ダイクン家の二女はアホの子   作:アキ山

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大変お待たせしまして申し訳ありません!!

プライベートの多忙さに加えてスランプで、なかなか筆が進みませんでした!

ああ…やっぱア・バオア・クーはつれえや……。


マチュとア・バオア・クー攻防戦(2)

 現在、ア・バオア・クーは360℃何処を見ても戦場だ。

 

「敵МA接近!」

 

「行くぞ、アニッシュ! デカブツをラリーに近づけさせるな!」

 

「分かってますよ! こりゃあ本当に貧乏くじだ!」

 

 Nフィールドからア・バオア・クー中枢へ侵攻する連邦艦隊の一つ、そこに所属するデルタ小隊の隊長マット・ヒーリィは直属の部下であるアニッシュ・ロフマンへ指示を出す。

 

 愛機となったジムスナイパーⅡの首を動かして後方へ目を向ければ、自分達の母艦であるペガサスの甲板で狙撃体勢を取るもう一人の部下ラリー・ラドリーが乗るジムスナイパーⅡが見える。

 

「ラリーのジムはコロニーレーザー撃破の要だ。絶対に堕とさせるわけにはいかない!」

 

 そう決意するとマット・ヒーリィはアニッシュと共に一団から抜け出して前に出る。

 

 そんな二人のカメラが捉えた影、それは宇宙を泳ぐ緑に塗装された流線形の機体だ。

 

 ビグロ・マイヤー。

 

 ソロモン戦で猛威を振るった高機動モビルアーマー、ビグロの強化バリエーションの1機である。

 

「これ以上は進ませるかよ! 食らえっ!!」

 

 ビグロ・マイヤーのパイロットはフットペダルを踏みこみながら右のレバーに備わったトリガーを引く。

 

 それに応じて緑の弾丸魚は前肢を前に突き出すと、クローアーム掌部に開いた砲口から薄紅の光線を吐き出した。

 

「チッ! 散開!!」

 

「ぐわっ!?」

 

「ぎゃああああっ!?」

 

 高速で左右に動きながら連続して放たれるビーム・カノン。

 

 マットの指示に即応したアニッシュは回避に成功したが、他の随伴機であるジムの内4機は胴を打ち抜かれて火球に化ける。

 

 そして、この回避行動によってМS隊の後方に位置していた艦隊の姿が敵МAに丸見えになってしまう。

 

「母艦が堕ちれば、МSなど!!」

 

 ビグロ・マイヤーのパイロットは不敵な笑みを張り付けて左レバーのトリガーを引く。

 

 それによってビグロ・マイヤーの機首装甲が左右に開き、機体の最大火力である大型メガ粒子砲が露わになった。

 

「アニッシュ!」

 

「あいよ!!」

 

 それを見たマットとアニッシュは腰部にマウントされたグレネードを投擲する。

 

 くるくると回りながら宇宙を飛ぶ二つの楕円形のカプセル。

 

 アニッシュが放った方はビグロ・マイヤーとサラミスの間にビーム攪乱幕を撒き散らし、マットの物は敵МAの前で炸裂すると散弾という名の牙を剥いた。

 

「散弾などでビグロの装甲が抜けるかぁ!!」

 

 迫りくる弾雨はビグロ・マイヤーを駆るパイロットにも見えていた。

 

 しかし愛機に絶対の信頼を置く彼は、それ等を気にすることはない。

 

 決戦兵器たるモビルアーマーは、豆鉄砲程度で止まるほど軟ではないと確信しているからだ。

 

「うおおおおおおおっ!?」

 

 しかし、その信頼はコクピットを襲う激震とレッドアラートによって容易く崩れ去る。

 

 たかがと侮っていた散弾が次々に厚い装甲を食い破ったのだ。

 

「ば…馬鹿なっ!……はっ!?」

 

 機体の体勢が大きく崩れた事をジャイロセンサーで気づき、慌ててリカバリーを掛けようとするパイロット。

 

 しかし、そんな彼の耳に更なる警告アラートが突き刺さる。

 

 咄嗟に視線を向けたメインモニターには、自動で拡大された驚異の姿が映し出される。

 

 それは戦艦の甲板で二股に分かれた砲身に紫電を奔らせたレールガンを構える、ラリーのジムスナイパーⅡだった。

  

「悪いな、ジャックポットだ!」

 

 不敵な笑みと共にラリーが引いたトリガーで、ルナチタニウム製の弾丸が電磁投射で吐き出される。

 

「ばわっ!?」

 

 それは口を開いたままのビグロ・マイヤーの砲門へ飛び込むと、その巨体に文字通り風穴を開けた。

 

 一瞬の間をおいて、ビグロ・マイヤーは己の内側から噴出した炎に呑まれて姿を消した。

 

「すまん、ラリー。砲身は大丈夫か?」

 

「大丈夫ですよ。МA相手なら最大出力で撃つ必要はありませんし」

 

 マットの謝罪交じりの問いかけに通信モニターへ軽く手を上げて返すラリー。

 

 ラリー機が装備している電磁投射砲は、コロニーレーザー撃破の為に急遽調整と改造が施されたものだ。

 

 威力と舎弟を伸ばすためにバレルを増設し戦艦から直接エネルギーを引っ張る内部機構と動力チューブを備えたレールガンは、急造品ゆえにそう何度も撃てない。

 

 それを使わせてしまった事にマットは責任を感じていたのだ

 

「ですが、奴等も本気のようですな」

 

「あんなバケモン機体をわんさか投入してますからね。これで何匹目だ?」

 

 場の空気を和らげるために軽口を叩くラリーにアニッシュが乗る。

 

 実際、ア・バオア・クーへの進軍の中でデルタ小隊が所属する艦隊は再三に渡ってМAの襲撃を受けている。

 

 ザクレロやその改良型、そして先ほど戦ったビグロの原型機など、彼等が牙を剥くたびに艦隊や機動部隊に少なくない被害が出た。

 

 МAはМSとは異なる思想で開発された局地戦用兵器。

 

 それ故に防御力や機動性、戦艦並みの火力などМSが及ばない一芸に秀でた機体が多い。

 

 そんな相手にここまで被害を小さく出来たのは、ティアンムがソロモンで造らせた対МA武装のお陰だ。

 

 ソーラ・システム発射作戦の際に敵のМAに煮え湯を飲まされた、その苦い経験から連邦宇宙軍の総司令官は即座に対策を講じたのだ。

 

 その一つが先ほど使用された対МA破砕手榴弾とМS用の大型レールガンである。 

 

 破砕手榴弾の方は内部にルナチタニウム製の炸薬を詰めた散弾が仕込まれており、強度で劣るМAの装甲材である超硬スチール合金へ容易く食らいつくことが出来る。

 

 さらに言えば機動力を生かした一撃離脱を得意とするМAは自慢の速度ゆえに面制圧の攻撃は躱しにくく、相手の加速に合わせればスピードを逆手にとって散弾をより深く食い込ませる事が可能だ。

 

 そうして装甲内部へめり込んだ散弾は起爆装置によって炸裂し、相手の傷口を更に広げる事になる。

 

 実際、МAは武装やモノアイなどのカメラを機体前面に設置していることが多く、この攻略戦に於いて散弾は大きな戦果を産んでいる。

 

 一方、急遽コロニーレーザー撃破の役割を与えられたレールガンだが、こちらは改造が施されていない状態でも一撃でМAを貫通する攻撃力を持つ。

 

 他の部隊ではМAを射程外から一撃で撃ち落とすなど、その有用性を証明している。

 

 重装甲かつ高機動なМAには弾速も早く高威力なビーム兵器を採用すべきなのだが、ジオン側には実用に至ったIフィールドバリアがある。

 

 ティアンムはそこを考慮して、この二つを各部隊へ配備したのだ。

 

「隊長、またお客さんですよ! 今度は上からだ!!」 

 

「ゲルググが3機か。コイツ等もヒヨッコなら楽なんだがな!」

 

 狙撃役を任されているラリーが通常よりもチューンされたセンサーで敵の接近を捉えると、アニッシュがうんざりしたように愚痴を漏らす。

 

「相手は高性能機だ、誰が乗っていても強敵に違いない! 油断するなよ、二人とも!!」

 

 部下達に檄を飛ばすとマットはビームライフルを構えながら接近する敵機へ向けて突撃する。

 

 連邦とジオンが総力をぶつけ合う最終決戦は始まったばかりだ。

 

 

 

 

 アンディとリカルド、そしてラル隊を連れて母艦であるファルメルから発進したシャアは、敵味方の位置を把握するためのレーダーが見せる表示に眉根を寄せる。

 

「アルマリアがアムロ君から離れた? 何かトラブルがあったか」

 

 マリーとアムロのコンビは連邦のパイロットの中でも最強の地位を不動としている。

 

 二人の卓越したパイロットとしての腕と以心伝心のコンビネーションが合わされば、その戦闘能力は単体で戦う時より数倍に跳ね上がる。

 

 シャアもヤザンと組んでシミュレーターで戦ったことがあるが、はっきり言って手も足も出なかった。

 

 一方が隙を見せたと思ったら、ノータイムでもう一方がフォローに入る。

 

 一瞬の隙も見逃さずにこちらの懐を取る近距離のマリーと、高速で宙を駆けながら精密射撃を連打する遠距離戦闘のアムロ。

 

 遠距離射撃を躱そうとすると、その間に間合いを詰めたマリーのビームトンファーに胴を貫かれる。

 

 かといって近距離での殴り合いに主眼を置けば、サーベルを振る為に挙げた手や頭部をアムロの射撃によって撃ち抜かれる。

 

 しかも互いに逆の役割も一流以上に熟すので、いきなりポジションをスイッチされて戦法がガラリと変わるなんて事もザラだった。

 

 今にして思えば、正直ジオン軍人として二人に敵対していた時はどうして生き残れたか不思議になるレベルの強さである。

 

 そんな二人がコンビという利点を捨てる理由は何か……?

 

「こちら、マリー! みんな、聞こえる?」   

 

 思考の海に沈んでいたシャアの意識を引き上げたのは件の妹が発した通信だった。

 

「ジオンは勘の良い人の直感を潰す策があるみたい! むこうはニュータイプとか言って、その手の人達を研究していたから対策を組んでたっぽいの! さっきもアムロのアンちゃんがやられそうになったし! だから勘に頼りがちな人は基本に立ち返って、しっかりレーダーとかで索敵してね!!」

 

「なるほど、そういう事か」

 

 一方的に警告を残して切れた妹の通信にシャアは得心がいった。

 

 アムロと別れたのも、彼のニュータイプの直感を妨害する敵が現れた事で妹達がそれを相手にしているからだろう。

 

「どうします、少佐?」

 

「アルマリア様の救援に向かいますか?」

 

 アンディとラルの問いかけにシャアは首を横に振る。

 

「心配は無用だ。あの子ならジオンのトップエースが相手でも遅れは取るまい」

 

 それにと前置きを置くと、シャアは口元に不敵な笑みを浮かべる。

 

 彼の視線が捉えるモニターの先、そこには己の方へ向かってくるカスタム仕様のゲルググの一団が映っている。

 

「あれは……キマイラ隊!?」

 

「我々にも迎えが来ているのだ、それを蹴るのは野暮だろう」

 

 リカルドが上げた驚愕の声と共に一団の先頭を行くゲルググが勢いのままにビームナギナタでシャアへ斬りかかる。

 

「思い切りがいいな。──だが!!」 

 

 袈裟斬りに降ってきた一刀目を半身になって躱したシャアは、返しの胴薙ぎが来るより早く振り上げた右足をゲルググへ叩き込む。

 

 しかしゲルググは目を見張る反応速度で盾をアクトザクの脚と己の胴の間に入れると、シャアが奥の手を覗かせるより早く蹴られた反動を利用して後ろへ飛んだ。

 

「やるな、そこの改造ザク! お前さん、赤い彗星だろ?」

 

 他のキマイラ隊員達が亡命艦隊のМSへ襲い掛かる中、赤いゲルググから通信が入る。

 

 シャアの駆るアクトザクはジオン軍からの鹵獲品なので、あちらの呼びかけを受け取る事が可能なのだ。

 

「そういう君は何者かな?」

 

「キマイラ隊隊長のジョニー・ライデンだ。『深紅の稲妻』の二つ名くらいは聞いたことがあるんじゃないか?」

 

 男の言葉にサングラスの奥でシャアの目が鋭さを増す。

 

「ああ、ジオンにいた時に小耳に挟んだ事がある。私と同じ【赤】を纏う名うてのパイロットがいると」

 

「お陰でこっちは大迷惑だ。手柄を上げても【赤い彗星】と間違えられてちまうんだからな」

 

「そうか。だが私がこちらへ来たのだから、そんな被害は無くなっただろう」 

 

 言葉を交わしながらもシャアとジョニーは高速で動きながら何度も切り結ぶ。

 

 ナギナタの突きをヒートホークの刃で受け止めると同時に、シャアのアクトザクが右手のビームサーベルで胴を薙ぐ。

 

 それをゲルググ特有の回転する手首を利用してビーム刃を旋回させて弾くと、アクトザクの頭部に備わったバルカンが火を噴く。

 

 宙を駆ける鉛弾の狙いはゲルググのモノアイ。

 

 それを咄嗟に首をひねって躱した次の瞬間、アクトザクの右膝がAМBACを利用した回し蹴りとなってゲルググの左わき腹へ突き刺さる。

 

 これだけの攻防を一分足らずで行っているのだ。

 

 両者の力量が如何に隔絶しているかがよく分かる。

 

「生憎とウチじゃあまだまだ赤い彗星の名は健在でな! 事あるごとにチラついて鬱陶しいんだ!」

 

 右前腕に増設された機関砲の斉射をけん制にしつつ、フルブーストで三度間合いを詰めるジョニー。

 

「だから、白黒はっきりつけたいのさ! どっちの赤が強いのかを!!」

 

 返答と共に振り下ろされる一刀。

 

「なるほどな、それが私を狙って現れた理由か!」

 

 それを機体の各所に取りつけられたアポジモーターを駆使し、シャアは紙一重で回避する。

 

「なにっ! うおっ!?」

 

 その神業めいた動きにジョニーが目を見開いた隙に、右肩に備わったザク特有のスパイクアーマーをゲルググの胴へ叩きつける。

 

 本来、アクトザクにはスパイクアーマーは備わっていなかったのだが、改良の際にメイによって増設されたのだ。

 

 当人曰く『トゲアーマーはザクの魂』ということらしい。

 

「落ちろ!」

 

 大きく後ろへ撥ね飛ばされる紅いゲルググへ、シャアはビールライフルの一射で追撃を放つ 

 

「チィッ!」

 

 しかしジョニーも伊達にエリート部隊を率いてはいない。

 

 間一髪でシールドを射線に割り込ませて相手の一射を防ぐと、二射目三射目は左で跳んで回避する。

 

「そういう事ならば是非もない。私もこのパーソナルカラーには愛着があるのでな。その挑戦、受けてたとう!!」

 

「上等!!」 

 

 初手とは逆に、間合いを詰めてきたアクトザクの振り下ろすビームサーベルの一刀をナギナタで受けるゲルググ。

 

 こうして二人の【赤】を纏うエースは再び鎬を削るのだった。

 

 

 

 

 どうも、アンちゃんに啖呵を切って新型機とタイマンを張る事になったマリーです。

 

 あたしと対峙している見た目はゴツい新型機だけど、初手で仕掛けてきたのは意外や意外、機動力に物を言わせた中間距離での撃ち合いだった。

 

【落ちろ!】

 

 敵意を伴って相手から撃ちだされるのは、腰の両側と人間でいう鎖骨の辺りに備わったミサイル、その数十数発。

 

「甘いよ!」 

 

 けど、ミサイルと言ってもミノフスキー粒子の所為で誘導性がほぼない直進する代物だ。

 

 そんな物を食らうほど、あたしもアサルトも鈍くはない。

 

 肩と腰の増加装甲、あとは背面にある可動式バーニアを使って横っ飛びに躱す。

 

 このアサルトが纏っているアーマーは、防御力の向上の他に各箇所にスラスターやアポジモーターを組み込む事で運動性と機動力を上げるのに一役買っている。

 

 特に背面のバックパックは元々2つだったバーニアを4つに増やしているので突進する時の加速はもちろん、バーニアの一個一個が前後左右に動くお陰で小回りも良くなっている。

 

 なので、この程度の弾幕なら問題なく対処できるのだ。

 

「それじゃあ、お返し!」

 

 そうして左にスライドしながら、あたしは左手に備わったバックラー型シールドを押し上げて現れた砲口からビームガンを放つ。

 

【チィッ!?】 

 

 宇宙の蒼を駆ける薄紅の光弾は、下へ逃げた新型機を捉える事無く彼方へと消えていく。

 

「やっぱり向こうも勘の良い人だ」 

 

 左手を相手に向けた瞬間には、もう下へ回避行動を取り始めてた。

 

 まあ、思念がちょくちょく漏れているからそうじゃないかと思ってたんだけど。

 

「でも、直感や思念妨害は無いようね。これなら普通に戦えるでしょう?」

 

 アムロのあんちゃんに効いてあたし達に効果が無い事の原理は気になるけど、今はそれにツッコんでいる場合じゃない。

 

 昔なにかのマンガで見つけた名言『そういう難しい事はぶっ殺してから考えるよ!』である。

 

「そういうこと! それじゃあ、行くよぉっ!!」

 

 気合一閃、フットペダルを踏み込むと、あたしはアサルトでオーバード・ブーストを掛ける。

 

【なっ!? 速い!!】

 

 再度のミサイル射撃に加え、相手は右手をこちらへ向けていた。

 

 おそらく、手のどこかに内蔵火器があるのだろう。

 

 けど、その対応よりも早くあたしとアサルトは相手の懐へ飛び込むことが出来た。

 

「よいしょっ!」

 

【くっ!?】

 

 ビーム発振機関を出したままの左手から光刃を出して斬りかかると、新型機は寸でのところでこちらに向けていた右腕でその一刀を受け止める。

 

「おおっ!」

 

 なんと、こちらの一撃を止めたのは手の甲の後ろに備わったビーム発振機関から伸びるビームソード!

 

 まさかのアサルトと丸被りな兵装である。

 

「まさかこっちの装備がパクられるなんてねっ!」

 

 鍔迫り合いのなか、あたしはバイザーの奥でペロリと舌で唇を濡らす。

 

 多分偶然なんだろうけど、正直ビックリした。

 

『うおおおおおおおっ!!』

 

 接触回線で通信機から漏れ出るのは若い男の人の気合。

 

 相手は背面のスラスターを吹かせると、その勢いでこちらの左腕を跳ね上げる。

 

 押された体勢をリカバリーするついでに間合いを取ろうとすると、敵機は棘が痛そうなショルダーアーマーを前面に押し出して更に前に出てきた。

 

「マチュ、あの棘!」

 

「うん、分かってる!!」

 

 姉ちゃんの言う通り、敵のスパイクはザク斧のように黄色く変色している。

 

 あれはジオン軍がよく使う高温を活かした溶断武器特有の反応だ!

 

「おわっとっ!?」 

 

 それに気づいたあたしはすぐに左へ跳んだ。

 

 一瞬間をおいて、アサルトがいた場所を敵機の鋭い棘が串刺しにする。

 

「あっぶなぁ……」 

 

 まさか両肩にあんな武器を備えてるなんて思わなかった……とぉっ!?

 

 ホッと息を付こうとするのもつかの間、今度はこちらを振り返った敵機の右足が跳ね上がる。

 

 それを見たあたしは咄嗟にアサルトの左足も防御に上げる。

 

 間合い的には敵のつま先が当たるかどうかのギリギリの距離、それでも直感的にヤバいと感じたのだ。

 

 次の瞬間、あたしの耳に届いたのはメガ粒子が干渉するバチバチという炸裂音。

 

 そしてサブモニターに映るのはアサルトのわき腹近くで高温が発生していると言う警告だった。

 

『なっ!? そっちにも!!』

 

 警告アラームがコクピット内に響く中、通信機から敵パイロットの驚く声が漏れる。

 

 けど、それも当然だ。

 

 相手が放った蹴り、その爪先から伸びるビームの刃は必殺の意を込めて放たれたのだろう。

 

 それが防がれたのはもちろんだが、防御方法が、こちらの脹脛の外側から伸びたビームサーベルなのだから。

 

 とはいえ、驚いているのはお互い様だ。

 

 兄ちゃんのガンダムが使ってるのを見て『いいな』と思って付けてもらってみれば、まさかのジオンが同じコンセプトのМSを造っていたのだ。

 

「あぶない、あぶない」

 

 嫌な予感から咄嗟にサイコミュ操作でサーベルを出さなかったら、胴はともかくガードで上げた足は持っていかれるところだった。

 

「けど、勝負は結果オーライ! 反省するのは後!!」

 

 頭の中でそんな事を考えつつ、あたしは手にしたレバーを前に押し込んだ。

 

 それに応じて、蹴りの際に鍔迫り合いから離れた左腕が再度跳ね上がる。

 

 こちらの動きに足を戻した新型は咄嗟にビームを出したままの右手を胴を庇うようにあげるけど、反応の速さはともかく想定が甘い!

 

 私が放った左腕は胴の手前でクンッと上へ跳ね上げると、ビームサーベルの先端が敵の顔に左下から右斜め上へ通る傷をつけた。

 

『ぐぅっ!?』

 

 この一撃で敵機はのけ反ると同時に少しだけ後ろへ下がる。

 

 今のはジークンドーでいうところのフィンガージャブの要領で放ったものだったりする。

 

 指先で相手の目を弾く事で一時的に視力を奪う事を目的としているこの技は、鞭のように手首のスナップを聞かせて下から上に跳ね上がるような軌道を取るのが特徴だ。

 

 剣の基本である8方向の斬り方とは全く外れた方法なので、相手の虚を突くのにとても便利なのだ。

 

 のけ反りから立ち直った敵機だけど、傷はモノアイにまでは入っていないようだ。

 

 けど、この一撃で明らかに相手は怯んだ隙はしっかりとある!

 

 あたしが少し開いた間合いを再度詰めてはなったのは───下段蹴り!

 

『ッ!? これ以上は!』

 

 すると相手は先ほどのあたしと同じく狙われた方の脚を上げて防御の姿勢を取る。

 

 もちろん爪先に備わった発振機関からビーム刃を出して、こちらのサーベルへの対策もバッチリだ。

 

「引っかかった!」  

 

 あたしは不敵に笑うと左のレバーを引きながら左右のフットペダルを巧みに操作する。

 

 するとアサルトは蹴り足を踏み込みにスイッチし、次の瞬間にはくるりと一回転しながら新型の右後方を取った。

 

『なっ!?』

 

 相手パイロットの驚愕の声をBGMに再度繰り出した右足は相手が片足を上げた体を支える軸、人間でいうところのアキレス腱の部分を踏み付けた。

 

 不安定な状態に加えてここは宇宙空間。

 

 敵の新型はアレックスより一回りくらいの大きいけど、これだけの条件が揃えば体格差は意味を成さない。

 

 そして相手が大きく体勢を崩せばカードの切り時だ。

 

「アチャァァァァァっ!!」 

 

 相手のアキレス腱を踏んだ足を踏み込みとして放つのはビームサーベルを乗せた回し蹴り。

 

「う…うあああああああっ!?」

 

 胴を狙ったその一撃は敵機が咄嗟に身を屈めた為に首とショルダーアーマーのスパイクを根元から切り落とすに留まってしまった。

 

【な…なんて動きだ!? 教本や訓練とはまるで違う!】

 

 前転するようにして間合いを放した敵機が振り返ると、パイロットの戦慄する心が伝わってくる。 

 

 まあ、それはそうだろう。

 

 今やった動きは全てジークンドーのモノなのだから。

 

 本来だとこんな動きをМSで再現するのは困難なのだが、その辺は長年に及ぶ修練の賜物だ。

 

 ペイルライダー・キャバルリィに乗った時でもある程度再現できたあたしの腕とアレックスの運動性、それにサイコミュが加わればリー師匠の動きをエミュレートするのだって夢じゃないのだ。

 

「敵は退く気が無いようね」

 

「最終決戦だからね、仕方ないよ」

 

 両手に備わった発振機関から出したビームサーベルを構える新型を前に、あたしも小さく息を付く。

 

 サイコミュによってアサルトが取った構えはジークンドーのそれだ。  

 

 それじゃあアンちゃんの事も気になるし、ご退場願おうか!

 

 






 
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