ダイクン家の二女はアホの子   作:アキ山

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一年戦争が終わらぬ!

流石は人類未曽有の大戦争。

もう少しペースアップしたいなぁ。


マチュとキシリア

「……ソロモンが落ちたか」

 

 サイド3・ズムシティにある公王城の私室、そこでデギン・ザビは報告書を手に厳しい表情を浮かべる。

 

 しかし、こうなる事をデギンは心の何処かで予測していた。

 

 コロニー国家であるジオン公国と、地球と月に加えて多くのサイドを領土とする連邦。

 

 彼我の国力差は蟻と象と例えても過言ではない。

 

 そんな二カ国が争うのだ、長期戦になればジオンの不利は目に見えていた。

 

 故にデギンは開戦に際して一つの条件を出していた。

 

 それは短期決戦で大々的な勝利をおさめ、速やかに講和条約で独立を勝ち取るというものだ。

 

 ブリティッシュ作戦による地球への大打撃とルウム戦役での大勝はデギンの提示した条件に沿うものであり、現に当時は地球連邦政府も無条件降伏に近い形で終戦を迎える筈だったのだ。

 

 しかし、それも捕虜として捕えたレビル将軍の脱出によって覆った。

 

 これによって連邦は継戦を選択し、戦場は宇宙だけでなく地球へと広がった。

 

 それが齎した物は、ジオンという小国の資源、資金、そして人材不足による息切れだ。

 

 頼みの綱だったMSという唯一のアドバンテージも模倣され、さらには性能も数も上回られた。

 

 そこに来て、ダイクンの遺児という過去の亡霊も現れて国を割る楔となったのだ。

 

 現状、ジオンにほぼ勝ち目が無いのは誰が見ても明らかだった。

 

「ガルマ……。やはり儂は間違っていたのか」

 

 デスクに置いていた遺影代わりの写真立てを手にデギンは呟く。

 

 彼にとってこの戦争で最も痛恨だったのは、最愛の息子であるガルマ・ザビを喪った事だ。

 

 最愛の妻ナルスとの間に出来た唯一の子であり、家の存続の為だけに側室と作った他の子供達とは違い、デギンはガルマを溺愛していた。

 

 そんなガルマを彼が戦場へ出したのは、偏にザビ家を継がせてやりたいという想いからだった。

 

 長男であるギレンが戦前・戦中と総帥として実績を上げている以上、彼を差し置いて末の息子を公王の跡取りにするには周囲を黙らせ得る揺るぎない実績が必要だ。

 

 だからこそ、彼はガルマが地球方面司令に就くことを許可した。

 

 かつての敵地を上手く治めることができれば、それは息子が公王として歩む未来の糧となると信じて。

 

 だが、その判断はガルマの命を奪う事になってしまった。

 

 しかも殺めたのがかつて自分が殺めたジオン・ダイクンの娘というのだから、皮肉という他ない。

 

「……いや。今は過去を振り返っている暇はないか。ガルマが遺してくれた一粒種を喪う訳にはいかん」  

 

 頭を軽く振って過去に飛びそうになる意識を現実へ引き戻すと、デギンはガルマの写真を傍らに置いてあるバッグへ仕舞う。

 

 椅子から立ち上がり、彼が手にしたのは灰色の人工髪で出来たウイッグだ。

 

 それを頭の乗せたデギンの格好は普段のような中世染みた公衣ではない。

 

 白のワイシャツに茶色のスラックスだ。

 

 その上にトレンチコートを羽織り、愛用のサングラスを普通の眼鏡に入れ替えて鼻の下を覆う形の口髭とハンチング帽を身に着ける。

 

「……うむ」

 

 そうして覗き込んだ姿見の先にあるのは、デギンが良く知る己の姿ではなかった。

 

 どこにでもいそうな恰幅のよい老紳士、今の彼を表すに適した言葉はこれだろう。 

 

「さて、行くか」 

 

 コートのポケットから取り出したチケットを少し見つめた後、デギンはそれを再び元の場所に収めると旅行用カートを手に出口へと進む。

 

 もちろん、出口と言っても普段から使用している正規のモノではない。

 

 万が一に備えて公王の私室に設けられた緊急用の避難路だ。

 

 薄暗い螺旋階段を降りていくと、その先に待っていたのは車数台程が入る小さなガレージ。

 

 そこにあるのはデギンが若い時に愛用していたクラシックカーだ。

 

 運転席へ大柄な身体を押し込むと、デギンはキーを回してエンジンをかける。

 

 本来であれば自分もサイド3に留まり、この戦争の引き金を引いた一人として責任を取るべきなのだろう。

 

 しかしデギンには、それが出来ない理由があった。

 

「ガルマ、お前の子はワシが立派に育ててやる」

 

 最愛の息子の忘れ形見である孫、それを残して逝けるわけがない。

 

 孫の顔が見たい。

 

 孫の成長を見守りたい。

 

 孫により良い未来を残してやりたい。

 

 その想いはデギンを公王から一人の祖父へ立ち戻らせた。

 

「公国の始末はギレンとドズルに任せればいい。奴等はその為に今まで育ててきたのだ」 

 

 元よりギレン達は、家の存続の為に愛しくも無い女に産ませた子供にすぎない。

 

 家が国に変わったとしても、当初の目的通りに使って何が悪い。

 

 小さく鼻を鳴らすとデギンは思考の海から意識を引き上げる。

 

 そしてダッシュボードに備え付けられたデジタル時計に目をやった。

 

「……ガルマの子を回収して港へ急げば、予約していた便には間に合うか」

 

 呟きと共に頭の中でスケジュールを組み立てるデギン。

 

 そんな彼がゆっくりとアクセルを踏み込んだ瞬間だった。

 

 銃声と共に四方から車へ弾丸が襲いかかったのだ。

 

 放たれた鉛の牙は的確に車輪を撃ち抜き、バーストしたタイヤから空気が漏れだすと車はその分車体を沈める。

 

「な…何事だ!?」

 

 突然の襲撃に慌てて車内から飛び出すデギン。

 

 彼はそんな自分の前に立ち塞がった男を見て、レンズの奥で目を見開いた。

 

「そのような恰好で何処へ行かれるのかな、公王陛下?」 

 

「ぎ…ギレン……!!」

 

 それは機関銃で武装したジオン公国防衛部隊、俗に総帥親衛隊と呼ばれる配下の兵を連れたギレン・ザビだった。

 

 デギンは慌てて逃げようとしたが、それより早く親衛隊の兵達が彼の身体を取り押さえる。

 

 そして彼等はデギンのコートのポケットをまさぐると、そこから二枚のチケットを取り出した。

 

「資源衛星アクシズ行きのチケットか。一枚はイセリナ・シェンバッハ、もう一枚はヨラン・ペールゼン。……ふん、偽名を名乗るならもう少しセンスのある物にすべきですな」

 

「返せ!!」 

 

 憤怒の形相を浮かべて怒鳴るデギンだが、そんな程度では眼前の独裁者は小動もしない。

 

「公王自らが臆病風に吹かれ、真っ先に逃げようとは……まったくもって情けないッ!!」

 

 そしてギレンは大仰な身振りと共にデギンを糾弾する。

 

 しかし彼はその言葉を父ではなく、己の背後へ向けて放ったのだ。

 

「なっ!?」 

 

 なんのつもりかと視線を巡らせたデギンは思わず息を呑んだ。

 

 何故ならそこには報道官らしき男が肩に担いだテレビカメラをギレンへ向けていたからだ。 

 

「親愛なるジオン国民よ! 愚かな父に代わって諸君らに不安を与えてしまった事を詫びよう! だが、怖れる事は無い!」

 

 カメラに向かって拳を固めて演説を始めるギレン。

 

(し…してやられた!?)

 

 ここにきてデギンは悟った。

 

 自分が完全にハメられた事に。

 

「何故ならこの暗君に代わって私、ギレン・ザビがジオン公国の全てを担うからだ!」

 

 愕然としているデギンの顔の前に彼を拘束している親衛隊の一人が携帯端末を差し出す。

 

 画面には国営放送で流れているこの場の様子、その隣にSNSによる国民の反応が映し出されていた。

 

 SNSの方はギレンへの賞賛と自身を罵る書き込みが濁流のような勢いで流れていく。

 

 本来であれば公王はもちろんのこと、ザビ家の人間への批判は削除の上に書き込んだ者のアカウントも停止されるのだが、今はその機能も停止している。

 

 それはギレンが管理会社を手中に収めている証明でもあった。

 

 そして、この醜聞が国民全てに知れ渡った事実はデギンが座る公王という地位の失墜を意味する。

 

「現在、我々は連邦との戦争で劣勢を強いられているとのデマが流布されているようだが、それは大きな間違いだ! 私はこういう事態も想定してすでに秘密兵器も用意している! これとドズル中将が護る宇宙要塞ア・バオア・クーがあれば、連邦が如何ほどの戦力を差し向けてこようと鎧袖一触で撃退できると約束しよう!!」

 

 ここまで用意周到に準備していた事は、ギレンは以前からデギンを監視していた証明に他ならない。 

 

 つまり、眼前の息子は父が国を棄てて逃げる事を予測していたのだ。

 

「父上、貴方は政治家の基本として、常に周りに目があると考えて己の言動を律せよと私に叩き込んだ。しかし、今の貴方はそれすらも守る事が出来なかった。まさに老害という奴だな」

 

「ギレン、私はっ!」

 

 部下がカメラを止めている事を確認すると、ギレンは地面に膝をつく父を見下す。

 

 そんな息子の嘲りの視線を受けて、デギンは怒りで歯を食いしばる。

 

「貴様には私同様にこの戦争を引き起こした責任を負う義務がある。孫可愛さでの楽隠居などさせんよ。───連れていけ」

 

「ぐっ、放せ! ガルマ! ガルマぁ!!」 

 

 愛息の名を叫びながら醜く足掻く父だった者を冷ややかに見送ると、ギレンは自分が用意したスタッフの中に紛れた一人の女性へ足を向ける。

 

「見ての通りだ、イセリナ・エッシェンバッハ。これで君のアクシズ行きは無くなった」

 

「お…お義兄様」

 

 慄くイセリナの言葉に、ギレンは懐から一枚のチケットとキャッシュカードを取り出した。

 

「地球へ帰りたまえ。キャッシュカードにはガルマの遺した資産がすべて入っている。その金があれば、実家に頼らずとも腹の子と暮らしていけるだろう」

 

「そんな……」

 

「それと君達がザビ家を名乗る事は許さん。その子は君の私生児として育てるのだ」

 

「何故です!? この子はガルマ様の子です! そして私もガルマ様と将来を誓い合った仲なのです! お義父様だってガルマ様との婚姻手続きをしてくれると……!」

 

「だからこそだ。この戦争の結果がどうであれ、戦後はザビの名は大きな意味を持つ。正と負、双方でな」

 

 不満を口にしようとしたイセリナだが、それを遮る形で言葉を紡ぐギレンの眼光の鋭さに息を呑む。

 

「それは貴様が背負えるほど軽いモノではない。何も知らぬ子供に託すなど論外だ。───お前達は只人として生きていくがいい」

 

 イセリナにそう告げると、親衛隊の兵士に連れていかれる彼女に振り返る事無くギレンはその場を後にする。

 

「兄からの手向けだ、ガルマ。お前が愛した女と子は我等の業に巻き込ませはせん」

 

 そして独裁者の口から洩れた呟きは、誰の耳にも届く事は無かった

 

 

 

 

 この一連の放送はジオン公国全体に激震を奔らせた。

 

「これは簒奪ではない! ギレン総帥は公王の責務を放棄したデギン・ザビに相応の対処を行っただけだ!!」

 

 まずア・バオア・クーの指令室、そこではソロモンから落ち伸びたドズルが苦々しい顔で全館放送のマイクに怒声を浴びせていた。

 

 もちろん情に厚く家族を愛するドズルだ。

 

 あの放送に含む物がないわけがない。

 

(親父め、この状況で何という事をしてくれたのだ! 時流が読めぬほど耄碌したわけではあるまいに!!)

 

 それでも国を預かる者として、兄がやった事は決して間違いではない。

 

 先に国家を裏切ったのは父なのだ。

 

 その影響を最小限に抑えるには彼を糾弾し、責任ある立場から追放する必要があった。

 

 デギンの代わりに国主として立つ事もだ。

 

(兄貴とて好き好んで父を追い詰める手を取ったわけではない。ならば、俺も腹を括らねばならん! 家族の事は後回しだ! 今は国を守り勝つことを考えねば!!)

 

 内心でそう決意したドズルは、ア・バオア・クーに広がる混乱を収めるべく奔走するのだった。

 

 一方、キシリアの居城であるグラナダにもこの放送は大きな衝撃を与えた。

 

「父上…何故……」

 

 ショックを受けたのは配下のジオン兵や民衆も勿論だが、何より混乱したのはキシリアだった。

 

(アクシズへ逃亡するなど一言も聞かされていない。どうして伝えてくれなかったのだ?) 

 

 今まで父を守らんと必死に暗躍してきた彼女にとって、父が拘束される際に明らかになった一連の情報は青天の霹靂だった。

 

 もし自分にアクシズへの亡命を打診してくれていたのなら、キシリアはジオンを棄てる事を迷わなかったし、その為の手配も全て行った。

 

 そうすればギレンに感づかれる事など無かったし、アクシズまでの旅も子飼いの部隊を護衛として安全に行けたのだ。

 

 何故という言葉が頭の中でグルグルと巡り、更なる思考の迷宮へと落ちていくキシリア。

 

「グラナダの防空圏内に所属不明の艦艇が現れました! 識別はサラミス級! 連邦の軍艦です!!」

 

 そんな彼女を現実へ引き戻したのはオペレーターが上げた怒声だった。

 

「数は?」

 

「一隻です!」

 

「一隻だと? どういうことだ」

 

 キシリアは部下からの報告に思考を巡らせる。

 

 彼女はドズルからの報告によって、核武装したテロリストが接近している事を知っていた。

 

 それ故に当初は件のテロリスト達が現れたと考えたのだ。

 

 しかしグラナダを堕とし、ジオン本国を壊滅させるのが目的の集団が船一隻というのはあまりにも戦力が小さい。

 

 それ故に一隻だけ現れたのには、なにか裏があるのではと考えたのだ。

 

 しかし、この判断は女傑と呼ばれたキシリアにとってミスと言えた。

 

 本来の彼女なら、伏兵の可能性を考えながらもグラナダ防衛隊へ攻撃命令を下していたはずなのだ。

 

 これもデギンが拘束されたショックや父に抱いた疑念が尾を引いている証拠だった。

 

「敵艦、モビルスーツを発進させました! 敵MSから高熱源反応! こちらへ真っ直ぐ向かってきます!!」

 

 そして失敗のツケは大きなものとなった。

  

「くっ、防衛隊をスクランブル発進させろ! 接近するMSを何があっても撃墜するのだ!」

 

 MSが抱えた高熱源が発射体勢に入った弾頭が核反応を始めた為と当たりを付けたキシリアは、血相を変えて迎撃指示を出す。

 

 しかし相手が発射体勢に入りつつある中で、それはあまりにも遅きに失していた。

 

「ダメです! 迎撃、間に合いません!!」

 

(こんな事で果てるというのか!? このキシリアが!!) 

 

 まだ父の真意を聞いていない! ギレンにジオンを好きにさせるわけにはいかない!

 

 脳裏に過る未練に固く拳を握り締めるキシリア。

 

 しかし彼女の元に破滅が訪れることはなかった。

 

「敵MSの後方から高速で接近する機体あり! 識別は連邦軍です!!」

 

「なに!? 新手か!」

 

 ハッと顔を上げたキシリアが見た物は、指令室のモニターに大映りとなったランチャーらしきものを発射しようとしていた連邦のMSを背後から切り裂く、赤と白を基調にしたガンダムの姿だった。

 

「同士討ち? いや、あれは連邦の機体じゃなかったのか?」 

 

 オペレーターが漏らした言葉の通り場が混乱する中、凶行を止めたガンダムから通信が入る。

 

『えー、こちらはマ……じゃなかった、アルマリア・リム・ダイクンです。あたし達がここに来たのは攻めるためじゃありません。ここへ核攻撃をしようとしていたテロリストを止める為です。今はそっちと揉める気は無いので、このまま帰してくれるとありがたいです』

 

 流れてきたのは成人どころかハイ・ティーンにもなっていないであろう女児の声。

 

 そして声の主の名はジオンでは知らぬ者はいない程に有名となったモノだった。

 

「アルマリアって、もしかして……」

 

「ジオン・ダイクンの娘か? 連邦に利用されていたっていう」

 

 ざわつく司令部の中、キシリアはマスクの奥で強く歯を噛み締める。

 

(この私がダイクンの者に助けられただと! しかも末娘の餓鬼に!)

 

 キシリアにとってジオン・ダイクンの系譜などとっくの昔に葬り去った負け犬でしかない。

 

 かつて自分も信奉していた事もあり、ダイクン自身の無様な最後とシンパが瓦解する様を見てきたキシリアのダイクン家に向ける蔑みは強い。

 

 そんな思いもあり、彼等の末娘がキシリア自身も持たないニュータイプの素養を得たと知った時は嫉妬と憎悪を隠せなかった。

 

 あまつさえ連邦を後ろ盾にして共和国亡命政府を立ち上げ、自分達へ歯向かっているのだ。

 

 そんな奴等に助けられるなど、プライド高いキシリアに許せるわけがない。

 

 思わず攻撃命令が口を突きそうになったが、キシリアはギリギリのところでその言葉を飲み込んだ。

 

『こちらはグラナダ行政府代表、キシリア・ザビである。アルマリア・リム・ダイクン、先ほどの発言について事情の説明を求む』

 

 代わりにオペレーターから奪い取ったマイクに行政府の長としての台詞を吐く。

 

 ここで奴等を討つのは難しくない。

 

 だが、それではキマイラ隊とキシリア機関を失ったままの自分にギレンへ対抗する術が無いままだ。

 

 父を救い真意を聞きだす為には、ジオンの全てを掌握したギレンを打ち倒す必要がある。

 

『少しお話をしようじゃないか。なあ、お嬢ちゃん?』

 

 その為ならば、不倶戴天の敵であろうと同じ船に乗せてやろうではないか。

 

 

 

 

 どうも。

 

 自分は対話より肉体言語が得意だと、最近気が付きつつあるマチュです。

 

 今グラナダの責任者っていう人が通信モニターに映ってるんだけど、……なんだこれ?

 

 キシリアって人、白色の変な兜を被っているうえに顔の下半分を紫のマスクで覆ってるですが。

 

 あと、なんかこの人、あたしに対して妬みとか侮蔑とかドロドロとした感じの何かを向けている気がするんだよね。

 

 ぶっちゃけ、お友達になりたくはない。

 

「姉ちゃん、ジオンの偉い人って変な兜とマスクを被らないといけない決まりでもあるのかな?」

 

「そういえば愚兄もそんな恰好をしていたわね。私としてはあんなクッソダサいモノを身に着けるなんて、死んでもごめんだけど」

 

 向けられたアレ等はともかくとして、相手の格好に対する疑問を姉ちゃんに話を振ってみるとトンデモねえ答えが返ってきた。

 

 お姉さま、剛腕ストレートは物理だけにしてください!

 

 モニターの先でおば……お姉さんがめっさ怒ってるよ!

 

『アルテイシアも乗っているか。あの怯えるだけの小娘が随分と言うようになった』

 

「何処ぞの馬鹿一家のお陰で色々と苦労をしましたから。皮肉の一つを吐く度胸くらい身に付きますわ」

 

 キシリアが吐く地を這うような低い声を鼻で笑う姉ちゃん。

 

 雰囲気が秒で険悪になった! 

 

「えーと、テロの詳細が聞きたいんだよね。こっちの分かる範囲で話すけどいい?」

 

『うむ、それで構わん』

 

 とりあえず話を軌道修正すると、あたしはキシリアへテロリストについて説明した。

 

 もちろんレビル将軍が首謀者とか、連邦内のタカ派が全面協力してたとか知られると拙い事はボカしてだ。

 

『なるほどな』

 

「個人的感想だけど、やられても仕方ないと思うよ。ジオンは人を殺し過ぎだし。今回は防げたけど、第二第三のテロだって起こるんじゃないかな」

 

 レビル達の憎悪を見て思ったけど、連邦と戦争とかしている場合じゃないんじゃないかな。

 

 下手するとサイド2の生き残りとか周りのコロニーからもテロリストが出る可能性もあるし。

 

『随分と軽く言ってくれるじゃないか。救国を謳う亡命政府の代表様の台詞とは思えんな』

 

「あたし達がやったわけじゃないもん。それにウチがジオンの舵取りするとなったら、連邦と講和したうえで謝罪や賠償とかケジメは付ける方向で行くと思うよ。そうなったらテロとかやりづらくなるでしょ」

 

 そう返すとキシリアは憮然とした顔で黙り込む。

 

 まあ、戦争始めた公国としては絶対に出来ない事だよね。

 

 けど、国民生活的にはその方が安全じゃないかなと思う。

 

 今のままだと核弾頭でコロニー吹っ飛ばすとまでは行かなくても、民衆に紛れたその手の人が自爆テロでコロニー内に穴をあけるとかやりかねないし。

 

『連邦に尻尾を振るなどと。貴様、本当にスペースノイドの独立を謳ったジオン・ダイクンの娘か?』

 

「そうらしいよ。本人の顔なんて教科書でしか知らないから実感ないけど。あと、サイド2の人達を皆殺しにしてコロニー落としの弾丸に使ったアンタ達がスペースノイドの独立とか言えた義理じゃないでしょ。ねえ、兄ちゃん」

 

『そうだ。同胞たるスペースノイドを手に掛けた時点で、ザビ家に宇宙の民を背負う資格は無い』 

 

 あたしが話しを振ると同時にスイッチを押すと、通信モニターに兄ちゃんが現れる。

 

 ちなみにサイド2の話は兄ちゃんから聞いたモノである。

 

 作戦には兄ちゃんも参加していたんだけど、オトンの教育からスペースノイドを手に掛けるのはためらわれた為に後方支援で攻撃にはかかわらなかったらしい。

 

 兄ちゃんが『赤い彗星』の異名を得たのは、その後に行われたルウム戦役って戦いからなんだってさ。

 

『シャア。裏切者め、よくも私の前に顔を出せたものだな』

 

『裏切りとは心外だな。私の目的は元よりザビ家の打倒、ここが本来の立ち位置だ。それに貴様がアルマリア達へ死喰鬼隊という刺客を送り込んだ事は忘れていないぞ』

 

 モニター越しに火花を散らすキシリアと兄ちゃん。

 

 そんな兄ちゃんの言葉にあたしは思わず首をかしげる。

 

 刺客って、そんなのいたっけ?

 

「ラル大尉と合流した時、ドムで襲いかかってきた部隊の事よ」

 

「ああ! あのドムをくれた奴等のことか!! お陰でラルのおっちゃんや兄ちゃんが乗る機体が出来て助かったんだよね」

 

 姉ちゃんの指摘にあたしはポンと手を叩く。

 

 思い出した、思い出した!

 

 あれが切っ掛けで『お宝ゲット戦法』を編み出したんだよね!

 

 ……あれ?

 

 キシリアの顔が引きつってるみたいだけど、どうしたのかな?

 

『ゴホンッ! 過去の事は気にせずともよいだろう。それより、お前達に一つ提案がある』

 

 咳払いで場を仕切り直すと、キシリアは私達にこんな事を言ってきた。

 

「提案?」

 

『私も貴様等に力を貸してやろう』

 

「……なんて?」

 

『私とグラナダの兵力も亡命政府に加入すると言っているのだ』

 

 いったい何を言ってるんでしょうね、このオバサン。

 

「えっと、オバ……お姉さんはザビ家の偉い人なんでしょ。なんでコッチに付くのさ?」

 

『今、ジオン公国はギレン・ザビの独裁状態に陥っている。奴は国主たるデギン公王を幽閉し、国のトップを詐称して好き放題に舵取りを行おうとしているのだ。私はそれを黙って見ているわけにはいかない。ギレンを倒し、公国をあるべき姿に戻さねばならんのだ』

 

『だから我々と協力しようと言うのか?』

 

『その通りだ、シャア。ギレンを倒した後は父を公王へ戻し、私に要職の椅子の一つでも用意してくれればいい。───悪い取引ではないだろう?』

 

 そう自信満々に語るキシリア。

 

 だけど、生憎と答えは決まってるんだよね。

 

「なるほど。──だが断る」

 

 あたしが返した答えにキシリアは目を見開いた。

 

『な…何故だ!?』

 

「いや、あたし達はジオンを共和制の国にする為に動いてるんだよ。なのに王様置いたらダメじゃん」

 

 魔猪とか頭プップクプーとか言われているあたしでも、ラルのおっちゃんが頑張って教えてくれたから共和制くらい分かるぞ。

 

 要は王様とか貴族は無しで、政治家とか国の偉い人は国民が選挙で決めようって国のこと……だよね?

 

「それで合っているわよ。よく勉強したわね」

 

「えへへ……」

 

 どうやらあたしの不安を姉ちゃんが勘で分かったらしい。

 

 後ろから頭を撫でてくれた。

 

 自分でも少し子供っぽいとは思うけど、こうして姉ちゃんに褒められるのは嬉しい。

 

「そう。共和制である以上、国政を担う者は全て国民の総意によって決まる。あなたが要求するように、政治の要職なんて私達には用意できないわ」

 

『馬鹿な!? それではお前達が国政を握る事もできなくなる! 貴様たちは我等ザビ家を追い落とし、ダイクンの国を作るつもりではなかったのか!?』

 

 姉ちゃんの答えに驚愕で目を見開くキシリア。

 

 そんな彼女に今度は兄ちゃんが答える。

 

『我々はそんな物に興味は無い。私達の目的は貴様たちザビ家を討ち、サイド3を父が望んだような誰もが自由に暮らせる国へ戻すことだ』

 

「ザビ家が権力を持ってると、あたし達も何時刺客を送られるか分かったもんじゃないもんね。だから倒せる時に倒そうと思ったんだよ」

 

 兄ちゃんとあたしの今更ながらの宣戦布告に、キシリアの顔が大きく歪む。

 

 それは顔の下半分がマスクで覆われていても憤怒の形相を浮かべている事は分かった。

 

『貴様等……『この下賎者どもがぁ!!』』

 

 怒りの声を上げようとしたキシリアだけど、それを遮って男の怒声が通信に割り込んできた。

 

 吹き付けるような敵意と憎悪に視線を向けると、両手にザク斧を持った藍色のザクがグラナダの前に展開していた防衛隊の中から飛び出して、こちらへ向かってきているのが見える。

 

『ダイクンの負け犬共が、キシリア様の御慈悲を拒否するなど言語道断! 貴様等のような劣等種はこのマレット・サンギーヌが成敗してくれるわ!!』

 

 なんかパイロットはギャーギャー叫びながら突っ込んできてるんだけど、あたしの眼が向いているのは全く別のモノだ。

 

 あのザク、妙に動きがいい。

 

 パイロットの腕を加味しても。間違いなくお宝である。

 

「姉ちゃん、カッ飛ぶよ」

 

「ええ、よくってよ」

 

 相手は馬鹿正直に真っ直ぐ突っ込んできているし、ここはそれに応えてあげよう。

 

『まずは貴様からだ! 礼儀知らずのガキめ!!』

 

 クロスレンジの少し手前に差し掛かった瞬間、両手のザク斧を振りかぶる藍色のザク。

 

「はい、隙だらけ」

 

 もちろん、あたしだって相手の突撃を黙ってみているわけじゃない。

 

 頭部バルカンでモノアイを狙って牽制し、相手の動きが一瞬止まったところでオーバード・ブーストを使ってザクの懐へ飛び込んだ。

 

『なっ!?』

 

 あっと言う間に武器で戦うミドルレンジを通り越して、徒手空拳の間合いに現れたプロトに驚愕の声を上げるマレ……なんとか。 

 

 もちろん、その時にはビームトンファーを起動させた右腕は引き絞られている。

 

「穿つ!!」

 

『ッ!?』

 

 そして振り抜かれた右腕に備わったメガ粒子の切っ先はピンポイントで胴の中央にあるコクピットのハッチを撃ち抜き、乗っていたパイロットを瞬時に蒸発させる。

 

「よし! レアものゲットだぜ!」

 

 そうしてモノアイから光が消えたザクを回収しながら、あたしは上機嫌な声を上げた。

 

「コクピットを壊してしまったようだけど、まだ使えるの?」 

 

「改造していてもザクだし、メイお姉さんに任せれば何とかなるでしょ」

 

 首をかしげる姉ちゃんにあたしは笑顔で答える。

 

 メイお姉さんはザクの開発にも拘ったパイオニアだ。

 

 コクピット以外は傷つけていないんだから、使えるようにしてくれるだろう。

 

『マレット様ぁぁぁっ!!』

 

 そんな話をしていると通信機から若い女性の絶叫が響いた。

 

 それに続いてあたしの勘をくすぐるのは信じる先を失った絶望とそれを奪ったあたしへの怒りの感情だ。

 

 出所は左方向から突進してくるリックドムなんだけど、彼女はこちらへ辿り着く前にあたし達の背後から飛んできたビームガンの連射でハチの巣になって爆散する。

 

「南無阿弥陀仏」

 

 感情の流れからしてマレ……なんとかの仲間なんだろうけど、これも戦場の習いだ。

 

 せめて冥福だけは祈っておこう。

 

『アルマリア、そろそろ退くぞ』

 

「アイアイサー」

 

 兄ちゃんの言葉にそう答えると、あたしはプロトにザクを抱えさせたままこちらへ近づいてくるグラナダ防衛隊に背を向ける。

 

『ええい! ニュータイプ部隊はまだ出せんのか!?』 

 

『機体の調整が難航していまして、今しばらく時間が必要です!!』

 

 なにやら向こうでは揉めているようだけど、こっちの推進剤も少ないし構ってられないよね。

 

「あばよ、とっつぁぁぁぁん!!」

 

 あたしはグラナダ司令部に繋がりっぱなしの通信機に別れの言葉を残すと、そのスイッチをOFFにしてスロットル全開でその場から離れた。

 

「なんなの、それ?」

 

「旧世紀のアニメにあったセリフ。いっぺん言ってみたかったんだ」

 

 ははは、そんな顔しないでおくれ、お姉さま。

 

 使えるシチュエーションは少ないから、言える時に言っておきたいんだよ。

 

 そんな訳であたし達はグラナダから少し離れたところで迎えに来ていた亡命政府艦隊と合流する事が出来た。

 

「ジオン製のマグネット・コーティングだ! マリーちゃん、愛してる!!」

 

 お土産で渡したザクは最新技術が使われていたらしく、機体を調査していたメイお姉さんがテンション高く抱き着いてきた。

 

 あと、ペガサスの中にはレビル艦隊が使っていた連邦の機体のジャンクが結構あったんだよね。

 

「使えそうな奴はしっかり回収しといたぜ、お嬢!」

 

「テム大尉に診せれば、ウチの壊れかけたジムを含めてニコイチ・サンコイチで直してくれるでしょう」

 

 これを回収してくれたのは、コズンとクランプのおっちゃんらしい。

 

「ナイス、おっちゃん達!!」

 

 そんなおっちゃん達にあたしは笑顔でサムズアップを返した。

 

 さすが付き合いが長いだけあって、色々と分かっている。

 

 基本的にホワイトベースでも亡命艦隊でも台所事情がカツカツっぽいので大助かりだ。

 

「アンタ等、そんな風にして敵から機体を奪ってたのかい。私等より愚連隊じゃないか」

 

 その様を見ていたシーマの姉御は盛大に呆れていたけど、逞しくなかったら生きていけなかったのだから仕方ないのさ。

 

 これでやっとアムロのアンちゃん達のところに帰れると思ってたんだけど…… 

 

「実はね、ジオンはコロニーサイズの大型戦略兵器を造ってるんだ。コイツを何とかしないと連邦軍は全員オシャカになりかねないよ」

 

 どうやら、それはまだお預けらしい。    




ダイクン家の二女はアホの子・スガイファイルズ・嘘予告

言うなれば運命共同体。

互いに頼り、互いに庇い合い、互いに助け合う。

一人が4人の為に、4人が一人の為に。

だからこそ、戦場で生きられる。

スガイ衆は兄弟! スガイ衆は家族!

嘘を言うなっ!!

携帯の中でシイコのコラ画像がせせら笑う!

黒髪! こけし系! おっとり! 巨乳! バーサーカー!

女一人に男は4人! 自分以外は全てライバル!!

誰が仕組んだ地獄やら、兄弟家族が笑わせる!!

お前もッ!(スガイ1・室田)

お前もッッ!!(スガイ2・平沢)

お前もッッッ!!!(スガイ3・田中)

だからこそ、俺(スガイ4・大河内)の為に死ねっ!!

ダイクン家の二女はアホの子・スガイファイルズ

俺達はシイコの旦那に成れるのか?
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