ダイクン家の二女はアホの子   作:アキ山

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お待たせしました。

ア・バオア・クー戦三話目です。

集団戦闘ってマジに難しや。

他のガンダム小説を書いている作家さんにリスペクトが溜まる日々です。

こっちも頑張らねば!!


マチュとア・バオア・クー攻防戦(3)

 ア・バオア・クー要塞防衛網。

 

 現状のジオン公国が持てる大半の戦力を投入したソレには、膨大な数の艦艇やМSが参加している。

 

 その要の一つであるNフィールド、そこに配置されているリックドムの一つに男はいた。

 

「ここが正念場だ。この戦いを切り抜けて共和国になったジオンの国民になれば、地球圏の混乱に関わらず平和に暮らせる」

 

 メインモニターを始め、様々な計器が照らすコクピットの中で彼は自分へ言い聞かせるように呟く。

 

 男はいわゆる『転生者』という存在だ。

 

 この宇宙世紀が『機動戦士ガンダム』という創作物であった世界で生き、そこで命を落とした者。

 

 彼は輪廻転生の妙によって、創作物が現実になった現世に生まれ落ちた。

 

 物心が付いた頃に前世の記憶を取り戻した彼は、自身の生きる世界がこよなく愛した作品の舞台である事を喜んだものだ。

 

「けど冷静に考えれば、宇宙世紀なんてコズミック・イラとトップ争いできるくらい、生まれたくない世界上位なんだよなぁ」

 

 男が漏らす愚痴の通り、趣味が高じて得た様々な宇宙世紀の知識と未来に思い至った瞬間、歓喜は絶望に変わった。

 

 何故なら前世の平和な日本に比べて、あまりにもこの世界は人の命が軽いのだ。

 

 定例行事の如く数年おきにポコポコ起きる戦乱と、それに巻き込まれてガンガン死んでいく人間たち。

 

 しかも、そんな地獄仕様が百年近くは続くのだ。

 

 画面の向こうでポップコーン片手に見ているならともかく、実際に生きるとなればやってられない。

 

 絶望と嘆きの中、死に物狂いで男は生存戦略を考えた。

 

 そして彼が見出した戦乱からの早期離脱策、それがジオン共和国の一般人として生きる事だった。

 

「一年戦争以後、サイド3が戦乱に巻き込まれかけるのはZZでハマーンが地球圏を掌握しかけた時くらいだ。それだって一年続いたわけじゃない」

 

 しかも記憶が確かなら、シャアの反乱後くらいから地球に住むよりコロニーの方が裕福な生活が出来たはずだ。

 

 だったら人生を賭ける価値はある。

 

 そう呟きながら、男は緊張で乾いた唇を舌で潤した。

 

「後の事を考えるのは、この地獄を生き抜いてからだな。その為に必要な事は1つ、テンパとシャアには近づかない。2つ、エースと戦うのは避ける。3つ、ヤバくなったら即白旗!」 

 

 彼とて歴戦のガノタだった男、活躍したい気持ちはある。

 

 しかし、ア・バオア・クーの戦いでモブにスポットが当たるなんて稀の稀。

 

 助平心は死に直結すると己を戒めた。

 

 嫌な緊張感の中で待っていた男だが、悲しい事に彼は当たりを引いてしまった

 

 そう、男の前に現れたのは『白い流星』だったのだ。

 

「来た! 来やがった!! シャア、早く来て……」 

 

 МSだとしても異様な速度と軌道を描くそれを、彼はガノタの直感でアムロ・レイが駆るガンダムだと確信した。

 

 だからこそジオンで唯一対抗できるジオングに乗ったシャアを求めたのだが、接近によって明らかになる件の流星の姿を見た男は愕然とした。

 

「あ…アレックス?」

 

 何故なら、敵機は男の知識だとア・バオア・クーに存在しえない連邦の最強機体、ガンダムNT-1・アレックスだったからだ。

 

 しかも敵が纏う増加装甲は武骨なチョバムアーマーではなく、機体に合わせて塗装された何処かスマートさと流麗さを感じさせるもの。

 

「の…乗ってるのはクリスだよな? でも、クリスがアレックスであんな機動を取れるわけが……。それに増加装甲、横浜バリエのガンダム高機動型に似てるんですけど……」

 

 瞬間、ガノタの頭に最悪の可能性がよぎる。

 

 万が一、アムロにアレックスが届いていたら!

 

 それがロボアニメ最終決戦時のお約束で強化されていたら!!

 

「ジオン、勝ち目ねーじゃん……」

 

 絶望から呆然と呟く男。

 

 だが、その一瞬の忘我が彼の運命を決定づけた。

 

「総員! 撃ち方、はじめぇぇぇぇっ!!」

 

 通信機から響いた上官からの攻撃命令。

 

 促成栽培ながらも軍事教育を受けていた男は、条件反射でそれに応じてしまったのだ。

 

「あ……」

 

 己の失態に気づいた時にはもう遅い。

 

「ごわぁっ!?」

 

 自分と僚機のリックドムが放った砲弾が目標を外れた次の瞬間、男の横にいたリックドムが爆散した。

 

「1つ!」 

 

 ミノフスキー粒子による通信の混線からか、聞いたことがない……いや前世では嫌というほど聞いた少年の声が響く。

 

 それを聞いた瞬間、男は心の底から絶望した。

 

「し…白い悪魔の数え歌」

 

 それはアムロ・レイが持つ逸話の中でも有名なワンシーン。

 

 彼は多対一という戦況の中で、今の様に撃墜した敵の数を数えながら9機のリックドムを短期間で撃墜して見せたのだ。 

 

 奇しくも男が駆る機体もまたリックドム。

 

 処刑宣告である。

 

 そんな白い流星だが、男の近くを通り過ぎると思わぬ行動に出た。

 

「え……?」

 

 高速で男の脇を通り過ぎると、爆散した僚機の残骸から回収したであろうジャイアントバズを肩に担いでみせたのだ。

 

「あ…なんで?」

 

 思わず男の口から疑問の声が漏れる。

 

 何故ならジオンと連邦の機体はОSや火器管制システム、掌にある認識用コネクタなど多くの違いがある。

 

 その為、敵軍の武器を奪って使うという人間の歩兵に可能な戦術はМSでは不可能なのだ。

 

「МS運用のイロハしらんのか、馬──がぁっ!?」

 

 МSパイロットの常識も知らない敵機を嘲る隊長の声、それは途中で断末魔へと変わった。

 

 何故なら背後からアレックスが放ったジャイアントバズの砲弾を背中に受けて、隊長機であるリックドムが爆散したからだ。

 

「な、なんで撃てるんだ……ごわぁっ!?」

 

「い、インチキ……へべっ!?」 

 

「2つ! 3つ!! 4つ!!!」

 

 隊長機の武器も強奪し、両肩にバズーカを構えたラピッドリー。

 

 再び流星と化した彼が放つ高速移動かつ大口径火器ではありえない程の精密射撃は、МS運用の常識を覆す事態に混乱する仲間達を次々に地獄へ送っていく。

 

「あ…あぁ……」

 

「これで5つ!」 

 

 そんなガノタが最後に見た光景。

 

「ああああああああああああっ!?」

 

 それは撃墜したリックドムから奪ったジャイアントバズを両肩に担ぎ、こちらへ二つの砲口を向けるアレックスの姿だった。

 

 

◆

 

 

 

「ふぅ。火器管制のオート変換にコネクタ認証、問題なしと」

 

 周辺に敵がいないのを確認すると、アムロはサブモニターに呼び出した機体コンディションを素早く確認する。

 

 アレックスをラピッドリーへバージョンアップさせる際、アムロは亡命艦隊のメカニックに一つの事を頼んだ。

 

 それはジオン製の武器を使えるようにОSや認識コネクタなどを調整してもらうというものだ。

 

『できなくは無いけど、どうしてそんな事するの?』

 

『ソロモン戦で感じたんだけど、要塞攻略は継戦能力が必要なんだ。敵の武器を奪って使えたら本来の武器の節約になるし、もし本武装を使いつくしても戦えるだろう?』

 

 その答えに納得した亡命艦隊のチーフメカニックであるメイ・カーウィンは、テムやG4チームなどに協力を要請。

 

 連邦・ジオン双方のМSのエキスパートが力を合わせた結果、短期間で新たなOSと両軍対応型武器識別コネクタの開発に成功した。

 

 それはジオン公国が成し得なかった偉業である。

 

 こうして生み出された新型OSとコネクタだが、ラピッドリーだけに搭載されたわけではなかった。

 

『みんなー! これから相手の武器を奪って使えるよ!!』

 

 その話を聞きつけたアムロの相棒であるマリーが、シミュレーターを通じて他のパイロットへ新火器管制OSの存在を広めたからだ。

 

『武器ブン取り実装、キタコレ!!』

 

『胸アツすぎる!!』

 

『俺、あのビームナギナタって奴に興味があったんだ!!』

 

『ありがてえ! これで刀狩りプレイがはかどるぜ!!』

 

 この吉報に多くの蛮族……否、連邦パイロット達は歓喜した。

 

 何故なら彼等が愛用する『戦火の絆』だと相手の武器を奪取するのは基本中の基本だからだ。

 

 なのに現実ではそれが反映されていないことは、以前から多くのパイロットの中で不満とされていたのだ。

 

「あの時の喜びようからして、絆民達は無茶しているんだろうな」

 

 記録映像として見たソロモンでのアレっぷりを思い出して、自分の後ろの宙域に遠い目を向けるアムロ。

 

 小さく息を付いて被りを振ると、彼は再び敵要塞へ向けてアレックス・ラピッドリーを加速させるのだった。

 

 

◆

 

 

 そんなアムロの予想通り、ア・バオア・クーの他宙域では絆民の外道働きによって再びジオンにとっての地獄が生み出されていた。

 

「いいモン持ってんじゃねーか! 俺にも貸せよ!!」 

 

「ぐわぁぁぁっ!?」

 

 あるジムは手にしたビームサーベルを手裏剣の様に投げると、それによって切り落とされたゲルググの腕から素早くビームナギナタを奪って、かつての主の胸に突き立てた。

 

「ジオン星人の癖にビームなんて生意気じゃねえか、おう!!」 

 

 その横ではゲルググのモノであろうビームライフル二丁を腰だめに構え、肩のキャノンと共に乱射するガンキャノンが現れる。

 

「ぎゃああああああっ!?」

 

 その容赦ない弾幕によって、学徒兵上がりで経験の浅いジオン兵が操るリックドムやゲルググは次々と宇宙を彩る火球と消える。

 

 別の宙域では、孔雀よろしく何本ものヒートサーベルを背負った宇宙用に改造されたジムストライカーがリックドムへ襲い掛かっていた。

 

「これで三十五本めぇ!!」

 

「か…母さぁぁぁぁぁんっ!?」

 

 彼等が持つヒートサーベルは高熱で刀身を黄色に染めており、剣術で言う片手平突きによって若いジオン兵の操るリックドムの胴を貫いた。

 

「うおおおおおっ! よくもアッシュをぉぉぉっ!!」

 

 モノアイから光を失った敵機からヒートサーベルを追剥ぎしているジムストライカーへ、僚機を失ったゲルググが襲い掛かる。

 

「踏み込みが足りんッ!!」

 

 しかし上下両刃のビームナギナタと手首の特殊な機構を利用した旋風剣は、ジムストライカーの逆袈裟の斬り上げで右腕を肘から断たれた事で破られてしまう。

 

「チッ!」 

 

 返す刀で胴を薙ごうとした連邦のパイロットはモニターが映す光景に小さく舌打ちを漏らす。

 

 何故なら宇宙に浮かぶゲルググの破片と共に、半ばから折れたヒートサーベルの刀身が見えたからだ。

 

「これでもくらえぇぇぇ!!」

 

 これを起死回生の好機と見たゲルググは両足の裏に備わったバーニアで後退しながら、腰の後ろにマウントしていたビームライフルを構える。

 

「──阿呆」 

 

 だが、その銃口は後退よりも素早い踏み込みでゲルググの懐を取ったジムストライカーによって、あらぬ方向へ跳ね上げられてしまう。

 

「あ……」

 

 驚愕に目を見開いたジオン兵が最後に見たモノ。

 

 それはコクピットのハッチをブチ抜いて自分を圧し潰す、折れて熱を失ったヒートサーベルの刀身だった。

 

「チッ! また折れおった」

 

「ジオンの武器は熱で焼き斬るからロマンが足りん」

 

「もっと、刃の鋭さでスッパリ斬れる武器は無いのか?」

 

 このジムストライカーを駆る一団は絆民の中でもブレオン(ブレードオンリー)という特殊なプレイに命を懸ける現代のグラディエーター達だ。

 

 実体剣をこよなく愛する彼等にとって、ジオンの溶断武器はお眼鏡に適うものではないらしい。

 

 なんだかんだと文句を言いながらも、時代に逆行する剣客集団は新たな獲物を求めて要塞への道を進むのだ。

 

「素敵だ……。的も弾も武器もそこら中に転がってる」

 

「なんだ、アイツ等の後ろにある武器の山は!?」

 

 また別の戦場では、敵味方関わらず撃墜されて宇宙を漂う武器を集めるトリガーハッピー共がいた。

 

「撃ち終わっても撃ち終わっても引き金を引き続けられるなんて……こんなに嬉しい事はない」 

 

「これこそが我等のパライソ」

 

 恍惚とした台詞と共に両手に持ったマシンガンと両肩のキャノンを使って弾幕を作り出しているのは6機の量産型ガンキャノンだ。

 

 四方と上下を埋める形で円陣を組む彼等は、その背後に牽引用ロープを使って戦果である鹵獲武器を纏めて括りつけている。

 

「くそっ!? くそぉっ! 弾幕が…弾幕が収まらねえ!!」

 

 そして手にしている武器の弾が切れると、即席の武器庫から新たな得物を引っ張り出して鉛弾をバラ撒いているのだ。

 

 さらに質が悪いのは、彼等のガンキャノンが肩の砲をジーラインに装備されていたガトリングスマッシャーへ換装されている事だ。

 

 この武器によって面制圧の脅威度が通常のガンキャノンよりも大きく向上し、相対したジオン兵は彼等に近づく事も出来ない。

 

「俺達の武器をふざけ…おごぁっ!?」

 

「ミシェルぅっ!?」

 

 無理に押し入ろうとすれば、このようにハチの巣になって爆散するだけなのだ。

 

 このように世紀末の野盗やバイキングよろしく、略奪と殺りくに精を出す連邦軍パイロット達。

 

 それはSフィールドを攻めるモルモット小隊も例外ではなかった。

 

「ジオンの奴等、МS用のショットガンなんて作ってたんだな。なかなか使い勝手がいいぞ、ユウ!」

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 フィリップの乗るジーラインは、自身が胴の真ん中をビームサーベルで貫いたザク改からショットガンを奪い取ると、上方から強襲してきたリックドムが刃を振り下ろすより早く弾雨を浴びせる。

 

「まったくです! こっちのバズーカも取り回しじゃハイパーバズーカに負けてませんよ!」 

 

 その後方ではジム・スナイパーⅡに乗ったサマナがドムからせしめたジャイアントバズーカを下方を取ろうとしていたビグロへ向けて放っている。

 

「ああ、このマシンガンも悪くない。取り回しのいいサブマシンガン型とは……俺向きだ!!」

 

 獰猛な笑みを浮かべたユウ・カジマの操るガンダム・ピクシーカスタムが取ったのは、足が鈍ったビグロの底面だった。

 

「クソ! 援護だ! ビグロを…助けろ!!」 

 

「МAの援護が無くなったら俺達だと奴等は止められねえ! 死ぬ気で行くぞ!!」

 

 その様子を見て、攻めあぐねていた守備隊のМSが一斉に動く。

 

 ここにいるリックドムとザク改の混成部隊が手練れのモルモット小隊を足止め出来ていたのは、Iフィールドバリアを積んだ特務仕様のビグロの援護があったからに他ならない。

 

 だからこそ残された三機のリックドムは二機がバズーカを構え、一機はヒートサーベルを手に蒼く塗り直したユウの駆る高機動型ガンダムへ突貫する。

 

「チッ! 奴等も必死だぜ!!」

 

「ユウ、МSは僕たちが押さえます! 貴方はМAに止めを!!」

 

 愚痴をこぼしながらフィリップはガトリングスマッシャーと共にショットガンを連射する。

 

 同時にサマナも左手のビームガンと右肩に担いだバズーカのトリガーを引いた。

 

「ぐわぁっ!?」

 

「くそっ!? 俺達の武器でよくも!!」

 

 サマナたちの援護射撃によって面制圧の鉛弾の群がユウを狙う砲弾を撃ち落とし、近接戦を仕掛けようとしていた一機のリックドムもビームをどてっ腹に食らって爆散する。

 

「貰ったぞ!」

 

 その間にビグロの底面の後部へ回り込んだユウは、ザクから奪った右手のММP-80マシンガンをエンジンの排気用であろうダクトへ突きつける。 

 

 フルオートで放たれた90mm弾の群は、カバーを容易く貫くとエンジン内をズタズタに引き裂きながらビグロの機内で暴れ狂う。

 

「な…なんだ!? ばわっ!?」

 

 これには流石のМAも耐え切れず、巨体のあちこちから炎を噴き上げると巨大な火球となって宇宙を照らす。

 

「おまけだ! コイツも持っていけ!!」

 

 そして爆発の寸前でビグロから退避したユウは、残った二体のリックドムへ腰のホルスターから抜き放ったガンブレイドの銃口を向ける

 

「そんな……!?」

 

「ぐわぁぁぁっ!?」

 

 そして独特の構えから放たれた光弾は、距離があるにも関わらずリックドムの胸板を貫いた。

 

「戦域クリア! 他の隊も頑張ってくれたので、もう周辺に敵はいませんよ」

 

「そうか」

 

 オペレーターを務めるモーリンの弾んだ声に、ユウは小さく笑みを浮かべる。

 

 このように要塞攻略に参加する連邦軍パイロットの殆どが、新型火器管制を活かした敵の武器奪取を戦略に組み込んでいる。

 

 それはジオンのパイロット達の精神を確実に削っていった。

 

 どんな人間だって自軍の武器を殺意を以て向けられて平気でいられる訳が無い。

 

 人手不足の関係で配置された促成栽培の士官や学徒出陣の子供達なら猶更だ。

 

 結果、厚く張り巡らせていたア・バオア・クーの防衛網は徐々に綻ぶ事になる。

 

 

◆

 

 

 敵が放つ手の甲からビームを生やした右ストレートを、あたしは半身になって躱しながら発振器の少し後ろを掴んで抑える。

 

「あたぁっ!」

 

 同時に大きく突き上げた右足は膝蹴りとなって、相手の顎をカチ上げた。

 

 アサルトでジークンドーをやると、キャバルリーでやっていた時より滑らかに動ける。

 

 それに加えて相手はコッチの動きを読めないので、隙を突き放題という特典付きだ。

 

 まあ、МSでカンフーやる奴なんてあたしくらいだから当然と言えば当然か

 

 なんにせよ、サイコミュ様々である。

 

 なんて事を思いながら、あたしは膝蹴りで体勢を崩した相手の肘関節を極める。

 

 型通りなら、このまま腕を背中で背負って背面から相手を地面に叩きつけるんだけど、生憎とここは宇宙空間だ。

 

 叩きつける為の地面が無い以上、少し技を変形させねばならない。

 

 となれば脛を蹴る形で足を払って、相手が前のめりにつんのめったところを脚のビームエッジでコクピットを貫くのが妥当か。

 

 なんて考えていると、相手は思わぬ反撃の手を打った。

 

「うぇっ!?」

 

 なんと、奴の腕が肘の部分から本体と分離したではないか!?

 

『くらえっ!!』

 

 接触回線で聞こえてきた若い男の声と共に、極めていなかった敵の左腕が頭上からビームガンを放ってくる。

 

「とわっ!?」

 

 相手の腹を蹴り飛ばした反動で後ろへ飛んでなければ、脳天から股間までブチ抜かれているところだ。

 

「マチュ、これって……」

 

「うん、ララァのザクと同じだ」

 

 ワイヤーが繋がっていない分、こっちの方が高性能かな?

 

『何故だ!? 君はジオンの姫だろう!! どうして! どうして祖国に弓を引くような真似をする!?』

 

 分離した右腕を持ったままな所為か、お肌の触れ合い通信はまだ継続中らしい。

 

 こっちの素性を向こうが知っているのも勘の良い人特有の共振みたいなのがチマチマあったから、そこから漏れたっぽいね。

 

「何故って、生きる為だけど?」

 

 向こうのパイロットは発した言葉がこちらへの悪態か、それとも本当に問いかけているのかは分からない。

 

 それでもあたしは答えを返す。

 

『生きる、だと?』

 

「そう。あたし達が静かに暮らしてたところへ攻めてきたのはジオン軍。軍艦に避難したとはいえ、戦火に焼け出された所に追撃を掛けてきたのもジオン軍。ガルマやキシリアを倒したのだって、攻めて来られたのを迎え撃っただけだなのに、それをザビ家が恨んで刺客まで送ってくるんだもん」 

 

 こうして思い返すと、あたし達って割と被害者だよね。

 

「付け加えるならサイド3から逃げ出して隠棲していた時も、キシリアから暗殺者が送られた事があるわ。ならば殺される前にザビ家を倒そうって思うのはおかしなことかしら?」

 

 こちらの答えに姉ちゃんが続く中、あたしは周辺をチョコマカと動き回る左腕のビームを躱し続けている。

 

 というか、律儀に答えてあげてるのに攻撃してくるとか酷くない?

 

「……っ!? だとしても、連邦に与して攻めてくるなんて! ジオン・ダイクンに申し訳ないと思わないのか!!」

 

 怒りと失望が入り混じった声と共に、敵機は本体の鎖骨と腰に備わった発射口からミサイルを斉射する。

 

 同時に遠隔操作されている左腕もこちらの背後へ回るのが分かった。

 

「思わないなぁ。というか、オトンがいた時のサイド3って共和制国家なんでしょ? だったら今のザビ家独裁の国なんて認めないんじゃない」

 

「ええ。お父様なら私達が危険に晒されるのなら、ジオンなんてぶっ壊せというと思うわ」

 

 そう返すと同時に、あたしは持っていた相手の右腕を思い切りミサイルへ向けて投げつけた。

 

『なっ!?』

 

 手を放す寸前に聞こえた最後の接触回線の後、間を置かずに右腕はミサイルの群と誘爆して大きな爆発が起こる。

 

「はい、そっち!!」

 

 それをしり目にあたしはバク転気味にアサルトを後ろへ飛び退かせると、下へ向けた右腕からビームガンを放つ。

 

 薄紅の光弾は一瞬前まであたし達がいた場所の少し後方、頭があった場所から少し上でビームの残滓を棚引かせていた敵機の左腕を撃墜した。

 

「ごめんね。ロケットパンチなら、君より数段上の使い手と戦ったことがあるんだ!」

 

 もう繋がっていないだろう通信機に語り掛けながら、アサルトの体勢を立て直したあたしはフットペダルを踏み込む。

 

 ララァが同じ状況になったら、きっと相手の死角に陣取るなんて分かり易い手は使わない。

 

 高速移動する本体からミサイルをバラ撒いて、それが命中する前に左腕のビームで誘爆させて眼くらまし利用。

 

 そこから体当たりか蹴りでコッチを吹っ飛ばして、掴まれている右腕を回収するくらいはすると思うよ。 

 

 現にミサイルが残した粉塵を抜けると、虚を突かれたように固まる敵機が見える。 

 

 あの状態から攻勢をかけてくると予測していない証拠だ。

 

「もらったっ!」

 

 今度こそ胴体を穿つべく、ビームサーベルを展開した右腕を腰だめに構える。

 

 敵機の懐に飛び込んだ瞬間、強大な力によってこの宙域が大きく揺れた気がした。

 

「ッ!? なに!」

 

 思わず敵機から距離を取って、あたしは力が来た方へ視線を向ける。

 

 その先にあるのはア・バオア・クー要塞だ。

 

 モニターに小さく映る独特な形をしたそこには、これだけ距離が離れていてもはっきりと分かるほど巨大な爆発の光が見えた。

 

「これは……コロニーレーザーの破壊に成功した?」

 

 その光を見ながら姉ちゃんが小さく呟く。

 

 けど、あたしはそうとは思えなかった。

 

 レーザーが撃たれたって事は無いみたいだけど、あたし達にとって悪い事が起きた気がする。

 

 そんな風に気を取られていたのがいけなかった。

 

「マチュ、さっきの敵が!!」

 

「あっ!」

 

 姉ちゃんの声に視線を戻すと、例の敵機が逃げ出していたのだ。

 

「逃がすか!!」

 

 奴をここで仕留めないとアンちゃんが危ない!

 

 そう考えて腰の後ろにマウントしていたライフルを放ったけど、慌てていた所為かケツを撃ち抜くだけで爆発することなく逃げられてしまった。

 

「……しまった」

 

「あの傷なら簡単に直せはしないわ。この戦場に出てくることはないでしょう」 

 

「だといいけど」

 

 姉ちゃんの慰めに、あたしは小さく息を付く。

 

 ここは任せろ! なんて大口叩いたのに情けない。

 

 しかし、あたしにはへこんでいる暇なんてないようだ。 

 

『こちら…ロ…オン! 奴等…無茶……しやがる! レーザーは…罠……! 味方の被害も……じんだ……』

 

 通信機に飛び込んできたのは飛び飛びながらも切羽詰まった佐藤さんの声!

 

「ドレン艦長、こちらマリー! 今の通信聞いた?」 

 

「ええ! 要塞の目前へ辿り着いた味方機がかなりの数、シグナルロストしています!」

 

「ちょっと遅れたけど、今からあたしも向こうに行くから!!」

 

「分かりました! できるなら仲間の救助もお願いします!」

 

 矢継ぎ早に用件を告げると、あたしは思い切りフットペダルを踏み込んだ。

 

 前線にはアンちゃんもいるんだ。

 

 何があったか分からないけど、早く行かないと!!

 




ガノタ「強化アレックスに乗った天パに狙われてる!たsh──!?」

謎の声「1つ!」

作者「同胞がピンチだ! こちらでノーマルだが、デュエルガンダムを用意した! これに乗って彼をt──」

謎の声「2つ!!」

救助志願者が一人も集まらない!

クソッ! なんて時代だ!!
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