ダイクン家の二女はアホの子   作:アキ山

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お待たせしました。

アホの子更新です。

一年戦争がなかなか終わらぬ。

とりあえず、ペースアップして頑張る所存にござる


マチュと見えない襲撃者

『まさかソーラ・レイが狙われるとはな……』

 

 ジオン公国総督府の総帥室、そこでギレンは通信モニターで渋面を浮かべるドズルにため息をついた。

 

「回収できたアサクラの艦の航海レコーダーから、犯人はダイクンの子倅とシーマ海兵隊だという事が分かった」

 

『例のテロリストによるグラナダ襲撃を止めたその足で破壊工作を行ったという事か。だが、どうしてソーラ・レイの情報が漏れたんだ?』

 

「シーマ海兵隊はブリティッシュ作戦の時からアサクラの下で働いていた。ソーラ・レイの情報を持っていても不思議ではない。それに指揮官のシーマをはじめ、隊員の多くはマハル出身者。今まで汚れ仕事を任せていたことに加え、故郷を決戦兵器に変えた事実が反感を増幅させたのだろう」

 

『その結果が共和国への寝返りか。兄貴、シーマ艦隊に裏の仕事を任せていたと言っていたが、手を汚した分は奴等に報いていたのか?』

 

「追加報酬は出していた。しかし、アサクラを始めとする上官達が彼女達への報酬を横領していたようだ」

 

『奴は兄貴の軍閥にいたが、戦争が始まってからはキシリア配下の海兵隊へ配属になっていたな。望まぬ配置故に腐ったか』

 

「しかし全ては終わった事だ。それよりも今は今後の対策を考えねばならん。そちらの『予備』は使えるか?」

 

 苦虫を嚙み潰すドズルをギレンは諫める。

 

 犯人であるシーマ艦隊は敵に回り、彼女達が離反する大きな要因となったアサクラも死んだ。

 

 ソーラ・レイの件をこれ以上を掘り下げたところで、ジオン軍に得るモノは何もない。

 

『ああ、調整は終わっている。さすがに射角を変える事は出来んが、ア・バオア・クーの動力を使えば失ったモノに負けないくらいの出力は出せるだろう。だが、兄貴。このまま連邦の奴らが攻めてくるのを待つつもりか?』

 

「それについては我々が何もしなくてもキシリアが動くだろう」

 

『……ああ、アイツか』

 

 冷徹な表情で答えるギレンに対して、ドズルは何とも言えないというような表情を浮かべる。

 

 現在、グラナダにいるキシリアのジオンでの立場は大きく揺らいでいる。

 

 それもダイクン派が仕掛けたゲリラ放送内で、テロリストのグラナダ襲撃を防いだアルマリア・リム・ダイクンとの会話が流されたからだ。

 

 彼女はその中で現政権を裏切り、ダイクン派と手を結ぶとはっきり口にしていた。

 

 それも理由は国を捨てて保身に走ろうとしたデギン・ソド・ザビ公王の復権と、改革後に己が就く政治的ポストを求めてである。

 

 彼女のこの態度は官民共に国への裏切りと判断された。

 

 さらにはダイクン派からも寝返りを拒絶された彼女は今や失脚する寸前なのだ。

 

「キシリアは今崖っぷちにいる。なにせ奴にはいく場所が無いのだからな」

 

『現政権に叛意がバレた事でジオンでの居場所は無い。かといって、連邦へ下れば戦犯として処刑は免れん。共和国亡命政府は言わずもがな、か』

 

「そうだ。奴が生き残るには、自らの失態を帳消しにする程の戦果をあげるしかない。たとえば、ダイクンの倅共を討つなどな」

 

 そこで一度言葉を切ると、ギレンは机の上で湯気を立てるコーヒーで唇を湿らせる。

 

「当然、それを為すにはキシリアとて無傷ではいられん。虎の子であるニュータイプ部隊とやらも大きな損害を受けるだろう」

 

『そうなれば、キシリアも余計な真似は出来なくなるという事か』

 

「正直に言えば奴を捕らえて実家の自室にでも叩き込みたいところだが、今はグラナダに差し向ける手勢すら惜しい。ならば、せめて戦争が終わるまでグラナダに封じ込めねばな」

 

『まったく……手間を取らせてくれる』

 

 心底うんざりした顔を隠そうともせずにため息をつく弟に、ギレンは内心で苦笑いを浮かべる。

 

「こちらから技術士官を何人か送る。ソーラ・レイ運用の助けになるだろう」

 

『頼む。ウチの連中でも使えはするが、やはりトラブルの可能性を考えると専門家がいた方が心強い』

 

 打ち合わせの後に通信を切ると、ギレンが向かったのは親衛隊が待機する詰め所だ。

 

「ギレン総帥、お疲れ様です!」

 

 自分の姿に一糸乱れぬ敬礼を行う一つの分隊を前に、ギレンは口を開く。

 

「うむ。これよりお前たちには技術士官としてア・バオア・クーへ行ってもらう。万が一の時は分かっているな?」

 

「はっ!」

 

「貴様等の任務は戦後におけるジオンの存亡を左右するものだ。失敗は許されんと肝に銘じておけ」 

 

「了解しました!!」

 

 それだけ伝えると親衛隊の詰め所を後にするギレン。

 

「ジオンの存亡か……我ながらよく言えたものだ」 

 

 その口元に宿った冷笑は、果たして何に対してのモノか?

 

 

 

 

 一方その頃、サイド6からグラナダへ移されたフラナガン機関では一つの騒ぎがあった。

 

「みんな、急いで! 立ち止まってはいけない!!」

 

 非常用アラームが鳴り響く中、息を切らせて走る数名の子供達の殿に付いて走るのは、アッシュグレーの髪と口ひげを持つ一人のジオン軍人だった。

 

『被検体と手引きした者を逃がすな! 奴等の生死は問わん! 発砲も許可する!!』

 

 館内に響くのはヒステリックな女性の声。

 

 それは、このグラナダを牛耳るキシリア・ザビのモノだ。

 

「あの方はニュータイプを何だと思っているのだ! 戦闘の素質が無いからと言って、こんな子供達をモノのように処分しようなどと……!!」

 

 軍人、シャリア・ブルは仕えていた者の冷酷さを見て怒りに歯を食いしばる。

 

 彼は核融合炉に不可欠な燃料であるヘリウム3などを得る為に、木星と地球圏を往復する『木星エネルギー船団』の隊長を務めていた。

 

 その過酷な旅の中でシャリアの第六感というべきものは磨かれ、いつしか彼は他者の意図や思惑などを感じ取れるようになっていた。

 

 長い航海を終えて故国であるジオン公国へ帰ったシャリアは、ギレンの推薦でキシリア麾下のニュータイプ部隊へと配属される事となった。

 

 その際、シャリアはギレンが自分をキシリアへのけん制と、ニュータイプ部隊の監視員として自分を使おうとしていることを見抜いていた。

 

 しかしシャリアは自分と同じ力を持つ者がいるという事実に興味を示し、少しでも彼等の助けになりたいと命令を受け入れた。

 

「こ…これは……」

 

 だが、グラナダの地でシャリアが見た物は吐き気を催す悍ましいモノだった。

 

 ニュータイプ部隊の要員の源泉であるフラナガン機関、キシリアの肝入りであるこの研究機関には多くの子供達が集められていた。

 

 マハルから強制的に移住する中で保護者と逸れた不法滞在者の子供、この戦争で親を亡くした戦争孤児、果ては犯罪組織や娼館から買い上げた者など。

 

 彼等はサイコミュシステムというマン・マシン・インターフェイスの実験や戦闘訓練を強要され、成果が出せねば薬物や外科手術などの肉体改造が施されていた。

 

 一つ補足をしておくなら、フラナガン機関も以前はここまで強硬な実験や処置を行ってはいなかった。

 

 理論はある程度確立されているとはいえ、ニュータイプ能力の素養を持つ者は多くない。

 

 それに加えてフラナガン自体も『ニュータイプは人類の革新である』という理想を持っていた。

 

 だからこそ被験者を大事にしていたし、実験で成果が出ない者に薬物投与を行うにしても健康や精神に過度の害が及ばないように配慮していた。

 

 しかし、それもスポンサーであるキシリアの立場が揺らいだ事で一変した。

 

 功を焦るキシリアは己の最後の希望となったニュータイプ部隊を増強すべく、フラナガンに圧力をかけたのだ。

 

 フラナガンとて被験者を雑に扱う事は反対だったが、キシリアの意向を汲まないわけにはいかない。

 

 結果、彼等は研究所にいた被験者達を戦場で耐えうるニュータイプ兵士にすべく、過度な実験や訓練を強要した。

 

 しかしそんな逸材などそうそういる筈もなく、実験中の事故や薬物障害などで被験者の数は日に日に減っていった。

 

 フラナガン機関の研究者達は減った被検体を合法・非合法を問わず、様々な手段で集めては実験を繰り返した。

 

 運営方法が変わった当初は職員の中にも非人道的な行いに嫌悪感を示す者もいた。

 

 だが人間とは慣れる動物である。

 

 実験を繰り返す内に良識を持った彼等も被検体の事を人とはみなさなくなっていった。

 

 これによってジオンのニュータイプ部隊にはかなりの数の兵士が補充されることになった

 

 その代償として、比較的穏やかだったフラナガン機関は阿鼻叫喚の地獄と化したのだ。

 

 フラナガン機関の被検体達は訓練の成績が悪ければ容赦なく暴力が振るわれ、誰しも体の何処かに傷を負っている。

 

 研究所のどこに行っても聞こえるのは子供や年若い少年少女の苦鳴と泣き声だ。

 

「なんと醜悪な事を……。これが我が祖国の所業か……! これが人のやる事かっ!?」

 

 フラナガン機関の視察から帰った日、シャリアは自身の目に焼き付いた人の醜悪さに懊悩する事となった。

 

 彼の部下たちが人形のように無感情か、精神病患者の如く情緒が安定していない理由が分かった。

 

 機関で行われていた人を人とも思わぬ所業、ニュータイプを戦争の道具としか見ていない彼等の悪意が年若い部下達の心を壊してしまったのだ。

 

 突きつけられた現実は、シャリアがグラナダにやってきた時に抱いていた理想を打ち砕くには十分すぎた。

 

 それでも彼はニュータイプ部隊の隊長を辞そうとはしなかった。

 

 生来の責任感の強さから、与えられた責務は私情と切り離して果たすべきと判断したからだ。 

 

 だが祖国から離れかけていたシャリアの心に、現実は容赦なく最後の一押しを叩きつけた。

 

 それは今から30分ほど前、シャリアが部隊の錬成訓練を終えた時に起こった。

 

【たす…けて……】 

 

「今のは……?」 

 

 脳内に流れたSОS、シャリアはそれがニュータイプの同士の感応によって齎された事に気が付いた。

 

 声に導かれるままに研究所へ向かったシャリアは、そこで白衣を羽織った職員に連れられた子供達と遭遇した。

 

「これはシャリア隊長。また研究所の視察ですか?」

 

 シャリアに気が付いた職員は何でもないかのように声をかけてきた。

 

「……すみません。その子供達は?」

 

 そんな職員とは裏腹に5人いた子供達の全てが絶望に目を曇らせていることに気づきながら、シャリアは念のために職員へ問いを投げた。

 

「彼等は能力が基準値に達しなかった落伍者です」

 

「落伍者?」

 

「ええ。サイコミュを使った無線砲台の事はご存じでしょう? コイツ等はそれを動かすことが出来なかったんですよ」

 

 子供達へ向けるのは心無い言いようにシャリアが眉根を寄せるのに気づかないのか、職員は平然と言葉を続ける。

 

「ソロモンの戦いを見る限り、連邦のパイロットの練度はこちらのベテランより上です。この状況では一芸でもない限り、実戦経験の浅いモノを戦場に出したところで役には立たない。そしてニュータイプ部隊には戦果が必要です」

 

「だから彼等は落伍者だと言うのですか」

 

「我々も慈善事業でやっているわけじゃありませんからね。成果が出せない者は切るのは当然でしょう」

 

 ここでシャリアは職員の傲慢と悪意に満ちた思考から子供達をどうするかを読み取った。

 

 全員を処理場で射殺した後、死体を溶鉱炉へ放り込んで存在自体を抹消する気なのだ。

 

「なるほど、分かりました」 

 

「がはっ!?」

 

 そう返すと同時にシャリアの拳が事情を説明していた職員の鳩尾へ叩き込まれた。

 

「なっ!? ぐへぇっ!?」

 

 突然の事に驚く子供達の後ろに付いていたもう一人の職員、しかし彼は次の瞬間には跳ね上がったシャリアの右の踵に側頭部を打ち抜かれて昏倒する事となった。

 

 職員たちを打ち倒すと、シャリアは子供達の中で年のころは13歳程度の少女の前に膝をついて目線を合わせた。

 

「貴方が私を呼んだのですね?」

 

「え……」

 

「声には出さずとも助けてほしいと願ったでしょう? ニュータイプはそういう強い意志を感じる力がある。貴方のSOSはしっかりと私に届いていたんですよ」

 

 優しく声を掛けながらシャリアが頭をなでると、少女はボロボロと涙を流した。

 

「名前を聞いても?」

 

「せ…Ⅶ。ここだとそう呼ばれてる」

 

「それは名前とは言えませんね。ふむ……」

 

 セブンと名乗った少女の答えを受けて、シャリアは少し考える仕草を取る。

 

 そんな彼の頭にスッとある名前が浮かび上がった。

 

「アルレット。貴方が良ければ、アルレットと名乗るのはどうでしょう?」

 

「アルレット……うん! 素敵な名前!! 私、今からアルレットって名前にする!!」 

 

 シャリアが提案すると、セブンは笑みを浮かべてそれを受け入れる。

 

(ああ、子供には絶望よりも笑顔が似合う。やはり、この研究所のやり方は間違っているのだ) 

 

 そして少女の笑顔はシャリアに己の考えが正しい事を確信させた。

 

「ああ! セブンばっかり、いいなぁ!」

 

「セブンじゃない! アルレット!」

 

「おじさん! 僕にも名前付けてよ!」

 

「俺は父ちゃんに貰ったヨスケって名前があるからいいもーん!」

 

 これまでのやり取りで少しは信用を得たのだろう、先ほどまで沈んだ表情を浮かべていた子供達がシャリアの周りに集まる。

 

「少し待ってください。それより今はここから逃げる方が先です」

 

 この研究所には侵入者発見用に多くの監視カメラがある事をシャリアは知っている。

 

 故に自分が職員を倒したことも上は把握しているだろう。

 

「逃げるって、どこに?」 

 

「一つだけ心当たりがあります。そこなら、あるいは……」

 

 アルレットの問いかけでシャリアの頭に浮かんだのはある人物の名だ。

 

 アルマリア・リム・ダイクン。

 

 ジオン建国の父であるジオン・ズム・ダイクンの娘であり、この戦争の中で数奇な運命を生き抜いて今はジオン共和国亡命政府の象徴となった少女。

 

 子供でありながら戦場で多大な成果を上げている彼女は、ジオンではニュータイプに違いないとされている。

 

 この噂が真実なら、同胞である自分達に手を差し伸べてくれるはずだ。

 

 こうしてシャリアは子供達を連れてフラナガン機関……いや、ジオン公国から脱出を試みているのだ。

 

「シャトルを……いえ、シャトルでは追い付かれるか」

 

 フラナガン機関とニュータイプ部隊共用の格納庫へたどり着いたシャリアは、逃亡手段を探して視線を巡らせる。

 

「おじさん、あっち!」

 

 そんな中、アルレットが指し示したのは実験機が収められた区画。

 

「これは……ブラウ・ブロ?」

 

 そこへ足を踏み入れたシャリアの前に現れたのは、ニュータイプ部隊に配属された時に与えられたモビルアーマーによく似た機体だった。

 

「……違う。これ、МSだよ」

 

 しかしそれに否を突きつけたのはアルレットだった。

 

「機体の本体は真ん中の部分。左右にあるのはブースターと推進剤の増槽じゃないかな」

 

「わかるのですか?」

 

「うん。サイコミュを使えるようになろうって、メカの事をいっぱい勉強したから」

 

 シャリアの問いかけに頷くと、アルレットはМSとは一線を画す巨大な機体に手を当てる。

 

「この子は強襲用に造られたんだと思う。長い距離を左右のブースターで飛んで、戦闘になったらブースターを切り離してМSで戦うって感じ」

 

 アルレットは、この機体はモビルスーツとモビルアーマーのいいとこ取りを狙ったのではないかと見た。

 

「それで逃げられそうなのかよ、アルレット?」

 

「これだけ大きなブースターなら戦艦相手でも振り切れる……と思う」 

 

 他の子供に問われて答えるアルレット。

 

 それが尻すぼみになったのは、外見だけではイマイチ確証が持てないからだろう。

 

「貴方を信じますよ、アルレット。皆、そこに子供用のノーマルスーツがあります! それを持って機体の中へ!!」

 

 シャリアの指示で子供達は試作用МSへと乗り込んだ。

 

「キケロガ……これがこの機体の名前ですか」 

 

 コクピットに座ったシャリアは、発進シーケンスを進めながら機体コンディション画面に浮かび上がった名を口の中で転がす。

 

『おじさん、こっちにも操縦席あったよ!』

 

「おそらく試験的に動かす際に、パイロットの補助要員が乗る予備のモノでしょう。慣性制御などは備わっていますか?」

 

『うん!』

 

 アルレットからの通信で子供達の安全を確認すると、シャリアはスロットルレバーを前へ押し込みながらペダルを踏む。

 

『そこの機体! 誰が乗っている!? 応答せよ! 出撃は許可されていない! 応答せよ!?』

 

「発進します!!」

 

 そして管制室からの通信を無視して、シャリアはグラナダを飛び出した。

 

 彼等の目的地はソロモン。

 

 果たして、逃亡者達は無事に生存の手を掴めるのだろうか?

 

 

 

 どうも、実兄の血で汚れたシミュレーターを掃除するという嫌すぎる体験をしたマチュです。

 

 私がアンちゃん達と合流して一週間が経った。

 

 その間は機体の整備や絆民との紅白戦、あとはアンちゃんと遊んだりとなかなかにやる事が盛り沢山だった。

 

 あ、亡命政府のトップの仕事はやってない。

 

 あれってお飾りの神輿だから、いる事が仕事だし。

 

 そんな訳で連邦軍は次なる決戦地、ア・バオなんとかっていう要塞攻略に向けて準備も最終段階に入っている。

 

「見ろ、ロックオン(笑)! お前のジムスナⅡを魔改造してやったぞ!!」 

 

「うおおおおおお、顔がバイザーからガンダムに!? しかもGNシールドまで付いてる!!」

 

「まあ、ガワだけで中身は耐ビームコーティング付けた追加装甲だけどな」

 

「名付けてGSⅡ・デュナメスだ! ミサイルは再現できなかったけど、そこは勘弁してくれ!」

 

「ありがとう…ありがとう……!」

 

 あたし達がテロリストからかっぱらった機体達は、ニコイチ修理などを経て再利用することになった。

 

 テムおじさんはガンダムの完全量産型というジーラインに興味津々で、コクピットを修理するだけでいいのに完全にバラシてたっけ。

 

 でもって、鹵獲機の恩恵はホワイトベース隊や亡命艦隊にも回ってきている。

 

「なんだ、アムロだけじゃなくてお前も付き添いか、ドラゴン娘」

 

「うん。プロトも整備が終わったらしいし、慣らしついでにね」

 

 パイロットスーツに着替えた私と姉ちゃんを迎えたのは、カイさんとアンちゃんだ。 

 

「G4チームからアレックスのフルアーマープランの事は聞いたかい?」

 

「うん、でも断った。アレックスって機動力が売りなのに、それを殺しちゃダメでしょ」

 

 というか、レビルガンダムの所為であの手の重装甲はあんまり気乗りしないんだよね。

 

「おいおい、しっかりご指導お願いするぜ、二人とも。俺はお前らと違って、乗り換えた機体を手足のように扱えねえんだからな」

 

 アンちゃんとそんな話をしているとカイさんが声をかけてくる。

 

 カイさんは次の出撃ではガンキャノンからジーラインに乗り換える。

 

 でもってカイさんの乗っていたキャノンは別の部隊に回るそうだ。

 

 そんでもって、今から行うのはカイさんが新機体に慣れるための練習なのだ。

 

「それじゃあ始めましょう。時間もそんなにあるわけではないでしょう」

 

 姉ちゃんの号令で自分の機体に乗り込むあたし達。

 

「それじゃあ、カイさんは最初に出て。あたし達はそれを追いかけるから」 

 

『へぇへぇ。お手柔らかに頼むぜ』

 

 こちらの通信に気のない返事を返すと、カイさんの乗った赤いジーラインがカタパルトによって射出される。

 

『それじゃあ、行こうか』

 

『うん』

 

 それに続いてソロモンから発進するあたしとアンちゃん。

 

 すこし強めにスロットルを吹かせると、先に出たカイさんと合流することが出来た。

 

「どう、新型は?」

 

『キャノンに比べると挙動が軽すぎる。同じ感覚で操作していたら妙な方向に吹っ飛びそうだぜ、コイツは』

 

『その機体にもマグネットコーティングが施されてますからね。動かしながら少しづつ感覚のズレを合わせていきましょう』

 

 そんな会話をしながらソロモンから少し離れると、周りにジムや連邦カラーに塗られたジオン製МSが現れる。

 

 どうやら他の隊も機体の調整をしているらしい。

 

『おいおい、勘弁してくれよ。ミスったら赤っ恥───!?』

 

 それを見て軽口を叩こうとしていたカイさんの表情が真剣なモノに変わる。

 

『マチュ』

 

「うん」

 

 その理由はあたしにも分かった。

 

 誰かがここを狙っている。

 

 これだけ殺意と一緒に重圧みたいなモノを感じれば嫌でもわかる。

 

 けど妙なのは殺気が複数あるのに、全部同じ人間のモノに感じることだ。

 

「いったいどういう……こと!」

 

 ちんまい脳みそをグルグル回転させていたあたしは、背後に感じた刺すような敵意に振り向きざまにビームライフルを放った。

 

 プロトの脇の下からのぞいた銃口から放たれた光弾は、狙いたがわずに襲撃者を射抜く。

 

「あっ!」

 

 けど、命中の瞬間にモニターに映ったのはМSでも戦闘機でもない。

 

 ひょうたん型の何かだった。

 

『そこっ!』

 

 そしてあたしに一拍子置いて、こちらの頭上に陣取っていた同じモノをアンちゃんが撃墜する。

 

『マチュ、今のは!?』

 

「うん! みんな、気を付けて! 移動砲台がこっちを狙ってる!!」

 

 アンちゃんの声を受けたあたしはすぐに周りにいる連邦軍の皆に警告を発する。

 

『敵か!?』

 

「うん! ただ、狙っているのはМSじゃない! たぶん移動砲台!!」

 

『移動砲台?』

 

「 ⊂二二二( ^ω^)二⊃ブーンが使ってたロケットパンチみたいなの!」

 

 あたしの警告で、その場にいた連邦兵達は一気に混乱した。

 

『なにぃ!?  ⊂二二二( ^ω^)二⊃ブーンって必須訓練になっていたクソムズシミュレーターだろ!』

 

『あの変態装備を使える奴が他に──ぐわぁっ!?』

 

『エチゼン!』

 

 その隙を突く形で練習場に飛び込んできた砲台は連邦のМS達に攻撃を仕掛けてくる。

 

『大丈夫だ! けど…クソッ! おニューのジムが隻腕になっちまった!!』

 

『やべえぞ! 変態装備が編隊組んで飛んできやがった!!』

 

『円陣だ! 全員、円陣を組め! あれがシミュレーション通りならこちらの死角を突いてくるはずだ!』

 

『互いに背中を預けて死角を無くそうってのか! よし! 四人一組だ! 東西南北、一人一方角でフォローしろ!!』

 

『バニング大尉! 上から来ます!』 

 

『気を付けろ!』

 

『せっかくだからオレは右から来る砲台を堕とすぜ!』

 

『このヤロウ!!』

 

 謎の移動砲台を相手に素早く対応し始める連邦軍のみんな。

 

 移動砲台は縦横無尽に飛び回って苛烈な攻撃を仕掛けているのに機体を損傷した人はいても撃墜数がゼロなのは、今まで積み上げてきた戦火の絆民としての経験と紅白戦の大乱闘の成果だろう。

 

『アムロ、マリー! このままだとじり貧だ! 本体を見つけないとヤバイぜ!』

 

「うん!」 

 

 頭上に現れた砲台からのビームをバレルロールで躱しながら放ったカイさんの言葉に、あたしは意識を集中させる。

 

 マズいのは攻撃を仕掛けている奴だけじゃなくて、似たような気配が何個か近づいてきていることだ。

 

 もしコイツ等も移動砲台使いだとしたら、さすがに洒落にならない。

 

 さて、どう切り抜けようか。




その頃のサイド6

某スワン「誰が変態じゃあぁぁぁっっ!!」

某帝王「ど…どないしたんや、ララァはん!?」
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