ダイクン家の二女はアホの子   作:アキ山

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お待たせしました。

この話は軽めにしようと思っていたのに、またしても長くなってしまった。

くぅ!? このままでは年末までに一年戦争を終える計画ががが……

……頑張ります。


マチュと姉御と海兵隊

「奴らの秘密兵器はコロニーサイズの大型砲だ。私等が見たときは建造中だったけど、あれが本当に使い物になるのなら、その被害は洒落にならないだろうね」

 

 ご無沙汰しております、なんか異世界転生していたような気がするマチュです。

 

 今、あたし達はシーマの姉御から彼女と海兵隊が見たというザビ家の秘密兵器について話を聞いている。

 

「奴らめ、まさかスペースノイドの母なる大地たるコロニーを武器に転用するとはな」

 

「はっ! ザビ家の連中はコロニー落としなんて狂気の沙汰をブチかましてるんだ。一度地球にブチ込む弾丸に仕立て上げといて、今更大事にしましょうなんて抜かす訳がないさね」

 

 ラルのおっちゃんの言葉を姉御は鼻で笑い飛ばす。

 

 けど、その威勢のよさとは裏腹に彼女から感じるのは遣る瀬無さと悲しみだ。

 

「……コッセルのおっちゃん。そのコロニーって、姉御達と関係あったりしない?」

 

 気になったあたしは隣に座っていたリリー・マルレーン艦長を務める強面の海兵さん、デトローフ・コッセルさんに声をかける。

 

「どうしてそう思うんで?」

 

「勘、かな。シーマの姉御から悲しみとか悔しさが伝わってきたからさ、もしかしたらって思って」

 

 そう答えるとコッセルのおっちゃんは小さくため息をついた。

 

「あの秘密兵器は俺らの故郷『マハル』を改造したものなんでさぁ」

 

「えっ!?」

 

「俺たちはテロリストとアンタ等の討伐を命じられてましてね、見納めになるかもって事でシーマ様の提案で故郷を一目見ようと立ち寄ったんです。そしたら、マハルは武骨な大砲に様変わりしてやがった」

 

 そう言いながら苦々しい表情を浮かべるコッセルのおっちゃん。

 

 彼も故郷を踏み躙られた事を怒り悲しんでいるんだ。

 

「しかも作業の指揮をしていたのは、俺たちに汚れ仕事を押し付け続けたアサクラの野郎だ。奴はマハルのことを掃き溜めと言い捨てやがった」

 

「おっちゃん……」

 

 人の故郷を勝手に改造して、そのうえ掃き溜めだなんて……そのアサクラって奴はどんな外道なんだ?

 

「たしかにマハルは日雇い労働者や不法滞在な奴らも多かった。サイド3のバンチに比べたら上品とは言えないだろうさ。それでも、俺たちにとっちゃあ思い出の詰まった故郷だったんだ」

 

「……そっか」

 

 おそらくだけど、シーマの姉御がザビ家を見限ったのはこれが理由だったんだろう。

 

 姉御は汚れ仕事ばかり押し付けられてきたって言ってたし、そのうえ故郷を奪われたら嫌気がさすのも当然だよ。

 

「その兵器を放置するわけにはいかんのは理解した。まずは連邦軍に報告を上げよう。勝手に動いたなどと難癖を付けられてはかなわんからな」 

 

 コッセルのおっちゃんと話しているうちに姉御の説明は終わり、ダグラス大佐が会議の締めを行っていた。

 

 その後、リリー・マルレーンからペガサスのブリッジへ戻ったあたし達は長距離通信でソロモンにいるであろう連邦軍へつなぎを取った。

 

「敵の大型秘密兵器か。ジオンがこんな物を造っていたとはな」

 

 通信モニターに映るのは金色の髪と顎鬚が顔を一周しているブレックスのおっちゃんだ。

 

 オデッサの時に縁ができたから、その流れでブライト艦長がつないでくれたのだ。

 

「これがあったら連邦のみんなが危ないでしょ。もしかしたら移動してソロモンを狙えるかもしれないし」

 

「そこで我々はこの秘密兵器を撃破し、その後貴官らと合流しようと考えている。誤解がないように、この件をティアンム提督にお伝え願いたい」 

 

「了解した。だが、大丈夫かね? 君たちがいる場所はジオンのテリトリーだ、見つかれば危険が大きい」

 

「たしかにな。大部隊で動けば奴らの目を引くことになるか……」

 

 そう考える兄ちゃんをよそに、ブレックスのおっちゃんの目が私のほうを向いていた。

 

 なるほど、危ないからあたしみたいな子供は安全な自軍に帰って来いと言いたいらしい。

 

「ありがとうね、ブレックスのおっちゃん。でも、もう少しこっちで頑張るよ」

 

「む…しかしだな」

 

「成り行きで乗った神輿でも、みんなが担いでくれるなら半端はできないよ。ケジメはしっかりつけないと」

 

「わかった。無理はしないように」

 

 あたしがそう答えるとブレックスのおっちゃんは何とか折れてくれた。

 

 気遣いは超ありがたいけど、やるべき事をやっとかないと寝覚めが悪いからね。

 

 そのあとの話し合いで秘密兵器の破壊は少数精鋭で行くことになり、ほかの艦は退いたと見せかける陽動も兼ねてソロモンへ引き上げることになった。

 

 でもって問題になったのは、誰が秘密兵器破壊を行うかということだ。

 

「あたしはシーマの姉御と海兵隊のみんながいいと思う」

 

 真っ先に意見を挙げたあたしに皆の視線が集中する。

 

「海兵隊を、ですか。理由を聞いてもよろしいか?」

 

「コッセルのおっちゃんに聞いたんだけど、例の秘密兵器の工事の責任者って姉御の元上司らしいんだよね。それで姉御が合流した後で戦ったのってレビル達テロリストだけで、まだジオンとは出くわしてないじゃん」

 

「つまり、シーマ中佐達の裏切りがバレていないということか」

 

「そういうこと。もしそうなら堂々と秘密兵器に近づけるし、そこから奇襲も掛けられるかもしれないでしょ」

 

 兄ちゃんの言葉にうなずくと、ほかの責任者達は考える素振りを見せる。

 

 しかしここまではまだ前段。

 

「なにより、これは姉御達がしないといけないことだと思う。あのコロニーの住人だった海兵隊の皆が」

 

 あたしが言いたい事はこれだ。

 

「お嬢……」

 

 驚いた顔をする姉御に、あたしは『ちょっと生意気言っていいかな?』と前置きしたうえで語り掛ける。

 

「色々嫌な仕事を押し付けられていたのもあるだろうけど、公国を飛び出しちゃうくらいにマハルが好きだったんでしょ? そんな姉御達だからこそ送ってあげるべきだと思う。兵器として誰かを傷つける前に、みんなの故郷として」 

 

 考えていることを全部口にした後で、さすがに言い過ぎたかと思ったんだけど、シーマの姉御は小さく笑ってあたしの頭をポンと叩いた。

 

「ホントにナマ言ってくれるねぇ。ガキが気を使いすぎだよ」

 

「むぅ……」

 

 色々思うところはあるけど自分で生意気言っちゃうって宣言した手前、何も言えないや。 

 

「けど、そこまで私等とマハルのことを考えてくれてるのなら、引き受けないわけにはいかないね。お偉方もそれでいいかい?」

 

「そういう事情なら、ワシから言うことはない」

 

「こちらもだ。だが、危険な任務になるが大丈夫か?」

 

「なに、厄介な仕事には慣れっこさね」 

 

 海兵隊達の事情を知って顎をさするラルのおっちゃんと心配するドク艦長に不敵な笑みを返す姉御。

 

「あ、もちろんあたしも行くよ。言い出しっぺだし」

 

「海兵隊の皆さんは将来ウチの社員になるものね。今のうちに人となりを知っておくべきだわ」

 

「となれば、私だけ戻るわけにはいかんな」

 

「アンタ等、フットワーク軽すぎだろ。組織のトップだっていう自覚あるのかい?」 

 

 呆れる姉御にあたしは小さく舌を出す。

 

 ダメな神輿でごめんね。

 

 

 

 

 そんなわけで亡命艦隊主力と別れたリリー・マルレーンは、マハル目指して宇宙を駆けることになった。

 

「バーナード伍長! 照準を付けられてから回避運動してたら遅いよ。相手の小さな動きを見て先読みしないと」

 

『そ…そんなのどうやってするんだよ! おわぁっ!?』

 

 こちらのアドバイスに悲鳴を上げながら左へ跳ぼうとしていたザクは、あたしの駆る海兵隊ゲルググの模擬射撃を受けてモノアイの光を消した。

 

 これで通算12回目の撃破である。

 

 今は敵地の中を航海しているんだけど、その間も海兵隊の皆は訓練を休むことはない。

 

 なので、あたしも腕がなまらないように混ぜてもらっているのだ。

 

『バーニィの奴、またお嬢に瞬殺されたぞ!』

 

『つーか、一発くらい躱せよ!』

 

『いや、俺ら人のこと言えねえだろ』

 

『海兵隊の中で初撃外せたのシーマ様だけだしな』

 

『あの腕で10歳とか絶対サギだ』

 

 その様子を船から見ていた海兵隊の面々からはヤジやら何やらがポンポコ飛んでくる。

 

「バーナード伍長もゲルググ乗ったら?」

 

『い…いや、やめとく。一度乗ったことあるけど、全然腕が追い付かないし』

 

 伍長の返答にあたしは小さく首をかしげる。

 

 たしかにゲルググはいい機体だと思うけど、そこまで操縦が難しいだろうか?

 

 あたしとしては逆に物足りないと感じるんだけど、これもプロトに慣れている弊害なのかも。

 

 そんなことを考えていると、バーナード伍長に代わってニューチャレンジャーとしてゲルググが現れた。

 

「……兄ちゃん、塗ってもらったの?」

 

「モチベーションアップは大事なことだぞ、アルマリア」

 

 赤と薄紅の独特なパーソナルカラーに染まった機体を見て呆れるあたしに、通信モニターの向こうで兄ちゃんは不敵に笑う。

 

 まあ、これに関してはあたしもチワワーズのマークを付けてもらってるから、人のことは言えないか。

 

『では、見せてもらおうか。我が妹の実力を!』

 

「サイド7のゲームクイーンの力、とくとご賞味あれ!!」

 

 兄ちゃんなら相手にとって不足なし!

 

 模擬用に威力を落としたビームサーベルを構える赤いゲルググに向けて、あたしは思い切りスロットルを踏み込むのだった。

 

「……アンタ等ねぇ、模擬戦でゲルググ乗り潰されたらウチは商売あがったりなんだけど?」

 

「「ごめんなさい」」

 

 そんでもってMS訓練が終わって一時間後、あたしと兄ちゃんはシーマの姉御の前で深々と頭を下げることになった。

 

 兄ちゃんが思った以上にやるせいで、テンションが上がったあたしはアムロのアンちゃんとのシミュレーターでガンダムの限界反応を超えた時みたいに、ゲルググを壊してしまったのだ。

 

 ちなみに乗り潰したのは兄ちゃんも同じで、サーベルで鍔迫り合いをしている時に両者システムダウンで木偶になりました。

 

 正直、あの時は本気でビビった。

 

「一発引っ叩いてやろうと思ったけど、そんな面と頭をされちゃ手は出せないじゃないか」

 

 今回のやらかしであたしは姉ちゃんの拳骨で頭にコブが三つ重なっており、兄ちゃんも左右の連打によって頬が大きく腫れることになった。

 

 しかし日に日に増大していく姉ちゃんの格闘能力はどうなっているのか?

 

 一応お姫様なのに、このままだと嫁の貰い手が……

 

『マチュ?』

 

「ひぃっ!?」

 

「ど、どうしたんだい?」

 

「なんでもない」

 

 ……このことを考えるのはやめよう。

 

 タンコブの追加はノーセンキューだ。

 

 そんなこんなで海兵隊に馴染んできた、ある夜のことだ。  

 

「ん…うん……」

 

 眠っていたあたしは尿意を感じて目を覚ました。

 

 少しばかり迷いながらもおトイレを済ませ、割り当てられた部屋へ帰ろうとした時だった。

 

「……姉御?」

 

 ふと頭の中をシーマの姉御の思念がよぎったのだ。

 

 感じたのは後悔や恐怖、あとは様々な感情が入り混じってグチャグチャになった心。

 

「……っ!?」

 

 その思念の奔流はかなりキツいものだった。

 

「これって様子を見に行ったほうがいいよね」 

 

 嫌な予感のままに思念が流れるほうへ向かうと、出所はやっぱり姉御の部屋だった。

 

 ロックが掛かっていなかったので少し罪悪感を覚えながら部屋に入ると、そこではお酒が置いてある机の上に突っ伏して姉御が眠っていた。

 

「う…うぅ……知らなかった…私は…知らなかったんだ……」

 

 彼女は酷く魘されていて、顔を強張らせながら譫言をつぶやいている。

 

「姉御、大丈夫? 姉御……ッ!?」

 

 これはダメだと思って起こそうとした瞬間、あたしの脳裏にある光景が浮かんだ。

 

 それは何かのガスに満たされたみたいに黄色く濁った街の風景。

 

 けれど街には動いている人はおらず、住人たちはすべて物言わぬ屍になっていた。

 

「私は…知らなかった……。毒ガスだなんて、知らなかったんだよぉぉぉぉっ!!」

 

 そんな光景の中、パイロットスーツを着たシーマの姉御が酷く怯えた顔で頭を抱えていた。

 

 自分が生み出してしまったこの光景に罪悪感と絶望を抱えて。

 

「今の……」

 

 突然の光景に唖然としていると、手をすごい力で掴まれた。

 

「アンタ……なんでこんなところにいるんだい!?」

 

 声に目を向けると目を覚ました姉御がすごい形相でこっちを睨みつけている。

 

「トイレの帰りに魘されている声が聞こえたから心配になったんだ。勝手に部屋に入ってごめんなさい」

 

 その視線を受けながらあたしが小さく頭を下げると、姉御はため息一つ付いて手を放してくれた。

 

「そうかい。じゃあ、部屋に帰りな。ガキはもう寝る時間だよ」

 

 ぶっきらぼうに言うとバツが悪そうに顔をそむける姉御。

 

 彼女との関係を思えば、さっき見た風景のことは知らぬ存ぜぬが正解なんだろう。

 

 誰だって踏み込まれたくないものはあるし、あの光景は姉御にとってのソレだと容易に想像がつく。

 

 でも、あたしの直観が囁いているのだ。

 

 ここで見て見ぬフリをするべきじゃないと。

 

「端的只今の一念より外はこれなく候。一念一念と重ねて一生なり」

 

 惑う心を振り払う為に、あたしは小さく一つの言葉を口の中で転がす

 

 これは尊敬する葉隠の著者、山本常朝の言葉で『今この瞬間の思い(一念)が全てであり、その一念を積み重ねていくことが人生そのものになる』って意味だ。

 

 これが正しいのなら、あたしはここで一歩踏み込むべきだ。

 

「姉御、一緒に寝ていい?」

 

「はぁ?」

 

 あたしがこう言うと姉御は鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。

 

「姉御は寝つきが悪そうだからさ、抱き枕になってあげるよ」

 

 ニカッと笑えば、シーマの姉御はさっきよりも深いため息をつく。

 

「遠慮しとくよ。あたしゃ、そんなモンが必要な年じゃないんだ」

 

「えー、あたし結構抱き枕としては好評なんだよ? 姉ちゃんなんか絶賛してるし」

 

「そりゃあ姉貴がアンタを大好きなだけだろ」

 

「まあまあ。あたしは姉御が心配なんだよ。戦争が終わったら一緒に働くんだから、今日は騙されたと思ってお試ししてみてよ」

 

「ちょっ…コラ……!」

 

 乗り気じゃないシーマの姉御の手を取って椅子から立たせると、あたしは彼女の背を押してベッドで誘導する。

 

 そうしてベッドに姉御を押し込むと、あたしも布団の中にもぐりこんだ。

 

「まったく、スポンサーの妹だからって好き勝手しすぎだろう」

 

「自覚はあるからごめんなさい。けど、今日だけ大目に見てよ」

 

 不機嫌を隠そうとしない声に苦笑いを返すと、諦めたのか姉御はこちらに背を向けて横になった。

 

 そうしてしばらくすると寝息が聞こえてきて、再び魘され始めた姉御は寝返りを打つと縋るみたいに、あたしへ手を伸ばしてきた。

 

「私の…私のせいじゃない……アサ…クラ…お前が……」

 

 譫言と共に姉御から伝わってくるのは、上官らしきちょび髭のデブなおっさんに食って掛かる彼女の姿だった。

 

 どうやら姉御はコロニー落としの際に、サイド2への攻撃に参加していたらしい。

 

 反ジオンのデモ隊が暴走しつつあるので上官からの命令の元、暴徒鎮圧用のガスを使用した。

 

 けれどそのボンベの中に入っていたのは毒ガスであり、想定以上の高い圧で噴出したソレはデモ隊以外にも多くの市民を巻き込んだ。

 

 結果、姉御は知らずに多くの人が命を落とす引き金を引いてしまったんだ。

 

 さらにその上官が最悪だったのは、作戦が終わった後に毒ガスの散布は姉御の独断ということにして責任をすべて彼女に押し付けたことだ。

 

 結果、その悪評はジオン公国軍に広まることになり、シーマの姉御と海兵隊は悪逆非道の部隊として鼻つまみ者になった。

 

 頭を流れる情景が途切れたと同時にあたしは深くため息をつく。

 

 ビジョンは割と断片的だったし、姉御の心情だけなので真実がどうかは分からない。

 

 でも、海兵隊の皆が置かれた境遇があまりにも酷すぎる。

 

 というか、あの上官がクソすぎるでしょ。

 

 責任者って責任を取るためにいるんだよ。

 

 あたしだって成り行きで付いた神輿の立場だけど、負けたときは首を出す覚悟はできている。

 

 自分のために戦う人がいる以上、彼らに塁が及ばないように体を張る。

 

 それが責任者の役目ってもんだ。

 

 なのに、奴は都合の悪いことを姉御達に押し付けて、成果だけは自分の手柄にしている。

 

 こんなのが上にいるのなら、そりゃあ海兵隊だって公国軍を抜けるわ。

 

「ごめんよ…私は…私はあんた達を殺すつもりじゃ……」

 

 未だに悪夢に囚われている姉御の頭を私は優しく抱きしめる。

 

 人間の体温は人を安心させる効果があるってどっかで聞いたことがある。

 

 それが本当なら、少しでも姉御の心が軽くなればいいと考えてのことだ。

 

「姉御がんばれ、がんばれ」

 

 姉御がまったく悪くないとは言えない。

 

 それは実際に事を起こしたのは彼女だからだ。

 

 けど、その責任の全てを背負って苦しむのは絶対に間違っている。

 

 責任を負うべきはアサクラとかいう馬鹿な上司であり、こんな作戦を思いついたザビ家なんだ。

 

 だからこそ姉御が安心して眠れるように、この戦争のケジメはしっかり付けないと。

 

「ふぁ……」

 

 そんな事を考えている内にあたしにも睡魔が押し寄せてきた。

 

 ベッドに薄く残った香水の匂いに包まれて目を閉じたら、気が付くと寝入ってしまっていた。

 

「ほら、いつまで寝てるんだい。もうとっくに起きる時間だよ」

 

「……おはよう、姉御」

 

「あいよ」

 

 こちらを呼びかける声に目が覚めてベッドから身を起こすと、姉御はあたしの頭をポンと叩いて部屋から出て行った。

 

 化粧で隠したからかもしれないけど目の下にクマはなさそうだし、調子もよさそうに見えた。

 

 あたしの抱き枕作戦も少しは効果があった……のかな?

 

 

◇ 

 

 

 こうしてあたし達は交流を深めながらもマハルへとたどり着いた。

 

「シーマ様! マハルが見えました!!」

 

「ひでぇ…もう完全に大砲じゃねえか……」

 

 工作船や重機の役目を果たしているザクなんかが飛び交うコロニーだったもの。

 

 それは人が住むべき中央部がそっくりそのまま砲口になっており、太陽の光を集めるミラーもエネルギー充填用の施設に置き換わっていた。

 

「お前たち、私等の正念場はここだ! ジオンの海兵隊じゃない! マハルに住んでいた者として、血で汚れる前にマハルを送ってやろうじゃないか!!」

 

「「「「「「「「おおおおおおおおおおっ!!」」」」」」」

 

 出撃を目前にして、海兵隊の皆に檄を飛ばす姉御。

 

 さすがの女傑っぷりに感心していると、手招きで呼ばれてしまった。

 

「お嬢、アンタもなんか言ってやりな」

 

「あたしも?」

 

「あの時アンタが海兵隊を推してくれなかったら、こんな機会は巡ってこなかったんだ。一言くらいブチかましても罰は当たらないさ」

 

 ふむ、そういう事ならお言葉に甘えよう。

 

「えっとさ、皆はあたしが勘が良いこと知ってるよね?」

 

「よくわかってるぜ!」

 

「お陰で丁半博打でお菓子を巻き上げられちまったからな!!」

 

「よっ! ニュータイプロリッ子!!」

 

 ニュータイプっていうなし! 

 

 あと賭け事に混じってたの秘密だって言ったじゃん!!

 

 背後から感じる姉ちゃんの視線が! 圧がぁぁぁぁっ!? 

 

「それでさ、マハルの方から小物臭い気配を感じるんだ。きっと金と権力欲にまみれて、他人を踏みつけるのを何も感じないまるでダメな大人がいるんだよ」

 

「そいつはきっとアサクラだね、間違いない」

 

 ブルっているのを心の内にしまって言葉を続けると、姉御がいい感じに合いの手を入れてくれた。

 

「コッセルのおっちゃんに聞いたんだけど、アサクラって皆をいいようにこき使った上に、厄介ごとや責任を全部押し付けた最低の上官なんでしょ? だったら、ここで今までのツケを取り立ててもいいんじゃないかな」

 

「はっ! いいねえ!! どうせマハルが無くなりゃあ、アサクラの野郎だって終わりなんだ! 最後はケツの毛までむしり取ってやろうじゃないか!!」

 

「「「「「「「おおおおおおおおおおおおっ!!」」」」」」」

 

「そんなわけで今回はあたし達がフォローに回るから、皆はマハルを送ってアサクラに借りを返してね」 

 

 盛り上がる海兵隊の皆に背を向けて元の場所に戻ると、待っていたのは姉ちゃんのゲンコツでした。

 

「……姉ちゃん、いたい」

 

「まったく、賭け事なんて絶対にダメ!!」

 

「ごめんなさい」

 

 博打に関しては100%あたしが悪いので平謝りである。

 

 こうしてテンションを上げた海兵隊はマハルへ進軍した。

 

『シーマ、貴様! グラナダに亡命政府の連中が現れたと聞いたぞ! 貴様らにはテロリストと奴らの殲滅を命じていたはずだろう! どの面を下げて戻ってきた! この役立たずが!!』

 

 あたしの勘が示すとおりマハル改造の責任者はアサクラで、奴は手ぶらで帰ってきた海兵隊の皆を口汚く罵った。

 

「申し訳ありませんねぇ、アサクラ大佐。ここに戻ってきたのは、アンタに渡すものがあったからなんだよ」

 

『渡すものだと?』

 

 姉御の言葉に通信モニターの先で怪訝そうな顔をするアサクラ。

 

 それに対する答えはリリー・マルレーンのメガ粒子砲だった。

 

 放たれた砲撃はマハルを改造していた作業船を撃ち抜き、その近くで作業をしていたザク達を巻き込んで宇宙を照らす火球となった。

 

『き…貴様……! 血迷ったか!?』

 

「あいにくだが正気だよ! お前みたいな屑には付き合ってられないんでね、絶縁状をくれてやったのさ!!」

 

 姉御の啖呵を合図とするかのように、シーマ艦隊の他の船も砲撃を放つ。

 

 これは完全に奇襲であり、アサクラが引き連れていた護衛部隊の戦艦たちは次々に轟沈していく。

 

『よし! 行くよ、お前たち!!』

 

『『『『『了解!!』』』』』

 

 その戦果に畳みかけるように、シーマの姉御を先頭にした海兵隊のゲルググたちが発進していく。

 

 彼等はその練度を武器に、マハルの護衛部隊を次々食い破っていく。

 

「バーナード伍長、危ないって!」

 

 もちろん、あたし達だって見物しているわけじゃない。

 

『ご…ごめん』

 

「乱戦の時は背中に目を付けるくらいの気持ちで警戒心を高めるんだよ。──こんな風に!」

 

 リックドムに背中を取られかけていた伍長のザクを援護射撃で助けたあたしは、脇の下を通した銃口からビームを放って、こちらの背後を取ろうとしたザクを撃墜する。

 

 こんな感じに海兵隊の皆のフォローをしつつ敵を倒していった。

 

 そうして二十分ほどで秘密兵器を防衛していた部隊は全滅。

 

 今はボロボロになったアサクラの乗る戦艦の艦橋に、姉御のゲルググがビームライフルの銃口を突きつけている。

 

『し…シーマ中佐! こんなことをしてただで済むと思っているのか!? これは明確な公国軍への反逆行為だぞ!!』

 

『どこに目ぇ付けてんだい。あそこにいるダイクンのお嬢達が見えないのか?』

 

 姉御に言われてはじめて気づいたのか、通信モニターの先でアサクラが息をのむ。

 

『ま…まさか……貴様、亡命政府に……』

 

『ああ、勝ち馬に乗せてもらったよ。ついでに言えば戦後の就職先もバッチリさね』

 

 姉御がニヤリと笑うと、アサクラの顔色が青を通り越して紙のように白くなった。

 

『さて、お前には積もりに積もった貸しがあったね。ソイツをここで耳揃えて払ってもらおうか!!』

 

『ま…待て! まってく───』

 

 アサクラが命乞いを終えるよりも早く、姉御のゲルググが連続で放ったビームによって艦橋は爆炎と共に吹っ飛んだ。

 

『お代はアンタの首で勘弁してやるよ。そのクソ安い命で帳消しにしてやるんだ、あの世で泣いて感謝するんだねぇ』

 

 戦艦から離れながら吐き捨てる姉御。

 

 そうしてジオンの部隊を退けたあたし達は、最後にマハルの破壊を行った。 

 

『我等の故郷、マハルに感謝と哀惜の意を込めて……敬礼!!』

 

 シーマの姉御が放った号令と共に海兵隊の艦隊は変わり果てたマハルへ一斉射撃を行う。

 

 そうして数十発の砲撃を受けたマハルは中央から破裂し、爆発を伴ってバラバラに砕け散った。

 

 こうして秘密兵器破壊を終えたあたし達は、さっさとトンずらしたわけだけど、リリー・マルレーンに戻ると海兵隊の皆は泣いている人が多かった。

 

 やっぱり故郷を失ったことはショックだったみたいだ。

 

「兄ちゃん、姉ちゃん、部屋に戻ろう」 

 

「ええ」

 

 彼らもあたし達に泣き顔を見られるのは嫌だろう。

 

 男の涙を気づかないふりをするのがいい女だって、何かの本でも書いてあったし。

 

 乙女の配慮で自室へ行こうとすると、姉御が声をかけてきた。

 

「ありがとうよ、お嬢。アンタのお陰でマハルを見送ることができた」

 

「ううん。姉御こそ、お疲れ様」

 

 気丈にふるまっているけど姉御の目も赤くなっていた。

 

 これも見ない振りをするのがデキる乙女のエチケットだ。

 

「この恩には全力で報いる。これからの戦い、頼ってくれていいからね」

 

「戦争が終わった後も長い付き合いになるんだし、色々と頼りにしちゃう!」

 

「ああ。社長も部下ともどもよろしく頼むよ」

 

「ええ、任せて頂戴」

 

 姉御の言葉に力強く頷く姉ちゃん。

 

 ここで姉御は何かに気づいたように兄ちゃんの方を向いた。

 

「ところでシャア少佐。アンタは会社だとどんな立ち位置になるんだい?」

 

 そう問われてあたしも兄ちゃんの役割が決まってなかったことに気づいた。

 

 姉ちゃんが社長ということは兄ちゃんは会長か?

 

「私はこの戦争が終わったら一パイロットとして生きるつもりだ。なので、実働部隊の平社員だな」

 

「あれ? そこは隊長とかじゃないの?」

 

「サイド7の失敗から学んだのだが、私には部下を率いる才能がないようだ。ならば自由気ままに戦場を駆ける風になる方がいい」

 

「少佐まで出世した男が何言ってんだい」

 

「それ聞いたらドレンのおっちゃんやアンディさん、リカルドさんが泣いちゃうよ?」

 

 かなり無茶苦茶なことを言い出した兄ちゃんに姉御と一緒にツッコむあたし。

 

 そんなものはどこ吹く風と笑う兄ちゃんに、姉ちゃんは奇麗な笑顔を向ける。

 

「愚兄。我が社があなたを採用すると何時から錯覚していた?」

 

 そしていとも容易く吐き出される核弾頭級の一言。

 

 これには兄ちゃんの笑顔も引きつる。

 

「待て、アルテイシア。私はこれでもエースとして名を馳せた男だぞ!?」

 

「それだけの実力がありながら責任を取ろうとしない男に用はありません」

 

 その後、兄ちゃんは必死で姉ちゃんに自分をプレゼンすることになった。

 

 がんばれ、兄ちゃん!

 

 機嫌がいい時に売り込んだら、内定がもらえるかもよ!

 




マチュ・世界比較

・宇宙世紀 
 
役割・パイロットと神輿をやっていればいい。戦争が終わったらただの女の子に戻れるかも……

家族・兄妹仲良く

相棒・鬼畜天パな頼れるバディ

今後・戦乱連発は確定・地獄ルート


・コズミック・イラ

役割・コードギアスで例えるなら皇カグヤ(民族の象徴)と紅月カレン(エースパイロット)と藤堂鏡志朗(部下へのMS戦術の教導など)を一手に引き受けることになる。ルルーシュ枠募集中。

家族・兄と幼馴染の兄貴分とは袂を分かつことは確定。下手をすると母親とも別れることになるかも

相棒・期待の大型新人、さすがにmsには乗れ……ない?

今後の世界・大地獄ルート。日本を取り戻すと大西洋連邦との同盟は必須。そのうえ日系財閥がロゴスに食い込んでいるので、プラントとはどう足掻いても敵対確定。

やったね! 種デスだとラスボス枠だよ!!     
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