撃すれば通常のMSなど一たまりも無い。

 

「まだやらせん!!」

 

 しかし、シャアも伊達にエースとして名を轟かせているわけではない。

 

 タックルによって僅かな間死に体を晒していたが、すぐにリカバリーを掛けて寸でのところでビームと砲弾を躱してみせる。

 

 期せず仕切り直しのような状況となった事で双方睨み合う中、頬を伝う汗と共にシャアは口角を吊り上げる。 

 

「まさかこんな所で相対するとは思わなかったぞ、『クマさん、芸達者』」

 

「そっちこそ、テメエが赤い彗星だとは思わなかったぜ。なぁ、『シスコン万歳(ただし下の妹に限る)』」

 

 互いにシミュレーターネットワークでのハンドルネームで呼び合うシャアとベア。

 

 少々アレな名前だが、あの空間ではトンチキな名前を付けるのはマナーのような物なので気にしない。

 

「なぜ君がそちらへいるのかは問わない。我々は戦士だ」 

 

「相手の事情なんて関係ねえ! 立ち塞がるなら誰であろうと倒す! それが礼儀ってモンだからな!!」

 

 互いにビームサーベルを抜き放って突撃する二機のガンダム。

 

 どちらに軍配が上がるか、それはまだ誰にも分からない。

 

 

◆ 

 

 

 黒い重装備のガンダム、奴との戦いはミドルレンジの撃ち合いで幕を開けた。

 

「ジオンがガンダムなんて生意気なんだよ!」

 

 先に動いたのは黒いガンダム。

 

 奴が背面にあるマウントから取り出したハイパーバズーカをこちらへ向けて放ってくる。

 

 弾数は3、だけどこっちを捉えるには狙いが甘い!

 

「人種差別反対!!」

 

 あたしはプロトをバズーカの弾の間をすり抜けるようにして前へ進めると、シールドにマウントしてあるビームライフルを放つ。

 

 銃口から連続で吐き出された光弾は4、これもアムロのアンちゃんと一緒に見つけた裏技の成果だ。 

 

「ビームライフルで連射を!? くっ!」

 

 こちらの速射に面食らった黒いガンダムは離脱をする余裕はないと踏んだのだろう、自分の身体をすっぽりと覆うように盾を構える。

 

「ぐぅっ!?」

 

 シールドに突き刺さったビームは装甲を食い破る事無く水が壁に当たったかのように弾けて消える。

 

 あの反応は耐ビームコーティング、ゲルググを見るにジオンもビーム兵器を実戦へ出してきたのだから対策が広まるのも当然か。

 

 けれど、ビーム自体の損傷は防げてもノックバックまではそうはいかない。

 

「もらった!」

 

 着弾の衝撃で体勢を崩した黒いガンダムへ突撃を開始しようとしたあたしだけど、その瞬間に酷く嫌な気配を感じた。

 

「この敵意……そこだ!」

 

 ほとんど反射的に空いた右腕を気配へ向けると、せり上がった小手の内側に備わったビーム発振器から光弾が吐き出される。

 

「ぐわぁぁぁっ!?」

 

 宙を切り裂いて飛ぶ薄紅色の牙はジムの横っ腹を撃ち抜くと、次の瞬間ジムはMSとは思えない威力の爆発で巨大な火球となった。

 

「あれが貴女の言っていた核持ちのMSなのね」

 

「うん。悪意が凄いけど、そのお陰で分かりやすいのは助かるよ」

 

 モニターを染める眩い光に姉ちゃんが少し震える声と共にあたしの身体を強く抱きしめてくる。

 

 あんなのを食らったらMSも戦艦も一発で終わりだ。

 

 アレを人がいる都市部へ撃ち込もうと言うんだから、レビル達の狂気は半端じゃない。

 

「ピースメーカー隊を!? よくも!!」

 

 核持ちを落とされたのがよっぽどお気に召さないのだろう、体勢を立て直した黒いガンダムは怒りの感情と共に手にしていたバズーカを投げ捨てる。

 

「堕ちろぉぉっ!!」

 

 そして次に放ってきたのは、展開した装甲の中に納まっていた小型ミサイルだ。

 

 壁の様に広がりながらこちらへ向けて襲いかかってくるミサイルの群。

 

 けれど、あたしはその隙間から肩の大型キャノンを起動させる黒いガンダムの姿を見逃してはいなかった。

 

 相手が行おうとしているのはセオリー通りの追い詰め方だ。

 

「だったら、コッチはこうだ!!」

 

 小さく自分の唇を舐めると、あたしはスロットルペダルを踏み込むとプロトを加速させる。

 

 行き先はミサイルを振り切るんじゃなくて、敢えて前!

 

「マチュ!?」

 

「大丈夫、任せて!」

 

 姉ちゃんの悲鳴に応じながら、あたしはアームレストに備わったトリガーを引く。

 

 するとプロトの頭部に設置されたバルカン砲、そして右手の小手の中にあるビームガンが次々と迫り来るミサイルを撃ち落としていく。

 

 当然爆発の中に飛び込むことにあるけど、そこは左手に持った盾の出番だ。

 

「きゃあっ!?」

 

「ごめんね、姉ちゃん。ちょっとだけ我慢して!」

 

 全天周囲モニターの大半が炎の赤に染まるけど、機体コンディションを示すサブモニターには全く異常は無い。

 

 ミサイルの雨を上手く切り抜けている証拠だ。

 

「あのミサイルの雨を抜けてきただと!?」

 

 そうしてミサイルを切り抜ければ、その先に待っているのは右肩に背負った大砲にエネルギーをチャージしていた黒いガンダムの姿。

 

「させないよ!」

 

 爆炎を振り切りながら間合いを詰めながら、あたしはプロトの右腕からビームガンを放つ。

 

 光弾の狙いは黒いガンダムではなく、奴の近くを漂っているバズーカ。

 

 ビームがバズーカの薬室を狙い違わずに撃ち抜くと、コッチの予想通りバズーカの弾薬は誘爆して火球へと化ける。

 

「なにぃっ!?」

 

 まさか自分が捨てた武器を利用されるとは思っていなかったのだろう。

 

 爆発によって黒いガンダムの体勢は大きく揺らぐ。

 

「甘いよ! セオリー通りの戦法を取るなら破られる事を想定しないと!!」

 

 黒いガンダムが行ったのはミサイルの弾幕で相手の動きを誘導して、そこを狙い撃つというロボゲーだと手垢でベタベタになっているくらい基本的なモノ。

 

 それを見破れないあたしじゃない。

 

 あたしはニヤリと不敵に笑うと、右手のビーム発信装置をサーベルモードに変える。

 

 そして長く伸びたビームトンファーで発射寸前だった奴の大型砲を叩き斬った。

 

「くっ!?」

 

 溜まっていたエネルギーによって爆発する切り離された砲身。

 

 それによって黒のガンダムが動きを止める中、あたしは胴にあるコクピットへ向けて殺気を飛ばす。

 

「させるかぁっ!」

 

 それを受けた黒いガンダムは左手の盾で咄嗟に胴を庇う。

 

 けれど、奴が見たであろう必殺の一撃が来る事は無い。

 

「ひっかかった!」

 

 何故ならあたしは後ろに下がりながら、シールドにマウントされたブツを相手に向かって放っているのだから。

 

「貴様っ!」

 

 防御の姿勢を解除して手にしたビームライフルを向けてくる黒いガンダム。

 

 けれど、その銃口が光を放つよりも早く奴の機体は黒い煙に覆われる。

 

 あたしがさっき投げたレーダー阻害用のチャフが入ったスモークグレネードの効果だ。

 

 とはいえ相手はかなり勘の鋭い様子、視界を奪った程度で倒せるほど甘くはない。 

 

「こんな小細工が僕に通用するものか! 逃がさんぞ!!」 

 

 普通は少しくらいは足が止まるんだろうけど、黒いガンダムはこちらへ向けて煙幕から脱出してきた。

 

「マチュ、来るわよ」

 

「OK!」

 

 勘の鋭さでこちらの気配を察したんだろうけど、そっち方面じゃあたしも負けてない。

 

 相手がそう来るのはお見通しだ。

 

 あたしは後退しながらプロトに盾に仕込んでいたある物を投げさせる。

 

「なんだこれは。ビームサーベル?」

 

 そう、それは投擲用の予備サーベル。

 

 けれど刃を展開していないこともあって、相手はこちらの意図が読めずに困惑で動きを止めてしまう。

 

 そこでプロトの頭部バルカンが再び火を噴いた。

 

 狙いは黒いガンダム……ではなくその前に受かぶビームサーベルの束。

 

 弾丸を受けたサーベルは瞬く間に破損し、小規模な爆発を引き起こす。

 

 刃を出していないと言っても、シールドに仕込まれたサーベルは何時でも使えるようにメガ粒子を満載している。

 

 そこへ銃撃を掛ければこうなるのは当然だ。

 

「ぐうぅっ!?」

 

 しかしサーベルが起こした爆発は小規模、装甲が厚そうな黒いガンダムにダメージを与える程じゃない。

 

 それでも飛んでくる破片がセンサーやカメラなどの精密部分を壊さない様に、奴は盾を掲げて防ぐ必要がある。

 

「おのれぇ!」

 

 そこを狙ってシールドにマウントした状態のビームライフルを向けると、黒いガンダムは即座に防御態勢を解いて横っ飛びに回避を試みる。

 

「そう動くと思った!」    

 

 あたしはその動きに合わせるように右手を動かし、ビームガンの一撃を奴へ叩き込む。

 

「なにぃっ!?」

 

 咄嗟に身を捻って胴体への直撃は避けたものの、黒いガンダムは左足を腿の辺りから失う事になる。

 

「何故だ!? 何故僕がこうも裏を掛かれる!」

 

「どうしてなの?」

 

 焦りと怒りが籠った黒いガンダムのパイロットの思念、それを受けた姉ちゃんが後ろから聞いてくる。

 

「経験の差かな」

 

 ぶっちゃけ、答えはこれにつきるんだよね。

 

 むこうは人より勘が鋭い事を自慢していたみたいだけど、あの程度ならロボゲーで掃いて捨てるくらい戦ってきた。

 

 それだけやれば、今までやってきたみたいに殺気を込めたフェイントで相手の動きを誘導するなど攻略法が当然組まれる。

 

 黒いガンダムのパイロットはその辺の経験が酷く乏しいとくれば、こうなるのは必然といえるだろう。

 

 姉ちゃんの問いに答えながらもあたしはビームライフルの銃口を相手にロックする。

 

 核持ちのMSがどのくらい出ているか分からないんだ、コイツ一人に何時までも構ってはいられない。

 

 そうして引き金を引こうとした瞬間だった。

 

「ッ!?」 

 

 背後から感じた強烈な殺気にあたしは咄嗟に機体を横へ投げ出した。

 

 すると一瞬遅れてプロトがあった場所を通り過ぎたのは、二発のミサイルとビームの光弾だった。

 

『乱暴する人は嫌い! 怖い奴! 私を傷つける奴! 消えてしまえ!!』

 

「何なの、この声は!?」

 

「───来る!」

 

 頭に響く謎の声に姉ちゃんが混乱する中、あたしはモニター越しに攻撃を放ってきた相手が近づいてきているのを感じていた。

 

 下手人はガンダムタイプのMSだ。

 

 特徴的なのは胸の辺りに二門バルカンとミサイル発射口が備わっている事。

 

 そして血塗られたかのように真っ赤に光るデュアルアイだ。

 

 あたしはあの目に見覚えがあった。

 

「HADES……」

 

 ペイルライダーやキャバルリーに乗っていたのと全く同じものじゃないだろうけど、それに近いシステムは積んでいるのだろう。

 

 そして奴の狙いは間違いなくあたし達だ。

 

「姉ちゃん、後ろの席に戻ってシートベルトを締めて」 

 

 あたしは姉ちゃんにそう声を掛ける。

 

「マチュ?」

 

「こっから先はマジで行くから」

 

 ハデス搭載機と黒いガンダムを一緒に相手をするのなら、こっちも余裕ぶってなんていられない。

 

 姉ちゃんを守って生き抜くには、全力で叩き潰す!!

 

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