ダイクン家の二女はアホの子   作:アキ山

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お待たせしました。

やっと…やっと殴りあ……もとい、めぐり逢い宇宙ことア・バオア・クー戦に辿りつきました。

ある意味感無量です。

さて、ジオンですが調べてみると謎のビックリドッキリメカがたくさんある様子。

Gジェネで産廃扱いされているグロムリンとか、グロムリンとか。

あとはキリシマの姉御と来たグレートジオングとか。

あ…あぁ……やめろぉ! 俺が欲しいのはキリシマの姉御なんだ!

謎のリーゼントな艦長の戦艦じゃねーんだよ!!

二枚も来るんじゃねえ!

やめろ! やめろぉぉぉ!!

 


マチュとア・バオア・クー攻防戦(1)

 全人類を巻き込んだ未曽有の戦争、その最終決戦の号砲はけたたましいサイレンだった。

 

「どうした!?」

 

「敵艦隊接近! その数、多数!!」

 

 その警告が鳴り響いたのはア・バオア・クーの指令室だった。

 

 総司令官を務めるドズルの怒号にレーダー観測手が緊張を以て答える。

 

「敵の方位は?」

 

「Nフィールド、Sフィールド、いや、これは……! 全方位! ア・バオア・クーを取り囲むように全方位から連邦軍の艦隊が押し寄せてきます!!」

 

 焦りを滲ませる観測手の言葉に、ドズルはスッと視線を細める。

 

「……やはりな。この布陣、ソーラレイを警戒しての事か、ティアンムめ」

 

 包囲と言えば聞こえがいいが、これは本来なら集中するべき戦力を分散しているにすぎない。

 

 陣の層は薄く、こちらが本気で突き崩す気なら止める事など不可能。

 

 防衛網を突破する為に戦力を一点集中させるべき要塞攻略ではあり得ない策だ。

 

 だが、ドズルは敵の失策を笑う事はない。

 

(ソーラレイの存在を危惧するなら、これもやむを得まい。俺とて奴の立場なら同じ手を打つ)

 

 歴戦の名将が常道を捨てざるを得ない。

 

 それほどにコロニーレーザーという戦略兵器は恐ろしいのだ。

 

 同時にドズルは敵の布陣が自分達にコロニーレーザーを撃たせる為の物だとも感づいている。

 

(現状ではソーラレイを放っても敵へ与える打撃は大きいとは言えん。しかし迎撃部隊と奴等が乱戦に入れば、あんなデカブツなどおいそれとは撃てはしない。乗せられるのは業腹だが使えるチャンスは今を置いて他にないか……)

 

 ドズルは顎に手を当てて思考を加速させる。

 

 相手は出血を覚悟のうえで攻めてきている。

 

 ならば肝要となるのは、その出血を如何に致命へ近づけるかだ。

 

「タイタンだ! ティアンムの乗る旗艦、タイタンを探せ!!」

 

 怒声に近い指示を飛ばすドズルに、司令部の士官たちは一斉にコンソールを操作する。

 

 マハルを元にした方を亡命艦隊に破壊された時点で、ドズルはこの状況を予測していた。

 

 それ故にア・バオア・クー内のコロニーレーザーを最大効率で活用すべく、要塞周辺にレーダーとガンカメラをばら撒いている。

 

 初手の一射で連邦軍の頭、ティアンムを討ち取る為に。

 

(如何に大軍であろうと…いや大軍であればこそ、司令官を失えば混乱が大きくなる! 俺達が勝つにはティアンムを失い、指揮系統の麻痺で奴等が烏合の衆となった隙を突くしかない!!) 

 

 己の立てた必勝のプランの為に焦りを嚙み殺すドズル。

 

 そんな彼にレーダー観測手からの朗報が飛び込んでくる。

 

「閣下、見つけました!! Sフィールド4時の方向! 上方40! 距離32km後方にマゼラン級アリ! 艦影識別タイタンです!!」

 

「敵艦隊から発砲! これは……!?」

 

 タイタン発見のすぐ後に放たれた別の観測手の声、その次の瞬間にはア・バオア・クー指令室に設置された外部用モニターが白く染まった。

 

「どうした!?」

 

「照明弾です! 奴等、長距離ミサイルに照明弾を仕込んで全方位から一斉発射してきました!!」

 

「俺達の眼を潰して、ソーラレイを撃たせんつもりか! だがもう遅い! ソーラレイ、発射準備!!」

 

「エネルギー充填、完了しています!」

 

「先ほどの観測結果から照準を合わせます! 目標! Sフィールド、敵旗艦タイタン!!」

 

「撃てぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 ドズルの咆哮と共にア・バオア・クー指令室にある外部観測用モニターを染める白がさらに濃くなる。

 

 要塞から突き出た砲身、そこから吐き出された生命維持を除く要塞の機能が一時停止する程のエネルギーを担保とした破壊の極光が、照明弾の光を塗り替えたのだ。

 

 そして銀河を貫く光の槍はア・バオア・クーを取り囲んでいた連邦艦隊の一角を貫いた。

 

 超エネルギーに呑まれ、爆発する間もなく消滅する多数の艦艇達。

 

 その中にはティアンムの愛艦であるタイタンも含まれている。

 

 ア・バオア・クー指令室をも揺るがしていた振動が落ち着くまで、どの位の時間が経ったのか。

 

「戦果確認! ドローンを向かわせて、タイタンが沈んだかを確認しろ!!」

 

「了解!!」

 

 睨んでいた外部用モニターの閃光が消えるのを確認するとドズルはすぐに指示を飛ばす。

 

「出ました! 目標の艦影認めず! タイタン他、効果範囲内の連邦の艦は全て消滅しています!!」

 

 精鋭を集めて組織した司令部は彼の命令に即座に対応し、数分と経たずに結果をはじき出した。

 

「よし! 守備隊を出せ! 頭を失って混乱している内に奴等を叩き潰すのだ!!」

 

 それを聞いたドズルは一気に攻勢に出る。

 

 司令部の通信担当はすぐさまこの指示を守備隊各員へ伝達し、それを受けた守備隊達は次々とア・バオア・クーから発進してく。

 

 その中には深紅の稲妻ことジョニー・ライデン率いるキマイラ隊の姿もあった。

 

「まさか上があんな隠し玉を持っていたとはな!」

 

「しかも敵の大将首まで掻っ切るオマケ付きだ! 行けるぞ、ジョニー!!」

 

「ああ! 野郎ども! こっからは入れ食いだ! 片っ端から平らげろ!!」

 

 ジャコビアスに不敵な笑みを返すと、ジョニーは愛機である高機動型ゲルググを加速させた。

 

 それに続くように、キマイラ隊各員のゲルググも次々と宇宙を駆ける。

 

 そうして彼等が標的にしたのはNフィールドを進む連邦艦隊だった。

 

「へっ! 奴等、まだМSも展開していないぜ!!」

 

 無防備に宙に浮かぶサラミス達の様子を嘲りながらジョニーより前に出たのは、キマイラ隊結成時からのメンバーであるトーマス・クルツだ。

 

 好戦的に笑うクルツだが、彼の言葉がジョニーに違和感を呼び起こした。

 

(この状態で迎撃態勢を整えていないだと? どういう事だ!?)

 

「まずは一匹ィ!!」

 

「待て、クルツ! 状況がおかしい! 様子を───」

 

 ジョニーが制止しようとするよりも早くクルツの駆るゲルググはサラミスへ襲い掛かる。

 

 彼が展開したビームナギナタを艦橋へ叩きつけようとした瞬間だった。

 

「なっ!?」

 

 閃光と共にサラミスが盛大に爆炎を上げたのだ。

 

「ばわっ!?」

 

 艦艇の自爆という通常では考えられない一手、これにはさしものキマイラ隊隊員も反応できなかった。 

 

 トーマス・クルツはサラミスが生み出した火球に呑まれてこの宇宙から姿を消した。 

 

「トーマス! ぐぅっ!?」

 

 しかしジョニーを始めとする他のキマイラ隊は仲間の死に意識を傾ける余裕は無かった。

 

「きゃあああああああっ!?」

 

「な…なんだよ、これ!? 破片が!!」

 

 何故なら艦隊の船が連鎖的に次々と自爆し、その破片を散弾のように撒き散らし始めたからだ。

 

「う…うわぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「破片がっ!? 避けられ…なばぁっ!?」

 

「助けて! 助…げばらっ!?」

 

 咄嗟に艦隊から距離を取りながら破片をシールドで防いだキマイラ隊はともかく、連邦艦隊に牙を剥いた他の防衛隊のМSは爆発や破片に巻き込まれて次々と撃墜されるかもしくは擱坐していく、

 

「くそっ! 連邦め、なんてマネを……これは!」

 

 舌打ちをしながらキリングフィールドと化した連邦艦隊周辺から脱出したジョニー、その中で彼は盾にこびり付いたあるモノに気が付いた。

 

 マニュピレーターを使ってはぎ取ると、モノアイに仕込まれたセンサーはそれが何かを即座に解析する。

 

「これは……ダミー用の特殊樹脂!?」

 

「ジョニー! 連邦の後続部隊だ!! 奴等、МSを展開して突っ込んで来るぞ!!」

 

「……やられた!」

 

 狙撃機の鋭敏なセンサーによって、いち早く感づいたジャコビアスの報告にジョニーは思わず臍を噛む。

 

 そう、眼前で弾け飛んでいる艦隊は囮。

 

 自分達を引き寄せ、例の秘密兵器を撃たせる為の餌だったのだ。

 

「ジャコビアス、司令部に緊急で報告を上げろ! 先行する艦隊は囮! 連邦の本命が来るぞと!!」 

 

「クソッたれ! まんまとハメられたという事か!」 

 

「ジーメンス! エメ! いったん下がって体勢を立て直すぞ! 他の隊にも一度退いて仕切り直すように伝えるんだ!!」

 

「了解だ!」

 

「まったく、やってくれるわね!」

 

 ジョニーの指示によって、キマイラ隊は敵艦隊の自爆戦術から生き残った防衛隊を率いつつ、ア・バオア・クーへ後退する。

 

「なんだと!?」

 

 一連の被害に加えてレーダー観測手が捉えた後続部隊は、ドズルにとってまさに凶報だった。 

 

「ダミーに加えて艦を囮にした自爆戦術、これは艦隊司令の思いつくものではない……!」

 

 絞り出すように紡がれた言葉、そこには相手に裏を掻かれた悔しさとティアンムが仕掛けてきた常道から外れた戦術への畏怖があった。

 

「くっ! 各部隊長に帰還した防衛隊の再編を急がせろ! ソーラレイ二射目はどうか!?」

 

「砲身冷却とエネルギーチャージに、どれだけ急いでも30分は掛かります!」

 

「ならば、その時間は防衛部隊で稼ぎ出す! 全ての衛星ミサイルを前面に! 自動迎撃システムをフル活用して相手の足を止めろ! 部隊の損耗は極力抑えるのだ!!」  

 

 しかし、何時までも慄いてはいられない。

 

 ドズルは鬼の形相で戦況を押し返すべく指示を出す。

 

「囮艦1~28の自爆を確認! 敵迎撃部隊へ打撃を与えた模様!!」 

 

「うむ」

 

 一方、ペガサス級強襲揚陸艦の4番艦『サラブレッド』の艦橋では、提督席に座したティアンムがクルーの報告に満足げに頷いていた。

 

「やりましたな、提督!」

 

「私のタイタンを始め、40隻もの本物の戦艦を囮にしたんだ。成功してくれねば困る」

 

 艦長を務める佐官の言葉にティアンムはニヤリと口角を釣り上げる。

 

 ティアンムは今回の作戦において、大きな仕込みをいくつか行っていた。

 

 その一つがソーラレイ対策だ。

 

 彼はマリー・マスが出したアイデアを叩き台に、より確実性を求めて戦略を練った。

 

 相手に見破られない為に、発案時にはダミーで埋めるはずだった偽艦隊に彼は本物の艦を織り交ぜた。

 

 もちろん囮にした艦に人など乗っていない。

 

 ダミーへ中継用の高強度通信アンテナを設置し、それを通じて遠隔操作と登録しておいたプログラムで動かす無人艦だ。

 

 選ばれたのはソロモン戦で多大なダメージから修復不能となった廃艦予定の船や、ビンソン計画以前に造られたМS運用能力の無い旧式の艦。

 

 そして、ジオンの目を引き付ける目玉としてティアンムの搭乗艦である『タイタン』も餌として使い捨てたのだ。

 

 お陰で政府高官やゴップを始めとするジャブローのモグラ共に頭を下げ、囮艦の外装修繕などの関係から数日ほど作戦予定を繰り下げる事になった。

 

 だが、大枚を叩いた甲斐は確かにあった。

 

「しかしジオンのお嬢さんも容赦のない手を考えますな。敵が寄ってきたところで囮を爆弾代わりに破裂させるとは。МSのパイロットというのは、皆こうもエゲツないのですかな?」 

 

「ダミーバルーンに機雷を仕込んで放つのは基本だそうだ。まあ、囮艦を自爆させるのは我々のアイデアだがな」

 

 艦長の問いかけに答えると、ティアンムは提督席から立ち上がる。

 

「各員に通達! 敵防衛網を突破し、要塞へ上陸せよ! 敵が第二射の体勢を整えるまでが勝負だ! 狙撃班はコロニーレーザー砲身を射程に捉え次第、各自の判断で狙い撃て! 機動部隊各員は狙撃手を護衛しつつ突撃! 全艦隊は機動部隊の進攻を援護するのだ!!」

 

 裂ぱくの気合と共に放たれたティアンムの指示は、サラブレッドの通信を通して連邦艦隊の全てへ伝わった。

 

 それを合図に宙域を埋め尽くすほどの戦艦達から、艦載機が次々に飛び出していく。

 

「化かし合いは私の勝ちだ。本番の方もこのまま押し切らせてもらうぞ、ドズル!」

 

 次々とア・バオア・クーへ向かう光を見ながら、ティアンムは獰猛な笑みを顔に貼り付けるのだった。

 

 

 

 

 どうも、敵要塞を目と鼻の先にして身が引き締まる思いのマチュです。

 

 通信を通して飛んできたティアンム提督の指示。

 

 それを受けてホワイトベースのブリッジも一気に騒がしくなった。

 

「第二艦隊と第四艦隊がNポイントから要塞へ侵攻します。我々は亡命艦隊と共にSフィールドからア・バオア・クーへ進む形になります」

 

「亡命艦隊と一緒か。我々が最も敵の目を引き付ける事になるな」

 

「タイタンは囮に使いましたからね。他の艦隊がア・バオア・クーへ上陸するために、誘蛾灯になれという事でしょうか?」

 

 フラウお姉さんが読み上げる作戦の詳細に、ロンバートのじっちゃんとブライト艦長が眉根を寄せる。

 

 たしかに亡命艦隊と一緒だったら、ジオンの子供がどこにいるか丸わかりだもんね。

 

 グラナダであたしのアレックスは面が割れているし、兄ちゃんはあの機体色を見れば一発だ。

 

 となれば、敵の攻撃が集中する事は避けられない。

 

「しかしコロニーレーザーの第二射が来る前にカタを付けねばならん。多少の無茶は仕方あるまい」 

 

 少し暗い雰囲気になりつつあるブリッジを奮起すべく、ロンバートのおっちゃんが言葉を重ねる。  

 

「大丈夫だと思います。ア・バオア・クーの狙い処は確かに十字砲火を受けやすい位置ですけど、同時に最も脆い場所とも言えます。作戦は成功します」

 

「ニュータイプとしての勘か?」

 

「はい」

 

 ブライト艦長の問いかけに頷くアンちゃん。

 

 でも、すぐに分かった。

 

 あの言葉は皆を安心させるためのハッタリだ。

 

「ニュータイプうんぬんは置いとくとして、そんなに心配しなくてもいいよ。なにせ、ホワイトベースや亡命艦隊にはトップクラスのパイロットがゴロゴロいるもん。ね、アンちゃん」

 

「そうだね。シャアさんにラル大尉、シーマ中佐やクリス中尉、ハセガワ少尉も凄腕だから心強いよ」

 

「いや、この部隊で一番強いのはアムロ君とマリーちゃんよ」

 

「お前等、自分のやってきた事を考えて物言えよ。俺達の立つ瀬がねえじゃねえか」

 

 なんて事を話していると、クリスお姉さんとカイさんからツッコミが入った。

 

「慢心、ダメ! ゼッタイ!!」

 

「常に謙虚に、一戦一戦反省してより良い操縦をするのが僕らのポリシーなんで」

 

 そんな二人にアンちゃんは苦笑いを浮かべ、あたしは両手でバッテンを作って見せる。

 

 そう、あたし達はまだ道半ば。

 

 チャンプだろうとなんだろうと、過去の栄光に胡坐を掻いていると後続にアッサリ追い抜かれてしまう。

 

 だからこそ、天狗になんてなっている暇はない。

 

 更なる高みを目指すのだ!

 

「いい心がけだわ。お姉さん、感心しちゃった」

 

「それを勉強にも傾けてくれればいいのに……」

 

「ぐふっ!?」

 

 シイコお姉さんはともかく、姉ちゃんは心を抉る事は言わないで!

 

 出撃前なのにテンションが下がっちゃう!!

 

「作戦開始まであと10分だ! パイロット各員は何時でも出撃できるようにスタンバっておけ!!」

 

 ブライト大尉の指示が飛ぶと、あたし達も各々準備に取り掛かる。

 

 そんな中、アンちゃんがフラウお姉さんのところへ向かうのが見えた。

 

「フラウ・ボウ、どんなことがあっても諦めちゃいけないよ。こんな事で死んじゃ、つまらないからね」

 

「! ありがとう、アムロ。諦めないわ、絶対!!」

 

 フラウお姉さんはアンちゃんの幼馴染らしいし、心配するのは当然か。

 

 でも、なんだろう。

 

 ちょっとモニョる……。

 

「よーし、がんばろうぜ! アンちゃん!!」

 

「わっ!? どうしたんだよ、マチュ!!」

 

 そんな気持ちを何とかすべくダイブすると、アンちゃんはしっかり受け止めてくれた。

 

「ふふ……」

 

 ん? なんで姉ちゃん、頭撫でてくるの?

 

 クリスお姉さん、『青春ねぇ』ってどういうこと?

 

 それはともかく、こういう時はご褒美を提示するとやる気もアップするってものだろう。

 

「ロンバートのじっちゃん! この戦いが終わったらさ、ゴップのおっちゃんにおねだりして祝勝会やろうよ!」

 

「む…ゴップ大将に強請るのかね?」

 

「うん! 今まで散々無茶ぶりされてきたんだから、そのご褒美だって言えば通ると思うんだ。それで思い切りドンチャン騒ぎしよう!!」

 

 あたしがこう提案すると、 

 

「悪くねえな。中佐、その時は高級な酒をたっぷり頼んでくれよ」

 

「カイ、お前はまだ未成年だろうが。美味い物で我慢しておけ」

 

「たしかに祝勝会はいいですね。ボクも久々に刺身が食べたいや」

 

「お刺身かぁ。それだったら日本の温泉旅館に泊まって、懐石料理を摘まみながらがいいわ」

 

「いいわね。もう日本にはジオンもいないし、私も一度行ってみたかったのよ」

 

 そんなあたしの提案にカイさんやリュウさん、ハヤトさんにシイコお姉さんやクリスお姉さんも乗ってくる。

 

「わかった、わかった。私からゴップ大将に掛け合っておく。だから、全員無事に帰ってくるんだぞ」

 

「オッケー!」

 

 苦笑いのじっちゃんに笑顔で頷くと、あたしはアンちゃんや他のパイロットと一緒に格納庫行きのエレベーターに乗る。

 

 エレベーターが動いて少しすると、ハヤトさんが口を開く。

 

「なあ、アムロ。さっき言ってたことって本当なのか?」

 

「嘘だよ」

 

「当たり前だろ。ニュータイプって言っても人より少し勘が鋭いだけの人間だ。未来の事なんて分かりゃしねえさ」

 

 アンちゃんが短く答えると、それに続いてカイさんが肩をすくめる。

 

「アムロにああでも言ってもらわないと、皆逃げ出しているわ。怖くてね」

 

「そんな暗い事は考えないの。リー師匠も言いました、『卑屈な考えを受け入れてはいけない。それは、自信を締め殺す雑草だ』ってね!」

 

「それ、ブルース・リーの名言じゃないか。なんでリー師匠って呼んでるの?」

 

「あたしの脳内師匠だから」

 

「この子は養父とカンフー映画を見るのが趣味でね、尊敬する偉人がブルース・リーなのよ」

 

「ジークンドーだって、リー師匠の映画を見て憶えた見様見真似だからね!!」

 

 呆れ気味の姉ちゃんとハヤトさんに胸を張るあたし。

 

「ブルース・リーなんて久しぶりに聞いたわ」

 

「なんというか、変わったお父様だったのね」

 

「養父はとてもいい人だったのよ。でも、この子にカンフー映画を布教した事だけは許さないわ、絶対に」

 

「なんでさ! カンフー映画は悪くないじゃん!!」

 

 あたしの様子を見て微妙な顔をする連邦のお姉さま方に、姉ちゃんが深々とため息をつく。

 

 そんなバカ話をしている間に、エレベーターは目的地へ到着する。

 

 格納庫では各々の機体がすでに発進準備を終えていた。

 

「アムロ、活躍なんてしなくていい。絶対に生きて帰ってこい!」

 

「うん。父さんも気を付けて」

 

 アンちゃんの肩に手を置いて語り掛けると、テムおじさんは次にあたしの方に来た。

 

「マリーちゃん、セイラさん。おそらくこれが最後の戦いになるだろう。絶対に帰ってきてくれ。君達がこんな戦争の犠牲になっていい筈がない」

 

「ありがとうございます、テム少佐」

 

「もちろんだよ! この戦争が終わったら連邦軍のお金で祝勝会する予定だし!」

 

「なんだね、それは?」

 

「マチュ、それはまだ決まってないでしょう」

 

「いいの! こうして周りに伝えて置いたら、ゴップのおっちゃんだって断り辛くなるし」

 

 たしなめてくる姉ちゃんにそう返すと、あたしはブリッジでのロンバートのじっちゃんとのやり取りを伝えた。

 

「それはいいな。軍の上層部には散々苦労を掛けられたんだ、奴等の金で飲む酒はさぞ美味いだろうさ」

 

「そういうわけだから、テムのおっちゃんも気を付けてね! せっかく勝ったのに、迎えてくれる人がいないなんて嫌だよ」

 

「ああ。私もこんな事で死ぬつもりはない、安心して行ってきなさい」

 

 テムおじさんに見送られたあたし達はアレックス・アサルトのコクピットへ乗り込む。

 

『各機、カタパルト射線確認しろ! МS隊、射出1分前!!』

 

『マリーちゃん、いつも通りだ! バーンと片付けて戻ってきてくれ!!』

 

「任せて、アマミヤ中尉!!」

 

 外装の最終チェックを終えたアマミヤ中尉が機体から離れると、ホワイトベースのハッチが開く。

 

「行くよ、姉ちゃん」

 

「ええ」

 

「アレックス・アサルト、出るよ!!」

 

 ホワイトベース隊の一番手を任されたあたしはカタパルトから射出されると、すぐにスラスターを吹かす。

 

「わお!」

 

 すると、何分も進まない内に要塞からミサイルや砲撃が飛んでくるじゃないか!

 

「この迎撃密度、相手も本気という事ね」 

 

「でも、まだまだ甘い!」

 

 姉ちゃんの緊張が伴った声にそう応えると、あたしは迎撃射撃の合間を縫うようにして前に出る。

 

『ヒャッハー! 弾幕だぁ!!』

 

『ルウム戦役・リベンジを思い出すぜぇ!!』

 

『バカ野郎! あれに比べたら、この程度ぬるま湯ですらねえ!!』

 

 通信機から威勢のいい声が響くと、他の艦から出撃したジム達が次々に弾幕の中に飛び込んでいく。

 

 ちなみに彼等の言う『ルウム戦役・リベンジ』は、『戦火の絆』で期間限定で行われたキャンペーンシナリオだ。

 

 連邦屈指の自虐ネタであるこのシナリオはルウム戦役を模していて、プレイヤーは『連合』艦隊相手に戦いを挑む事になる。

 

 でもってそのエキスパートモードが、今でも絆民の間で語りつがれる程にエゲツない仕様だった。

 

 なにせ相手が『ぼくがかんがえたさいきょうのサラミス』の群れなのだ。

 

 全身ハリネズミみたいな対空砲火とか、超高速レールガンとか、アホみたいな精度で追いかけてくる『板野大サーカス』ミサイルとか!!

 

 あのシナリオはランカーもバンバン落ちる地獄だった。

 

『懐かしいなぁ。エキスパートモードをやっていた時は、何度他のプレイヤーの悲鳴を聞いたことか』

 

「途中から皆もテンションおかしくなって、北斗の拳のザコの断末魔みたいになってたからね」

 

 後ろから追い付いてきたアンちゃんの通信に、あたしは苦笑いを浮かべる。

 

 その所為で笑いかけて何度も手元が狂いかけたもんだ。

 

 彼の地獄を知るジムのパイロットが言う通り、アレに比べたらこんな弾幕は温すぎる!!

 

 そんな感じで迎撃用の弾幕を切り抜けると、今度は敵のМS部隊が立ち塞がった。

 

「落ちろ!」

 

 射程ギリギリから飛んできたバズーカの弾頭を紙一重で躱すと、アンちゃんはビームライフルを出所へ放つ。

 

「うわぁぁぁぁぁっ!?」

 

 その光弾はデブリの陰に隠れようとしていたザクの胴を貫き、次の瞬間にはザクはデブリごと火球の中に消える。

 

『その赤い胴! ダイクンの娘だな!!』

 

『ジオンの為に消えろ、裏切者!!』

 

 一方、あたしの方には二機のリックドムが左右から挟撃するように襲ってくる。

 

 一機はバズーカを放ち、もう一機はサーベルを手に斬りかかってくる。

 

 遠近双方の攻撃を重ねて、こっちを迷わせるつもりだろう!

 

「裏切りも何も、あたしは物心ついた時から連邦民だってーの!!」

 

 けど、そんな手垢の付いたコンビネーションなんて数えきれないくらいに相手にしてきた!

 

 あたしは斬りかかってくるドムの懐へ飛び込むと、ビームトンファ―の一突きでコクピットを貫く。

 

「ぐがっ!?」

 

 そして死に体になったドムをバズーカを放った方へ投げ放つと、敵は慌てたように上へ逃れる。

 

「はい、そこっ!」

 

 それを狙うのはバックパックのオプションラックから肩へ伸びた大型の試作ビームマシンガンだ。

 

「おわぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 連続で吐き出される光弾によって踊る様に解体され、最後には爆発するドム。

 

「気を抜いてはダメよ、敵はまだいるわ」 

 

「うん!」

 

 全天周囲モニターの下方に映るレーダー画面は、前面の殆どが赤という素晴らしい光景だ。

 

 ぶっちゃけ、フルバーストしたら狙い付けなくても全弾命中するんじゃなかろうか。

 

『ほらよ!』

 

 そんなレーダーに一周回って壮観さを感じていると、通信機からカイさんの気合が漏れる。

 

 見れば、上からザクに蹴りを入れたジーラインが体勢を崩した敵機を足場に飛び退くと同時に、両肩のガトリングでハチの巣にしている。

 

『なにやってんだ、ドラゴン娘! ボーっとしてっと置いてっちまうぞ!!』

 

『カイ君、慎重に! 敵は山といるんだから、突出すると危ないわよ!!』

 

 そんなジーラインを追うのはクリスお姉さんのガンダムとアリアドネ。

 

 皆が無事に弾幕を切り抜けられたのは一安心だ。

 

「それじゃあ、飛ばしていこうか!」 

 

 あたしは右手の隕石デブリから身を覗かせているザクの胴を腕のビームガンで撃ち抜くとスロットルを開く。

 

 アサルトは直線推力を見れば、連邦軍の機体の中でもトップに立てる性能をしている。

 

 なので、前を行っていたカイさん達をあっさりと抜き去ってしまう。

 

『うおっ!? 分かっていたけどはぇえ!!』

 

 カイさんの驚く声を背に、あたしはビームライフルと左腕のビームガン、そして肩のビームマシンガンを前に構えると全てを一気に放つ。 

 

 宇宙の黒を駆ける光弾の群れは、あたしの前を塞ごうとしていたザクとドムの群れへ次々と食らいつき、6体の敵を火球へ変えた。

 

 障害を排除して前に進んでいると、モニターの側面にラピッドリーの姿が現れる。

   

「お疲れ、アンちゃん」

 

『マチュこそ。それにセイラさんは大丈夫かい?』

 

「大丈夫よ。アレックスの加速にはもう慣れたから」 

 

 こんな会話をしているけれど、もちろん敵は待ったなしでやってくる。

 

 それをあたしは相手が初手を切る前に間合いを殺してビームトンファーで斬り捨て、アンちゃんはアホみたいな機動力で相手に狙いを絞らせないようにしながらエグい精度のエイムで次々に狙撃していく。

 

 というか、ジオン側のパイロットって妙なんだよね。

 

 ゲルググがニュービーみたいにあたふたして堕とされるのに、ザクの方はコッチの動きにある程度付いて来ようとしているのだ。

 

 ドムは……なんというかピンキリである。

 

 普通は腕のいい人を高性能機に乗せるはずなのに、なんで初心者にゲルググ渡してるんだ?

 

 そんな事を考えていた時だ。

 

「っ!?」

 

 突然あたしの背筋を冷たいモノが駆け抜けた。

 

 その原因は右手から浴びせられる強烈な殺気!

 

 狙いは…アンちゃんか!!

 

 この時、あたしはアンちゃんも敵の殺気を感じてると思っていた。

 

 だって、ここまであからさまな物をアンちゃんが見逃す筈がないのだ。

 

 けれど、デブリの間を縫ってビームが飛んできてもラピッドリーは動こうとしない。

 

「アンちゃん!!」

 

 あたしはアンちゃんの背後に回って、飛んできたビームを左腕のバックラー型追加装甲で弾いた。

 

 増えた装甲が耐ビームコーティングされてて本当に良かった!!

 

『ま…マチュ?』

 

「なにやってるのさ!? あんな見え見えの殺気、アンちゃんも分かってたでしょ!!」

 

 通信を繋げてきたアンちゃんに喝を入れると、何故か当の本人は困惑したような表情を浮かべる。

 

『──何も感じなかったんだ。今の攻撃を何も……』 

 

「……え?」

 

 どういう事だ?

 

 あんなにはっきりと分かる殺気だったのに……

 

 まさかアンちゃん限定でジャミングでもかかっているのか?

 

「マチュ! アムロ! 来るわよ」

 

 思考の海に落ちかけていたあたしは姉ちゃんの声に現実へ引き戻された。

 

 そしてモニターには宇宙の蒼から現れた、両肩に生えた長いスパイクが特徴の通常の物より1.5倍は大きい赤いモビルスーツの姿が映っている。

 

 間違いない、今狙ってきたのはコイツだ!

 

「アンちゃん! アイツの相手はあたしがするから、アンちゃんは先に行って!!」

 

『マチュ! でも……!』

 

「多分、アンちゃんはアイツと相性が悪いか、こっちの勘を誤魔化す方法を持ってる!! だから行って!」

 

『それだったら、マチュの勘を潰しに来るかもしれないだろう!!』

 

「大丈夫! こっちはタンデムだから、あたしがダメでも姉ちゃんが感じてくれる!!」

 

「ええ。伊達にずっと乗っているわけじゃないわ」

 

 あたし達の答えに言葉を呑む。

 

『ヤバくなったら兄ちゃんや姉御にヘルプ送るからさ、早く!!」

 

『…分かった。気を付けて!!』

 

 ラピッドリーが飛び去るのと同時に、あたしも謎のМSに向けて加速する。

 

『……!? 速い!!』

 

 思念が漏れてきているあたり、相手も勘が良い類の輩らしい。

 

 それを知ったあたしは警戒度を一段階上げる。

 

 アンちゃんの勘を封じ込めた方法が分からないのは怖いけど、ビビッてはいられない!

 

 こうなったら相手が手札を切る前に速攻で叩き潰すだけだ!




 ア・バオア・クーといえばジオング。

 しかしアホの筆者はその事を忘れていた

 そうして『今のジオンに動かせるパイロットっていたっけ?』と考えていたところ、何故か『アクア・ビット』という言葉が頭をよぎった。

 アクアビット社製ジオング……アンタ、コイツでア・バオア・クーを沸かせてみないかい?
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